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県議会報告
平成29年9月定例会 決算特別委員会(教育委員会)(平成29年10月18日(水))
2017.10.21
1 がん患者児童生徒への学習支援とがん教育について
(1)がん教育の県内の取組状況、評価及び今後の対応について
がん教育について、西和賀町の小学校をモデル校とした、 がんの授業が2年連続で行われているが、県の取組み状況と課題、今後の対応は如何に。
がんは、生活習慣とかかわりの深い病気であることから、児童生徒にがんについて正しい知識を習得させて、予防のため望ましい生活習慣を確立させていくことは極めて重要であると認識しております。
委員御案内のとおり、県教委におきましては、平成27・28年度の2カ年、文科省の委託事業において、西和賀町内の小中学校及び高校で、がん教育の授業実践を行い、教員対象の研修会等で実践報告を行うとともに、県立学校14校へ講師派遣を実施したところであります。
本年度におきましては、昨年度に引き続きまして、県立学校11校へ講師派遣を行っているほか、教員対象の研修会においてがん教育実践の具体について周知を図っているところであります。
がん教育の授業実践を行った学校の児童生徒からは「がん検診は大切なので、家族にも伝えたい」「今から良い生活習慣を作っていきたい」などの感想が寄せられるほか、児童生徒のがんの基本的知識の習得及び自己の健康管理能力の育成について、着実に効果を挙げているものと認識しております。
また、教員対象の研修会では、研修者全員から「がん教育の意義が理解できた」という評価を受けていることから、今後学校現場においてがん教育の実践が進められていくものと期待しているところでございます。
県教委といたしましては、今後も保健体育科の教科を中心に教育活動全体で、発達段階に応じたがん教育が実施できるよう、学校における指導内容及び方法等について教員研修を進めるほか、関係機関と連携しながら外部指導者の活用などに積極的に取り組んで参ります。
(2)がん患者児童生徒の実情、学習支援の実態及び今後の対応について
教育就学支援を必要とするがん患者児童生徒の実情と学習支援の実態、今後の対応は如何に。
特別支援学校に在籍している児童生徒については、病状や入院等の状況に応じて、通学または教員が病院を訪問する形態により、学習を進めています。小児がんの治療による岩手医科大学附属病院への入退院に伴う盛岡青松支援学校医大訪問教育部への転出入は、平成28年度、11名となっております。また、盛岡青松支援学校医大訪問教育部では、学籍異動を伴わない病気療養児についても、在籍校と協議し、可能な範囲で交流及び共同学習を入院中の学習保障として行っております。
今後の対応については、国において、現在、入院児童生徒等への教育を保障するための体制整備に関する調査研究を進めていますので、これらの成果や課題等を踏まえながら、平成31年度からの次期いわて特別支援教育推進プランの策定において、方向性を検討していきたいと考えています。
(3)高校生への教育的支援について
院内学級は義務教育が対象のため、勉学の手段が閉ざされているのが実情である。長期入院する高校生への公的な学習支援制度をめぐっては、大阪府や神奈川県、東京都、東北では福島県の教育委員会で、例えば通信課程のある高校に一時転校させ同校の教員を派遣、あるいは本籍をそのままにし非常勤講師を派遣するなど、ここ数年で全国において具体的な支援の動きがある。全国での特別な教育支援を調査研究するとともに、子ども一人一人の教育的ニーズに応じた指導・支援を行うべき。所見を伺う。
現在、長期入院をしている高校生には、それぞれの入院先等において、治療に専念することを優先しながら、各校で対応しているところです。今後は、次期いわて特別支援教育推進プランの考えに基づいて具体的な対応方法等を明確にしていきたいと考えています。
がんと闘っている高校生の、学びたい、友達と一緒に卒業したいといった願いをかなえるためにも、教育の扉を閉じないで欲しい。子ども一人一人のふるさと岩手での教育を保障するためにも、ぜひ、高校生がん患者及び家族、そして現場医師の声を聞いていただき、入院療養中も単位取得や進級を願う生徒を県教委・学校・病院などが連携し支える教育支援をお願いする。真の教育立県を目指して欲しい。(意見要望)
2 専門高校における定時制の学びの実態と評価について
(1)県内専門高校における定時制の学びの実態と評価について
28年度の県内専門高校における定時制の学びの実態(在籍生徒の進学背景と登校の実態、資格取得、就職・進学の状況等)と評価は如何に。
県内の専門高校で定時制課程を設置している学校は、盛岡工業高校定時制でありまして、現在在籍生徒数は、1年生が6人、2年生が1人、3年生が7人、4年生が1人で合計15人と定員割れしている状況にあります。また、在籍する生徒の出身は、盛岡市及びその近郊に限られております。生徒の進学、入学する理由としましては、様々な背景を持つ生徒が入学しております。
定時制課程は働きながら学ぶ青少年に教育の機会を与えることを設置の趣旨としておりますが、現状では就労していない生徒が多く、働きながら工業に関する知識や技術、資格を身に着けて進路に生かすというかつての状況とは異なり、何らかの支援を必要とする生徒が多く学んでおり、少人数の集団の中で、きめ細かな教育の実践を行っている実態もあります。
資格取得の状況は、電気工事士等の資格を取得する生徒が年に1名程度となっておりますが、卒業生の進路をみますと、専門的な技術、資格を生かせる分野の企業等への就職者は少なく、製造業、卸小売業等、様々な分野に就職している状況にあります。
中学校時代に不登校を経験した生徒が、生徒一人ひとりに寄り添う指導によって、目標をもって学校生活を送れるようになる等、多様な履修形態を提供しているという定時制課程の果たす役割は十分認識しておりますけれども、現在の高校定時制の学校の特色、進路の状況をみますと、定時制専門学科としての役割は変化していると、そのように考えております。
(2)東北管内専門高校定時制の現状について
東北管内の実業高校定時制の現状は如何に。他県の実業高校における定時制の再編検討状況は如何に。
東北管内の専門高校定時制の現状についてでありますが、定時制の工業科の設置校は、青森県3校、宮城県3校、山形県2校、福島県1校となっており、秋田県は設置されておりません。東北各県の定時制の工業科には、概ね20人以上の生徒が在籍しており、岩手県のように極端に在籍生徒が少ない状況にはないものと認識しております。
(3)高等学校定時制の趣旨、意義及び今後の目指す姿について
定時制高校は、いわゆる不登校に近い生徒や、学び直しを希望する生徒、中退したが再び頑張って高卒の資格を取りたい社会人、発達障害や特別支援学校で受け入れてもらえなかった生徒などが進学している状況にある。私が評価すべきは、中学校時代に殆ど学校に通えなかった生徒が盛岡工業高校定時制に通いはじめたら、一人も休まずに毎日登校している事、しかも電気工事士などの専門的な資格を取得し、全員が就職あるいは進学している点である。盛岡工業高校定時制は多様な人材の学びの機会を提供している実態を踏まえ、不登校生徒の受け皿、学びなおしの機会を保障すべき。高等学校定時制の趣旨と意義をどのように捉え、社会環境の変化に対応し今後の目指す姿をどう考えているのか。
高等学校定時制の趣旨、意義及び今後の目指す姿についてでありますが、定時制課程は働きながら学ぶ青少年の教育機関としての機能を果たしてきたところですが、現状ではそうした生徒は少なく、何らかの支援を必要とする生徒等が学んでいる状況にあります。新たな再編計画を策定するに当たり、平成27年に改訂した「今後の高等学校教育の基本的方向」においても、このような状況を踏まえた定時制・通信制教育の方向性を示したところです。
今後におきましても、定時制課程の設置の趣旨を踏まえつつ、社会環境の変化と生徒のライフスタイル、能力・適性、関心・意欲等に柔軟に対応できる学習の場として、弾力的な単位修得等を可能にし、転編入学の機会を多くする等、学習機会の充実をはかるため単位制への転換も含めて検討して参ります。
(4)定時制課程の再編スケジュール、保護者等説明会への対応について
定時制課程の再編スケジュール並びに保護者等説明会での意見、パブリックコメントに対する検討状況と対応は如何に。学校の意向はどう伺っているのか。
盛岡工業高校定時制課程の募集停止については平成31年度に予定しており、学科改編等について中学生とその保護者に、平成30年3月にはお知らせすることを考えております。また、例年どおりであれば、平成30年8月の閉会中の常任委員会において平成31年度の県立学校編制案についてお知らせし、10月には管理運営に関する規則の改正等の手続きを予定しております。
再編計画を策定する前には、県内各地で意見交換を行い、様々な意見をいただいたところです。また、再編計画策定後も平成28年度から今年度にかけて、学校及び同窓会、PTA等に募集停止の今後の方向性を説明しているところです。
在籍生徒数が極端に少ないということで、募集停止についてある程度やむを得ないといった意見をいただいている一方で、支援の必要な生徒が多く入学していることから、そのような生徒の学びの機会の保障が必要であるといった意見もいただいているところです。
再編計画は、学びの質の保証と機会の保障を大きな柱としており、定時制課程においても、各ブロックを基本として教育環境をしっかり整備することが大事であると考えております。盛岡ブロックには、杜陵高校定時制課程があり、定時制での学びを希望する生徒のニーズに応えていきたいと考えております。
また、定時制課程の関係については、これからも意見交換をして参りたいと考えております。
(5)杜陵高校への再編に伴う生徒の多様な教育機会の確保について
県内唯一の専門高校定時制の学びの扉を閉ざすべきではない。生徒数が減っているというが、中学校の進路担当教諭へこれまでの実績成果を積極的に説明すれば工業で学ばせたいニーズはある。モノ作りを通して生き方や自分自身を見つめなおすなど、やり直しがきく教科であり、自信をつけまさに自立する人材、人間教育を実践している。大いに評価すべきであり、なぜ、この強みを生かそうとしないのか。杜陵高校への再編により、生徒の多様な教育の機会をどのように確保するお考えか、対応は如何に。
盛岡工業高校定時制課程は、少人数で学ぶ環境にあり、生徒15人に対し教員は副校長以下15人の配置となっており、懇切丁寧な指導の結果、成果を上げていることは承知しているところですが、働きながら学ぶ生徒であったり、専門的な資格を生かして就職する生徒は少なく、生徒が定時制専門学科で学ぶ目的は変化しているものと考えております。
杜陵高校定時制の場合、1部の午前、2部の主に午後、3部の夜間があり、また、通信制課程もあることで様々な形態の履修が可能となっています。工業系の科目はないわけですが、ニーズのある商業、家庭の専門科目も開設し、進学から就職まで生徒の進路希望に対応した学びができること、生徒の個々の生活状況や学習意欲に応じた環境が一定程度は整っているものと考えており、今後におきましても、生徒の目的意識の高揚や学習意欲の向上を図りながら、一方で支援が必要な生徒に対応した教育環境の充実等を含めて対応して参りたいと考えております。
新渡戸稲造先生は、「教育は急ぐな」と言っている。急いで教育環境を変えるべきではない。ぜひ、じっくりと高校や生徒の声を聞いて頂きながら、高校再編の本質、コストの問題ではなく教育の質の保障、多様な学びの機会を保障して頂くよう検討して頂きたい。