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県議会報告

令和6年度2月定例会本会議 代表質問(令和7年2月20日(木))

2025.02.25

 自由民主党の臼澤勉です。2月定例県議会において、代表質問の機会を頂きました、同僚・先輩議員各位の皆さまに感謝申し上げます。
地方創生が叫ばれてから十年、本県の最重要課題である人口減少問題に対し、知事は、どのような効果的施策を講じてきたのか。私たちは、未来の子どもたちに負担を先送りしない、持続可能な人口構造に対応した施策の強化が求められています。「岩手から日本を変える」。これは単なる希望ではなく、課題先進県である私たちの責任であります。デザイン政策とエビデンスに基づく質の高い施策を推進し、地域力を高めることが重要です。そして、何よりも、人間力の向上、「教育」こそが全ての根幹です。県民一人一人が果敢に挑戦し、新たな価値を創造するイノベーションこそ、岩手県の未来を切り開く鍵となるのです。若き挑戦者たちが地域に根付き、活気を生む「選ばれる社会」をつくらねばならない、そういう問題意識で質問したしますので、知事には、真摯かつ具体的な答弁を期待します。

1 人口構造変化に順応した施策の重点化について

(1) 人口構造変化に対応したビジョンについて

知事演述を拝聴したが、残念ながら知事の言葉で、本県の人口構造変化に対応したビジョンが明確に示されませんでした。先ず軸足を置くべきは、少子化、生産年齢人口の減少、高齢化を前提とした人口構造の変化に対応した希望に満ち溢れる社会の姿を県民に示すべき。そのうえで、県民や民間の力を引出しながら、今やるべき対策、将来を見据えて手を打つ対策等、将来の人口構造変化に対応する準備を進めるべく、県民や県内事業者等の皆さんにメッセージを伝えるべきではないか。

 岩手県人口ビジョンでは、2115年に概ね80万人程度での定常状態を展望しており、これらを踏まえ、第2期政策推進プランにおいて人口減少対策に最優先で取り組むこととし、全国トップレベルの子ども・子育て支援策や、若者や女性に魅力ある雇用・労働環境の整備など、様々な「生きにくさ」を「生きやすさに」変える施策を推進している。
 また、今後の人口減少を見据え、
・ 労働力不足へ対応するため、あらゆる産業のDXの促進による生産性向上や高付加価値化、
・ 地域おこし協力隊制度などを活用した地域の活性化や、空き家などを活用したU・Iターンの促進、
・ 予防保全型の維持管理による施設の長寿命化や上下水道の広域連携による効率化
などの対策を進めている。
 本県の生産年齢人口が減少する中にあって、本県の実質の県内総生産は、この10年で8.5パーセント増加している。また、本県の農業産出額も、農業従事者が減少する中にあって、この10年で22パーセント増加している。
 このように、人口減少下にあっても、DXによる地域課題の解決や生産性と付加価値の向上、地域の魅力を活かした関係人口・交流人口の拡大に向けた取組等を進めることによって、地域の社会・経済システムの維持、発展は可能であると考えている。
 政策推進プランに掲げる人口減少対策と、人口減少下における社会・経済の維持・向上策を推進し、民間企業、市町村、関係団体など、多様な主体と連携しながら、人口減少による影響を克服し、持続的な岩手の発展を目指していく。

 本県の合計特殊出生率は1.16と低迷し、圏域別にみても、沿岸・県北地域の出生数は、この25年間で6割減、女性人口に ついては15歳~49歳において5割減となっている。こういった状況を受け、県の人口ビジョンに掲げる、2040年に人口100万人程度を維持という目標には疑義があるが、見直しの予定があるのか伺う。

 全国の都道府県は、国の人口ビジョンとふるさと振興総合戦略に合わせた形で、それぞれの人口ビジョンとふるさと振興総 合戦略を策定し、また、市町村も、これに追随しているところ。国の人口ビジョンは、現時点で、大きく目標設定を変更する予定がないと認識しており、本県としても、都道府県、市町村と共に、国として地方創生をバージョンアップしていく方針と連動して進めていきたい。

(2) 人口減少・少子化に係る施策の効果について

 知事は先の知事選で、「大攻勢をかける次の4年間」と約束したが、婚姻数や出生数が全国的に低下する中、本県は特に著しい減少傾向を示している。「生きにくさは生きやすさに確実に転換している」、「危機が希望に変わった」と言うが、県民の実感と乖離しているのではないか。現在までに具体的にどのような成果を上げているか、圏域別にお示し願う。また、どの施策が効果を上げ、どの施策に改善の余地があるか、具体例を挙げて示せ。

 5期目の県政運営では、第2期アクションプランに基づき、物価高騰の影響を受けている生活者、事業者を支えるとともに、全国トップレベルの子ども・子育て環境の実現、各ライフステージに応じた総合的な施策の拡充、若年層の県内就職やU・Iターンの促進による移住・定住施策の強化などに取り組んでいる。その結果、物価高騰対策賃上げ支援金が賃上げの促進に効果をあげ、昨年の岩手地方最低賃金審議会における過去最大の引き上げの答申の後押しにもなったほか、
・ 県内全市町村が第2子以降の3歳未満児に係る保育料無償化を実施、
・ 県外からの移住・定住者数が増加し過去最多を更新、
・ 高卒者の県内就職率が高い水準を維持、
・ いわて働き方改革推進運動に1千社を超える企業が参加、
・ 東北最多の企業が経営革新計画に基づく生産性向上の取組を実施
など、一定の効果があったと考えている。
 圏域別には、
・ 県央では、医療機器関連産業拠点の形成を目指す動きの活性化、
・ 県南では、半導体分野や自動車分野の産業集積による雇用の創出、
・ 沿岸では、みちのく潮風トレイルや三陸ジオパークの活用、クルーズ船の寄港による国内外からの誘客拡大、
・ 県北では、高いポテンシャルを生かした再生可能エネルギー導入の動きの加速化
など、それぞれの地域の特色を生かした成果が表れている。
 一方で、東京一極集中の加速や、出生数の減少が続いていることから、結婚支援の強化や県内企業の働き方改革の推進、ジェンダーギャップの解消等に向けた施策を拡充・強化することとし、令和7年度当初予算案に関連する新規事業等を盛り込んでいる。

(3) 自殺率低下への取組について

 知事は就任時のマニフェストにおいて、「自殺率を全国平均に引き下げる」と約束された。しかし、現在も全国ワーストという厳しい現状が続いている。特に10代から20代の若者の自殺者数は、一定数を維持し、減少傾向にない状況にある。こころのケアセンターや民間病院の医師による「SOSの出し方教室」など、関係者の取組に敬意を表しつつ、これらの取組を県としてさらに後押しするための具体的な支援策が必要ではないか。
 また、県職員の長期療養者の増加や不登校の増加も問題となっている。このような状況下で、本当に県が「生きやすい環境」に変わったと言えるのか。以前、知事は「悪化を食い止め、上向く方法が分かっている」と述べられましたが、その方法とは具体的に何か、そして、それを実現するための効果的な方策と、見直すべき現行の対策について伺う。
  県では第2期アクションプランにおいて令和8年までに10万人当たりの自殺者数を14.6に低下させることを目標に掲げているが、この目標達成についての見通しについても示せ。

 自殺は、多様かつ複合的な原因や背景を有するものであり、幅広い分野における包括的な取組が重要。本県では、「岩手県自殺対策推進協議会」を中心に多様な主体が連携し、官民一体となって自殺対策に取り組んでいる。
 こうした取組の成果により、自殺死亡率は長期的には減少傾向にあり、全国平均との差は着実に縮小し、事態の悪化を食い 止めてきたところ。
しかしながら、依然として、本県の死亡率が全国的に高位にあることは、重く受け止めており、引き続き、本県における自殺の状況を検証・分析しながら、適時適切な対策を講じていくことが必要。
 このことから、自殺者数の多い働き盛り世代への対策として、事業所等を対象としたメンタルヘルス対策の取組を推進して いるほか、全国的には近年増加傾向にある若年層への対策として、今年度新たに作成した「こころの健康啓発動画」の活用など、深い悩みを抱えた際に周囲へ援助を求める行動を促す取組を進めている。
 令和7年度においては、メンタルヘルスセミナーの拡充、県立学校等のこころのサポート授業における動画の活用などに取 り組むこととしており、引き続き、多様な関係者との連携・協力の下、実効性の高い施策の推進に努め、第2期政策推進プランの目標達成に向けて取り組んでいく。

(4) 人口減少(若者女性社会減対策)について

 若者・女性に選ばれる岩手になるための実効性のある取組が必要と考える。特に、県北や沿岸地域での15歳から24歳の女性の流出が深刻で、緊急に対策が必要。この現状をどう分析し、これまでの取組をどのように改善し、今後の対策を講じるのか具体的に示せ。

 本県における若年女性の社会減は顕著となっており、特に県北・沿岸地域においては県平均を上回る水準となっている。
これまでも、魅力ある職場環境づくりや働き方改革の取組を促進してきたが、若者・女性に選ばれる地域であるためには、ジェンダーギャップの解消を進めていくことが特に重要と考えている。
 このため、令和7年度においては、
・ アンコンシャス・バイアスの解消に取り組む企業への支援の強化
・ 固定的な性別役割分担意識の解消に向けた外部専門人材の派遣
・ ジェンダーギャップ解消を目的とした企業経営者等を対象とする県北・沿岸地域でのフォーラム等の開催
などの対策を進めることにより、性別にかかわらず、一人ひとりがいきいきと活躍できる社会の実現に向けて取り組んでいく。

(5) 少子化対策について

ア 出生数改善のための取組について

 第2期アクションプランでは、合計特殊出生率の目標を1.58に設定しているが、試算によれば約7,400人の出生数が必要で、現状では約2,000人のギャップが生じている。このギャップを埋めるために、県は、県民ニーズを丁寧に把握し、これまでの取組を見直しする必要がある。具体的な対策をどのように講じる予定か伺う。

 昨年度実施した少子化の要因分析やアンケート調査結果から、出生数減少の対策として、「有配偶率の向上」、「有配偶出生率の向上」、「女性の社会減対策」の3つの柱に加え、地域の実情を踏まえた少子化対策が重要と考えている。
 このため、「i-サポ」会員へのフォローアップ強化、市町村が行う第2子以降の保育料無償化や在宅育児支援金の支給、既存施設等を活用した遊び場の整備、産後ケア利用時の子どもの一時預かり・交通費の支援に要する経費の補助などに加えて、企  業や地域等における固定的性別役割分担意識の解消に向けた取組を令和7年度当初予算案に盛り込んだところ。
 国の「こども未来戦略」に基づく、「次元の異なる少子化対策」についても、児童手当の拡充や出産育児一時金の引上げなどが既に実現している一方、今後、課題を整理するとされている学校給食費の無償化などについて、早期の実現を期待するところ。
 県においては、地域課題に即した施策が立案されるよう、小規模町村への伴走型支援も実施しながら、経済的・社会的な困難から結婚・出産を諦めるなどの、いわゆる「生きにくさ」の解消を図っていく。

イ 婚姻件数増加のための取組について

 2,000人のギャップを埋めるためには婚姻件数を増やす必要がある。これは3年間で年約660組の増加を意味する。2023年の婚姻件数が3,376件に鑑みると、2割増さなければならず相当取組をしなければならない。地域ごとの特性に対する具体的対策をどのように展開し、目標を達成する考えか。

 国の「出生動向基本調査」によると、独身者が未婚でいる理由は、「適当な相手とめぐり会わない」、「まだ必要性を感じない」、結婚資金が足りない」が主なものとなっている。
こうしたことから、有配偶率の向上に向け、高校生など若者へのライフプラン形成支援、29歳以下の新婚世帯に対する県独自の支援金10万円の上乗せ補助に継続して取り組むほか、令和7年度当初予算案において、
・ 各広域振興圏における結婚支援イベントの開催
・ 「i-サポ」会員を対象とした結婚に向けたスキルアップセミナーの実施や、マッチングシステム改修による利便性向上のPR
などの事業を盛り込んだところ。
県としては、これらの取組を通じて、市町村や関係団体等と連携しながら、出会いの機会の更なる創出や結婚新生活支援の強化を図り、県民の「結婚したい」という希望がかなえられるよう、総合的な結婚支援を推進してまいる。

(6) フューチャーデザインに基づく財政運営について

イ 事業見直しの視点について

県は事業の精査による歳出の適正化を図るとしているが、具体的にどのような事業を見直す予定か。その際に重視する考え方や基準について併せて示せ。

 「いわて県民計画(2019~2028)」の推進に当たり、効果的かつ効率的な行政の推進を目的として、毎年度、政策、施策及び事務事業について、総合的に評価を実施し、施策や事務事業等の見直しを行っている。
 事業の見直しに当たっては、各事業の指標や、上位の施策、政策の状況、社会経済情勢の変化も踏まえながら、必要性、有効性等を総合的に検討し、毎年度の予算編成につなげている。
 今後も、第2期政策推進プランに掲げる「自然減・社会減対策」、「GX」、「DX」、「安全・安心な地域づくり」の4つの事項について重点措置を行うとともに、10の政策分野の評価と政策形成、予算編成の連動を図り、政策手段の検証を不断に行いながら、施策の重点化を図っていく。

 新年度予算の編成にあたって、私から提案が1つある。それは知事の政務秘書制度についてである。
 全国の都道府県の状況を調査したが、38府県、8割もの自治体で、知事の政務秘書は設置していなかった。
 その理由として、
・ 政務を担う職員を公費で雇用することは適切でない。
・ 政務は知事の私設秘書が担う。
・ 県が行う秘書業務は公務の範囲内に限ると理解する。
・ 政務活動は、知事後援会が対応。
・ 限られる資源の中、配置にあたっては、職務内容や必要性を慎重に検討すべき。
・ 政治活動については、別途設置している私設秘書が対応。
との回答であった。
また、設置している8都県のうち、長野県を含む多くの県が、知事の政務秘書が国政選挙運動に関わっていないと回答。
年間800万円、達増県政で約1億2000万円もの公費をかけて設置する財政的余裕はない。しかも、県民の税金で雇用されている政務秘書が、特定の政党の国政選挙にかかわらせることを岩手県議会の良識として認めてよいのか。
全国の動きに賛同し、ゼロベースで見直すことを私から提案する。

 地方自治法でも認められております、知事の政務秘書につきましては、長野県知事特別秘書に係る訴訟の判決におきまして、知事という特別職に属する公務員は、かえって政治的に活動することによって公共の利益を実現することも職分とする公務員であり、その政治的活動に係わる政務につき、公務員としてこれを補佐する秘書を設けることが、その職務の円滑、効率的な遂行に資するものとして判示されており、その通りだと思っております。

(7) フューチャーデザインに基づく組織機構改革について

 現在、県の組織は30代~40代の中堅職員が極端に少ない構造。昨年の決算特別委員会総括質疑で、県職員の長期療養者が10年前に比べ1.9倍の100人に拡大し、しかも20代職員が全体の半数51人、10年前の約10倍との現状を指摘し。職員の心身に大きな負荷がかかっている大きな要因に、中間層がいない構造的な問題があるのではないか。今回の組織・機構改革でどのような効果を期待しているのか、中長期的な人事制度や広域局を含めた組織の在り方に関する検討を本格化させるべきと考えるが、知事の考えを示せ。

 令和7年度は、本県の最重要課題である人口減少対策を一層推進するため、市町村と連携した施策 推進体制や子ども子育て支援体制の更なる強化を図るとともに、職員が働きやすい環境づくりのため、メンタルヘルスケア体制を強化するなど、様々な県政課題に適切かつ柔軟に対応できる組織・職員体制を整備しているところ。
 また、中長期的な観点から、2050年の人口減少社会を想定し、本庁組織の大括り化や出先機関の活動エリア等の見直しなど、スリム化を前提とした組織の在り方を検討しており、令和7年度は、職員の更なる確保・育成策と併せ、この検討を本格化させることとしている。
 これらにより、直面する県政課題への対応だけではなく、将来を見据え、限られた行政経営資源の中にあっても、職員が個々の能力を十二分に発揮しながら、中長期に渡って県民サービスを維持・向上し得る、機動的かつ最適な組織・職員体制の構築を進めていく。

2 生産性・所得向上とマニフェスト+39について

(1) マニフェスト+39実現のための経費について

ア 経費の試算とタイムフレームについて

 いわてリハビリテーションセンター沿岸サテライト施設、スポーツ医科学センター、消防学校等の整備にざっと見積もって660億円が必要。県民にとって、この計画の実効性を確認するために具体的な数字とタイムフレームを把握することは必要不可欠であり、今後の財政運営評価においても極めて重要。県庁舎の一部建替費用417億円も見込まれる中、経費の試算と任期期間中のタイムフレームを示せ。

 マニフェスト+39実現のための経費については、国の経済財政政策の方向性や民間投資の動向等により左右されることから、現時点での大まかな推計となるが、道路の整備などの公共事業や施設整備事業で数百から数千億円規模と見込まれる。
 マニフェスト+39に掲げた内容は、「いわて県民計画(2019~2028)」や第2期アクションプランの内容を踏まえた具体の施策として位置付けられ、県民計画、アクションプランと一体として取り組んでいくもの。
 これまでも、他の施策と同様、その進捗状況に応じて、マニフェスト+39各項目に関係する個別の事業計画等により見通しを示しているところであるが、今後も、関連事業の進捗、財源、関係者との調整状況等を踏まえ、それぞれ適切なタイミングで見通しを示しながら、進めていく。

イ 財政全体への影響について

 昨年の答弁で、「交付税措置のない県債を約600億円発行した場合に、実質公債費比率は後年度の比率が約1%上昇する」とのことであった。実質公債費率全国ワースト12位の本県は、令和7年度以降実質公債費率が上昇し、令和10年度には16.6%と令和5年度から約4%も上昇する見通しである。具体的に財政全体にどのような影響を及ぼすと考えるのか。

 財政規模に対する公債費の割合を示す実質公債費比率は、金利上昇に伴う利払費の増等の影響により、今後、上昇していくことを見込んでいる。
 比率は、金利動向や過去の県債借入額等に応じて上下するものの、過度な上昇は、財政の硬直化を招きかねないことから、常に適正な投資規模を見定め、不断に検討していく必要がある。
 公債費が財政に及ぼす影響も踏まえつつ、国費や有利な地方債の活用など、あらゆる手段により財政負担の低減を図り、「マニフェスト+39」を含め必要な施策を推進していく。

(2) 中小企業振興について

ア 賃上げ対策と生産性向上について

 我々議会の要望を踏まえ、年末の補正予算で物価高騰対策として賃上げ支援金の規模が拡大されたことは評価するが、中小企業団体中央会の緊急アンケート調査結果では、活用見込みが48%に留まっている。この現状をどのように改善し、支援の効果を高めるつもりか。
 また、賃上げ支援金の対象が限られているため、経営に影響が出ているとの声がある。支給要件の緩和や対象範囲の拡大、地域の実情を考慮した生産性向上対策について、具体的にどのような施策を行う予定か、またそれにより賃金アップのための原資をどのように確保するのか。

 物価高騰対策賃上げ支援金の実施にあたっては、県内の多くの中小企業が、エネルギー・原材料価格の高騰などの影響により、厳しい経営環境にあり、また、最低賃金が過去最大の引上げ額となったことなどを踏まえ、より多くの企業に活用いただくため、支給対象とする賃金の引上げ額について、最低賃金の引上げ額である59円とほぼ同額の60円とするとともに、1事業所あたりの対象人員数を前回の20人から50人まで拡大するなど、事業の拡充を行った。
 岩手県中小企業団体中央会の調査結果については、「活用見込み」48パーセントのほか、「わからない」が30パーセントとなっており、内容について、一定の評価をいただいている状況から、多くの事業者に活用されるものと考えており、更なる周知に努めていく。
 加えて、令和7年度当初予算案には、経営革新計画の策定や、デジタル・AI技術の導入などにより、生産性向上を図る中小企業に対する様々な支援策を盛り込んでいる。
 インバウンドの観光客増大、県産品の輸出増加など、消費の拡大を積極的に目指し、賃上げとの好循環を生み出すことで、県内経済を活性化し、持続的な賃上げ原資の確保に結びつけていきたいと考えている。

イ 半導体産業における人材育成について

 半導体の製造を担当する人材育成施設の予算が新年度に組まれている。本県を東日本の新たな産業拠点とするためには、大学や産業界と連携し、社会変革を担う人材育成に取り組む必要がある。これにより、農業や医療・福祉といった分野での社会実装を進めることが可能となる。県として、半導体人材の育成と地域課題の解決、新たな価値創造をどのように実現していくのか、知事の具体的な考えを伺う。

 国は、半導体産業の国内における集積に力を入れており、その代表地域として、岩手県、北海道、広島県及び熊本県の4道県を選定し、生産環境整備に向けた新たな交付金を創設するなど、本県に対する期待が高まっている。
 国の動きと連動して、県では、北上市内に全国初の産学官連携による半導体関連人材育成施設の整備を進めてきたところであり、この施設を核に本県の半導体関連産業の集積、発展を支える人材を育成していくこととし、本年4月の開所に向けて、関係機関が一体となって取り組んでいるところ。
 半導体関連産業の発展を、地域産業の振興や高度化のみならず、住環境や交通インフラなどの生活基盤やまちづくりなどの生活環境の充実、また、最先端の技術の農業や医療・福祉分野への波及、更には、人々の生活の質の向上にもつなげていくことが必要と考えている。
 このような考え方は、いわて県民計画の「北上川バレープロジェクト」に掲げているところであり、半導体関連人材育成施設を拠点とした人材育成などを進めることで、このプロジェクトのねらいの実現に結びつけていきたいと考えている。

ウ 医療機器関連産業の集積と高度化について

 医療機器の東北医工が開発したリハビリテーションロボットの製造販売承認は、地域の技術力を示す素晴らしい事例のほか、現在、ヘルスケア関連産業拠点の拡充に向けて、現在検討を進めていると聞く。こうした取組は、地方創生2.0に沿うものであり、県としてこれらのイノベーション活動をどのように支援していく考えか、具体的な施策について知事の考えを伺う。併せて、ものづくり分野での女性活躍も含め、支援を通じた地域の成長戦略について伺う。

 県では、医療機器関連産業を自動車・半導体関連産業に次ぐ第3の成長産業に位置付け、岩手発のイノベーションの創出、新製品の開発促進、集積促進、人材の育成・確保に向け取り組んでいる。
 令和2年にヘルステック・イノベーション・ハブを設置し、これを拠点に、入居企業等に対し、技術開発・製品化に対する補助、岩手県工業技術センターやいわて産業振興センター等による共同研究、技術者育成、経営・販売支援などを行っている。
 現在、TOLICを核に、県内外の企業や大学、試験研究機関等との連携のもと、13社のベンチャー企業が設立され、ヘルステック・イノベーション・ハブの入居企業が開発したリハビリテーションロボットが、厚生労働省から医療機器として承認され、TOLICも新産業創出等の取組を表彰するプラチナ大賞において、総務大臣賞、経済産業大臣賞に次ぐ優秀賞を受賞するなど、成長を遂げている。
 イノベーションを活用した医療機器関連産業に代表される研究開発部門の集積は、県内の高等教育機関を卒業した若者や女性の地元定着、さらに移住の促進にも結びつくことから、引き続き、産学官金の連携のもと、ヘルステック・イノベーション・ハブの拡充のあり方についての検討を進めながら、医療機器関連産業の第3の柱としての確立に向けて取り組んでいく。

(3) 持続可能な農業の確立について

ア 生産性・所得向上対策のための中長期的な見通し

総合食料基地である本県も、持続可能な農業の実現に向けた十分な予算の確保と、関連施策を充実させることが不可欠と考える。国土強靭化のための「5か年加速化対策」のように、生産性・所得向上対策に必要な事業量や予算額について中長期的な見通しを持って取り組む必要があるが、知事の所見を伺う。

 国では、食料・農業・農村基本法の改正を踏まえ、食料安全保障の強化等を図るため、農業の構造転換の実現に向けた施策を初動の5年間で集中的に実行することとし、毎年度、必要な予算が検討されるものと承知している。
 県では、今般公表した「いわて農業生産強化ビジョン」素案において、食料自給率と農業産出額の目標を掲げ、10年後の目指す姿を描きながら、
・ 農業生産の増大に向けた生産性・市場性の高い産地づくり
・ 環境負荷低減と安全・安心な産地づくり
・ 産地づくりを支える人材の確保・育成
の3つの柱ごとに、令和7年度から令和10年度までの4年間における、具体的な取組を示している。
 ビジョンに盛り込む取組については、毎年度の予算編成において、国の施策や予算を有効に活用しながら、その内容や規模について検討していく。

新たな農業ビジョンの鍵は、人。予算も大事ですが、人がイノベーションを起こす。そういう意味において、全国の農業の担い手が集うサミットを本県で開催し、いわてを農業の聖地にしていただきたい。そして、農業基盤整備について、標準予定工期が6年のところ、現在採択から事業完了まで10年以上かかっている地区が多数ある現状を鑑みると、事業完了の加速化を図り早期の事業効果発現を促進すべきであります。宜しくお願いします。