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県議会報告

平成29年9月定例会 決算特別委員会(保健福祉部)(平成29年10月16日(月))

2017.10.20

1 がん対策について

(1)現状の分析について

 平成28年度までの取組実績を踏まえ、本県のがん対策の現状をどう分析し評価しているのか。75歳未満年齢調整死亡率が全国的に減少傾向にあるが、秋田県を含め上昇に転じた。本県の特筆すべき点や要因をどうとらえているか。

 本県のがん対策の現状等についてございますが、これまで、生活習慣の改善などによるがん予防やがん検診によるがんの早期発見、全ての保健医療圏におけるがん診療連携拠点病院の整備や医療従事者の育成、がんと診断された時からの緩和ケアの推進、がん患者の就労支援、がん教育などに重点的に取り組んできたところでございまして、こうした取組によりまして、保健医療従事者に加えて、教育、労働関係機関やがん患者等の多様な関係者と連携したがん対策の推進が図られてきたものというふうに認識しております。
 また、本県の75歳未満の年齢調整死亡率は、委員ご指摘のとおり、平成26年の79.5ポイントから直近の平成27年は81.0ポイントと増加いたしました。ただ第1次がん計画を策定した平成19年は85.1ポイントでございまして、その後、年により若干の増減はいたしましたけれども、長期的には全国の傾向と同様に減少傾向にございまして改善が図られているというふうに考えております。
 本県の特徴としては臓器別に見ると、大腸がんが全国に比べて高く、一方で肝がんは低い傾向があるというふうに認識しているところであります。

(2)第2次がん対策推進計画について

 29年度最終年度の第2次がん対策推進計画の28年度までの取組をどう評価し、課題をどのように捉えているか。今後どう改善を図っていくか。

 第2次がん対策推進計画についてでございますけれども、計画期間中、先程も申し上げましたが、がん検診の受診率の向上や全ての保健医療圏域内にがん診療連携拠点病院が整備されたほか、新たに、 岩手労働局やNPO団体等と連携いたしました「がんと仕事の両立セミナー」等の就労支援に係る啓発事業の実施、それからがん患者会、それから家族会を対象とした学習会や情報交換会の開催、対がん協会や教育委員会等との連携によります教育現場におけるがん教育の実施などに重点的に取り組んできたところでございます。
 こうした取組により、先程申し上げましたとおり、従前のがん予防や医療の分野に加えて、新たな課題として掲げましたがん患者の就労支援でありますとか、がん教育などについて多様な関係機関と連携したがん対策が推進されてきておりまして、本県のがん計画について、一定の進展が図られたものというふうに考えております。
 一方、課題といたしましては、計画に掲げております「平成29年度までにがん年齢調整死亡率を20%減少させる」という目標の達成は困難な状況にあるということから、がん検診後の適正受診であるとか、がんの早期発見を推進する取組などの総合的ながん対策を更に推進する必要があるというふうに考えております。こうした視点について、現在策定中の次期がん対策推進計画の中で反映させていきたいと考えております。

(3)乳がんと子宮がん検診率について

 女性特有の乳がんとか子宮がんの検診率がなかなか伸びていないという状況が長年の課題であると認識しているが、具体的に受診率向上に向け、どのような取組をしているのか。

 本県の女性特有のがんの検診受診率は、乳がんが、32.0%、子宮頸がんが、30.3%となっている。一方で全国のがんの検診受診率に比べますと、乳がんが29.7%、子宮頸がんが28.3%ということで、全国の状況よりは高いという状況でございまして順位的にも13位くらいという状況でございます。
 がん検診の受診率向上を図るためには、いわてピンクリボンの会と連携いたしまして、ピンクリボン運動月間等の機会を通じて、がんの正しい知識やがん検診受診の重要性に関する普及啓発を実施しているほか、「がん検診受診率向上プロジェクト協定」の締結企業と連携した普及啓発イベントの開催、受診勧奨リーフレットの作成・配布を行うとともに、市町村、医療保険者等関係者全体による課題検討会を開催いたしまして、受診環境の整備・向上に引き続き取り組んでいくこととしております。
 また、岩手県生活習慣病検診等管理指導協議会の各がん部会、五つのがん部会がございます。そこで、市町村が実施するがん検診の受診率を含めた各指標の分析・評価を行いまして、受診率が低い市町村に対しては、改善に向けた個別の指導・助言を実施し、受診率向上に取り組んでいくこととしております。

(4)働く世代や小児へのがん対策について

 がん患者の若年化する中、40代以上は介護保険の対象となる一方で、働き盛りのそれ未満の年齢の人は対象にならない。全国の自治体では、これらの若い人達への支援に取り組む所も出てきていると聞いている。具体的には兵庫県が実施。本県でも、今、第3次がん計画を検討しておりますので、そこの点を踏まえて一歩踏み込んだ対策が求められるが、御所見を伺う。 

 今委員の方からご紹介のありましたように、がん患者を対象といたします介護サービスとか医療費助成制度については、40歳以上の患者には介護保険、また、20歳未満の患者さんには小児慢性特定疾患による支援制度がございます。一方で、ご紹介がありましたように、20歳から40歳未満の患者さんに対する法令に基づいた支援制度が今ないものとなっておりまして、それが課題となっているという状況でございます。
 また、それらの世代に対する支援については、今委員がご紹介いただいたように神戸市とか横浜市、一部の政令市をはじめとした自治体で始まっているところでございますけれども、県としては、このような先進的な取組の状況を調査するとともに、医療関係者等との意見交換を通じてニーズの把握に努めていきたいと考えております。

(5)AYA世代の患者への対策について

 特にも、AYA世代といわれる10代半ば~30代のがん患者に対し、総合的な対策が求められるが、現状と課題、今後の対応は如何に。

 小児がんとAYA世代、いわゆる思春期世代と若年成人世代、AYA世代というふうに言われていますけれども、AYA世代のがん対策についてでありますが、その課題としては、高齢世代に比べて、患者数が極めて少ないので、がんの種類によっては標準的な治療ガイドラインが確立されていないということとか、小児科と成人診療科との連携が必要であるとか、医療側の課題もあります。
 またその他に、やはりAYA世代については、小児がんと同じように、思春期を経て成人になっていくライフステージに応じた長期的なフォローアップ体制の確立が必要だという風に言われていまして、今年6月に国の方から「次期がん対策基本計画案」(案)が示されておりますけれども、その中でも、この小児、AYA世代に対して長期フォローアップに関する保育・教育・就労・自立に関する支援体制の整備を国が進めるとしておりますので、県といたしましては、これらの取組を踏まえながら、医療関係者をはじめとして、教育や就労関係者と連携した取組を進めていきたいと考えております。

(6)がん専門看護師について

 緩和ケアの推進において、拠点病院に専任の医師やスタッフが必要となる。計画では、がん看護専門看護師と認定看護師数を29年度までに60名と目標を立てているが、達成見通しは如何に。ケア認定看護師数は37人、東北最多であるが課題を踏まえどう取り組む考えか。

 がん関連の看護師数の状況でございますけれども、県では、これまで岩手医科大学が実施いたします緩和ケア認定看護師の養成研修であるとか、認定看護師の教育課程を履修する際の授業料等の支援について行っておりまして、養成に取り組んできております。そして直近の平成29年10月現在で、がん関連の専門看護師、認定看護師合わせて74名が養成されている状況でございまして、目標は達成されているということになっております。

 県としては、引き続き、緩和ケアの認定看護師等の養成に努めるということとしておりまして、また緩和ケアにつきましては、がん診療に携わる医師や看護師をはじめ薬剤師等、全ての医療従事者が緩和ケアの知識と技術を習得することが課題というふうになっておりますので、引き続き、がん診療連携拠点病院が行う緩和ケア研修会の取組を支援しながら、県内の緩和ケアに関する巾広い人材の育成に取り組んで参りたいと考えております。

2 障がい者就労支援について

(1)法定雇用率の引き上げへの対応について

 障害者雇用促進法に定める法定雇用率が平成30年4月1日から2.2%引き上げられるが、障がい者雇用の実態と課題をどう捉え、保健福祉部としてどう取り組むのか。

 法定雇用率については、岩手労働局や商工労働観光部において事業者に対し周知を図るとともに、障がい者雇用に係る理解の促進や雇用の場を確保するための商工団体や経営者団体への要請活動、障がい者の就職・職場定着に向けたセミナーを開催するなど、事業者の障がい者雇用の促進に取り組んでいるところ。また保健福祉部としては、市町村による就労支援サービスを提供しているほか、商工労働観光部、岩手労働局と連携し、各障がい保健福祉圏域に「障害者就業・生活センター」を設置して、就業やこれに伴う日常生活、社会生活上の相談・支援を一体的に行うなど、障がい者の就労を支援しているところ。こうした取組により、岩手労働局が昨年12月に発表した調査結果によると、平成28年6月1日現在の県内民間企業における障害者雇用率は2.07%と、前年比0.08ポイント上昇し、障害者雇用促進法に定める法定雇用率2.0%を上回るとともに、全国平均の1.92%を上回っている状況。
 一方で、委員御指摘のとおり、平成30年4月から、法定雇用率が現行の2.0%から2.2%に引き上げられることから、今後、障がいに関する企業や事業所等の理解促進と、障がい者の能力や特性に応じた就労支援体制の充実がますます重要になるものと考えており、引き続き、労働、教育等の分野と連携しながら障がい者の就労支援に取り組んでいく。

(2)工賃向上に関する現状と課題について

 障害者の経済的自立に向けて、一般就労への取組に加え、非雇用の形態で働く工賃を引き上げる取組が必要。「工賃倍増5か年計画」に基づき、官民一体となった取組を推進していると承知。現状と課題をどう捉え、関係機関と連携して取り組むのか伺う。

 工賃向上に関する現状と課題についてでありますが、平成28年度の県内就労継続支援B型事業所155カ所の平均工賃実績は、月額18,808円であり、前年比で95円増と近年は増加傾向にあるが、県の工賃向上計画で定める目標工賃19,500円には届かなかったところ。工賃の実績からは、時間額単位の工賃は順調に増加しているものの、サービスを利用する障がい者の増加に伴い、1人当たりの就労時間が減少したことが、月額単位の工賃の伸び悩みにつながっている状況が見られることから、事業所の売上を拡大することにより全体の作業量を増加させ、1人当たりの就労時間を伸ばすことが必要であると考えられるところ。
 このため、県としては、引き続き商工部門、農林水産部門とも連携し、就労機会の拡大を図るとともに、共同受注センターの周知や活用の促進、工賃向上支援セミナーの開催などにより、商品開発や販路開拓を支援し、事業所の売上拡大を図り、障害者の自立に繋げていきたい。

(3)共同受注センターの受注実績と県の指導について

 岩手県社会福祉協議会の共同受注センターの受注実績は如何に。販路対策、周知対策としてどう指導していく考えか伺う。

 共同受注センターの受注実績と県の指導についてでありますが、岩手県社会福祉協議会が設置している共同受注センターは、平成27年度において加入事業所が49カ所、受注実績である売上は23,506,097円、平成28年度において加入事業所が74カ所、売上31,909,953円と、順調に実績を伸ばしている。共同受注センターでは、加入している障がい者施設で受注可能な商品・役務の紹介や販売を行うホームページを開設しているほか、センターの職員が直接企業や官公庁に売り込みに行くなど販路の拡大を図っており、県においても物品や役務を調達する際に共同受注センターを活用するよう周知するなど、協力をしている。
 こうした取組により、共同受注センターは順調に実績を伸ばしている状況にあるものと認識しており、県としては、その事業展開に対しては、当面、必要に応じて助言することとし、センターと連携を図りながら、障がい者の就労支援や工賃向上にしっかりと取り組んでいく。

3 岩手県立療育センターの整備状況について

(1)医師、看護師等の専門スタッフの確保について

 先般12日に岩手県立療育センターの定礎式があった。耳鼻咽喉科、眼科、リハビリテーション科の新設を予定しているが、医師、看護師等の専門スタッフの確保の見通しは如何に。

 専門スタッフの確保の見通しについてでありますが、療育センターでは3つの診療科を新設する予定であり、新設する診療科の医師については、岩手医科大学に派遣を要請し、前向きに対応いただいている。現在、診療回数や派遣の形態について検討・調整を進めているところである。
 一方、看護師等については、療育センター整備基本計画における職員配置計画上、療育センター全体で現員を含めて看護師55名、理学療法士等で11名を確保する見込みとしていたところ。
 今般、理学療法士1名の採用が決まり、理学療法士等は必要人員を確保できる見通しとなっているところである。一方で、看護師についてはなお7名の確保が必要であり、引き続き岩手県看護協会等への働きかけや、指定管理者である岩手県社会福祉事業団が運営する他の施設と共同での確保へ向けた取組を行うなど予定人員の確保に努めていくこととしている。

(2)新施設移行への対応について

 今後の課題として、医師等の人材確保に加えて、現在、療育センターに入所している児童の新施設への安全な移送や環境の変化によるストレスの軽減などが重要と考えるが、新施設移行への対応見通しは如何に。

 次に、新施設移行への対応見通しでありますが、療育センターに入所している児童の新施設への移送については、安全かつ迅速な移送経路や移送手順の検討を進めており、1月5日の移送に向けて、移送リハーサルを行うなど、入所児やその家族等に負担がかからないよう対応していくこととしている。
 また、移転後については、入所環境の変化に最大限配慮し、入所児の状態が落ち着くまでの間、臨時的に補助員を配置して、入所児に対する見守り等の支援を強化することとしている。