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県議会報告

平成29年2月県議会 一般質問(平成29年3月1日(水))

2017.03.03

1 持続可能な財政構造の構築と行政経営について

(1) 持続可能な財政構造の構築について

ア 持続可能な財政構造の構築について

 持続可能な財政構造の構築について伺います。
 知事は、先の演述において、「事業効果が高い施策への選択と集中」、そして「歳入確保」を図り財政の健全化に努めると述べております。
公債費が低減する一方、高齢化に伴う社会保障関係費の自然増のほか、東日本大震災から復旧した社会資本の維持管理など、厳しい財政状況が今後見込まれますが、持続可能な財政構造をどう構築するお考えか伺います。

【知事答弁】
まず、持続可能な財政構造の構築についてでありますが、
 本県財政は、歳入面において、県税をはじめとする自主財源の占める割合が低く、国庫支出金や地方交付税など依存財源の割合が高い状況にある。
 そのために、偏在性が少なく税収が安定的な地方税体系の構築を国に求めるとともに、産業振興や雇用・労働環境の整備を進めることで、税源涵養を図り、安定的な税財源の確保を図っていくことが重要である。
 一方、歳出面では、社会保障関係費の増や公共施設等の老朽化に伴う大規模修繕、更新に多額の経費が必要となると見込まれる。
 こうした状況において、中長期的な観点から必要な施策を実施するため、「岩手県公共施設等総合管理計画」に基づき予防保全型維持管理の実施や施設の長寿命化を進めることで、財政負担の平準化を図るほか、「公債費負担適正化計画」の着実な推進による義務的経費の縮減等を進め、柔軟な財政運営を確保していく。
 また、毎年度の予算編成過程において、事業効果が高い施策への選択と集中を一層進め、歳出の徹底した見直しを続けることにより、持続可能な財政構造の構築に努めていく。

イ 市町村の行財政運営支援について

 また、財政力の脆弱な市町村にとっても、同じように将来的な財政負担が生じてきますが、市町村の行財政運営支援をどのように行っていくお考えか、伺います。

 市町村の行財政運営に対する支援についてでありますが、
 県内市町村の平成27年度決算に基づく財政指標では、全ての市町村が実質公債費比率において早期健全化基準を下回っているなど、概ね健全な行財政運営を続けているところでありますが、社会保障関係費の増や公共施設の老朽化に伴う維持補修費等の増など、将来の負担増が懸念されます。
 公共施設等総合管理計画については、県内市町村では、国の要請を受けて、13市町村が既に策定し、19市町村が今年度内に策定の予定となっており、今後、個別施設ごとの具体の対応方針を定める個別施設計画の策定を進めることとしているものであります。
 県としては、いわて行財政コンサルティング等の機会を通じて、財源の確保や有利な起債の活用などについて助言するとともに、中期財政見通しの策定をサポートするなど、将来の負担を見据えた適正な行財政運営が図られるよう支援してまいります。
 また、市町村と連携しながら、国に対しても、地方一般財源総額の確保など必要な財源が確実に措置されるよう、引き続き、要望してまいります。

(2) 国民健康保険の財政運営主体の県への移行に伴う県財政への影響等について

 国民健康保険についてですが、平成30年度から県が中心的な役割を担うこととされていますが、国は、保険者努力支援制度の実施に約1,700億円を確保する一方、財政安定化基金に2,000億円規模を平成32年度末までに確保すると伺っています。本来保険料で賄うのが原則ですが、一方で医療費の増嵩に耐え得る財政基盤の確立が課題です。
 国保に係る財政運営の責任主体が県に移行しますが、将来にわたる県財政の影響をどう見込み、安定的な運営をどのように図ろうとしているのか伺います。
 また、本県の場合、県立病院等事業会計に一般会計から毎年約200億円規模で繰入しています。今後、県立病院を含めた地域医療の提供水準と標準的な保険料等の住民負担のあり方を総合的に検討することが可能な体制になり、県の役割が飛躍的に増大しますが、どのような組織体制で対応するのか併せて伺います。

【保健福祉部長答弁実績】
 まず、国民健康保険の財政運営主体の県への移行に伴う県財政への影響等についてでありますが、平成30年度からの国保制度改革後は、県において国民健康保険に係る特別会計を設置することになるが、その財源はこれまでと同様、市町村が被保険者から徴収する保険料及び定率国庫負担等の公費などであり、県の一般会計における新たな財政負担が生じることは想定されていない。
 また、今般の制度改革においては、毎年約3千4百億円の財政支援の拡充により財政基盤の強化が図られることになっている。
一方で、今後も医療費の増嵩が見込まれることから、県としては、国庫負担率の引上げ等、様々な財政支援策を講じ、財政基盤の安定化を図るよう、全国知事会を通じて、国に働きかけているところ。
 地域医療の提供水準と住民負担のあり方の検討については、来年度、「医療計画」及び「医療費適正化計画」を一体的に策定するとともに、国保事業に係る県内の統一的な運営方針として「国民健康保険運営方針」を策定することとしており、関係部署が十分に連携しながら進めていく。

(3) 組織体制について

ア 今後の組織運営について

 今後の組織運営について伺います。
 地方公共団体定員管理調査結果によると、県の総職員数は、平成28年23,929人、対前年22人減(△0.1%)であり、平成4年をピークに減少しているものの下げ止まり傾向にあります。部門別でみると、教育部門等で減少しているものの、一般行政部門で4,312人、対前年比39人増(0.9%増)、警察部門、公営企業会計部門で微増です。特に一般行政部門においては、ピーク時の平成7年5,326人に対し1,014人減、約2割減少しています。
 今後、防災や地方創生、社会保障など体制の強化が求められるが、どのように組織運営していくのか伺います。

【総務部長答弁】
 まず、今後の組織運営についてでありますが、
 東日本大震災津波発災以降、増大する復旧・復興業務に対応するため、任期付職員や再任用職員を含めた職員の採用を増やすとともに、全国の都道府県等からの応援職員の受入れなど、多様な方策により人員確保に努め、知事部局においては、発災以前の体制から380人程度増員して対応してきたところであります。
 また、昨年9月には、台風第10号災害の復旧復興事業全体の進捗管理を担う「台風災害復旧復興推進室」を設置したところです。
 また、地方創生については、平成27年度に、人口減少に係る具体的な対応策を全庁的に実施していくため、首席ふるさと振興監やふるさと振興監を配置したところであり、社会保障の観点では、改正児童福祉法に対応し、児童相談体制を強化するため、児童相談所の児童福祉司等を計画的に増員しているところであります。
 今後とも、多様な方策により人員確保に取り組むとともに、より一層、事業の効率化や重点化に配慮しながら、様々な県政課題に柔軟かつ適切に対応できる体制を構築してまいります。

イ 臨時・非常勤職員等の任用等について

 また、東日本大震災以降、臨時・非常勤職員を増やしながら多様化する行政ニーズに対応してきています。臨時・非常勤職員及び任期付き職員の任用等については、制度の趣旨に沿わない任用が行われるケースや処遇上の課題も全国で指摘されていると伺っています。
 勤務の内容に応じた任用や勤務条件を確保できるよう取り組むべきと考えるが、所見を伺います。

【総務部長答弁】
 臨時・非常勤職員等の任用についてでありますが、地方公共団体において、増大する行政需要に対応し、臨時・非常勤職員が増加する中にあって、国は、有識者等による「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」を設置し、検討が行われてきた。
 昨年12月、この研究会での検討結果が報告書として公表され、特別職非常勤職員の範囲を限定するとともに、一般職非常勤職員の採用方法等を明確化し、労働者性の高い非常勤職員は一般職非常勤職員として任用すること等が提言された。
 これを受け、国では、地方公務員法等の改正に向けた検討を進めていると承知しており、県としても、法改正の内容や他の都道府県の動向等を十分に踏まえ、適切に対応していく。

(4) 知事のリーダー論について

 知事のリーダー論について伺います。
 先日、ある社長からリーダー論について伺いました。最も重要な能力は「創造的な判断力」であり、「本当の事が言える、のびやかな社風」「実力・能力を評価できる社風」「人を育てる適正配置」、さらに「行動力」こそが真の人を育てると言われ、共感を覚えました。
私の好きな言葉に、「治国之道 在於寛猛得中」があります。「国を治めるコツは、寛と猛、ゆるやかな面と厳しい面のバランスをとる」という意味です。
そこで伺います。
 知事は、様々な重要県政課題が山積する中、限られた職員の能力を引き出すために、どのようなリーダー論で県政を運営されるお考えか、伺います。次に、知事のリーダー論についてでありますが、

【知事答弁】
 県職員が、いわての未来を担い、県政課題に果敢に対応していくためには、県民本位の視点で自ら考え、行動できる職員であることが必要であり、平成20年度に策定した岩手県職員憲章には、県職員としてあるべき職員の姿として、創意工夫を凝らし、柔軟な発想で、「新たな課題に果敢に挑戦」することを信条の一つとして掲げております。
 こうした職員を育成するため、能力向上や育成の観点を重視した研修の実施や人事配置をはじめ、若者活躍に係る施策を庁内の若手職員が主体的に企画立案する取組、業務上の工夫・改善事例を全庁で共有し、優良事例を表彰する「G・I(ジー・アイ)グランプリ」や、優秀な成果を挙げた職員に対する表彰の実施などにより、職員の意欲の向上を図っております。
 また、育児休業や介護休暇を取得しやすい職場環境づくりなど、ワーク・ライフ・バランスにも配慮しながら組織力の向上に努めております。
 今後とも、職員の勤務意欲の向上に意を用い、職員の能力を最大限に引き出しながら、東日本大震災津波や台風第10号災害からの復旧・復興、ふるさと振興の推進など、様々な県政課題に、職員と一丸となって、力強く取り組んでまいります。

2 防災と医療の連携等について

(1) 総合広域防災体制と医療連携について

二つ目、震災復興と防災・医療について伺います。
 はじめに、総合広域防災体制と医療連携についてですが、台風10号災害の時、県立消防学校は岩泉町内の入院患者を内陸部の病院に搬送するためのヘリや救急車、支援部隊等のベースキャンプ機能のほか、災害医療活動の支援機能、救援物資の中継・分配機能を発揮しました。
 一方、ベースキャンプとなった場所は、車庫のような場所で、冬場等の厳しい気候条件での環境面や情報伝達手段のインフラ面など、ハードソフト両面において改善を要すると感じました。
 岩手県広域防災拠点は、広域支援拠点12施設、後方支援拠点22施設が、現在整備されていますが、「岩手県広域防災拠点配置計画」では中長期的課題として、「集中配置型の広域防災拠点整備の方向性」の検討があげられています。
 東日本大震災や台風10号災害等の経験から、災害に迅速に対応するため情報伝達手段を有し、地域医療機関との連携が図られる総合的な防災拠点施設整備が必要と思いますが、県のご所見と、今後どのように検討を進めるか伺います。

【総務部長答弁】
 総合広域防災体制と医療連携についてでありますが、台風第10号災害では、発災翌日の8月31日に広域防災拠点のひとつである県消防学校に、「広域搬送拠点臨時医療施設」、いわゆるSCUを設置し、岩手医科大学などのDMATと連携して、被災地の社会福祉施設入所者や透析患者の受入れを行い、内陸部の病院へ移送するなど、災害時における医療活動の拠点として効果を発揮した。
 広域防災拠点のあり方については、平成24年度に「岩手県広域防災拠点整備構想」を策定した際、議員御指摘の「集中配置型」について、人・物・情報の機能を1箇所に配置するメリットが指摘された一方で、施設自体が被災した場合には一度に全ての機能が失われる可能性や、広大な敷地と多額の整備費用が必要となることなどが指摘されたことから、早期に必要な防災体制を確立する必要性や必要最小限のコストでの実現性に鑑み、「分散連携型」の拠点整備を選択したところ。
 県としては、県内5地域に配置した広域防災拠点の機能の充実を図っていくこととしており、災害応急対策に必要な機能を集約した新たな防災拠点施設の整備については、中長期的な課題として位置付け、引き続き財政支援措置の創設等について国に要望するとともに、各県の状況を調査し、関係機関の意見を聴きながら検討を進めていきたい。

(2) ドクターヘリヘリポートの整備状況等について

 ドクターヘリヘリポートの整備状況等について伺います。
 平成31年9月の開院に向け、いよいよ今年から岩手医科大学の病院建設工事が進められますが、岩手医科大学のヘリポートに県の防災ヘリは着陸困難であると伺いました。
 有事の際は、隣接地の消防学校に着陸し搬送するのでしょうが、一刻を争う状況下では、致命的な初療の遅れとなることが懸念されます。
一分一秒でも早い治療開始が救命率の向上と後遺障がいの軽減に大きな影響を与えることを考慮すれば、防災ヘリも着陸可能となるようにするべきと考えます。
 医療と防災の連携確保の観点から、高度医療機関にドクターヘリと防災ヘリが着陸できるヘリポートの整備について、ご所見を伺います。
 併せて、ドクターヘリが飛べない夜間や気象状況下においては、陸上輸送が想定されますが、ドクターカーの必要性について、ご所見を伺います。

【保健福祉部長答弁】
 ドクターヘリヘリポートの整備状況等についてでありますが、岩手医科大学附属病院のヘリポートは、矢巾町の新病院移転敷地内にドクターヘリの基地として整備されており、構造上は防災ヘリの離着陸が可能であるが、ドクターヘリのフライトドクター等のスタッフが速やかに現場出動するための態勢を常時確保する必要があり、防災ヘリの離着陸は基本的には想定していないところ。
 有事の際は、隣接する県消防学校等の活用を含めて、災害規模や状況に応じて対応していくものと考えている。
 また、岩手医科大学附属病院以外の災害拠点病院においては、現在整備中の2か所を含め、全ての病院で防災ヘリの離着陸が可能となっている。
 いわゆるドクターカーについては、出動できる範囲が限られているほか、医師が出動している間の救急受入体制を整備する必要があり、医療機関の人員体制の確保など、導入にあたっての課題が多いと考えている。
 本県では、高規格救急車を用いた、気管挿管等の医療行為を行える救急救命士による搬送が定着しており、全国的にも、本県と同様に消防機関による対応が多いと認識しているところ。
 県では、引き続き、消防、医療、行政等の関係機関との協議や防災訓練などの機会を通じて、災害時における医療と防災の連携強化に努めていく。

(3) 医大移転に伴う道路整備と二次交通整備について

ア 道路整備について

 医大移転に伴う道路整備と二次交通整備について伺います。
 医大の新附属病院は治療、手術、入院を中心とする1,000床の特定機能病院として整備されると伺っています。また、将来的には岩手県の三次医療ゾーンとして保健医療福祉分野の集約が見込まれることから、迅速かつ円滑にアクセスできる道路が必要となりますが、現在の取組状況と今後の見通しについて伺います。
 また、年間約2万人の往来が見込まれることから、利用者の利便性向上と安全で快適な環境構築のため、二次交通の整備等が求められます。

【県土整備部長答弁実績】
 まず、医大移転に伴う道路整備についてでありますが、医大附属病院前の道路については、矢巾町が開院に向けて4車線で整備を行っているところです。
 また、広域からの新病院へのアクセスルートとなる東北縦貫自動車道の「矢巾スマートインターチェンジ」について、平成29年度内の完成を目指し、NEXCO東日本、県、矢巾町が共同で整備を進めているところです。
 北上川東側からのアクセスルートについては、県道大ヶ生(おおがゆう)徳田線の徳田橋の架け替え整備事業に着手しており、現在、用地補償や関係機関との協議を進めながら、早期の発注橋梁下部工工事の発注を目指しております。
 今後とも、矢巾町などとの連携を図りながら、事業箇所の早期完成を目指し、整備を推進して参ります。

イ 二次交通の整備について

 盛岡や県北広域圏から電車通院される方のためにJRとIGRの円滑な直通乗り入れについて、どのような対応を検討されているのか伺います。併せて、バスを含めた二次交通の整備に向け交通事業者を含めた関係機関との協議状況について伺います。

【政策地域部長答弁実績】
 医大移転に伴う二次交通の整備についてでありますが、JRとIGRの円滑な直通乗り入れについては、矢巾町町議会での議論や昨年の県議会2月定例会でのご指摘なども踏まえ、県においてもIGRに具体的な検討を依頼したところ。
 現在、IGRとJR、矢巾町との間で、IGRの直通乗り入れについて検討を行っているが、JRとの間のダイヤ調整や使用料等の精算、IGRにおける車両運用などについて、さらに検討が必要と聞いているところ。
 また、バスを含めた二次交通の整備については、現在、矢幅駅と医大矢巾キャンパスの間を経由する路線バスが、平日37便、土日8便運行されているが、医大の移転も視野に、矢巾町において「地域公共交通会議」を開催し、交通体系の見直しの検討が進められているところ。
 なお、この会議には、県やバス事業者をはじめ、医大関係者やJR東日本、タクシー事業者、地元利用者などの関係者が参加し協議を行っており、矢巾町ではJR東北本線や路線バス、町の地域内循環バスなどに関し、利用しやすく効率性の高い交通連携と再編を進めるための「地域公共交通網形成計画」を策定しているところである。
 県においては、この計画策定に要する経費に対して、助成しており、医大移転に伴う利用者の利便性の確保に向け、引き続き必要な支援をしていく。

(4) 医師・看護師確保対策について

 医師・看護師確保対策について伺います。
 明治時代、岩手医科大学の創始者である三田俊二郎氏は、県民医療の困窮状態を憂い、私財を投じて私立岩手病院を設立、同時に医学講習所、産婆看護婦養成所を併設、医療人の育成に努められました。
 医科大学の学則の目的に「誠の人間を育成する」と書かれています。同大学では、地域で必要な真の人材を地域で育てるため、地域医療を志す本県出身者を選考する枠を設けています。
 医師養成奨学金による医師養成の今後の見通しと、養成医師の県内定着に向けた取り組みについて伺います。
 併せて、県内看護職員養成施設卒業生の県内就職率向上に向け、どう取り組まれるのか伺います。

【保健福祉部長答弁実績】
 医師・看護師確保対策についてでありますが、奨学金養成医師については、3つの奨学金制度により、これまでに393名に貸付け、これらの養成医師の配置により、平成40年頃には、県内の公的医療機関の必要医師数298人を満たす見込みであり、将来的には医師不足の解消に向かっていく見通しであります。            
 また、養成医師が義務履行の終了後も引き続き県内に定着するよう、円滑な義務履行やその後の県内定着に向けたキャリアアップへの助言や、地域医療への意識の醸成を図ることを目的としたセミナーの開催などを行っているところ。
 看護師確保については、いわて看護職員確保定着アクションプランに基づき、修学資金の貸付枠の拡充、看護学生の病院体験セミナーや県内就職相談会の開催などに取り組んできたところであり、平成28年度の看護職員養成施設卒業生の県内就業率は62.8%と、統計を開始した平成10年度以降、最も高くなっている。
 こうした取組に加え、テレビCM等による広報活動も継続的に行っており、引き続き看護職員の県内定着に向けた取組を進めていく。

3 東日本大震災津波復興実施計画について

(1) 第1期・第2期復興実施計画の総括と第3期復興実施計画への決意について

 三つ目、東日本大震災津波復興実施計画について伺います。
 まず、第1期・第2期復興実施計画の総括と第3期復興実施計画への決意について伺います。
 土地区画整理事業などの面整備と県が整備する災害公営住宅については、復興基本計画期間である平成30年度末までに全て完成する見込みと伺っています。大震災から6年が経過する中、被災者の生活再建にとっては、一日も早い住まいの再建が最も重要です。
 知事は、第1期・第2期の復興実施計画期間6年間をどう総括し、次期の復興実施計画に対しどんな決意で復興事業を進めようとしているのでしょうか。
 併せて、岩手県総合計画に引き継ぐ方向で検討されているようですが、国の計画期間と市町村の復興計画との整合性を図りながら検討すべきと考えますが、
知事のご所見を伺います。

【知事答弁】
 第1期・第2期復興実施計画の総括と第3期復興実施計画への決意等についてでありますが、これまで、復興基本計画に掲げた「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指す姿として、「地元の底力」と様々な「つながりの力」を結集して、県民一丸となって復興に取り組んで参りました。
 平成28年度末には、8割を超える災害公営住宅が完成する見込みであるほか、市町村の面整備事業では、宅地の完成区画が平成28年度末で5割を超える見込みとなっています。
 また、防潮堤などの海岸保全施設の整備は、平成28年度末で約4割の完成見込みとなっていますが、復興道路はかつてないスピードで整備が進んでおり、宮古・室蘭間の定期フェリー航路や釜石港の国際コンテナの定期航路の開設が予定されるなど、交通ネットワークの整備効果が発揮されています。
 さらに、水産業の生産基盤はほぼ復旧したほか、一部再開を含め約8割の被災事業所で事業が再開され、観光入込客数も震災前の8割を超える水準まで回復しています。
 一方、未だ多くの方々が応急仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされており、復興の長期化により、こころと体のケアや将来の不安への対応などの必要性が増しています。
 来年度からの第3期復興実施計画期間においても、被災者イコール復興者一人ひとりの復興を見守り、寄り添った支援を行いながら、三陸のより良い復興の実現に向けて、一日も早い復興を目指して全力で取り組んで参ります。
 平成31年度以降の復興の推進に当たりましては、国が平成32年度までと位置付ける「復興・創生期間」と連動し、市町村における復興の取組の進捗との整合性に十分に配慮する必要があり、復興に関する県の計画については、県民的な議論を通じて策定して参りたいと思います。

(2) 災害公営住宅のコミュニティー形成について

 復興計画の目指す姿のキーワードとして「コミュニティーの回復・再生」があげられます。人と人のきずなや地域コミュニティーを維持することを重点に意識し、住宅再建の意向確認をはじめ移転先の住宅団地の造成等、新たなまちづくりにこれまで取り組んでこられました。
 先日、県民協働型評価推進事業に係る成果報告会が開催され、災害公営住宅のコミュニティー形成に関する課題と情報提供相談窓口の開設等についての政策提言がありました。
 県として、これらの提言を踏まえ、災害公営住宅の効果的なコミュニティー形成の推進に向け具体的にどう取り組む考えか伺います。

【県土整備部長答弁実績】
 まず、災害公営住宅のコミュニティ形成についてですが、2月13日に開催された成果報告会では、災害公営住宅の集会所の使い方や自治会形成のために入居者が気軽に相談できる窓口の設置といった提言を頂いたところです。
 県は今年度から県営災害公営住宅を対象にコミュニティ形成支援事業を開始し、入居者を対象とした交流会や相談会の開催、コミュニティ形成支援員の派遣により、災害公営住宅の入居者間のコミュニティ形成が円滑に進むよう支援を行っております。
 平成29年度もこの事業を継続しながら、提言のありました入居者からの相談に応ずるとともに、入居者自らが様々な課題を自ら解決していけるよう、自治会形成に向けた機運の醸成を図って参ります。

(3) なりわいの再生と担い手確保対策について

 なりわいの再生と担い手確保対策について伺います。
 平成28年8月に県が沿岸12市町村2,028事業所を対象に実施したアンケート調査によると、仮設店舗・事務所で事業再開した事業者のうち約2割の方が本設での再開を予定していないとの結果でした。
 後継者の不在や資金不足などが理由です。本設を希望しない業者もいると思いますが、本設再開や事業継続のための対策を早急に充実・強化しなければ地域経済への打撃は計り知れません。
 また、売上げ状況が震災直前の水準以上まで回復している割合が低いのは、水産・食品加工業と卸小売・サービス業です。
水産加工業や運輸業などにおける従業員不足が特に深刻であり、事業意欲の維持と産業の担い手育成といったソフト面での支援が急務です。
 本設店舗への移行支援や担い手確保のための支援策を強化し、
市街地復興の呼び水として商業機能の集積、回復に向け、さらに一歩踏み込んだ対応が必要と思われますが、ご所見を伺います。

【商工労働観光部長答弁実績】
 まず、なりわいの再生等についてでありますが、県では、本設店舗への移行を希望する事業者に対して、グループ補助金や県単補助金、無利子融資制度などにより商店街や共同店舗等の整備を支援するとともに、専門家派遣などにより経営力向上に向けた取組を支援してきているところでございます。
 このような取組によりまして、山田町の共同店舗が営業を開始し、大船渡市や陸前高田市において、新たな商業施設がこの春に開業を予定しているほか、大槌町でも商店街を形成する店舗の建設が始まるなど、商業施設の再生が着実に進んできております。
 さらに、県では、被災地で新規創業しようとする人に対し、事業計画策定等の支援や、創業時の費用に対する補助を行ってきております。
来年度は、特に、中心市街地で創業する場合の補助を拡充することとしております。
 また、市町村においても、店舗・設備や開業費用等に対する補助、創業相談窓口の設置など、地域の実情に応じた支援を強化してきているところでありまして、今後も、まちづくりの主体である市町村や商工指導団体などと連携し、商業施設の集積と、にぎわいの回復に向けた取組を支援してまいります。

4 いじめ・自殺対策について

(1) いじめ問題対策委員会の開催状況について

 四つ目、いじめ・自殺対策について伺います。
 私が県議会議員に立候補した際、矢巾町内で中学生がいじめを一因とする自殺がありました。震災復興で命の尊さと悔しさ、無念さを経験した本県において、二度と尊い命と輝かしい人の営みが失われることのない社会環境を整備すること、それが政治家の使命であると捉えています。
 昨年末に公表された矢巾町中学生重大事態に係る調査報告書には、調査委員会が認定した事実とそれぞれの立場の方への提言がまとめられています。
 そこでお伺いします。いじめ問題対策委員会が1月16日に開催されたようですが、これまでの開催状況と取組の評価について伺います。
 併せて、この調査報告書の提言内容を県教委としてどのように受け止め、どう実効性のある行動につなげようとしているのか伺います。

【教育長答弁実績】
 いじめ問題対策委員会の開催状況等についてでありますが、本委員会は、「県いじめ問題対策委員会条例」により学識経験者や弁護士など10名の委員で構成する県教委の附属機関として設置したものでありますが、これまで昨年1月に初開催し、本年1月に2回目の委員会を開催したところであります。
 本委員会は、県立学校において、いじめの重大事態が発生した際に、調査を行うことと、県の「いじめ防止等のための基本的な方針」について、調査・審議することを所掌しており、これまでの2回の委員会においては、調査を行う体制整備と、県内におけるいじめの現状及び重大事態等について情報の共有や意見交換を行ったところであります。
 各委員からは、本県の基本方針などに対する、専門的な知見から具体的な対応や、今後の関係機関との連携のあり方等について、意見等をいただいたところであります。今後におきましては、当該委員会の開催を年2回に拡大し、情報共有や意見等をいただきながら、本県のいじめ防止対策の充実に生かして参ります。
 次に、矢巾町の調査報告書の提言内容を踏まえた対応についてでありますが、いじめを一因とした子どもの自殺という痛ましい事案が本県で発生したことについては、今なお痛恨の極みであり、自他の命や人権を尊重する教育を推進し、このような事態が二度と起きないようにするため、31回に及ぶ第三者委員会での調査の結果、矢巾町が公表したそれぞれの提言などを、本県の教育に生かしていかなければならないと考えております。
このような考えの下に、県教委におきましては、本報告書の内容を全県で共有するため、矢巾町の御理解をいただいて、調査報告書を県内全ての学校に提供するとともに、県立学校長会議や市町村教育長会議での情報共有も図ったところであります。
 今後におきましては、矢巾町の調査報告書の提言と併せ、「学校いじめ防止基本方針」の取組状況の調査結果等を踏まえ、いじめの未然防止に向けた具体的な取組の強化や、いじめ認知、早期対応の強化、保護者等への適切な情報提供に努めるとともに、管理職及び教員を対象とした研修内容の充実を図ること等を通じ、自他の生命を尊重する教育を推進して参ります。

(2) いじめによる不登校等について

 いじめによる不登校等ついて伺います。
 平成27年度問題行動等調査によると、県内のいじめの状況は、特にも重大事態の発生件数が17件、内いじめにより不登校となっている重大事態が15件もあり、ここ数年間と比較して大幅に増加しています。
 いじめによる不登校が増加している背景等をどのように把握し、改善に向けどう取り組まれるのか伺います。
 また、いじめられた児童生徒の相談の状況では、「誰にも相談していない」児童生徒が約1割弱、316人(小225、中50、高校29、特別支援12)となっています。このような児童生徒への対応状況と対策はどうなっているのか伺います。

【教育長答弁実績】
 いじめによる不登校等についてでありますが、いじめによる不登校は、子どもたちが学校生活を送る中での個別具体的な人間関係やトラブルなどで起きており、全体的な背景を集約することは難しい面もありますが、その要因といたしましては、各学校等においていじめ認知への理解が浸透してきた結果、不登校といじめの関連がより明確に確認されるようになってきたことも大きな要因であると捉えております。
 また、いじめの相談のあり方につきましては、各学校においては「いじめ防止基本方針」に基づくアンケートや、県教委におきましては「24時間子供SOSダイヤル」など各種の相談窓口を、子ども達や保護者に知ってもらうなど、その周知に努めてきたところであり、本県のいじめの認知件数は大幅に増加しております。
 学校におけるいじめの認知は進んでいるものの、議員御案内のように、いじめられたことを誰にも相談していない児童生徒もいると承知いたしております。
 教職員が日常的に注意深く観察することはもちろんですが、児童生徒、保護者等からの情報がなければ、その認知がなされないという可能性もありますので、児童生徒や保護者が相談しやすい環境づくりに一層努めるとともに、公立学校児童生徒全員に毎年実施しております「心とからだの健康観察」の結果の十分な活用による教育相談の充実などを通じて、児童生徒のいじめによる不登校の防止やいじめの情報の把握の強化に取り組んで参ります。

(3) いじめ解消の基準等について

 平成27年度のいじめの解消率は、全体で98.6%(2,760件/3,227件)と高い割合ですが、解消の基準が学校の判断に委ねられているとの指摘もあります。一定の解消が図られたが継続支援中の案件も467件あると伺っています。
 被害生徒に寄り添った対応や解消の基準について検討する必要があると思いますが、所見を伺います。

【教育長答弁実績】
 いじめ解消の基準についてでありますが、いじめ解消の判断基準につきましては、本年1月に開催された本県の「いじめ問題対策委員会」においても、議員の御指摘と同様に、複数の委員から、いじめ解消率が必ずしも実態を反映していないのではないか、学校判断ではなく明確な基準が必要ではないか等の御意見が出されております。
 文部科学省の「いじめ防止対策協議会」におきましても、いじめが実質的に解消に至っていないにも関わらず、謝罪をもって解消とし、支援や見守りを終了するケースがあることなどが指摘されております。
 いじめの定義につきましては、法によりその定義を示しておりますが、いじめ解消の判断基準についても、国の「いじめの防止等のための基本的な方針」の改定により国が基準を示す方向で、現在、検討が進められていると承知いたしております。県教委といたしましては、国の動向をも見極めながら、被害児童生徒の実情に沿った対応が図られるよう、具体的なあり方を検討していきたいと考えております。

(4) 外部専門家と学校連携によるいじめ防止体制について

 平成26年4月に作成した基本方針では、「いじめ未然防止の観点が重要」とされています。
 重大事案が発生してからの対応よりも、いじめ問題対策委員会をフルに活用し、未然防止対策の具体的な対策を議論する場に活用すべきです。
具体的には、心理や福祉の専門家、弁護士、医師など外部専門家と連携を図り、例えば弁護士による「いじめ予防授業」や医師による「命の授業」などの取組をパッケージにし、各学校で実効的な対策を展開すべきと考えます。
 一方、スクールカウンセラーの配置も必要ですが、専門家任せになってしまう恐れもあります。矢巾町の調査報告書に「全県的に実効性のある研修体制の構築」についての提言がありましたが、学校現場における児童生徒のSOSの受け手は、教職員や養護教諭等が基本であり、先生方へ負担感をもたせないよう配慮しながらも、教職員や養護教諭等への研修や相談指導・体制の充実も重要と考えます。
 具体的ないじめ防止対策に向け、今後どうしていくお考えか伺います。

【教育長答弁実績】
 外部専門家と学校連携によるいじめ防止体制についてでありますが、いじめ問題に適切に向かい合うためには、学校の対応だけではその解決が困難なケースもあり、児童相談所や警察など関係機関との連携が求められる場合もございます。
 このような観点から、県教委におきましては、教育事務所に配置しております在学青少年指導員による学校と関係機関との連携に対する支援や「県いじめ問題対策連絡協議会」における協議を通じながら、いじめの未然防止、教育相談体制の充実及び具体的な問題の解決等に取り組んできているところであります。
 本年度におきましては、総合教育センターにおける教員研修において、外部の専門家を講師に迎え、いじめの未然防止や積極的な認知、学校の組織的対応の強化の重要性についての理解を深める取組なども行ってきております。
 今後におきましても、専門家や関係機関等との連携を強めながら、いじめ問題への取組の一層の充実を図るよう努めて参ります。

(5) 自殺対策について

ア 現状分析について

 自殺対策について伺います。
 知事はふるさと振興総合戦略で、「様々な生きにくさを生きやすさに転換するふるさと振興を進める」とうたっています。
 自殺は、多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであり、その要因をしっかりと分析できないと有効な対策を実施することができません。秋田県では地域介入による自殺対策研究が3年間半行われ、介入した地域において自殺死亡率が47%減少しました。そして、性別・世代、地域の特性によって予防効果は異なることが示されました。
 県は、本県の現状を科学的にどう分析し、どのように評価しているのか伺います。

【保健福祉部長答弁実績】
 自殺の現状分析についてでありますが、平成17年度から5年間、厚生労働省科学研究費補助金により岩手県を含む7地域を対象に行われた自殺対策に関わる介入効果を科学的に検証する研究によると、普及啓発等の一次予防、相談支援やうつスクリーニング等の二次予防、自死遺族支援の三次予防などを複合的に行った本県の介入地域では、介入を行わない地域と比較して、自殺企図の減少効果が明確になるなど、強い予防効果が得られることが示されたところ。
 この研究成果を踏まえ、本県においては、ゲートキーパーの養成、住民への普及啓発、保健師等専門人材に対する研修などを行う、いわゆる久慈モデルという包括的な自殺対策プログラムの全県への普及を図ってきたところであり、本県の自殺死亡率は、平成15年をピークに、長期的には減少傾向にある。

イ 自殺に対する総合的な対策について

 国では、今年の夏に自殺総合対策大綱を改定すると聞きます。自殺は様々な要因が複雑に絡み合って起きており、失業や多重債務などの要因を踏まえ若者の自殺対策や過重労働対策、妊産婦対策等、総合的な対策が必要です。特にも、支援の強化を図るべきは、最も深刻な「自殺のハイリスクグループ」とされる自殺未遂者です。
 県では自殺総合対策本部を設置していますが、分析結果を踏まえ、県が有する経営資源を投入し、総合的、効果的な対策をどんな体制でどう取り組むのか、県のお考えを伺います。

【保健福祉部長答弁実績】
 自殺に対する総合的な対策についてでありますが、先ほど申し上げた研究の成果を踏まえ、岩手県自殺対策アクションプランにおいては、50歳代のいわゆる働き盛り世代男性及び70歳代以上の高齢女性といった自殺のハイリスク者に応じた自殺対策に重点的に取り組むこととしている。
 この取組は様々な分野にまたがることから、知事を本部長とし各部局長を構成員とする岩手県自殺総合対策本部において、課題や取組状況を共有し、関連施策の総合的、効果的な推進を図っている。
 具体的には、関係部局や広域振興局が連携して、事業所訪問によるメンタルヘルス対策の要請、介護予防事業と連携した高齢者支援、児童生徒を対象とした相談窓口一覧の周知、多重債務者対策連絡会議における課題共有等に取り組んでいるところ。
 自殺は、様々な要因が複雑にからみあい、原因を一つに特定できないと言われており、今後も関係部局が連携して、自殺対策を総合的、効果的に推進していく。

ウ 東日本大震災に関連する自殺について

 復興の目指す姿のキーワードに「被災者一人ひとりに寄り添う人間本位の復興」があげられます。沿岸被災地での震災関連自殺は、毎年県内で発生しており、平成28年は6名と前年に比べ倍増しています。
 私たちは個別に寄り添う必要があります。生きる希望を政治は示し、行政が寄り添うべきです。この現状をどう認識し、どう対策を講じるお考えか伺います。

【知事答弁実績】
 東日本大震災津波に関連する自殺についてでありますが、被災地において自殺予防など専門的なこころのケアを行っている「岩手県こころのケアセンター」への相談内容を見ると、身体症状や睡眠の問題等の訴えが多く、その主要な要因は、健康問題や居住環境の変化等によるストレスと考えられており、自殺対策を含むこころのケアに中長期的に取り組む必要がある。
 このため、県では、こころのケアセンターにおいて、医師による相談や専門職員による個別訪問のほか、保健所と連携して悩みを抱えた被災者を支援するゲートキーパーの養成等市町村が行う心の健康づくりに専門的立場から協力しているところ。
 現在策定作業を進めている第3期復興実施計画においても、安心して暮らせる生活環境の実現に向けて、見守りや相談支援、こころのケアなどに取り組むことしており、引き続き、国や市町村、社会福祉協議会等の関係団体とも連携し、被災者一人ひとりに寄り添いながら、きめ細かな支援を行っていく。

5 岩手県ふるさと振興総合戦略について

(1) シェアリングエコノミーについて

 五つ目、岩手県ふるさと振興総合戦略について伺います。
 私は、少子高齢社会の課題解決と東京一極集中を是正し、新たな流れを作る仕組みとして、シェアリングエコノミーの取組が大変有効であると認識しています。
 情報通信白書によれば、世界的市場が現在の1.5兆円から2025年までに33兆円に拡大。国内は、2014年の233億円から2018年に462億円、約2倍に市場規模は拡大すると予測しています。
 昨年に閣議決定された「日本再興戦略2016」において、「シェアリングエコノミーの推進」を打ち上げ、現在、国では遊休資産等の活用とイノベーション創出に向けた検討を進め、今年の秋を目途に必要な措置をとりまとめると伺っています。
 シェアリングエコノミーの取組は、個人が保有する資源の効率的な活用により、観光や定住交流の分野において新たな潜在需要を喚起する可能性を秘めており、本県でも早急に勉強会等を開催し、検討を進めるべきと考えますが所見を伺います。

【政策地域部長答弁実績】
 シェアリングエコノミーについてでありますが、情報通信技術の発展に伴い、インターネットのマッチングシステムを介し、①家や駐車場等の場所、②カーシェア等の乗り物、③レンタルサービス等のモノ、④家事や育児等のサービスなど、使われていない資産や技能等を個人間で分け合い、利用するという、新たな経済活動である「シェアリングエコノミー」が国際的に注目されている。
 国においては、平成28年7月に「シェアリングエコノミー検討会議」を立ち上げ、同年11月には中間報告書を発表し、シェアリングエコノミー推進に向けた検討を進めているところと承知している。
 シェアリングエコノミーは、使われていない資産や技能等の有効活用を促進することで、ニュービジネスを創出する可能性があり、また、カーシェアや遊休不動産の活用など、観光や定住交流の分野にも活用が期待されている。
 しかしながら、諸外国に比べ、国内においては、シェアリングエコノミーの認知度や利用意向、利用率が低く、いまだ黎明期にあるサービスモデルと考えられ、法規制、利用者の安全性・信頼性の確保など、シェアリングエコノミーの推進に向けた様々な課題があると承知している。
 シェアリングエコノミーは、様々な可能性を有していると考えられることから、国の動きも注視しながら、今後、その活用と可能性について、研究を進めていく。

(2) 観光産業における可能性について

 国では2020年までに訪日外国人の国立公園利用者数を1,000万人という目標を掲げ、本県の十和田八幡平エリアが「国立公園満喫プロジェクト」の先駆的モデル地域に選定されました。私はナショナルパークとしてのブランド化と連動しながら、この八幡平エリアを「シェアリングエコノミー特区」として指定してはどうかと思います。
 例えば、空き家や別荘、農家民泊をはじめ、ライドシェアや駐車スペースのシェア、あるいは通訳や育児代行等のマッチングなど、多様な分野で新たなサービスを提供し、誘客促進と情報発信を強化する。
 従来の規制を見直し、生産性向上を図りながら、長期滞在と消費拡大を同時に実現させることで、外国人観光客のみならず東京に流れている人とお金とサービスを岩手に戻し、八幡平エリアをシェアリングリゾートタウンに創造する、観光産業の革新的な取り組みを推進してはどうでしょうか。
 国内外からの誘客を促進し東京一極集中の是正を図る仕組みづくりを進めるため、十和田八幡平の観光資源のブラッシュアップと受入態勢整備の課題をどう検証し、誘客拡大を今後どのように進めて行こうとしているのか伺います。

【商工労働観光部長答弁】
 観光産業における可能性についてでありますが、十和田八幡平国立公園は、雄大な自然、個性豊かな温泉、美しい雪の回廊などを有する極めて優れた観光資源がありますことから、計画的・効果的に受入態勢整備やプロモーションを展開していくことが重要と認識しております。
 このため、本県及び青森、秋田の北東北三県が連携して国に働きかけを行い、今年度、国立公園をブランド化する国の国立公園満喫プロジェクトのモデル地区の選定を受けました。これに基づき、国、北東北三県、地元市町等で構成する協議会におきまして、現状分析や課題、これに対する取組方針を示した十和田八幡平国立公園ステップアッププログラムを策定したところであります。
 このプログラムにおいては、受入態勢について、主要な利用拠点の施設の老朽化や誘導標識、外国語表記の不足などを課題として挙げられていることであります。
 また、北東北三県で、主に外国人観光客のニーズ調査を進めてきているところでございますが、リピーターを確保するため季節ごとの魅力のアピールが必要との指摘がなされているところでもあります。
 今後においても、これらの課題の解決に向けて、ステップアッププログラムに基づき国や地元市町と連携し受入態勢整備を進めるとともに、北東北三県が連携してコンテンツのブラッシュアップや効果的なプロモーションを展開していく考えであります。

6 産業振興について

(1) ものづくり産業について

 六つ目は、産業振興について伺います。
 はじめに、ものづくり産業についてです。
 2月に日米首脳会談が行われましたが、新大統領の保護主義により、日米の経済関係がかつての自動車産業をはじめとする貿易摩擦にならないか懸念している議員の一人です。
 日本で生産された車の37.5%がアメリカに輸出している一方、米国において日本の自動車産業が約150万人もの雇用を創出するなど、かなり成熟した相互依存の関係にあります。引き続き、自由で公正な貿易体制により世界経済の成長が図られていくものと期待します。
 これまで県は、自動車、半導体などを中核産業と位置づけ、地場産業の技術力や競争力の向上に取り組みながら、国際競争力の高いものづくり産業を推進してきたと承知しています。
 今後、岩手県として、より競争力の高いものづくり産業とするため、どのような展望をお持ちか、ご所見を伺います。

【商工労働観光部長答弁】
 ものづくり産業についてでありますが、県では、自動車関連産業や半導体関連産業など、本県経済をけん引するものづくり産業や、今後の成長が見込まれる医療機器関連産業など、幅広い分野にわたり、ものづくり産業の集積と高度化に向けて取り組んできているところでございます。
 こうした中で、特にも自動車関連産業においては、大手部品メーカーなどの立地に対応し、地元企業の参入や取引拡大が促進されてきているほか、
近年では、高付加価値生産に不可欠な、いわゆる基盤技術系企業や研究開発系企業の立地等により、生産技術や研究開発力の蓄積につながり始めるなど、足腰の強い地域産業の形成へと進んできていると認識しております。
 今後におきましても、自動運転やロボットなど新技術分野への積極的な取組を支援し、ILC等も視野に、新たな産業分野への展開が図られ、社会経済環境の変化に的確に対応できる、競争力のあるものづくり産業の振興に取り組んでまいります。

(2) いわて国際戦略ビジョンについて

ア 国際戦略について

 いわて国際戦略ビジョンについて伺います。
 農林水産物を含む県産品の販路拡大や、観光客の誘客を積極的に推進するため本県独自の国際戦略策定について何度か質問してきました。
 今回「いわて国際戦略ビジョン」が示されたことを評価しますが、農林水産物や県産品の販路拡大、外国人観光客の誘客拡大に戦略的に取り組むことにより、どのようなビジョンを描こうとしいているのか、国際戦略の狙いと今後の展開を含め伺います。

【知事答弁実績】
 国際戦略についてでありますが、これまでの2度の万国博覧会への出展などを通じて、本県の県産品や観光資源への関心が高まってきているいま、海外との互恵的、多面的な交流を進めながら、更なる海外展開を図る基本方針として、国際戦略ビジョンを策定しようとするものです。
 現在策定中のビジョンの基本戦略「海外市場への展開」では、重点品目と重点市場を設定し、農林水産物等の岩手ブランド化の推進と継続的・安定的な販路の確保・拡大を、基本戦略の「外国人観光客の誘客の拡大」では、台湾を最重点市場、中国や香港などを重点市場、東南アジアなどを開拓市場に設定し、各市場のニーズに合わせたプロモーションの展開、などを図っていくこととしています。
 これらの取組により、成長が見込まれる海外市場において、本県の商品やサービスの付加価値を高めながら、人や外貨の流入を促進し、本県における産業振興と雇用の確保につなげてまいります。

イ 海外事務所とコーディネータについて

 海外展開においてはコーディネーター等の人的ネットワークの活用が重要です。
 特に中国からの誘客は、大連事務所の位置づけを明確にし数次ビザを積極的に活用し、宮城県等と連携し重点的にプロモーションを展開する必要があります。
 また、台湾とタイに観光コーディネーターを配置し着実に誘客が促進されているほか、北東北三県・北海道ソウル事務所の所長に岩手県の職員が駐在する予定と伺っています。
 特にも韓国については観光客の入込客数がピーク時の3分の1にまで落ち込んでおり、戦略の見直しが必要です。
 アジア戦略における拠点の構築とビジネスパートナーとの連携強化をどのように図りながら、国際戦略を展開するお考えか伺います。

【商工労働観光部長答弁】
 海外事務所等についてでありますが、アジア戦略においては、各市場におけるニーズを的確に捉え、現地の企業等と密接な連携を構築しながら、売り込みを展開することが重要と認識しております。
 このため、これまで、中国には大連経済事務所を、韓国には北海道・北東北三県合同のソウル事務所を設置し、また、台湾及びタイには観光コーディネーターを配置し、現地情報の収集や分析を行うとともに、ビジネスネットワークづくり、現地メディアへの情報発信や現地商談会の開催などによるプロモーションを展開してきたところでございます。
 この結果、中国においては、平成22年の上海万博を契機とした上海大河堂との連携や、広州広之旅国際旅行社との送客に係る相互協定の締結など、いわゆるビジネスパートナーとの連携により、県産品の輸出拡大や観光客の入込増が図られてきているところであり、台湾やタイからの観光客も大きく増加してきているところでございます。
 今後においては、今年度中に策定される「いわて国際戦略ビジョン」に基づき、東日本大震災による落ち込みからの回復が遅れている韓国からの誘客や、中国や東南アジア市場の一層の開拓を図るため、海外事務所やコーディネーターを中心に、ビジネスパートナーの掘り起こしや連携の取組を一層強化するとともに、東北各県や北海道、さらには大使館やジェトロ、JNTOなど現地の政府関係機関等とも連携しながら、誘客及び県産品の販路の拡大に努めていく考えであります。

(3) 農業振興について

ア 米政策の取組の総括と稲作の基本方向について

 農業振興について、まず米政策について伺います。
 今から20年前の平成9年に東和町の農政審議会が、自主的参加方式を表明し、日本で初の減反政策に対する提言として話題となりました。かつての食糧管理制度は廃止され、現行の食糧法のもとでは「生産者の作る自由、売る自由」は認められています。
 国では、需給と価格の安定を目的として、毎年生産数量目標を示してきたところですが、平成26年産では需給が緩和したため、大幅な米価下落を招き、本県では、129億円の影響があったとされています。
 平成30年産以降、行政による米の生産数量目標の配分に頼らない方式となります。米需要の減少を背景に、飼料用米等への転換が進められ、需給が引き締まっているとされていますが、米価は必ずしも安定しているとは言えません。改めて申すまでもなく、米は本県農業の基幹作目であり、地域経済を支える重要な部門です。
これまでの米政策における取組をどう総括し、
本県の稲作の基本方向をどのように考えているのか、知事の御所見を伺います。

【知事答弁実績】
 米政策の取組の総括と稲作の基本方向についてでありますが、本県は、国の示す米政策の方向に即し、農業者の深い理解と協力により、40年以上の長きにわたって需給調整を進める一方、高品質、良食味米の生産に努めるなど、需要に応じた計画的生産に大きく貢献してきた。
 この米政策が、平成30年産から見直されることとなっており、これに的確に対応するため、市町村、農業関係団体等と連携して、今後5か年の水田農業の推進方針や、毎年の生産計画を作成し、これに沿った作付けを進める方向としている。
 こうした対応を着実に推進することにより、米政策の見直し後においても、消費者・実需者に支持されるブランド米や業務用米などの戦略的な生産を進め、国の助成制度を活用しながら、飼料用米等への転換、地域の特性を生かした高収益作物の生産拡大を促進するなど、農業者の所得向上に力強く取り組んでいく。
その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。

イ コメの販売戦略について

 先日、28年産米の食味ランキングが発表され、銀河のしずくをはじめ、県南地区ひとめぼれは22回目、県中地区ひとめぼれは初の特Aとなりました。全国最高水準の品質と食味の実現に向け、品種改良、栽培指導、販売努力を高く評価します。
 平成28年産米の玄米60㎏当たりの相対取引価格の平均をみると、岩手のひとめぼれが13,809円であり、新潟のコシヒカリ(一般)は16,502円、何より驚くのは、北海道の「きらら」と「ななつぼし」が14,000円代、「ゆめぴりか」16,000円代とすべての銘柄で取引価格が本県のひとめぼれを上回っています。
食味の評価と販売価格は必ずしも一致しませんが、銀河のしずく・金色の風に期待します。一方、ブランド米を生産しない地域の生産者の不安を解消するためにも、最終的に米生産者の所得向上につながることが重要です。
 これまでの県産米の販売戦略の総括・評価と、販売戦略をどのように立て、市場の評価と米生産者の所得確保を図っていくのか伺います。

【農林水産部長答弁実績】
 コメの販売戦略についてでありますが、県では、平成27年2月に策定した「いわての美味しいお米生産・販売戦略」に基づき、県オリジナル新品種の早期ブランド化と、新品種を核とした県産米の評価向上や販売力強化に向けた取組を展開してきた。
 これらの取組の結果、
① 「銀河のしずく」は、「米のヒット甲子園2016」での大賞受賞や、参考品種として2年連続の特A評価を獲得し、
② 「金色の風」は、先般、「特A相当」との評価をいただき、また、お米に対する深い見識を持つ五ツ星お米マイスターをはじめ、全国的に評価が急上昇しているほか、
③ 主力品種の「ひとめぼれ」をはじめ、「あきたこまち」「いわてっこ」「どんぴしゃり」では、28年産米の事前契約数量が大幅に増加するなど、期待を上回る大きな成果を上げている。
 今後は、消費者と実需者との結びつきを更に深め、大消費地でトップセールスなど国内外での販売促進活動を広く展開することにより、消費者や実需者の評価を一層高め、高価格での取引を実現するなど、引き続き米生産者の所得向上に力強く取り組んでいく。

ウ 機能性食品の研究開発について

 医食同源といわれるように、農林水産業は健康寿命を延ばし医療費縮減に貢献できる産業です。具体的には、脳卒中や高血圧、中性脂肪・血糖値の改善など、機能性食品の研究開発を産学官が連携し、健康寿命を延ばす取り組みを推進すべきと考えます。
 現在、生物工学研究センターで生物機能を活用した健康維持・増進技術の開発に取り組まれていますが、これまでの成果と今後の取組について伺います。

【農林水産部長答弁実績】
 機能性食品の研究開発についてでありますが、農林水産物の持つ有効成分を活用した健康維持・増進技術の開発は、県産農林水産物の付加価値を高める重要な取組であり、県では、平成22年に策定した「バイオテクノロジー研究推進に係る基本方針」に基づき、生物工学研究センターにおいて、
① イサダに含まれる抗肥満物質の特定、抽出
② ナマコが持つ抗カビ性に着目した口腔カンジタの抑制
③ アワに含まれる抗酸化物質の特定
などの研究に取り組んでいる。
 中でもイサダに関しては、その研究が高く評価され、生物工学研究センターの研究員が国の若手農林水産研究者表彰を受賞し、また、食品関連企業や水産加工業者等と連携し、サプリメントなどの商品化に向けたプロジェクトが進行しており、今後の更なる展開が期待されている。
 今後においては、本年6月を目途に、県内の大学や産業関係団体等で構成する「いわて農林水産物機能性活用研究会」を立ち上げることとしており、産学官の連携をさらに強化しながら、研究成果を活用した県産農林水産物の高付加価値化に積極的に取り組んでいく。

7 鳥獣被害防止対策について

(1) 鳥獣被害防止対策について

 最後に七つ目、鳥獣被害防止対策について伺います。
 ツキノワグマやニホンジカなどによる農産物や人身被害などが恒常的に発生しています。
 地元の猟友会の会長が『山が里に押して来ている』、広葉樹林帯が少なくなったことにより熊の餌場の減少と、耕作放棄地の増加により山と里の境が分かりにくくなったことから、里側の防御体制と抑止力を高めなければならないとのことでした。
 生息状況や被害状況を踏まえ、地域住民等との協力のもと、市町村や関係機関等との連携を図りながら、侵入防止柵の設置や有害捕獲を進めることが急務です。
 実効性のある被害防止対策を報酬等に対する財政措置を含め、どのように取り組むお考えか、伺います。

【農林水産部長実績】
 鳥獣被害防止対策についてでありますが、野生鳥獣による農作物被害を防止するためには、ニホンジカやイノシシなどの個体数を適正に管理するとともに、野生鳥獣から集落や農地を守り、よせつけない対策が必要である。
 このため、県では、市町村で策定している鳥獣被害防止計画に基づき、猟銃、箱わなによる有害捕獲や、鳥獣被害対策研修会の開催等を支援しているほか、近年は、本県で開発した、積雪に強い恒久電気柵の普及に取り組んでいる。
 また、有害鳥獣の緊急捕獲などを担う鳥獣被害対策実施隊の設置を働きかけ、現在29市町村で設置されており、本年中には、全市町村で設置される見込みである。
 こうした取組によって、野生鳥獣による農作物被害額は、平成25年度以降減少しており、今後においても、必要な予算を確保し、市町村や関係機関等と連携しながら、鳥獣被害防止対策の充実強化に取り組んでいく。

(2) 狩猟者の確保、育成について

 また、狩猟者の減少、高齢化が進む中、狩猟免許取得に対する支援強化など、人材の確保、育成にどう取り組むか伺います。

【環境生活部長実績】

【再質問1】国民健康保険の構造的問題解決に向けた取組について

 県が国民健康保険の財政運営の責任と医療サービスの提供責任を担うことになる。財政状況が厳しいからと言って、医療サービスを抑制するだけでは、必要な医療が受けられなくなることから、医療サービスの質をどう保っていくかが重要な課題である。
 医療費の適正化や健康増進をはかりつつ、安定的な財源確保対策と地域ニーズに則した医療サービスの質を守ることが求められる。
 国から地方財政措置が講じられ、実質的に県財政への影響はほとんどないとのことだが、市町村国保の保険財政の状況は、4割以上の市町村で単年度収支差引額が赤字である。運営主体が変わっても、構造的な問題、つまり、高齢者が多いために医療費の支出が高く、低所得者が多いため財政が安定しないといった問題は解決されないままであり、赤字が生じやすい状況は変わらないと思うが、県はどのようにして構造的な問題を解決しようとしているのか改めて伺う。

〔再質問〕【保健福祉部長答弁実績】
 国民健康保険の構造的問題の解決に向けた取組についてでありますが、
 現在、国民健康保険は、市町村が保険者として個別に運営を行っているが、被保険者の年齢が高く医療費水準が高いこと、低所得者が多いこと、財政基盤が脆弱な小規模保険者が多いことなどにより、財政運営に構造的な問題を抱えている状況にある。
 今般の国保制度改革は、毎年約3千4百億円の財政支援の拡充により財政基盤を強化した上で、都道府県が財政運営の責任主体となって、国保運営に中心的な役割を担うことにより、財政運営上のリスクが都道府県全体で分散され、急激な保険料の上昇が抑えられるなど、財政運営の安定化に一定の効果があるものと考えているところ。
 しかし、国民医療費が毎年約1兆円増加している中で、特に医療費水準が高い傾向にある高齢者の割合が大きい国保においては、国の財政責任のもと、将来にわたる制度の安定的運営を図ることが必要と考えている。
 県としては、国庫負担率の引上げ等、様々な財政支援策を講じ、今後の医療費の増嵩に耐え得る財政基盤を確立するよう、全国知事会を通じて、引き続き国に働きかけていく。

【再質問2】知事のリーダー論について

 知事のリーダー論について、改めてお伺いする。
 震災復興をはじめ人口減少・子育て支援、国土強靭化の促進等、山積する県政課題に対し、限られた職員体制で、取り組まなければならない。
一方、人口減少社会や東京一極集中の是正といった課題に対して、これまでにない革新的な取り組みも必要となる。「不入虎穴 不得虎子」という言葉のとおり、勇気と決断を持ちつつ、ある程度の危険を覚悟してやってみないと成果はでない。
 行政はミスが許されない面があるが、失敗を恐れず積極果敢に挑戦する、知的な行動組織を期待するが、知事のリーダー論について改めて伺う。

【知事】
 私も、県職員には、いわての未来を担う人材として、常に県民本位の視点に立ちながら、チャレンジ精神を持って、課題解決に果敢に取り組んでいってもらいたいと考えています。
 職員は、本当に一人ひとりそれぞれであり、元気のいい職員もいますし、また、静かだけれど着実に仕事をこなす職員もいます。そういう一人ひとりの勤務意欲の向上、また、それぞれ生活や家庭もありますので、仕事と生活の調和に配慮しながら、様々な県政課題に私も職員と一丸となって、力強く取り組んでいきたいと思います。

【再質問3】 自殺に対する総合的な対策について

 先月、東京の自殺総合対策推進センター長とお会いした際、「自死率が高いことは不名誉な数字ではなく、総合的な対策を展開し生きやすい・住みやすい地域づくりを展開できる余地があると捉えるべき。」と言われた。
 まさに、科学的エビデンスに基づき、生活上生じる課題、例えば介護や子育て、障害、病気等から、住まい、就労、孤立等まで、暮らしと仕事を「丸ごと」支える総合対策が重要であり、隣の秋田県での地域介入研究の結果で表れているように、総合的な対策により効果が表れる。
 改めて、知事から「生きにくさを生きやすさに」転換させる自殺対策への総合的な取組への決意をお伺いする。

【再質問】【知事答弁実績】
 自殺に対する総合的な対策についてでありますが、
 岩手県の自殺死亡者は、長期的には減少傾向にあるが、平成27年においては、297人の方が自殺で亡くなられているということを重く受け止めている。
 本県では、平成27年3月にアクションプランを策定し、行政、保健・医療、教育、労働など49の関係機関・団体で構成する岩手県自殺対策推進協議会を中心として、あらゆる分野の総力を結集して自殺対策に取り組んでいるところであり、県の組織の中でも、引き続き、岩手県自殺総合対策本部の下、全庁を挙げて総合的に自殺対策に取り組んでいく。

【再質問4】 岩手医科大学移転に伴う道路ネットワーク及び二次交通の整備について

 一昨日の夜開催された、岩手医科大学付属病院の移転事業住民説明会が開催された。新病院は、東洋一、世界一の高規格病院でかつ高度教育病院機能をもつ。三次医療拠点ゾーンをとして岩手県の高度医療を集約する地域と医療機関高度外来機能中心の内丸を繋ぐ縦軸。その周辺には、医療施設のほか、盛岡南IC、矢巾SIC、流通団地、盛岡市場、盛岡南運動競技場を有する。平時には暮らしを支え(医療サービス、産業、観光)、災害時には命を守る(救命救急、防災)という機能を持った道路整備が必要となることから、国、県、市町全体の未来を見据えた道路ネットワークの設計変更が必要となる。改めて所見を伺う。

【県土整備部長答弁】
 盛岡西バイパスの延伸についてでありますけれども、盛岡都市圏の交通の円滑化に資すると見込まれることから、今後、地元市町や関係団体等の考えを十分に踏まえて、国や市町との調整を進めていきたいと考えているところでございます。地元市町や関係団体等が一体となって対応していくことが大事であると認識しておりますので、県としても、国や市町との調整を進めてまいりたいと考えております。