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県議会報告

令和5年度2月定例会 予算特別委員会(環境生活部)(令和6年3月7日(木))

2024.06.14

1 陸上風力発電事業と環境アセスメントについ

〇臼澤勉委員 それでは、私からも、先ほど髙橋はじめ委員が質問しておりました陸上風力発電事業と環境アセスメントについてお伺いいたします。かぶらないようにお伺いいたします。
 まず、現在進行中の陸上風力発電計画におけるアセス手続の実施状況について御説明をお願いしたいと思いますし、その中で明らかになっている課題は何なのかお伺いします。

〇加藤環境保全課総括課長 風力発電事業の環境影響評価手続の現状と課題でございます。
 県内を事業区域とする風力発電事業計画ですが、現在、全体で27件ございますが、近年の状況は、令和4年度に1件、令和5年度8件、令和6年度は1件(後刻「令和6年は1件」と訂正)の新規の届け出があったところです。
 令和6年度は、このほか、前年度に届け出のあった事業のうち、環境影響評価手続の第2段階に進んだ事業が4件ございました。
 これまでの事業の中には、イヌワシの重要な生息地と事業区域が重複していることが判明し、計画の抜本的な見直しを求められた事業や、調査方法や環境保全措置の検討に時間を要し、想定していたアセス手続のスケジュールが大幅におくれている事業、地域にとって重要な景観への影響を指摘する知事意見を受けて、事実上、次の手続段階に進むことを断念した事業など、立地選定での適切な配慮がなされず、その後の対応に苦慮する例が見られるところです。
 こうした事例の背景には、事業計画の初期段階で適切な立地選定を行う手法が徹底されていないことや、環境保全上、立地場所に含めることが適切ない区域についての認識が十分ではないということがあると考えられます。

〇臼澤勉委員 今、27件の計画が県内で進められているということでございますが、アセスの手続を進めていく配慮書とか方法書、準備書ということで、それぞれ段階、ステージを進んでまいりますが、知事の意見書等々を出す中において、事実上の撤回とか再検討が必要だというのは何件ぐらいあるものでしょうか。
 また、その事業の総出力数みたいなものがもしわかるのであれば、お伺いします。

〇加藤環境保全課総括課長 抜本的な計画の見直し等を求めている案件というのは、最近であれば5件ほどございます。現在、配慮書段階にあるものとしまして3件、方法書段階にあるものとしては2件ということでございます。
 総出力数の合計につきましては、今、手元での集計が難しくて、大変申しわけありません。

〇臼澤勉委員 令和5年で8件と言いましたか、いろいろと手続が進んできた中において、5件程度、抜本的な見直し等々を求められる、事実上できないような状況になっている案件があるのかなと思っておりました。
 県の立場は再生可能エネルギーを推進していくという立場、それから、一方では、環境保全のバランス、保全を守るという相反する調整をする難しい立場であるというのは私も重々に承知しておりますが、そこら辺のお互いの利益が相反するような関係を具体的にどういった方針でバランスを図ろうとしているのか、お伺いいたします。

〇加藤環境保全課総括課長 まさに風力発電事業を促進もしなければなりませんし、また、環境配慮しなければならないという両面があります。ということで、規模の大きい事業につきましては、環境アセスメント制度がありますで、風力発電につきましては、商業用のものにつきましては、ほぼほぼ環境アセスメントが適用になりますので、この環境アセスメントを通じて環境に配慮した事業を促進していく、確保していくということになります。

〇臼澤勉委員 県のほうのKPIの指標、再生可能エネルギーによる電力自給率というものを見させていただきますと、2021年の令和3年、再生可能エネルギー電力自給率38.6%、これを2024年には51%まで持っていく目標になっております。2026年には56.2%ということで、これまでの自給率を1ポイントぐらい上げる目標値が一気に上げていく計画になっております。
 これをそれぞれの種類別に分解してみると、2021年、令和3年は風力が占める割合は9%程度だったものを2025年には22%まで持っていくというような目標になっている。つまり、風力発電事業を県内多く進めていくというようなことで私は理解しております。
 そういった中において、先ほどもレッドゾーンの話とかもありましたけれども、そこら辺の事業者との調整もしながら、目標値、KPIとアセスのバランス、整合性、どのように考えているのか。ここは通告しておりませんが、一連の大きな流れの考え方ですので、県のお考えをお伺いいたします。

〇加藤環境保全課総括課長 KPIについて、今、資料が手元にございませんので、大ざっぱなところで説明させていただきますと、2030年に風力の導入目標がそもそもありまして、それが大体15億キロワットアワーと承知しております。
 環境アセスメントにつきましては、委員から先ほど御説明がありましたとおり、各段階がありまして、配慮書、方法書、準備書、評価書というステップがありまして、後の方に行くに従って実現可能性が高まってきているということでございます。現状、既に運転開始されている事業もございます。また、実現可能性が非常に高い、評価準備書が終了している事業もございまして、現状、これらを積み上げると、先ほど申しました2030年度目標15億キロワットアワーを上回るような状況にございまして、風力発電につきましては、現在計画がかなりありまして、目標を満たすような状況にあると考えてございます。

〇臼澤勉委員 ある程度目標を満たしているようなペースで上がってきているという中だと理解いたします。風力におけるアセスの一番のポイントがイヌワシのバードストライクの問題だと理解しております。先ほども北海道のクマタカの実例とかを御紹介されておりましたけれども、お伺いいたしますが、県内におけるバードストライクの発生状況、そして、一方で、イヌワシのつがいの繁殖状況、どのようになっているのかお伺いいたします。

〇酒井自然保護課総括課長 まず1点目、バードストライクの関係でございますけれども、本県におきましてバードストライクが確認されましたのは、平成20年に釜石市の釜石広域ウィンドファームで確認がされておりますけれども、以後は確認されていないという状況でございます。
 次に、2点目、繁殖率の関係でございますけれども、イヌワシの繁殖率に関しましては、第1期アクションプランの目標値のほうに掲げさせていただいているところでございまして、令和4年度の目標値が14%に対しまして実績値が3.8%ということで、目標値を下回っている状況になってございます。

〇臼澤勉委員 今の3.8%、前年が7.7%から3.8%と大幅に繁殖成功率が下がっている要因、あるいは、課題をどう捉えているのか。これが風力発電にどう影響するのかお伺いいたします。

〇酒井自然保護課総括課長 繁殖率が低いところの原因でございますけれども、野生鳥獣ということで、なかなかはっきりした原因は明らかになっていないところでございますが、専門家から意見によりますと、ノウサギなどの餌の不足であったりとか、大雨、大雪、防風といった気象変化による巣の損傷、あとは、熊によるヒナの捕食といったような影響が考えられるのではないかと伺っているところでございます。

〇臼澤勉委員 風力発電との影響というところについてのコメントがちょっとなかったんですけれども、そこについてはいかがでしょうか。

〇酒井自然保護課総括課長 直接の影響という部分からいきますと、事故という部分では、先ほどのバードストライクの関係については、近年は発生していないところでございます。
 今動いているものに関して、直接的な影響という部分に関しては、まず、考えられる影響でございますけれども、専門家から意見という部分でいきますと、風力発電施設が営巣地の近くにあることによって、イヌワシ自体が営巣活動を放棄してしまうといったところであったり、あとは、山の尾根などがイヌワシの重要な餌場になっているということで、こういったところに風力発電がもし建設されてしまうと、餌場が失われてしまうといった影響が考えられるということで専門家からは聞いているところでございます。

〇臼澤勉委員 そういった中において、この3月にレッドゾーンの設定をされるということを新聞報道でお伺いいたしました。まず、このレッドゾーンを設定する基準というか、先ほどいろいろ砂防指定とか地すべり、保安林等々、あるいは、イヌワシの重要生息地域ということで紹介がありましたけれども、これらのエリアは全体でどのくらいのエリアを面積的に指定する予定なのか。また、この設定の根拠、それから、設定プロセスにおいての地域住民や関係者との意見、調整はどのようにされているのかお伺いします。

〇加藤環境保全課総括課長 まず初めに、どの程度ということでございますけれども、概略を御説明しますと、イヌワシの重要生息地として今考えておりますのは、県内の森林面積の3分の1程度ということでございます。また、その他、自然環境保全地域ないしは自然公園、保安林、そういったものについては、そもそも指定されているエリアをそのまま採用しようとしているものでございます。
 ネガティブゾーンの設定の基準でございますけれども、具体的には、先ほど申しましたとおり、自然公園、保安林など自然環境の保全や土砂災害防止のため法令に基づき指定され、開発行為が制限されている区域のほか、国内希少野生動物であるイヌワシの重要な生息地などを検討しているということでございます。
 これらの区域は、従来からアセス手続の知事意見において、事業区域から除外を検討するよう求めておりまして、新たに事業計画を立案しようとしている事業者にあらかじめ示すことによって、環境保全上のリスクが高い区域を避けた事業計画の立案が可能となり、アセスの調査期間の短縮ですとか環境保全措置のコスト縮減を図ることができると考えてございます。
 この基準、どのように関係者と共有しているかということでございますけれども、これにつきましては、先ほど申しましたとおり、アセスの意見というところで出てきた場所でございますので、これまで4回にわたり環境アセスメントを審査する岩手県環境影響評価技術審査会の意見を伺いながら検討を重ねてきたものでございます。最終案を諮った上で、3月中をめどに改正をするということにしてございます。

〇臼澤勉委員 レッドゾーンという面的な指定のように私はイメージするんですけれども、レッドゾーンが発表されるとすごく強力な、事業者にとっては規制が大きくなってくるのかなと思います。
 保安林だとか公園区域内で本来建てられないようなところ、不適切なところというような表現もありました。あえて聞きますけれども、今回指定されるレッドゾーンエリアで、既に風力発電が建って稼働しているようなエリアはあるんでしょうか。

〇加藤環境保全課総括課長 あるかないかということで言いますと、ございます。

〇臼澤勉委員 具体的にお伺いします。どういったところであって、なぜそこは建設されているんでしょうか。

〇加藤環境保全課総括課長 具体的にということでございますけれども、場所的には、宮古、岩泉エリア等々があると承知しております。
 なぜ設置されているかということにつきましては、環境アセスメントを通じまして、事業者がその計画をある程度変更いたしまして、環境に配慮するということで環境アセスメントが終了しているものでございます。

〇臼澤勉委員 そこの当該エリアは、恐らくアセスの手続は当然踏んでいるでしょうし、知事の意見書とかも当然出ていると思うんですよね。余り時間もないので、このくらいにしますけれども、私が今回思っているのは、事業者にとっても非常に規制が厳しくなる。一方で、県のほうで再生可能エネルギーを進めるという中で、お互いに守るほうと進めるほうの両者の合意、そして、地域住民からの理解、あるいは、地域住民からは誘致、投資促進の要望もあるような声もよく聞くわけでございまして、三者のバランスをいかに保っていくのかといったところが求められてくると思います。
 改めて、そこら辺のネガティブゾーンの規制と、事業者、あるいは地域住民への配慮、どのように県として進めようとしているのかお伺いします。

〇加藤環境保全課総括課長 非常に規制が厳しいという御指摘がございましたけれども、今回のレッドゾーンにつきましては、そこの地域に風力発電の立地を禁止するとか、制限をするということではございません。ここで事業計画をするとアセスに非常に時間がかかる、コストがかかる。ですので、前の段階で影響のないところに建てたほうが事業者にとってもメリットがありますよということで、事業者に対してあらかじめ御案内をするものであります。
 もし仮に、そのリスクを考えてもレッドゾーンの中でやりたいということであれば、それは当然、環境アセスメントの手続の中で、今までどおり意見を述べていくということになろうかと思います。

〇臼澤勉委員 いずれ事業者の側も事前に調査をして、何年もかけて、あるいは投資もしながらやっているという中において、レッドゾーンを今回、3月に指定を進めていくことになれば、ある程度事業に着手している、調査をしているようなところへの配慮も含めて考えなければいけないのかなと思って質問させていただきました。新たな規制をかけるわけではないというような感じの答弁でございましたので、適切に運用していただければと思います。ありがとうございました。

〇加藤環境保全課総括課長 先ほど臼澤委員の御質問の中で、私の答弁で、環境影響評価のアセスの件数につきまして、令和6年度1件とお伝えしましたが、まだ令和6年度は終わっておりませんので、令和6年は1件ということで訂正させていただきます。