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県議会報告

令和5年度9月定例会 決算特別委員会(農林水産部 第1部(農業関係))(令和5年10月31日(月))

2023.12.09

1 生産者の所得向上対策等について

(1)農業産出額と農業所得のこれまでの推移と評価

私からも、農家、生産者の所得向上対策等についてお伺いいたします。
 農林水産部は、それぞれ政策を講じながら農家の所得向上対策を一丁目一番地に取り組んできていると理解しております。今、佐藤ケイ子委員からも、冒頭、所得対策の話もありましたので、簡潔に聞いていきますけれども、まず、農業産出額と農業所得のこれまでの推移と評価、それから、特にもお米に関して、全国、東北比較でどう評価しているのかお伺いいたします。

〇伊藤担い手対策課長 農業産出額と生産農業所得についてでございますけれども、本県の農業産出額は、平成以降、減少傾向にございましたが、平成22年から増加傾向になりまして、最新の値となります令和3年につきましては、平成22年と比べ約2割増の2,651億円で、全国で10位、東北で2位となってございます。
 また、生産農業所得につきましては、平成以降、減少傾向にございましたけれども、平成21年から増加傾向にありまして、令和3年は平成21年と比べ約5割増の969億円、全国で11位、東北で2位となっております。
 それから、米の産出額につきましては、平成22年以降、微増傾向にございましたが、令和3年は米価下落の影響によりまして、平成22年とほぼ同額の460億円、全国で9位、東北で5位となってございます。
 なお、米の生産農業所得につきましては、品目別の統計データが公表されておりませんが、令和2年に国のデータ等をもとに県で試算したものがありまして、それによりますと、本県の米の10アール当たりの所得は約2万円、全国や東北平均と比べて低くなっている状況にございます。

(2)専業農家農業者の農業所得

 農業産出額の中には畜産も入っているから、それを分解してみていかないとなかなか難しいかと思います。あとは、東北と比較した場合に、10アール当たりの米の所得が、今お話がありましたとおり、私の手元では0.6ということで、本県の米農家の所得はなかなか厳しい状況なのかなと捉えております。
 一方で、農業所得の数字をまた別の統計で見ますと、農業所得が令和3年で115万2,000円で、農業粗収益に見ると15.9%ということで、本県の場合も、これは年々下がってきているということで、厳しい今の実態なのかなと捉えております。
 あえて聞きますけれども、この農業所得といったときに、多分兼業農家も含まれている数値かと思うのですが、専業農家であったり、あるいは認定農業者の所得の水準を県として把握されているのか、あるいは、このくらいの所得があればやっていけるという額を県としてどう捉えているのかお伺いします。

〇伊藤担い手対策課長 専業農家農業者の農業所得についてでございますけれども、農林水産省の統計によりますと、農業経営体1経営体当たりのデータがございまして、これは都道府県ごとに公表されてはございませんが、東北管内のデータを見ますと、まず、事業収入でございますが、個人経営体で約560万円、法人経営体で1億5,000万円、全体を見ますと約830万円となってございます。
 家族労賃を含まない農業所得を見ますと、個人経営体が80万円、法人経営体が約790万円、全体で約90万円というデータになってございます。
 それから、県では、認定農業者の制度がございますけれども、その中で、他産業並みの所得を確保することを目標に掲げてございまして、主たる従事者1人当たり420万円、従たる従事者の所得を加えた全体では、農業経営の所得として570万円程度に設定しているところでございます。

 560万円、570万円に設定しているということですが、これまでの本県の基幹的な農業生産者の所得は、昨今の価格高騰であったり、そういった部分においてしっかり確保できているのか、県として問題認識を持っているのかお伺いいたします。

〇伊藤担い手対策課長 昨今の価格の動向につきまして、それを踏まえたデータはございません。

(3)農産物への価格転嫁の現状と課題

いろいろな県の政策を進めていく上に、私は、兼業と専業を分けて、あるいは米とか畜産を分けながら、丁寧にデータをとりながら、把握しながら対策を講じていく必要があろうかと思っております。
 農業生産資材価格指数は、令和3年比で見ると121%とふえている。ただ一方で、農産物価格指数は、全国調査であっても、令和3年から108%ということで、決して農産物価格への転嫁がしっかりと進んでいない状況にある中で、県内の価格転嫁の状況はどのように進んでいるというか、課題認識を持っているのかお伺いします。

〇佐々木農業振興課総括課長 生産コストの高騰分に係る価格転嫁の状況と課題でございますけれども、県内におきましては、今般、全農岩手県本部が決定しました令和5年産の米の概算金につきましては、前年産に比べまして60キログラム当たり1,400円上昇しておるほか、生乳の取引価格が昨年11月に引き続き、本年8月からさらに引き上げされているものでございますが、農業生産資材価格の高騰は継続している状況でございます。
 適正な価格形成に向けまして消費者理解を醸成していくことが重要と考えておりまして、県としましては、関係機関、団体と連携しながら、消費者の皆さんに適正価格への理解の醸成を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

(4)酪農経営体の現状把握

お米についても、消費者が実際に買う、例えば10キログラム当たり3,500円とかという場合においては、流通コストとか中間流通マージンがかかってくるわけですけれども、実際の農家の方々が販売する価格は、大体68%とか7割ぐらいを切るようなところ。そこの中で、農業者の手取りは3割を切るぐらいの実態なのかなと捉えております。
 そういった中で、例えば10キログラム当たり2,400円、先ほどの米の60キログラム当たりで1万2,400円とか1万2,900円何がしという部分がありましたけれども、生産コストが7割ぐらいを占めているわけですね。地代であったり、あるいは資材費、肥料、農薬。そういった部分にこうやってコストがかかってくれば、当然、手取りの部分も圧縮されてきてしまう。
 先ほどの佐藤ケイ子委員の質問にもかぶるんですけれども、そこら辺の実態をしっかりデータとして把握しながら、対策、そして財政当局にも、そういったデータに基づいた現状をしっかりと訴えながら、現場の生産者、次の農業をやろうという子供たちというか担い手が、夢を持ってできるような対策を今やっておかないと、きのうの商工労働観光部の審査でもいろいろ議論になりましたけれども、最低賃金の話とかもありましたが、やはり実際の農家の方々の所得確保のためにも、しっかりと対策を、未来に向けた投資をしていく。今は耐え忍ぶ時期に来ているかと思いますので、しっかりとそこら辺の対策を講じていただきたいとお願いしたいと思っております。
 それから、この前、農業の現状把握のために、全酪農経営体を訪問活動したということで聞いておりましたけれども、巡回した現状の具体的な内容と成果をどのように捉えているのか、お伺いしたいと思います。

〇長谷川農業革新支援課長 酪農経営体の訪問活動についてでありますけれども、県では、飼料等の資材価格の高騰などにより大きな影響を受けている酪農経営体の経営課題に応じた支援を強化していくため、農業改良普及センターにおいて、関係機関、団体と連携しながら、酪農経営体への訪問を行ってきたところです。
 酪農経営体からは、飼料や肥料の価格高騰の影響が大きいとの声や、自給飼料の増産、乳量の増加、乳質向上のための飼養管理改善への要望が多く寄せられたところです。
 そういうことで、自給飼料の増産技術とか乳量の増加等を図るための飼養管理技術について情報提供するほか、継続的な指導を希望する約80戸に対しましては、経営体の課題に応じた指導を実施しているところでございます。
 引き続き、関係機関、団体と連携しながら、酪農経営体の経営安定が図られるように取り組んでいきます。

(5)具体的な取組み方策

資材価格高騰の影響の聞き取りとか必要な対策の御要望を聞いて回ったということで、本当にそこら辺は敬意を表したいと思います。
 ただ一方で、農業改良普及センターや関係機関の皆様と一緒に連携しながら取り組んだと思いますけれども、具体的な酪農家の巡回指導の結果をどう生かしていくのか。具体的な対策が現場サイドから求められております。
 今後、農業普及員の活動をどう具体的に取り組んで、今の窮状を打破するような取り組みをするお考えか、お伺いいたします。

〇長谷川農業革新支援課長 全戸訪問は現在進行中でございますけれども、今後の活動に向けましては、直ちに成果の出ない技術指導の内容もございますので、農家のニーズに応じて要望を聞きながら、次年度の対策につなげていくような活動を継続していきたいと考えております。

(6)農業研究センター等の取組み

何となく具体的なものが見えないと思うんです。そして、今、本当に厳しい中において、農林水産部が所管している各機関が結集して、今の対策に取り組んでいただきたいと思っております。
 そういった意味では試験研究機関の役割も非常に重要と考えているところでありますが、今回の生産資材価格高騰あるいは農業経営への影響などを、農業研究センター等、私の記憶では分析、研究している機関がたしかあったと思うのですけれども、農業経営安定に役立てる具体的な取り組み、成果は、どのように取り組んで、お考えになっているのかお伺いしたいと思います。

〇竹澤農業普及技術課総括課長 生産資材高騰等に対応する農業研究センター等の取り組みについてでございますが、今、委員から経営分析といったお話もございますけれども、まずもって、基本的には技術対策ということで取り組んでおるところでございます。
 具体的には、農業研究センターでは、これまで、生産者が土壌分析を簡易に行うことができる手法ですとか、発酵豚ぷんによる化学肥料代替技術など、化学肥料の使用量を低減する技術を開発しているほか、畜産研究所では、飼料用米を活用した乳牛への飼料給与技術やライ麦と飼料用トウモロコシの二毛作など、自給飼料の増産技術の開発に取り組んできたところでございます。
 こうした研究成果につきましては、肥料コスト低減技術マニュアルですとか飼料等高騰対策に活用できる研究成果集として取りまとめ、普及センター等が生産資材高騰対策として技術指導等に活用しているところでございます。
 今後とも、生産者の所得が安定的に確保されますよう、普及センター等と密接に連携しながら、現場ニーズに対応した研究開発を進めてまいります。

〇照井農政担当技監 先ほど委員から御質問ありました普及センターの巡回をどのように生しているかにつきましては、普及センターや県庁の関係課、それから農業団体にも入っていただきまして、月1回か2回、酪農経営体の支援会議を開催してございます。そういう中で、それぞれ訪問した内容や課題等を共有しまして、次の対策に生かしていくということでございます。
 これから農家の決算期を迎えてきますが、農業普及センターで重点指導している農家がございます。そういう方々の決算状況も踏まえながら、現状と今後の課題について共有して、対策を検討していきたいと思っております。

2 農業大学校における担い手育成

(1)農業大学校の学習環境改善

 生産者、現場の今の窮状の声をしっかりと聞きながら対応していただきたいと思います。
 時間がないので、最後の農業大学校の学習環境改善への認識等を聞きたいと思います。
 人口減少の中で、本県は次の担い手対策にしっかりと取り組んでいく必要があろうと思っております。私が聞いている中では、エアコン等の設備が不十分で授業になかなか集中できないというような声も届いております。しっかりとそこら辺の環境整備に取り組んでいただきたいと思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。

〇竹澤農業普及技術課総括課長 農業大学校における環境整備でございますけれども、学習環境につきましては、これまでも、スマート農業などの先端技術を習得できる施設等の整備を行ってきたところでございますが、委員御指摘のとおり、一部校舎では、もう築後50年以上たっているということで、教室にもエアコンがないといった状況にございます。
 一方で、ことし特に猛暑であったわけでございますけれども、例えば現場の研修施設等、エアコンが設置されている施設で授業を行うといった対応をしてきたところでございます。
 とはいえ、教室へのエアコン整備とか、そうした環境を改善していくためには、計画的に整備していくことが必要だと認識してございますので、必要な財源の確保に努めながら、学習環境のより一層の改善に努めてまいりたいと考えております。

(2)就農支援リスキリング

ぜひ、岩手県における就農率を向上させる上でもしっかり取り組んでいただきたいと思いますし、就農支援リスキリングのための対策、取り組みも農業大学校の果たす役割が大きいと思います。最後にそこら辺の御所見を聞いて、終わりたいと思います。

〇竹澤農業普及技術課総括課長 農業大学校におけるリスキリング等の取り組みについてでございますけれども、これまでも、学生を対象とした教育のほか、農業に関心を持つ幅広い年代の方々を対象に、さまざまな研修等をしてきたところでございます。
 引き続き、今後とも、例えばスマート農業、6次産業化、GAP等、現役農業者が新たな知識や技術を学び直すことができるような公開セミナーですとか研修を開催しながら、農業に関心を持つ方々が、農業の知識や技術などを幅広く学び習得できるように、研修内容の充実に努めてまいりたいと考えております。