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県議会報告

令和5年度9月定例会 決算特別委員会(農林水産部 第2部(林業・水産業関係))(令和5年10月31日(月))

2023.12.09

1 いわての森林づくり県民税

(1)県民税の活用と基金残高

それでは、私から大きく2点についてお伺いいたしますが、まず、県民税の活用についてお伺いしたいと思います。
 令和5年は4期目の3年目を迎えることになっておりますけれども、まず、県民税の活用と基金残高の見込み、令和4年度の実績等をお伺いしたいと思います。

〇嵯峨参事兼林業振興課総括課長 いわての森林づくり県民税の活用につきましては、令和4年度は、ハード事業である公益的機能の高い森林へ誘導する間伐や公益上重要な伐採跡地に植栽などを行ういわて環境の森整備事業で7億4,300万円余、ソフト事業である地域住民が主体となって里山での間伐等を行う県民参加の森林づくり促進事業で1,500万円余など、11の事業で合計11億9,900万円余を執行したところでございます。
 また、いわての森林づくり基金の令和4年度末残高は19億6,785万6,000円となっております。

毎年、県民の皆様から7億円ほどの浄財をお預かりしているわけでございます。ただ、今も御答弁いただいておりますが、19億6,780万円をまた繰り越すというか執行残があるわけです。
 監査委員にお伺いしたいのですけれども、毎年、県民からいただいている税金を、いろいろな理由があったということでは理解しております。ただ、この状態について、監査委員としてどのように受けとめているのかお伺いしたいと思います。

〇五味監査委員 不用額でございますが、基金ということで事業として蓄えがあって、不用額に関しては、年度年度で計画を立てて予算を立てているわけでございますので、どういう理由であるかはちょっとわかりませんが、その予算が使えなかったということでございます。
 そういった意味では、一般論として、不用額に対してどういう評価をするかというのは、まさしく個々の金額が、どういう計画に基づいて立てられて、それがどういう経緯で使われなくなったのかを一つ一つ精査していかないと、一般論としてはなかなか評価できないものとは思っております。
 ただ、基金そのものの目的からすれば、やはりそれは有効に活用すべき資金でありますので、そういった予算を立てるとき、それから、その活用段階において、丁寧に考えながら執行していくべきものだとは考えております。

(2)使途拡大の検討状況

本当に、まさしくそのとおりだと思います。ただ、そういった中でも、県当局の皆様もいろいろと御努力されているというところは、私も認識しております。令和4年度も、たしか4回ほど事業評価委員会を開催しながら、使途拡大の検討も進められていると聞いておりますが、令和4年度の検討状況等をお示しいただきたいと思います。

〇嵯峨参事兼林業振興課総括課長 使途拡大の関係でございますが、令和3年度からの第4期におきましては、ハード事業では、公益上重要な伐採跡地への植栽や枯死木除去、ソフト事業では、木育の推進等につながる県産木材の活用や森林公園の機能強化などの使途拡大を行ったところでございます。
 これらの使途拡大した取り組みの令和4年度の実績は、伐採跡地への植栽が242ヘクタールの施工地を確保して整備を進めているほか、枯死木除去では、倒木のおそれのある松くい虫被害等による枯死木を15カ所で除去したところでございます。
 また、木育の推進等につながる県産木材の活用では、いわて子どもの森や保育所など18の施設に木製玩具や木製遊具など県産木材製品を導入したほか、森林公園の機能強化では、八幡平市の県民の森など3カ所の森林公園に木育スペースを設置するなど、事業を着実に進めているところでございます。

(3)森林環境譲与税の取組み成果

本当にさまざま有効に活用していただくように、当初のころとはまた状況が変わってきていると思いますし、先ほども吉田敬子委員の質疑の中で、部長は、子育てというか、そういった部分への当部のかかわりのコメントを答弁されておりました。私も、農林水産部こそ、まさに地域の文化を担う所管部局であると思っていますし、そこが子育てしやすい環境であったり、今の森を活用した環境を整備していくのは、本当に直接的にかかわってくる重要な役割を担っていると思いますので、そこの認識はしっかり持っていただきたいと思って先ほどの答弁を聞いておりました。
 そういった中で、一方で、市町村の森林環境譲与税も動いておりますが、ここら辺の取り組みの成果についてお伺いしたいと思います。

〇嵯峨参事兼林業振興課総括課長 森林環境譲与税の取り組みについてでございますが、市町村では、森林環境譲与税を活用し、所有者にかわって森林を適切に経営管理するため、航空レーザー等を活用した森林の現況調査や森林所有者への経営意向調査のほか、林業行政を担当する地域林政アドバイザーの配置などを行っているところでございます。
 これらの取り組みにより、これまでに26市町村が経営意向調査を実施しており、その調査結果をもとに、4市町が森林整備に係る計画づくりを行うなど、市町村による適切な森林管理に向けた取り組みが着実に進められています。
 また、県では、市町村の取り組みを支援するため、技術的な助言を行う専門職員の広域振興局への配置や市町村等が森林情報を効率的に利用できる森林クラウドシステムの整備のほか、いわて林業アカデミーにおける現場技術者の養成などを行っているところでございます。
 これらの県の取り組みは、市町村における適切な森林管理に向けた取り組みの円滑化や、地域の森林整備の担い手確保につながっているものと考えております。

2 林地台帳の整備

(1)地籍調査の進捗状況

本当にこれから県、そして現場の市町村としっかりと連携を図りながら森林整備を進めていかなければいけないと思っているのですが、その前提となる今の森林所有者の状況であったり、あるいは筆界等のなかなか確定しないような土地が多くあるかと思っております。東日本大震災のころも、現場にいざ公共事業を何か施行しようといったときに、山林の所有者がどうなっているのか、あるいは不明になっている、境界がまだ確定していないところがあると、いざというときになかなか進まない、対策が後手後手に進んでしまうという問題意識を持っております。
 そういった中で、そこの基本的なデータ整備を今していかなければ、今後、これから10年あるいは100年先を見据えながらも、岩手の森、森林を有効に整備できないのかなと思っております。
 そこでお伺いいたしますが、5番のほうから行きますけれども、まず、現在の地籍調査の進捗状況、特に林地の部分について、どのような状況になっているのかお伺いいたします。

〇砂子田森林整備課総括課長 本年における令和4年度末時点での地籍調査の林地における進捗状況でございます。調査対象面積7,883平方キロメートルのうち、実施済みが6,813平方キロメートル、進捗率は86.4%となっております。

林地86.4%の進捗ということでございました。宅地、農地も含めた合計についても86.3%の進捗ということで、林地については、おおむね全体と同じぐらいの進捗なのかと思って受けとめますが、逆にいうと、残りの13.6%の部分、約10万ヘクタールの林地については、まだ地籍調査が進んでいないという状況になっております。これは、地籍調査が行われていない全体の農地が宅地を含めると15万ヘクタールですから、約3分の2は林地が占めているということでございます。
 農林水産部の農地計画とかの所管になるのかもしれませんけれども、そこら辺の連携はどのように進めていくお考えか、お伺いいたします。

〇砂子田森林整備課総括課長 地籍調査の所管は違うわけですけれども、当課といたしましては、所有者不明土地の解消に向けまして、相続未処理などにより所有者の移転登記が行われていない山林につきましては、先ほどお話のありました森林経営管理制度におきましての意向調査の取り組みを通じて、市町村が森林所有者把握の取り組みを行いつつ、森林所有者が明らかになるように取り組んでまいりたいと思ってございます。

(2)所有者不明土地の状況

森林の所有者不明の状況について、逆に具体的にお伺いしたいのですけれども、全国で約20%、2割の土地が所有者不明だということで、いろいろと把握はしております。そのうち山林は25.6%ということでございますが、本県の地籍調査における所有者不明の土地の状況はどの程度あるのか、お伺いしたいと思います。

〇砂子田森林整備課総括課長 本県における地籍調査上での所有者不明森林の割合は、把握していないところでございます。

(3)林地台帳の整備の現状と課題

私がいただいている資料で、所有者不明の土地は、筆数でいきますと、岩手県は全体7,128 筆に対して1,130筆、15.9%が所有者不明の土地、そのうち山林の所有者不明は2,664筆に対して703筆、26.4%ということで数字をいただいております。
 今後、令和6年、来年4月1日から相続登記の申請の義務化が動き出します。所有権を知った日から3年以内に相続登記の申請を進めなければいけないということで、具体的にまた制度も動き出すわけでございます。ここら辺の所有者不明の土地の状況については、しっかりと当部としても把握していただきながら、具体的に対策を進めていく必要があろうかと思います。
 そういった中で、令和2年4月だったですか、林地台帳制度がスタートしておりまして、平成31年4月から具体的な制度運用が開始されていると理解してございます。この林地台帳の整備の現状と課題についてお伺いしたいと思います。

〇砂子田森林整備課総括課長 林地台帳につきましては、平成28年の森林法の改正によりして、市町村が森林土地所有者や林地の境界に関する情報を一元的に取りまとめた林地台帳を作成する仕組みが創設されまして、平成31年4月から、全ての市町村で林地台帳の本格運用が開始されているところでございます。
 運用開始に当たりまして、県では、登記情報をもとにした林地台帳の原案データを作成いたしまして市町村に提供しておりましたが、運用開始後、市町村からは、台帳の情報が精度不足であるとの指摘があったところでございます。
 林地台帳の情報につきましては、更新を市町村において行っていただくものでございますけれども、今後は、森林経営管理制度の意向調査が進むにつれて、市町村に森林所有者の情報が集積されていくことから、これらの情報が林地台帳に確実に登載され、精度が向上し、森林経営管理制度の円滑な運営が図られますよう、県では、林業普及指導員等現地機関の職員によりまして、市町村に対し技術的な助言などの支援を行ってまいります。

(4)市町村の更新状況

本当に林地台帳は大変重要な役割を持っていると捉えております。各種政策というか事業を進める上でも、ここの山の所有者がどうなっているのか、昔の登記簿に登記の所有者のままになっている場合もあるわけでございます。
 それで、国からも、令和2年にも林地台帳制度の運用についてということで通知が県にも行っていると思いますし、各市町村にも通知が行っていると思いますが、この中で、林地台帳の更新について、やはり台帳情報の精度の向上を図っていくことと、定期的に台帳更新をすることが記載されております。
 もっと具体的にいうと、定期的な台帳情報の更新ということで、年に1回程度は次の方法によって行いなさいということで、登記情報に基づく更新あるいは固定資産税課税台帳情報に基づく更新。これに基づいて、林地台帳の、例えば登記簿上の所有者あるいは現所有者の記載事項を定期的に更新していきましょうということで通知が行っておりますが、実際、現場でこれはどの程度運用されているのか、県の認識、そして今後の指導のお考えについてお伺いいたします。

〇砂子田森林整備課総括課長 林地台帳に係る市町村における更新の状況についてでございますが、各市町村におきましては、令和2年度の森林法の改正により通達がありました固定資産課税台帳情報の内部利用等を図っていただきつつ、各市町村の状況に応じまして、市町村の林地台帳の更新が図られているものと認識してございます。
 また、令和5年には、これに加えまして、住民基本台帳ネットワークの利用についても、森林所有者情報について活用が可能となりましたので、こういったものも加えつつ、各市町村においては、林地台帳の情報を更新していただきたいと考えておるところでございます。

(5)森林資源デジタル管理

所有者がなかなか情報を更新していかないと、多大なる時間とコストがかかるのはそのとおりだと思います。そして、本当に経済的な損失といいますか、林業生産上の損失も生じてくると私は受けとめております。
 今後、デジタル化も含めてさまざまな、ドローンを飛ばしていろいろやるとはいうものの、ここのもとのデータがしっかりしていないと物事が動かないんですね。そういった意味でも、多分膨大な労力、人的コストがかかる作業だとは思いますけれども、先ほどの例えば森林づくり県民税であったり譲与税であったり、そういった部分も有効に活用しながら、もとの基本となる情報管理をしっかり行っていただきたい。これが、多分その原点というかベースになると思います。
 そして最後、時間もあれですから聞きますけれども、森林資源デジタル管理の今後の対応についても、どのように取り組んでいくお考えかを聞いて、終わりたいと思います。

〇砂子田森林整備課総括課長 森林経営管理制度や森林経営計画制度による施業の集約化の取り組みによりまして、適切な森林整備を進めていくためには、委員おっしゃるとおり、その基盤となる高精度な森林情報の整備が必要と考えておるところでございます。
 県ではこれまで、地域森林計画の編成時等におきまして、森林資源情報等の見直し、あるいは地籍調査の成果を森林計画図に反映するなど、精度の向上に努めているところでございます。
 市町村におきましても、森林の所有者情報を記載する林地台帳の精度向上や、森林環境譲与税を活用した航空レーザー計測等による精度の高い森林情報が整備されてきているところでございます。
 県では、こうした森林情報を市町村や林業経営体等の関係者間で相互に共有して利活用するために、森林クラウドシステムを構築いたしまして、本年4月から運用開始したところでございます。
 引き続き、市町村と連携を図りながら、森林情報の精度の向上に努めるとともに、システムの効果的な活用が図られるよう取り組んでまいります。