ホーム  >  県議会報告  > 令和4年度9月定例会常任委員会(環境保健福祉委員会)(令和4年10月13日(木))

県議会報告

令和4年度9月定例会常任委員会(環境保健福祉委員会)(令和4年10月13日(木))

2022.11.02

1 児童虐待対策について

(1) 児童虐待相談対応件数

児童虐待相談対応件数からみる県の評価・分析は如何。

高橋子ども子育て支援室長
 本県の児童虐待相談対応件数の評価・分析についてでありますが、本県児童相談所における相談対応件数は、令和2年度に1,376件と前年度から51件減少したものの、令和3年度には1,709件と前年度から333件増加したところであり、依然として増加傾向が続いている状況にあると認識しております。
 相談対応件数の増加については、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」が浸透したことなど、児童虐待防止対策についての啓発が進み、県民全体の理解が高まっていることが通告の増加につながっているものと考えております。
 また、令和3年度の虐待種別を見ると、心理的虐待が62.8%と最も多く、また、虐待通告の経路を見ると、警察からが45.8%と最も多くなっております。心理的虐待の増加については、児童相談所と警察との連携強化により子どもの面前におけるDV、いわゆる「面前DV」が通告につながっていることなどが背景にあるのではないかと考えております。

(2) 妊娠期からの養育者支援強化対策

妊娠期から支援を必要とする養育者への支援強化対策は如何に。

高橋子ども子育て支援室長
 妊娠期からの支援についてでありますが、各市町村に設置されている子育て世代包括支援センターなどにおいて、保健師等が中心となって妊婦の健康相談や生活支援等の相談に応じているところであります。
 市町村の窓口に妊娠届が提出された際、妊婦の精神状態、育児支援の状況、妊娠に対する感情に関するアンケートを実施しているほか、面接相談を行っており、若年妊娠や経済的な困窮など、社会的な支援が特に必要な妊婦を「特定妊婦」として把握しており、市町村要保護児童対策地域協議会に特定妊婦の方を登録し、協議会で情報共有しながら家庭訪問等の支援を実施しております。
 また、岩手県周産期医療情報ネットワーク「いーはとーぶ」を活用し、市町村の母子保健担当と周産期医療機関とが情報共有を図り、安心安全な妊娠・出産・子育てを支援できる体制を構築しているところです。

(3) 実態把握ができない児童の状況について

乳幼児健診未受診・居所の実態把握ができない児童の状況について伺う。乳幼児健康診査未受診等や居所の実態が把握できない子ども・家庭はどの程度把握しているのか。虐待予防の視点をもった支援が必要と考えるが、県の対応は如何に。

高橋子ども子育て支援室長
 乳幼児健診の未受診や居所の実態が把握できない児童の状況についてですが、県では、国の調査に合わせて、令和元年度から毎年度、乳幼児健診未受診や未就園等により居所の実態が不明となっている児童の状況について、中核市を除く県内全市町村の状況を調査しておりますが、令和3年度においては、把握できない児童はいなかったところです。なお、令和元年度、令和2年度においても、最終的に把握できない児童はいなかったところです。
 乳幼児健診の未受診者については市町村が窓口となりまして確認出来る状況となっておりますので、まず、市町村におきまして受診を勧奨していただくとともに、地域子育て支援センターなどのサービスについて情報提供し、虐待予防の視点から子供が大変な状況になっていないかどうかについて把握できるよう、妊産婦に対し地域子育て支援センターの利用などの働きかけを行っております。

(4) 一時保護実施・解除時の対応

一時保護実施・解除時の適切な評価、継続支援などの対応は如何に。

高橋子ども子育て支援室長
 一時保護の対応についてでありますが、児童虐待などにより一時保護が必要となる児童が確認された場合は、複数の児童相談所職員等が48時間以内に目視による被害状況の確認を実施するとともに、厚生労働省が定める「子ども虐待対応の手引き」にある「一時保護決定に向けてのアセスメントシート」を活用し、シートによる客観的な評価を踏まえ、各児童相談所で緊急の援助方針会議を開催し、組織的に一時保護の要否を判定しているところです。
 一時保護の解除にあたっては、子どもや保護者、家庭環境などがどうなっているかを見る「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」による評価を踏まえ、児童相談所内会議においてその可否を判定するとともに、市町村要保護児童対策地域協議会において、「個別ケース検討会議」を開催し、家庭復帰した後の支援を引き続き行っております。
 アセスメントシートの決定に不備や誤りがあった、また、一時保護を解除した結果、重大な事態につながったということは、今までのところ聞いているところはありません。主観的に一時保護の決定や解除をするということではなく、一つの大事な手法として、国の定めているアセスメントシートに基づいて、様々な項目から一時保護が必要かどうか、解除しても家庭としても子供としても大丈夫かというところを判断して家庭にお返しし、その後の市町村要保護児童対策地域協議会の支援にも引き続き取り組んでいるところです。

(5) 二戸保健福祉環境センターについて

二戸保健福祉環境センターへの児童福祉司の配置について伺う。

高橋子ども子育て支援室長
 二戸地域への児童福祉司の配置についてでありますが、現在、二戸地域を含む県北担当として、スーパーバイザーとなる児童福祉司1名を含み、合計4名の児童福祉司を県北広域振興局保健福祉環境部に駐在させているところです。
 二戸地域担当者を二戸保健福祉環境センターに駐在させる場合、二戸地域と久慈地域にそれぞれ2名ずつの配置となり、現在はスーパーバイザーが一人で他の3名の児童福祉司をバックアップしている体制を取っている状況ですが、分散して配置するとスーパーバイザーによる双方のバックアップができなくなるほか、虐待通告があった際、48時間以内に複数名で目視を行わなければならないが、2人の児童福祉司で行うこととなると余力がない状況になります。児童福祉司が集まることによって様々対策が打てるようになっていますが、分散配置により適切な対策が取れなくなるという課題があると考えております。
 児童虐待の相談対応件数はかなり増加しており、児童相談所の対応も非常に大事だとは思いますが、児童家庭相談の入り口、一義的な担当である市町村が果たす役割も非常に大きいと思っており、相談件数がかなりふえている中で、緊急性のある、難しい案件については児童相談所が体制を強化しながら対応し、他で対応できる部分については入り口として市町村が対応していくということでサポートしていきたいと思います。

2 鳥獣被害対策

(1)個体数適正管理について

ニホンジカ、ツキノワグマ、イノシシの野生鳥獣の個体数の適正管理について認識と評価を伺う。

酒井自然保護課総括課長
 これらの鳥獣については、鳥獣管理計画を策定し、生態や推定個体数など種の特徴を踏まえた被害防止対策に取り組むこととしている。
 シカについては、平成30年度の推定生息数が約10万頭であったことを踏まえ、個体数を低減させる方針としており、積極的に捕獲を推進しているところ。
 令和3年度は25,000頭の捕獲目標値に対し、26,839頭を捕獲しており、捕獲目標値を達成した。
 同様に、イノシシについては、可能な限り捕獲することを方針としている。令和2年度の662頭から令和3年度は945頭に捕獲数を伸ばしており、概ね方針通りに進捗している。
 ツキノワグマについては、個体群の保護が必要な種であるが、現計画では個体数を低減させる方針としている。
 令和3年度は捕獲上限数546頭に対し453頭捕獲しており、個体数の低減のため捕獲上限数を令和4年度の626頭から令和5年度はさらに686頭に引上げたところ。
 計画的な捕獲に取り組んでいるが、野生鳥獣による農林業被害は依然として続いていることから、被害の低減に向けた一層の取組の強化が必要と考えている。
 このため、鳥獣管理計画に基づき、引き続きモニタリングに取り組むとともに、市町村や猟友会等と連携して、捕獲強化等の被害防止対策に取り組んでいく。

(2)調査手法の見直し

 ツキノワグマについては市街地への出没が増えていて、密度が高まっていると捉えている。環境保健研究センターでヘアトラップ調査を実施して個体数を推計しているが、調査手法の見直し精度を高める方針はあるか。

酒井自然保護課総括課長
現状ではヘアトラップ調査が一番適切という考え方だが、精度が高い調査方法は研究していきたい。

(3)春季捕獲の考え方

春季捕獲をもっときちんと体系づけてやるべきではないかとの声をいただいているが、どのように考えているか。

酒井自然保護課総括課長
 春季捕獲はクマを捕獲するだけでなく捕獲技術の向上やクマへの学習効果もあるものであり、取組を広げていきたい。

(4)市町村への権限移譲

ツキノワグマの捕獲に係る市町村への権限移譲についての意見を聞くことが多い。迅速な対応のため、権限移譲についての検討を前向きにとらえるべきと考えるが、いかがか。

酒井自然保護課総括課長
 原則的に捕獲許可は局で行っている。市町村が迅速に対応できるよう、90日の特例許可期間を設け、期間中は配分枠の範囲内で捕獲ができるよう特例的に委譲している。

(5)イノシシ対策

 イノシシがだいぶ増えていると思う。圃場の畦畔が掘り返されたり、食べられたり、臭いがついて出荷できなくなったりしている。捕獲数は5年で10倍、被害も5年で5倍となっており、イノシシの対策は喫緊の課題と考える。どのように取り組もうとしているのか。

酒井自然保護課総括課長
 イノシシについては、一度絶滅したため、どこにどれくらいいるか把握しきれていない。そのため、今年度はGPSによる行動圏の調査を進めたいと考えている。
 また、ハンターに関しては、捕獲の技術が全域に広まっていないことから、捕獲技術の研修会を開催し、技術向上に取り組む。

(6)ジビエ活用の評価

ジビエとしての活用に関連して、放射性物質検査の結果について、どのように認識、評価をしているか。

酒井自然保護課総括課長
 県では、ツキノワグマ、シカ及びヤマドリの放射性物質検査を実施している。その結果、令和元年度はツキノワグマ2検体、シカ3検体、ヤマドリ1検体から、令和2年度はツキノワグマ3検体及びシカ2検体から、令和3年度はヤマドリ1検体から、基準を超える放射性物質が検出されているところ。
 出荷制限を解除するためには、国のガイドラインでは、原則、全県で1市町村当たり3検体以上かつ直近1カ月以内の検査結果がすべて基準値以下であることが条件とされている。
 しかし、県内の野生鳥獣は、生息数に地域的な偏りがあり、条件をクリアするために全県一律で取り組むのは現実的には困難となっている。
 このことから、国に対して、全国知事会を通じて、実態に即した現実的な解除要件とするよう要望しているところであり、引き続き、国に働きかけていく。

 基準を超過するエリアは限定的になっていると整理できるかと思っている。
 捕獲した個体を活用したい、観光資源も含めて他との差別化を進めていかなければならないと思っている。釜石市と大槌町で一部規制を解除しているが、こういった取り組みを進めるべきではないか。前向きに検討していただきたいと思うがどうか。

酒井自然保護課総括課長
 大槌町では出荷規制を限定解除し、全頭検査のうえ出荷しているところ。農林水産部で施設整備の補助事業があるので、連携して支援したい。

3 放射性物質に汚染された農林業系副産物

(1)現状認識と評価

一戸町を訪問した際、牧草等の農林業系副産物を地中に一時保管している。平成26年8月に保管工事が終了し、量として582トンであるが、間もなく10年になりシートの耐用年数を迎えることから、償却以外の最終処分の方法を検討して欲しいとの要望を受けているが、現状についてどのように認識・評価しているか伺う。

佐々木資源循環課総括課長
 放射性物質に汚染された農林業系副産物の現状についてであるが、県全体としては発生量5万9千トン余に対し、令和4年5月末現在、4万7千とん余が処理され、進捗率は80%までとなっている。市町村のごみ処理施設の能力などから全量処理ができず、一部の市町村で地中で保管されていることは聞いており、安全に保管がされているが、近く現地調査を環境省と共に処理方法について協議することにしている。

(2)最終処理方法

一戸町だけではなく、陸前高田市や住田町でも保管されていると思うが、震災から約12年近く経っているので、全県で最終処理の方法など、課題について取り組んで頂きたいが対応について所見を伺う。

佐々木資源循環課総括課長
 農林水産系副産物の最終処分方法についてであるが、沿岸の市町村についても、8月に環境省と共に訪問調査を行い、市町村ごみ処理施設のほか、民間施設も含めて処理方法を助言しているところ。
 牧草等の放射能濃度の測定の補助も環境省から行われていることから、処理方法と費用負担も含め早期処理に向けて、各市町村に指導助言をしていく。