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県議会報告
令和4年度9月定例会 決算特別委員会(農林水産部 第2部林業水産関係)(令和4年10月25日(火))
2022.11.02
1 第4期「いわての森林づくり県民税」(R3~R7)について
(1) 令和3年度県民税の執行状況の評価について
令和3年度県民税の執行状況の評価。累積基金残高の課題と分析
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
令和3年度の県民税の執行状況の評価についてでありますが、令和3年度の決算額は、ハード事業である、公益的機能の高い森林へ誘導する間伐や、公益上重要な伐採跡地に植栽などを行う「いわて環境の森整備事業」で4億7千7百万円余、ソフト事業である、地域住民が主体となって里山での間伐等を行う「県民参加の森林づくり促進事業」で2千百万円余など、11の事業で合計6億5千7百万円余を執行したところ。
また、「いわての森林づくり基金」の令和3年度末残高は、24億375万7千円となっている。この残高につきましては、環境の森整備事業で主伐等の今の林業の流れのなかでこちらのほうに労務をとられてしまい、間伐等のほうに作業員を割くことができなかったためである。
県民税の名称の周知・認知について伺う。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
直近の認知度は、令和3年度で42.5パーセントである。直近のデータでは、平成27年で、35.3パーセントであり、伸びは緩やかであるが、上がっているところである。
(2) 第4期使途拡大した事業実績と評価について
第3期終了後の基本的方向(提言)の具体的反映・実施状況は如何に
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
第4期に使途拡大した事業の実績と評価についてでありますが、ハード事業では、「公益上重要な伐採跡地への植栽」や、「林野火災予防対策」、ソフト事業では、「木育の推進等につながる県産木材の活用」や、「岩手県森林公園の機能強化」など、使途の拡大などをしたところ。
これら使途拡大した取組の令和3年度実績は、「伐採跡地への植栽」が、171ヘクタールの施工地を確保して整備を進めているほか、「林野火災予防対策」では、消火活動に活用可能な作業道等を図上に記載した路網マップを釜石市で作製したところ。
また、「木育の推進等につながる県産木材の活用」では、保育所や認定こども園、こどもの森など、28の施設に木製玩具や木製遊具などの県産木材製品を導入したほか、「岩手県森林公園の機能強化」では、大船渡市の大窪山森林公園に木育スペースを整備するなど、事業を着実に進めているところ。
(3) 皆伐禁止の要件緩和について
事業実施後の20年間皆伐禁止の要件緩和について伺う。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
事業実施後の20年間の皆伐禁止の要件緩和についてでありますが、強度間伐は、手入れが行き届いていない森林で実施しており、そのような森林に下層植生を侵入させ、水源の涵養や山地災害の防止など森林の持つ公益的機能の効果を一定期間発揮させるため、20年間の協定締結を条件としている。森林のもたらす公益的機能の効果は、多くの県民に広くもたらされることから、特別に徴収している県民税を投入して、県が所有者に代わって整備をしてきたところである。
このことから、協定期間を短縮することは、いわて環境の森整備事業の目的である公益的機能の安定的な発揮という事業目的の達成が難しいことから、引き続きこれまでと同様に協定期間を20年とし、事業を進めていきたいと考えている。
また、20年間の伐採制限については、間伐や、択伐などの通常の森林管理までも制限するものではないことから、森林所有者の方に説明するほか、それでもなお20年間の皆伐禁止の要件を、お求めになる方には、事業の活用の段階で、国庫補助事業やその他の事業の導入を考えている。
(4) 人材育成と確保対策について
間伐を担う作業員の確保の対策は如何に。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
人材育成と確保対策についてでありますが、県民税事業の作業員の労務費については、労務単価を建設業と同等としているほか、社会保険料等を事業費に計上するなど、適正な給与が支払われるよう対策を講じている。
県では、「いわて林業アカデミー」で担い手を育成してきたところであるが、アカデミーを修了した方々などは、色々な企業の状況といったものをみながら就職先を決めるということであるので、県民税事業の活用や事業の趣旨を経営者の方々にお伝えして、働いている方にきちんと給料が払われるような情報共有等の取り組みをしていきたい。
(5) 針広混交林への誘導実績と評価について
針広混交林への誘導実績と評価について伺う。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
針広混交林への誘導実績と評価についてでありますが、平成19年度から林業技術センターが、混交林誘導伐の施工地11か所について、毎年度、下層植生の変化などについて、モニタリング調査を実施している。
さらに、それを補完する形で、県内約100か所の施工地に対して概ね5年ごとに下層植生の生育状況を調査し、岩手大学の専門の先生に分析を依頼している。
分析の結果については、全体として、間伐後概ね10年が経過した段階で、約9割の調査地において下層木の侵入がみられ、シカの食害を受けない限り、低木層が形成されているとの報告を受けており、県としては、混交林誘導伐が有効に機能していると捉えている。
2 森林環境譲与税について
(1) 市町村毎の執行状況等について
森林環境譲与税の市町村毎の執行状況、事業化率と評価について伺う。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
森林環境譲与税の市町村毎の執行状況についてですが、 令和3年度の市町村への譲与額10億3,296万7千円に対し、執行見込額は7億1,160万5千円で、事業化率は69%となっている。
令和4年度は、市町村の森林環境譲与税の活用が活発化し、譲与見込額13億3,600万円余に対し、執行見込額は12億4,500万円余で、事業化率は93%と増加している。
これは、市町村において、森林環境譲与税を財源とした取組を着実に進めていることによるものと認識している。
(2) 具体的支出内容について
森林環境譲与税の市町村における具体的な支出内容について伺う。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
市町村における具体的な支出内容についてですが、市町村における令和3年度の森林環境譲与税の執行状況について調査を実施したところ、
森林の整備を目的として、①森林現況調査等や森林所有者に対する経営意向調査を31市町村、②林道・作業道の整備や維持補修を12市町村、人材の育成及び確保を目的として、①高校生等を対象とした林業体験会の開催などの担い手確保を8市町村、木材利用の促進や普及啓発を目的として、①薪ストーブの導入支援など木質バイオマス利用推進を5市町村、②市民を対象とした森林体験会の開催など森林・林業・木材普及活動を5市町村が実施している。
(3) いわて木づかい住宅普及促進事業の重点化について
いわて木づかい住宅普及促進事業の実績と評価はどうなっているか。また、重点化してはどうか。
技術参事兼林業振興課総括課長答弁
いわて木づかい住宅普及促進事業の重点化についてでありますが、令和3年度の実績については、新築が116件、リフォームが10件、合わせて126件となっている。また、今年度は、9月26日をもって受付を終了したが、申請受付件数は、新築が129件、リフォームが18件、合わせて147件となっている。
本事業の評価については、令和3年度に、本事業を活用した施主に対するアンケート調査によると、回答のあった61名のうち、「本事業を知って、住宅の新築に県産木材を使うことを決めた」との回答が約6割となっており、本事業が住宅建築での県産木材の利用促進につながっていると認識している。
また、本事業の重点化については、森林環境譲与税を財源としている、森林クラウドシステムの整備やいわて林業アカデミーの運営など、市町村における森林整備の取組を支援する他の事業への影響もあることから、難しいものと考えているが、令和4年度はPR経費を減らして補助額を増やすなどの工夫も行ったところ。
現在、県内の主な工務店に対し、「県産木材を使用した住宅の着工戸数」や「住宅建築における県産木材の利用状況」等についてアンケート調査を実施しているところであり、この結果等を踏まえ、今後の対応を検討していく。
(4) 林業の成長産業化とカーボンニュートラルについて
林業成長産業化とカーボンニュートラルに向け、県が市町村を先導する仕組みを創出すべきと考えるが所感を伺う。
技監兼林務担当技監兼全国植樹祭推進室長答弁
林業の成長産業化とカーボンニュートラルについてでありますが、令和3年度に見直しが行われた森林・林業基本計画においては、森林を適正に管理し、林業・木材産業の持続性を高めながら成長発展させることで、2050年カーボンニュートラルも見据えた豊かな社会経済を実現することとし、森林・林業・木材産業による「グリーン成長」に向けた取組が進められているところ。
この計画について、県では、これまでも、①森林経営管理制度の適切な運用のため、専門職員の広域振興局への配置、市町村が配置する地域林政アドバイザーの養成研修、②いわて林業アカデミーによる将来的に林業経営の中核を担う人材の育成、③県民に広く県産木材への関心と理解を深めていただくことを目的とした「いわて木づかい運動」の展開のほか令和3年度から県内の民有林全体の森林情報をデジタル化し、市町村をはじめ広く林業関係者が森林情報を効果的に利用する森林クラウドシステムの整備に取り組んでおり、令和5年度から運用開始を目指しているところ。このように、政策を実現するにあたり、市町村を先導する様々な取組を行ってきたところ。
このことから、今後においても、県全体や地域の実情を十分に把握したうえで、どのように対応し取り組んでいくのが良いか、市町村はもちろんのこと、関係機関・団体ともしっかり協議したうえで、各種政策に対する仕組みについて検討していく。