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県議会報告

令和4年度9月定例会 決算特別委員会(ILC推進局)(令和4年10月20日(木))

2022.11.02

1 ILC誘致の取組みについて

(1) ICFA声明の県の受け止めについて

今年4月にICFAが今後の活動方針について声明を出したが、県の受け止めについて伺う。

副局長兼事業推進課総括課長答弁
 4月のICFAのステートメントについてでございますが、これは、KEK、高エネルギー加速器研究機構が、本年2月に公表されました「第2期有識者会議の議論のまとめ」を受けまして、3月のICFA会議に、準備研究所に代わる国際的な枠組みの創設などの提案を行ったことを踏まえて発出されたものと承知している。
 このステートメントでは、日本でのILCの実現を引き続き奨励するともに、「今後1年間の進展を注意深く見守る」とされたところでございまして、ICFAによります日本におけるILC計画の支持が改めて確認された一方で、ILCの実現に向けては「この1年」が大変重要な年になるものと認識しているところでございます。

スノーマスプロセス、サマースタディの取りまとめ状況を伺う。

副局長兼事業推進課総括課長答弁
 スノーマスプロセスについては、アメリカの素粒子物理学の今後10年の戦略的な計画を策定するために、ボトムアップのプロセスとして研究者から様々な提案を受け、それを整理するためのプロセスと伺っています。
 その最後の全体会議である、7月にシアトルで行われたスノーマスプロセスのサマースタディにおいて、日本からもKEKやILCジャパンなどのメンバーが出席し、日本の現状、これからの取組方針等について説明したと聞いています。
 その結果については、意見交換を行ったところによると、アメリカの研究者には御理解をいただいたと聞いています。10月まで取りまとめ期間があるということで、まだ取りまとめ結果は公表されていません。その状況については、KEKにも情報が無いとのことでして、我々も注目しているところです。

(2)  地質調査等の進捗状況について

地質調査等の進捗状況について伺う。

計画調査課長答弁
 地質調査等の進捗状況についてでありますが、これまで、県と東北大学との共同研究などにより、施設計画に向けた地表踏査やボーリング調査、弾性波探査などの地質調査を行ってきたところであり、令和2年10月に東北ILC事業推進センターが、地形・地質の状況や施設配置計画案をまとめた「東北ILC施設計画」を公表したところでございます。
 昨年度からは、東北ILC事業推進センターの事業として、それまでの地質調査成果を基に、加速器トンネル付近の地質状況を整理し、設計・施工に関わる土木地質的考察、留意点等を取りまとめた地質縦断図の作成等を行い、現在は、施設配置計画案との整合を進めているところでございます。県は、こうした取組に対する関係市との調整を行うなどの支援を行っているところであり、引き続き、こうした調査、検討が円滑に進むよう支援していきます。

進捗状況のパーセントについて伺う。

計画調査課長答弁
地質調査については、研究者が中心となって行っており、進捗状況のパーセントについては、把握していない。

(3) 戦略的環境アセスメントの検討状況について

自然環境や社会経済的影響について、戦略的環境アセスの検討状況は如何に。

計画調査課長答弁
 環境アセスメントの検討状況についてでございますが、ILCに関しては、トンネルなどの地下構造物等の大部分が環境影響評価法や条例の対象外となりますが、自然環境への影響が懸念されますので、平成30年の日本学術会議においても、自主的な環境アセスの必要性について言及されているところでございます。
 令和元年9月に、KEK、高エネルギー加速器研究機構では「ILC環境アセスメント評価アドバイザリーボード」を設置しまして、ILCの事業特性を踏まえた環境アセスのプロセス等について検討が行われまして、令和2年12月の「ILC計画の戦略的環境アセスメントの実施について-議論のまとめ-」において、実施段階の環境アセスに先立ち、自然環境のみならず、社会的・経済的影響についてもカバーする戦略的環境アセスの手法を導入することが望ましいとされています。
 現在、こうした状況を踏まえまして、KEK、有識者、研究者による勉強会が開催され、戦略的環境アセスの手法等について検討が進められています。
 県としては、建設候補地として、環境アセスに関する必要な情報提供などの協力を行ってきたところでございまして、引き続き、KEK等に対して必要な協力を行っていきます。

(4) ILC誘致の意義について

国際経済政策調査会主催による加速器科学研究会が東京で開催されたが、改めてILC誘致の意義をどう捉えたか。

副局長兼事業推進課総括課長答弁
 ご紹介いただきましたように、9月6日の加速器科学研究会での甘利衆議院議員の講演は、ILC直接ということではなく、「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想と経済安全保障戦略」というタイトルでございました。これに関しましては、鈴木財務大臣からも、「ILC実現は経済安全保障に寄与するプロジェクトである。大いに参考にしてほしい。」とのコメントが寄せられています。
 こうしたILCの国際的な価値に関しましては、多くの関係者の講演や発言などにおきましても多数取り上げられており、本年5月の加速器科学研究会における鈴木県立大学学長の講演の中でも、「世界の中での日本の地位と国家安全保障」、「世界に好まれる国から尊敬される国ナンバーワンに」という言葉で紹介されているところです。
 このような経済安全保障を含めましたILCの国際的な価値やその意義につきましては、ILC計画の推進を強力に訴える力となることを改めて認識したところでございまして、今後の各界への働きかけなどに十分に活かしていきたいと考えています。

(5) ILC誘致の意義や効果の県内市町村への普及について

イノベーションの創出や経済安全保障等、ILC誘致の意義や県内波及効果を県内市町村に普及すべき。如何に。

副局長兼事業推進課総括課長答弁
 ILC誘致の意義や効果の県内市町村への普及ということでございます。国への働きかけにおきましては、ILCの意義について、その実現で波及効果が広く世界に及び、特に、建設候補地である東北では、国際的なイノベーションの拠点の整備が進むことで、世界に開かれた地方創生、東日本大震災からの創造的復興にもつながるものとして訴えてきたところでございます。
 一方、県内市町村に対する情報発信に関しては、本年2月の有識者会議の「議論のまとめ」以降、ILCの展望等に不安を感じる方も多いものと考えておりますが、御指摘のとおり、現状においては、必ずしも十分な発信になっていなかったと反省もあるところでございます。
 県におきましては、これまでSNSなど各種媒体を活用した情報発信、それから県内外のイベント出展、講演会等による機運醸成を図ってきたところでございまして、そうした取組の中で、例えば、建設候補地以外への波及という意味では、グリーンILCの取組がございますが、こうした取組は、民間企業や、建設地域以外の自治体も参加する活動として広がりを見せてきているところでございます。
 県といたしましては、ILC計画の動向とともに、その意義や効果についてわかりやすく発信していくことが、地域の機運醸成や理解促進につながるものと考えておりまして、県ILC推進協議会などとも連携し、工夫をこらしながら、取組を推進してまいりたいと考えています。

(6) 文部科学省の予算要求について

文部科学省の令和5年度のILC関連予算の概算要求額が前年度から倍増の9.7億円となったが、県の評価と今後の方針について伺う。

局長答弁
 ILCの意義とその発信についてでございます。ILCには、非常に大きく、そして多様な意義・価値があると考えております。世界から、数千人規模の研究者がこの岩手に集い、アジア初の大型国際科学技術の拠点となるということで、その施設そのものが国際貢献、そして、平和構築の場としての役割も果たすという大きな期待があると思います。
 また、そういった世界最高水準の研究施設が身近にあることによって、子どもたちに、夢や勇気を与え、挑戦する意欲を与えることで、様々な分野で活躍するグローバル人材の育成にも資するものと考えています。大谷選手や、菊池雄星君、小林陵侑君などが岩手から世界に羽ばたいておりますけれども、科学の分野で、学術の分野で、世界から岩手にという大きな流れが生まれ、将来、ノーベル賞ということも期待できればと考えてございます。
 このほかにも、繰り返しとなりますが、イノベーションの創出、産業の発展、国際都市誕生による多文化共生、新たな地方創生、グリーンILCによる地域循環型社会の実現、そして東日本大震災津波からの復興と、数え切れない意義と価値があると思ってございます。
 こうした価値・効果を国民・県民の皆様にしっかりと発信し、その理解と応援をいただきながら、県議会をはじめ関係者の皆様と、引き続き、国に働きかけ、その実現に向けて、一生懸命取り組んでまいりたいと考えてございます。