ホーム  >  県議会報告  > 令和3年9月議会一般質問(令和3年10月5日(火))

県議会報告

令和3年9月議会一般質問(令和3年10月5日(火))

2021.10.06

1 ポストコロナにおける行財政改革と知事の政治姿勢について

(1) ポストコロナにおける県の財政運営について

 県は先月、「中期財政見通し」を公表したが、本県の財政は近年、全国と比べて税収が伸び悩む中、人口減少等に伴い地方交付税が減少するなど、収入が大幅に減少して支出を下回る状況が続いており、現在は県の貯金である基金を取り崩して対応しています。さらに、人口減少や少子高齢化の進展などにより、社会保障関係費や県立病院への繰出金について、今後、更に負担が増える可能性があります。全国比較できる令和元年の決算統計をみると、実質公債費比率15.3%、全国45位、将来負担比率221.7%、全国37位、財政力指数0.37041、全国35位、震災分を除く歳入に占める地方税の割合22.5%、全国36位と、各種の指標において全国の下位にあるなど他県と比較しても決して余裕のある財政状況にありません。このような全国的に厳しい財政状況において、県は今後の税収見通しを含め、コロナ後の出口戦略をどう立てているのか知事の所見を伺う。

【知事】
 今後の税収見通しについては、先に公表した中期財政見通しにおいて、国の試算に基づき伸びる見込みとはしているものの、コロナ禍における厳しい経済状況等を踏まえ、税収の動向を引き続き注視していく必要があると考えております。
 また、人口減少と相まって、より一層厳しい財政状況が続くことが予想される中においても、県民に必要な行政サービスを安定的に提供していくために、持続可能な行財政基盤を構築していくことが重要であります。
 今後も、本県の感染状況や国の動向を踏まえ、感染拡大の防止や社会経済活動を支える取組を進めつつ、いわて県民計画に基づく10の政策分野や、新しい時代を切り拓くプロジェクトを着実に推進するとともに、令和4年度の予算編成方針において新たに掲げた3つの重点テーマ、人口減少への対応、デジタル化による地域課題の解決、グリーン社会の実現に資する施策を戦略的に展開してまいります。

(2) 県財政の構造的な問題について

 歳入減の大きな要因が「地方交付税」の影響である。令和3年度の実質的な普通交付税交付額は、平成22年度対比で383億円も減少している。その要因として「人口減や農業生産人口算定基礎とした経費の減少、国の制度見直しによる借金返済に対する措置額の減少、社会保障関係費増大の影響」が挙げられる。職員数や施設維持といった経常的経費を人口減少に見合った形でスリム化させ、政策的経費をねん出しなければなりません。県は、このような財政の構造的な問題にどう対処するお考えか伺う。

【総務部長】
 県財政の構造的な問題への対応についてでありますが、議員御指摘の通り、先に公表した中期財政見通しにおいて、本県の実質的な一般財源総額については、今後、国勢調査人口の減による普通交付税の減少などに伴い、毎年度減少していく見込みとしており、厳しい財政状況が続くものと認識している。
 このような見通しも踏まえて、令和4年度の予算編成方針においては、歳入について、国費の最大限の活用を図るほか、使用料・手数料の見直しや未利用資産の処分など、あらゆる手段によって歳入確保に努めることとしている。
 また、歳出については、特に経常的経費である基礎的経費や一般行政経費について、縮減目標を設定したうえで、事業効果や効率性等を踏まえた事務事業の精査など、徹底した歳出の見直しを図ることで、限られた財源の重点的かつ効果的な活用を図っていく。

(3) 組織マネジメントの改善について

 県職員の長時間労働や若手職員の離職が問題となっている中、コロナ感染症対策の中心的役割を担う医療政策室の超過勤務は全庁平均の約5倍と極めて厳しい勤務状況にある。また、県職員の精神疾患による療養者はこの3年間で約2倍、実人員で98人と高止まっており、一向に改善がみられない。
 一般的に、組織は、予算と人を減らさないように、既得権・セクト主義に陥りがちになり、新たな課題ができると部局横断組織を作る傾向にある。
 既存の仕事のスクラップを含めた整理と分配が必要である。政策のプロ集団が、県民のために能力をフルに発揮できるよう、組織マネジメントをどのように改善していくお考えか知事に伺う。

【知事】
 社会経済情勢が変化する中、県民ニーズを適切に把握し、行政サービスを安定的、持続的に提供していくためには、職員の能力を十分に引き出し組織として成果を発揮するマネジメントが重要と認識している。
 このため、職員の能力向上を図りながら、デジタル化を通じた業務の効率化の推進や、コロナ禍におけるBCPの実行による業務の優先順位付けや見直しなど、効果的で効率的な業務遂行体制の構築に向けて取り組んでいる。
 今後においても、「働き方改革ロードマップ」に基づき職員が働きやすい職場環境の整備を進め、職員一人ひとりが高い意欲を持って地域課題の解決に当たることができる組織運営体制の構築を目指していく。

(4) 技術系職員の登用について

 広域振興局を含めた県の部長級ポストをみると、事務方のゼネラリストの方々が多く登用されている。農林水産業をはじめとする産業振興や地域振興策など、多様化・高度化する行政課題に的確に対応していくためには、事務職員のみならず、専門性の高い技術職の積極的な登用が必要と考える。
 そこで伺う。技術職員の登用、特に、部長級ポストへの登用について、人材育成や計画策定、部局連携体制強化の観点も含め、人事当局では、どのように対応しようとしているのか伺う。

【総務部長】
 技術系職員の登用についてでありますが、社会情勢の変化に対応し、県民ニーズに的確に応えていくためには、適材適所の人員配置の考え方のもと、従来の枠組みにとらわれずに、人事制度を運用していくことが重要と認識してございます。
 技術系職員の育成については、OJTなどを通じてそれぞれの専門性を高めながら、ジョブローテーションの中で、企画や予算などの政策的分野への配置や社会科学系の大学院への派遣などにより、多角的な視点を育むことが重要と考えてございます。
 こうした考えのもと、多様な県政課題に対応できる職員を育成し、積極的な登用を進め、マネジメント業務に従事する技術系職員の管理職は着実に増加をしており、今後も、部局間の職員交流を積極的に行うなど、事務職や技術職の区分にとらわれず、職員の育成・登用を進めてまいります。

(5) 県政推進に対する知事の基本姿勢について

政務秘書制度について

 極めて厳しい行財政環境にあって、小さな改革の積み上げにより財源を生み出す努力が重要です。そこで、「政務秘書」制度について伺います。
 政務秘書は、議会承認や任期のない特別職の地方公務員である。知事の任命により選ばれる政務秘書は、かねてからその存在意義や合理性についての疑念が持たれてきたが、その役割について確認します。
 政策秘書の業務は、「知事の政治的活動に関わる秘書業務など、一般職の秘書に対応させることが適当でない業務や、行政事務と政務との調整」とのことですが、そもそも一般職の秘書では本当にできないのでしょうか。

【知事】
 知事は、その職務の性質上、行政の長として行政事務をつかさどるほか、政治活動を行う場合があり、その政治的活動に関わる政務につき公務員としてこれを補佐する秘書を設けることが、その職務の円滑、効率的な遂行に資することから、地方公務員法第3条第3項第4号の規定に基づく特別職の地方公務員として、秘書を任用することが認められています。
 知事の政治活動に関わる秘書業務や、行政事務と政務との調整を担わせるため、政務秘書が必要と考え、これまで任用してきたところであります。

全国の都道府県で政務秘書を設置している都道府県は本県を除き、何県あるのか。

【総務部長】
本県を除き、7都県となっている。

 政務秘書の業務内容について、事前に資料をいただいたが、公務の日程との調整、政務関係者からの電話や訪問の対応、ファックスレポート等、政治家としての発信、宗教団体から面会要請等があったときの対応及び行事対応のサポートとあった。先月1か月の業務実績について、ファックスレポートや宗教団体からの面会要請は何回あったのか。

【知事】
 政務秘書の勤務状況の確認については、知事である私が直接行っております。
 勤務時間や休暇等の定めがないため、一般職の職員と同様の勤務管理を行う必要はないものとされております。
 政務秘書は、地方公務員法の適用対象とならない特別職であり、県の「特別職の指定に関する条例」に規定する特別職であります。

 4つの業務に、国政選挙での特定候補者への後援会活動も含まれるのか。

【知事】
その可能性もあるかと思います。

 国政選挙での特定候補者への後援会業務等は、多額の税金を支払って、公務員が行う業務なのか。私設秘書が行う業務ではないのか。

【知事】
そうは思いません。

 政務秘書の給与について事前に照会したが、開示してもらえず極めて不透明な状態である。私なりに、条例で規定する上限49万9千円で試算したところ、年間760万円である。平成19年4月の達増知事就任から現在までの岩手県が政務秘書に支払った給与、各手当の総額はいくらか。また、年平均はいくらか。

【総務部長】
 平成19年4月から現在までの約14年半における給料月額のほか、期末手当、寒冷地手当、退職手当を含めた政務秘書への総額は、1億448万円余となっている。1年あたり765万円である。

 一般職の何級に相当するのか。また、大卒、上級職で何年くらい県に勤める職員に相当する給与なのか。

【総務部長】
 政務秘書の給与は、学歴、あるいは職歴等を勘案したうえで、一般職の職員の年収との均衡を図って決定している。
 本県においては、現在、総括課長級で6級に相当する。

何年くらい勤務した職員となるのか。

【総務部長】
 総括課長級の職員も様々あるが、概ね年代からすると、40代から50代前半となる。

 客観的な採用基準もなく、試験も受けず、議会の承認手続きもない、不透明な手続きで高額な職員を採用しているという、この現状を認識いただきたい。

 次に、政務秘書の勤怠管理について、政務秘書の勤務や休暇に関する規律はなく、週5日、9時~5時の勤務が義務付けられている訳でもない。その勤務実態は知事以外、誰も把握をしておらず、在庁時間を照会してもデータは公表されなかった。
 実際に勤務しているのか、していないのかも含めて誰がチェックするのか。知事は把握しているか。

【知事】
 先ほども述べましたとおり、政務秘書の勤務状況の確認については、知事である私が、直接行っております。

9月の勤務時間を示していただきたい。

【知事】
 同様の特別職である私自身が、何日、何時間働いたということをパッと言えないのと同様に、政務秘書の何日、何時間ということについては、そういった観点からは管理しておりませんで、この間、新型コロナウイルス対策に取り組む中でも、様々な、私自身の岩手における政治的な立場に関連したやり取り、調整、私の協議などを的確、適切に行っていました。

職務専念義務はあるのか。

【総務部長】
 政務秘書の服務につきましては、地方自治法の附則第5条、地方自治法施行規程第10条の規定により、明治時代に制定された、道府県職員服務紀律というのが適用されている。その中で職務専念義務が規定されている。

 平成25年6月定例会の質疑で、選挙中の街頭演説に関し、この活動の適切さ、あるいは誰が指示したものかという質疑があり、その際、知事は、「特別職である秘書は、地方公務員法の適用外とされ、職務専念義務が課されず、自己の判断により活動している。」と知事は答弁されているが、過去の答弁と矛盾し整合性がとれない。
 政務秘書の問題は、地方公務員法に規定する「職務専念義務がない」との前提で知事はこれまで答弁してきた。これはきわめて重要なポイントである。過去答弁の訂正を求めるが如何か。

【知事】
 先ほど申し上げました通り、政務秘書は地方公務員法の適用対象とはならない特別職ですので、地方公務員法上の職務専念義務はないわけでありますけれども、先ほど総務部長が答弁したように、明治時代の例による職務専念義務、当時の概念でありますけれども、それはあるということになるというわけです。

 当時の概念ではなく、地方公務員法ではないけれども、地方自治法の附則によって、服務紀律は今もなお生きているのである。
9月上旬、知事の政務秘書が横澤参議院議員と立憲民主党の佐野候補者と企業訪問していたが、この行為は、いわゆる地盤培養行為たる後援会活動として整理されます。このような知事自身が行う選挙・政治的活動とは関係のない、特定候補者への選挙運動や後援会活動は、政務秘書が行う活動として適切であるか認識を伺います。また、知事の指示でおこなわれたのか伺います。

【知事】
 長野県の知事特別政務秘書に係る訴訟の判決において、知事という特別職に属する公務員は、担当する職務の性質上、その政治活動が職務と何ら矛盾するものではなく、かえって、政治的に活動することによって、公共の利益を実現することも職分とする公務員であり、公務のみならず、その政治的活動に関わる政務につき、公務員としてこれを補佐する秘書を設けることが、その職務の円滑、効率的な遂行に資するものという判例があり、御指摘の事項は、知事の政治的活動に関わる政務として行われたものと理解しています。

 東京高裁の平成20年5月15日の判決は、知事自身が行う選挙活動について、知事の職分に属する公的活動であるというということである。知事以外の国政選挙や他の候補者の選挙活動まで含むとは書かれていないのである。拡大して解釈すべきではないし、議会の答弁で引用するべきではない。

 次に、政治姿勢について、47都道府県のうち、約半数の24都道府県で条例を制定し、設置しているのはわずか本県を含めて8都県。既に大阪府、京都府、兵庫県などでは、厳しい世間からの指摘を受けて、この政務秘書職を設けていない。県民目線での改革を標榜する知事として、政務秘書職の廃止を考えるべきと思うが、知事の所見を伺う。

【知事】
 岩手県は、私を含め、戦後7人の知事のうち5人が国会議員経験者であり、3代目の千田知事は参議院議員経験者でいらっしゃいますけれども、政務秘書が任用されてきたと理解しております。
 そのように、岩手県は政治活動、政治経験がある知事が、政務秘書を活用しながら、県政を進めてきたという歴史、私は伝統と言ってもいいと思いますけれども、そういったものを踏まえて、私も今、4期目、14年間、県民の皆さんの支持と理解に基づきながら、そのように知事の仕事を進めてきたところであります。

歴代の知事で政務秘書を置かなかったのは誰か。

【知事】
1代目、2代目、そして5代目、お三方と理解します。

 全国の8割で特別秘書を置かずに行っている。今後、毎年度、多額の財源不足が生じ、財源対策3基金の残高が減少するなど、より一層厳しい財政状況が続く中で、政務秘書に多額の公金をかける積極的な理由・必要性はあるか。

【知事】
 まずは、知事自身が、自分の政治的基盤を県内において強く高めていくということは、知事が強力なリーダーシップを取って、県政を進めていくということに役に立ちます。
 知事が次の選挙でおぼつかない、2回目の選挙を全然考えないのであれば必要性はないと思いますが、自分自身の選挙、また、自分を支持する人たちの選挙とどう関わっていくか、県民の選挙にまで至らない政治的な動向にどう関わっていくかということは、そこを極めれば極めるほど、知事は強いリーダーシップを発揮することができるという傾向がございます。
 過去様々な知事たちが、全国で、様々な政局の転換で不本意ながら知事を辞めなければならないとか、次の選挙に出られないという事例をあまた見ておりますけれども、そういうことになりにくいということがあります。
 そして、県職員、一般職員を、先ほど宗教関係の用務、指摘がありましたけれども、政務に関する仕事を一般職員になるべくやってもらわなくて済むようにする、あるいはそういう疑いのある、政務に関わるかもしれない公務についても、その調整などを一般職員がやらなくて済むというメリットがあります。
 そして、もう一つ。岩手県が百年前に、原敬総理の頃から、岩手の政治の在り様というものが、日本全体の政治の在り様に深く関わっていて、戦前は官選知事ですので、そこに直接関わるということはないですけれども、戦後は知事も選挙で選ばれる政治家でありますので、やはり、岩手が明治維新以降、近代化以降担ってきた日本政治を良くしていくための一つの中心であるということに知事として関わっていく、私がそのような岩手であることが岩手のためになると考えているからでありますが、そのためにも政務秘書が必要と感じております。

 監査委員は、いかにすれば公正で合理的かつ効率的な行政を確保することができるか、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしているか、組織や運営の合理化に努めているかといった観点で監査を行っている。行財政改革で職員不足の中、全国の多くの自治体で廃止している政務秘書制度について、経済性、効率性、有効性の観点から、監査委員の当該制度の運用状況に対する所見を伺う。

【代表監査委員】
 政務秘書については、地方公務員法及び条例に基づき、地方公共団体の長の政策判断により設置されるものと承知しており、監査委員がその適否について言及することは慎重であるべきと考えている。
 本県においては、監査委員は監査基準に基づき、経済性、効率性、有効性の観点も踏まえて、監査対象機関の定期監査等を実施しており、これまでの監査結果において政務秘書について指摘又は注意とした事項はない。
 今後も適切に監査していくが、執行側においても、効率的、効果的な行政運営を心がけていただきたいと考えている。

 私はこの政務秘書制度、給与、勤怠管理、業務内容について、全く不透明で分かりにくい。効果が薄いと考えている。
 県財政は知事の認識のとおり、非常に厳しい状況にある。経済性、効率性、有効性の観点においても、費用対効果が疑わしい制度を積極的に維持しようとする合理的理由が極めて薄い。なぜ他の県で廃止しているのに、それに賛同するような動きができないのか。これまでも1億円以上もの公金が使われている。
 勤務実態が他の職員のように本当に生産的となっているか、具体的な中身をもっと示し、オープンにしていただきたい。財政再建に向けた知事の本気度を確認させていただいた。

2 新型コロナウイルス感染症に係る危機管理対策と経営支援について

(1) 新型コロナウイルス感染症への対応について

ア 専決処分の妥当性について

(※ 質問なし)

イ まん延防止等重点措置について

(※ 質問なし)

(2) 重症者の受け入れ等医療態勢強化について

 私は、危機管理上、最悪を想定し重症者の受入態勢を強化すべきと考える。本議会9月補正案で、岩手医科大学に重症患者向けの仮設病棟6床を新たに整備する予算が計上された。いつ第6波が来るかわからないが、改めて、今回の重症者受入態勢を強化する、危機管理対策上の狙いと今後の医療態勢強化に向けた県のお考えを伺う。

【保健福祉部長】
 新型コロナウイルス対策の医療提供体制についてでございますが、本県においきましても、いわゆる第5波によりまして、8月には新型コロナウイルス感染症の患者が急増し、8月13日に病床使用率が50%を超えたことから、確保病床を250床から350床に拡大するとともに、新たに3棟目の宿泊療養施設を稼働させたところでございます。
 併せて、患者の症状やリスクに応じた入院等調整を行うことにより、自宅療養が生ずることなく医療体制を維持することができたところでございます。
 一方で、全国的には重症患者が増加し、感染拡大地域を中心に医療のひっ迫が生じたことから、本県においても第6波以降の感染拡大に備えた体制の強化が必要と認識しております。
 このことから、岩手医科大学における重症患者受け入れのための新たな施設の整備や、宿泊療養施設の拡充、感染症患者に対応するための病床確保などの経費を本議会に提案している補正予算案に盛り込んだところでございます。

(3) 自殺対策について

 知事は、一人一人の幸福追求権を保障すると常々おっしゃるが、危機管理の視点で、最悪の事態が自死の問題である。知事は、平成19年就任時のマニフェストで「自殺死亡率を全国平均以下に減らすため、自殺予防対策を強化する」と約束した。就任時の知事演述では、「北海道、北東北各県と連携しながら、普及啓発などの予防対策を重点的に推進する」といったが、具体的にどのように連携し成果を挙げられてきたのか伺う。
 また、直近の本県「自殺死亡率」は21.2人と、6年ぶりに全国ワーストになった。県は、年々改善の傾向にあるというが、20歳から39歳の死因のトップが自殺であり、若年層や働き盛り世代の自死の割合が高まる傾向を抑えなければならない。これまでの取組みを検証しながら、地域の様々な分野の関係団体とのネットワークを構築し、県民総参加による連携強化策を如何に展開する考えか伺う。

【知事】
 北海道・北東北各県との連携については、平成19年度当時、健康づくり推進に向けた連携の中で、共通の課題である自殺予防対策として、心の健康に関する普及啓発教材の作成などに取り組んできたところであり、こうした取組を踏まえて、北海道・東北7県保健福祉主管部長会議や東北・北海道の精神保健福祉センター所長会で、取組状況の情報共有などを行っています。
 また、自殺予防に取り組む北東北3県の民間団体では、毎年度、100人を超える規模の交流会を開催しているところ、県では、このような取組を財政面や人材面から支援し、相談支援技術の研鑽や、広域的な連携ネットワークの形成の強化などが図られています。
 自殺は様々な要因が関係し、幅広い分野における包括的な取組が重要であることから、本県では、岩手県自殺対策推進協議会を中心に多様な主体が連携し、官民一体となって取り組んできたところ、自殺者数は、ピーク時から半分以下に減少するなど、一定の成果が現れています。
 しかしながら、令和2年において、自殺死亡率が6年ぶりに全国で最も高くなったことなどから、本年7月に開催した推進協議会におきまして、これまでの取組を検証するとともに、岩手県自殺防止宣言を改定し、それぞれの役割に応じた一層の取組を推進することといたしました。
 コロナ禍が長期化する中にあって、自殺リスクが高まることが懸念されます。
 悩みを抱えた人を孤立させることがないよう、多様な主体が連携し、岩手の総力を結集して、誰も自殺に追い込まれることなく、幸福を実感できる地域社会の実現に向けて取り組んで参ります。

(4) コロナ禍における経営支援対策について

ア 経営支援対策について

 県内企業の経営状況は、震災、コロナで三重債務となり、過大債務を抱えている企業が更に増加している。岩手県信用保証協会によると、延滞等の返済が滞る大口事故が散見され、事故受付の金額は前年比155%であるが、リスケ等の条件変更による正常化条件変更(いわゆる事故調整)は前年比254.4%と早期対応を進めているお陰で、事故残高は未だ増加には至っていない状況にある。しかし、ゼロゼロ融資の約半数は、据置期間が終了し、償還が開始されており、飲食業、サービス業の返済緩和条件変更が多く、極めて深刻なサインが現れている。県は、現在の企業の経営状況をどう認識し、実効性のある経営支援対策を考えているか伺う。

【商工労働観光部長】
 事業者に対する影響調査では、令和2年3月以降、売上が大きく減少している割合が一貫して高い数値で推移しており、多くの事業者が極めて厳しい状況を強いられている。
 また、先月開催した会議においても、金融機関から、飲食や宿泊業者では、融資を受けた資金を含め手元資金が減少し、今後の資金繰りを懸念するとの声があり、金融機関や信用保証協会と償還猶予等の条件変更に、柔軟に対応していくことを改めて確認したところ。
 県としても、「地域企業経営支援金」や、「新型コロナウイルス感染症対策資金」を拡充するなどの対応を進めており、こうした資金繰り支援と需要喚起策等を連動させた取組を効果的に展開していく考え。
 さらに、国に対し、持続化給付金や家賃支援給付金の再度の支給など、必要な財政支援を働きかけつつ、商工指導団体と連携し、事業者が主体的に行う新しい生活様式に対応した新分野展開、業態転換等の本業の立て直しに向けた取組を積極的に支援していく。

イ 事業再生トータルプランについて

 過剰債務企業が多く存在するため、既存の抜本再生(債権カットを伴う)では、労力を多く費やす必要が有り、全ての企業に対応するのは困難である。債権カットは金融機関や信用保証協会の財務も毀損する恐れがある。ゼロゼロ融資は政策金融で実行したものであり、従前よりも簡易で、かつ財務毀損を軽減するような新たなスキームが必要と思われる。今後、国の対応を含め、事業再生トータルプランを如何に考えているか伺う。

【商工労働観光部長】
 金融機関や商工指導団体においても、今後、本業支援を強化していくべきとの考えが強く打ち出されており、国が実施する事業再構築補助金の活用などに積極的に取り組んでいる状況。
 県においても、こうした取組を進め、事業者の経営の立て直しに向けた本業支援を本格的に進めるため、事業継続伴走型支援事業を設け、相談対応スタッフの配置や専門家派遣などによる商工指導団体の体制強化を図っている。
 また、こうした取組を進めるためには、事業者の財務内容の改善も必要であり、現在、債権買取りや出資等の手法を用いて事業再生を目指すファンドによる支援も行われているが、これをより効果的なものとするためには、東日本大震災津波の際と同様に国の出捐も含めたプッシュ型での支援体制の構築も必要と考えており、国に対する働きかけを行って参る。

3 人口減少対策とデジタル社会の推進について

(1) 若い女性層の社会減対策について

 これまで議会では、人口減少対策調査特別委員会を設置し、2年間にわたり調査させていただいたが、移住ニーズに即した情報発信やテレワーク環境の強化、サテライトオフィス誘致など、若い女性層の県内就職、定着促進を強化し「転職なき移住」を加速させるべきとの意見も出された。若い女性層を含め、本県に新たな人の流れを根付かせる戦略をどう考えているのか伺う。

【商工労働観光部長】
 本県への人の流れについてでありますが、本県では、北上川流域における自動車・半導体関連産業を中心とする企業立地や増設などにより、ものづくり産業の雇用ニーズが大きく高まっていることに加え、大手IT企業の首都圏からの本店移転を契機に、IT関連産業の集積への期待も高く、こうした状況に加えて、テレワークの急速な浸透を背景としたいわゆる「転職なき移住」の推進により、本県への新たな人の流れを大きなものとしていくことが重要と考えております。
 このため、今年度は、移住に要する経費の支援や、若者のライフステージに応じた住宅支援、また、医療・看護・福祉など女性の就業ニーズの高い職種の県内企業とのマッチングなどの取組を進めております。
 今後も、若者や女性をはじめとした一人ひとりが、その能力を発揮し、やりがいをもって働き・暮らすことができるよう、移住先や仕事のマッチングなどに取り組んでまいります。

(2) 県組織におけるデジタル人材の確保と育成について

 デジタル化の推進の上で、デジタル改革を牽引する人材をいかに県庁内に確保するかが重要なポイントになる。電子化推進度ランキングで総合1位の茨城県の知事は、マイクロソフトやシスコシステムズの役員を歴任しており、そのリーダーシップが大きいと伺う。本県においても、県と民間企業との間で、人材が流動的に行き来する仕組みリボルビングドア(回転ドア)の仕組みを整える必要がある。特定企業等への利益誘導が起こらないよう配慮しつつ、優秀な人材を民間や国から引っ張ってくる、そして組織内にノウハウを蓄積し高度なデジタル改革を牽引できる人材を育成していくべき。県は今後どのような戦略で、人材確保と育成に取り組んでいくのか伺う。

【総務部長】
 県組織におけるデジタル人材の確保と育成についてでありますが、県のDX推進には、適切なデジタル技術の活用とともに業務の改革を進めることが重要であり、行政経営推進課などの専担部門においては業務効率化や改革に適した高度な知識・技術を有するデジタル人材が、また、各部門においては、ITリテラシーや改革マインドを有する人材が必要と認識している。
 このため、専担部門のデジタル人材は、経験者採用や民間との人事交流、業務委託などにより新たに確保することと合わせ、職員の民間企業派遣や専門研修の受講等によりスキルアップするなど、様々な手法の活用を検討している。
 また、各部門の職員についても、デジタル人材を講師とした研修などにより、職制等に応じた知識、能力を育成し、ボトムアップを図る取組を検討している。
 このような様々な手法により、人材の育成・確保に取り組むとともに、デジタル人材から得た知識やノウハウを活用し、DXを推進していく。

(3) DX人材の育成について

 統計分析やコンピューターサイエンスの知識を元に、大量のビッグデータから新たな知見を引き出し、価値を創造する「データサイエンティスト」の人材育成が重要となる。国は大学などにおいて実践的なカリキュラムを普及展開し、毎年5万人、5年で25万人の人材を育成する方向で検討している。県立大学や産業技術短期大学校等でDX人材を重点的に育成すべきと考えるが、県の所見を伺う。

【ふるさと振興部長】
 DX人材の育成についてでありますが、社会のデジタル化が加速する中、デジタル技術の活用とともにデータサイエンティストなどの高度なデジタル人材の育成を行う高等教育機関の役割がますます重要になっているところ。
 現在、県立大学ソフトウェア情報学部では、令和元年度に「データ・数理科学コース」を設け、データサイエンティストの育成にも力を入れている。
 また、産業技術短期大学校では、AIやIoTなどを授業に組み入れ、技術革新や企業ニーズに応じた人材育成に取り組んでいるところ。
 県では、本年6月に産学官で構成する「いわて高等教育地域連携プラットフォーム」を設立し、DXを含めた人材育成を重要なテーマとするよう検討を進めているところ。
 また、本県におけるDXの推進にオール岩手で取り組む「いわてDX推進連携会議」を7月に設立し、DX人材の確保・育成に向けた支援に取り組むこととしているところ。
 県としては、これらの連携組織において関係機関・団体と議論を深めながら、地域に貢献するDX人材の育成、県内定着を図り、本県の様々な分野におけるDXの推進につながるよう連携して取り組んでいく。

(4) スーパーシティ構想とDXについて

 矢巾町は、最先端技術を活用した国家戦略特区「スーパーシティ構想」に応募し、①健康寿命の延伸と医療扶助費の抑制、②多層型コミュニティとセーフティーネットの再構築、③中心市街地と周辺農村部の格差解消という3つの課題解決に取り組もうとしている。スーパーシティ構想は、県が取り組むべき重要な課題であるが、県としてデジタル人材の確保支援を含め、主体的に関係部局の事業や職員を投資し、より踏み込んで支援すべきと考えるが、県の所見を伺う。

【ふるさと振興部長】
 スーパーシティ構想とDXについてでありますが、 県では、これまで、矢巾町と特区の指定に必要となる情報の共有を図るとともに、データ連携基盤に関する専門家を交えた意見交換を行ってきた。
 また、国において採択がなされた場合には、産業分野、環境保全分野等の取組に岩手県立大学や産業技術短期大学校も参画することとなっている。
 本年7月に設立した「いわてDX推進連携会議」の商工部会において、矢巾町の担当者を招き、矢巾町のスーパーシティ構想を構成する先進的な取組に対する理解醸成にも取り組んできたところ。
 スーパーシティに関係の深いDXに関しては、北上川バレープロジェクトにおいて、自動運転やスマート農業などの事例研究、東京大学と一関高専の連携によるAI人材育成講座の開催など産業分野における様々な取組を進めているところ。
 県としては、「いわてDX推進連携会議」等において、DX人材に関する議論を深めながら、DX人材の育成に取り組むこととしており、矢巾町のスーパーシティ構想と連携させながら、本県の様々な分野におけるDXの推進につながるよう取組を進めていく。

4 米政策とみどりの食料システム戦略について

(1) 3年産米の米価下落による生産者の経営対策について

 先日示された、令和3年産米の概算金は、主食用米のひとめぼれ2,300円減の10,000円、あきたこまち2,600円減の9,500円、銀河のしずく2,300円減の10,500円であった。
 私の試算によると、3年産米の米価が概算金と同等に低下するとした場合の影響額は77億円。また、組織法人経営の生産費を試算すると、60㎏/11,723円、労務費を引いた生産原価で8,974円、生産限界ぎりぎりのラインである。
 米価下落による生産者の経営対策をどう講じる考えか伺う。

【農林水産部長】
 米生産者の経営安定対策についてでありますが、新型コロナウイルス感染症の影響による外食需要の減少に伴い、全国的に米の需給が緩和しており、全農岩手県本部が発表した令和3年産の米の概算金が、前年に比べ引き下げとなるなど、米生産者への影響を懸念している。
 米の生産流通は、都道府県単位では完結せず、国全体での対応が必要であることから、県では、先月、国主導による実効的な過剰米への対策や消費喚起などの需要拡大対策を推進するよう、国に対し要望したところ。
 また、生産者の経営安定に向け、経営継続に必要となる資金の円滑な融通や、既往債務の償還猶予等が図られるよう県内の金融機関に対し要請したほか、広域振興局や農業改良普及センターなどに相談窓口を設置し、生産者からの経営相談や活用可能な無利子資金の周知等を行っているところ。
 さらに、量販店等と連携したキャンペーンなど、県産米の販売促進や消費拡大に向けた取組を進めており、引き続き、関係団体と連携しながら、生産者の経営安定が図られるよう積極的に取り組んでいく。

(2) 銀河のしずくの生産販売体制について

 各県のブランド米と称する品種は、青森の「晴天の霹靂」は500円安の15,100円、山形の「つや姫」も500円安の15,300円、ほぼ現状維持を貫いた。本県に於いては「銀河のしずく」も他のブランド品種と同様に自信を持って販売する意気込みは無かったのが残念である。そこで伺うが、本県オリジナル品種「銀河のしずく」の位置付けと将来の品種構成をどう考えているのか明確に示されたい。
 また、「銀河のしずく」を主力品種とする生産販売体制を構築し「いわて純情米」のブランド力強化に取り組むべきと考えるが、県の所見を伺う。
 併せて、生産者が意欲を持って生産し、所得向上につながる生産基準の整備について、県の所見を伺う。

【農林水産部長】
 「銀河のしずく」の生産販売体制についてでありますが、本県では、これまで「銀河のしずく」等を県産米のフラッグシップとして、ブランド力の向上を図り、県産米全体の評価向上につながるよう取り組んできたところであり、今後においても、本年3月に策定した新たな「いわてのお米ブランド化生産・販売戦略」に基づき、県産米の評価向上、消費拡大を進めていくこととしている。
 特に、「銀河のしずく」については、実需者、消費者からの評価も高く、外食・中食等の需要も拡大していることから、「ひとめぼれ」に次ぐ作付面積となるよう「あきたこまち」等から「銀河のしずく」への転換を促進することとしている。
 また、ブランド力の向上には、全国トップクラスの品質と食味の確保が不可欠であることから、品質目標として掲げている玄米タンパク質含有率等が達成されるよう、栽培研究会の活動などを通じて生産者と連携しながら取り組んでいくこととしている。
 さらに、これまで築いてきた全国の米卸売業者等とのネットワークを生かし、販売促進活動などを進めていくこととしており、県オリジナル品種を核として、県産米全体のブランド力が向上するよう関係団体と連携しながら積極的に取り組んでいく。

(3) みどりの食料システム戦略への対応について

 国が策定した「みどりの食料システム戦略」への対応について、伺う。
 米生産を含む本県農業の特徴は、畜産との連携による堆肥を活用した土づくりにあり、ブランド戦略の重要なポイントになる。本県の堆肥施用実績は、10a当たり水稲1.1トン、畑作物・野菜で3.1トン。青森県、宮城県、福島県の基準を大幅に上回っており、土づくりへの意識が高いといえる。また、農林業センサス2020によると、有機農業に取組んでいる作付面積は4,958haで全国4位。東北では宮城に次いで2番目。有機農業作付け経営体数2,626 全国5番目。そこで伺う。
 本県農業の現状や課題等を踏まえた農政推進方針を策定し、将来にわたって、化学農薬・肥料の削減や二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指した食糧供給基地いわてを発展させていくべきと考えるが、中長期的な考え方、計画策定の考えについて伺う。

【農林水産部長】
 「みどりの食料システム戦略」への対応についてでありますが、県では、平成11年度に制定された「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき、平成12年3月に県の指針を策定したほか、平成24年度には「“ひと”と“環境”に優しいふるさといわて農業プラン」を策定して、化学農薬や肥料の使用量を削減する効率的な病害虫防除や、堆肥等による土づくりなどを進めてきた。
 これまでの取組を更に強化していくため、令和12年度までを計画期間として本年3月に策定した「“ひと”と“環境”に優しいいわての農業生産推進方針」に、化学農薬や肥料を削減できるスマート農業技術の活用や有機農業の推進に向けた人材育成等を、新たに位置付け、関係者と一体となって取り組むこととしている。
 こうした本県の取組は、本年5月に公表された「みどりの食料システム戦略」の取組方向と概ね一致していると考えており、県としては、この戦略に基づく国の施策の動向を踏まえながら、化学農薬や肥料、温室効果ガス排出の削減に向けた環境に優しい農業を積極的に推進していく。

5 県立高校の再編計画と教育委員会制度について

(1) 高校再編計画の議論の透明化について

 2月県議会で、「学校はだれのもの」の問いに、教育長は、「最終的、究極的には、子どものもの」と答弁されたが、学校は地域の核になるもので、前川前文部科学省事務次官は「地域住民のもの」とおっしゃっていた。つまり、広く地域住民の意向を反映した教育行政の実現にむけ、教育長、教育委員たちは密室でなく、住民に開かれた議論の下、合議制で決定していくことが不可欠である。平成13年法改正で、教育における「住民自治」が強化され、教育委員会会議は、原則公開、教育行政の説明責任を果たすことがうたわれた。また、平成26年改正で教育委員会会議の議事録の作成や公表の努力義務を規定されるなど、会議の透明化も進められている。しかし、今回の再編計画の議論においては、多くの議論が教育委員会協議会などにおける非公開の場で行われており、議論の経過について、十分な透明化が図られたかは、甚だ疑問である。
 教育長の認識を伺う。県民の知る権利は、地方自治の本旨に根差すものであり、最大限尊重していかなければいけないもの。基本的な考え方は変わったのか。議論の内容を非公開にする合理的基準を含めお知らせ願う。

【教育長】
 高校再編計画後期計画の策定にあたっては、地域の代表者による地域検討会議や一般県民との意見交換会、要望に応じた説明会及びパブリック・コメントを行い、丁寧に意見を伺ってきたところ。
 また、地域説明会を追加で開催し、県民の理解が深まるよう努めてきたところであり、教育委員にはその実施状況や要望内容等も報告し、意見を伺ってきた。
 教育委員との議論については、教育委員会議のほか、教育委員会協議会等で議論を進めてきたところであるが、今後は、議案以外の案件であっても重要な案件については議論の過程について、例えば方向性や方針等について教育委員会議で中間報告等を行い、より開かれた議論となるよう努めていきたい。

 教育委員会協議会での議題を見ると、後期計画(案)の全体方針、後期計画(案)の方向性、地域検討会議の実施状況など、公開とすることにより必ずしも議論に支障をきたすとは思えないものもある。
 「非公開」とする場合は、「例えばいじめ等の個別事案における関係者の個人情報等を保護する必要がある場合、次年度の新規予算事業に関する具体的な補助金の額や対象の選定等、意志決定の前に情報を公開することが公益を害する場合等を想定」している。これは、平成26年改正地方教育行政法にも規定されている。限りなく限定的に運用すべき。ぜひこれをしっかり踏まえていただきたい。
 そもそも教育委員会制度は、戦後アメリカから仕組みが入ったものである。アメリカでは選挙で市民から委員が選ばれる。教育のプロではない一般の市民の方が教育の在り方について議論し、合議制で決めている。日本においては、議会の同意を得ることとなっているが、教育委員会制度の胆である「住民による意思決定(レイマンコントロール)」を機能させてほしい。
 先ほど教育長から前向きな答弁があったが、過去の教育委員会協議会の議事録を今からでも公開する考えはあるか。

【教育長】
 教育委員会協議会の議事録については、その内容を公開することにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が損なわれるおそれ、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ等があることから、これまで非公開の取扱いとしてきたもの。
 議員ご指摘のとおり、今回の再編計画後期計画の策定の過程においては、全体方針や子計画案、地域検討会議の実施状況といったものが議題となったものもある。
 今後、統合検討委員会での議論等も、しっかり教育委員会会議に報告をした上で、議論の透明化を図っていきたい。

 意思決定の前に情報公開することが公益を害する場合を想定しているのである。終わったら、オープンにしたらよいのではないか。我々市民はどのような議論があったか知る権利があると思う。
 平成20年度の県議会における教育長答弁で、秘密会の在り方について見直しが必要との認識を示している。教育委員会会議は原則公開としていきたいと明確に示している。教育委員会協議会とは別かもしれないが、基本的な姿勢は当時の教育委員長も前向きな答弁で示しているのである。その後、教育委員会ではどのような議論がなされているか。

【教育長】
 当時の県議会でのやり取り等は、はっきりと確認していないところ。
 今般の計画策定に当たっての教育委員との議論では、率直な意見を大変多くいただき、それらについて、これまで教育委員会協議会を非公開としてきた取扱いに変わりはないが、先ほど答弁したとおり、今後、議案以外であっても重要な案件のほか、県民が知るべきもの、公開しても支障のないものは当然公開していき、より開かれた議論となるようにしていくべきものと考えている。

(2) 盛岡地区の高校再編計画について

 盛岡地区の高校再編計画については、盛岡に生徒が集中している現状緩和が狙いとして、2023年度に盛岡南高校、不来方高校、両校の学級数を減らし、2025年度に統合する、体育や芸術など特色ある教育を生かす「発展的な統合」とのことでした。令和7年に統合新設校がスタートする、つまり、今の小学六年生が新たな高校に入学することから、進路判断する上でも早い時点で新たな統合校の具体的な内容を示すべきであります。今後の手続きを含め、具体的な「発展的統合」の内容をお示し願います。

【教育長】
 盛岡地区の統合新設校は、文系、理系の学びのほか、芸術、外国語、スポーツに関する多様な学びを確保するとともに、地域や高等教育機関との交流、連携を図りながら、特色ある学びの横断による探究活動の展開や、地域課題の解決に向けた実践に取り組む学校として整備してまいりたいと考えている。
 今後、統合対象の二校において、統合新設校の学習内容や学校運営等に関する検討、調整などの作業を始めるとともに、学校関係者や地域の代表者等で構成される統合検討委員会を設置したいと考えているところであり、特に、将来の受検生やその保護者の方々に向けた統合新設校の内容等に関する適切な情報発信にも努めながら、丁寧に進めてまいりたいと考えている。

(3) 持続可能な教育環境の維持について

 最後に、本質的な課題をデータに基づいて指摘します。本県の高校は、全国を上回るペースで学校の小規模化が進んでいます。「1学校当たりの生徒数」はH22年468.1人/校(全国40位)から令和元年387.5人/校(44位)に減少し、また、「1学校当たりの決算額(一般財源等充当額)」も、H22年380.7百万円/校(全国41位)から令和元年372.6百万円/校(41位)に減少している。もともと小規模な高校が多いため、1校当たりの決算額は低位安定であります。「生徒1人当たりの決算額」は、H22年813.2千円/人(全国15位)から令和元年961.5千円/人(6位)に急上昇。
 生徒数が大幅に減っているのに、高校はさほど減っていない。小規模化が進展しているため、当然ですが、生徒1人当たりのコストは上昇しています。手厚い教育機会を確保していると評価する一方で、県財政は極めて厳しい状況にあります。財政の視点、コスト面での議論を深めないと、子どもたちの持続可能な教育環境を維持できなくなる。教育長は専門的、技術的に教育委員の議論を主導する責任があるが、どのようにお考えか伺う。

【教育長】
 県立高校は、広大な県土を有する本県の各地域における公教育の基盤として、どの地域に居住していても高校教育を受けられる機会の保障を図る役割も担っているところであり、今後、中学校卒業者数が減少する状況においては、多様な観点から高校配置のあり方について議論する必要があると認識している。
 こうした点も含め、教育委員に対しては、教育行政等に係る様々な情報提供に努めているところ。
 また、総合教育会議や全国都道府県教育委員会連合会総会等への出席、市町村の教育長、教育事務所長等との意見交換、各種行事への参加や学校訪問を行うことなどによって活動していただき知見を広げていただいている。
 それらの活動に加え、委員御自身の活動による見識に基づいた意見等を頂戴している。
 引き続き、教育委員会の会議等における議論が活発に行われるよう、委員の皆様方の様々な活動の機会の確保や適切な情報提供に努めていく考え。

6 県有スポーツ施設の整備計画について

(1) スポーツ医・科学サポートの拠点整備について

 東京オリンピック・パラリンピック開催された今年こそ、スポーツ医・科学サポートの拠点整備に向け、踏み出す時期に来ている。昨年の答弁では、「いわてスポーツ推進プラットフォーム」を構築し、活動拠点の整備に向けた検討を行うとされているが、現在の検討状況と来年度予算要求に向けて具体的な今後のスケジュールを伺う。

【文化スポーツ部長】
 スポーツ医・科学サポートの拠点整備についてでありますが、いわて県民計画に掲げる文化・スポーツレガシープロジェクトでは、官民一体によるスポーツ推進体制を構築し、国体、ラグビーワールドカップ、オリンピック・パラリンピックの経験やノウハウを生かした競技力向上などに取り組むこととしている。
 現在、外部有識者から意見を伺いながら、令和4年度のプラットフォームの設立を目指し検討を進めている。
 スポーツ医・科学サポートについては、県ではこれまで、大学や医療関係者等と連携し、選手強化のトレーニング指導やアスレチックトレーナー養成、市町村体育協会主催の健康教室への講師派遣などを実施しており、これらの取組が、スーパーキッズの全国大会での上位入賞や、本県出身選手の国内外の大会での活躍につながっているものと考えている。
 今後は、競技団体等からニーズの高いトレーニング指導やコンディショニング等のメニューの充実・強化を図り、このような取組を重ねていく中で、拠点のあり方についても検討していく。

(2) 県営スポーツ施設の整備について

 市町村や県の水泳連盟から、体育館や屋内温水プールといった県営スポーツ施設の建設に対する要望が出されている。県営屋内温水プールについては、今年度は、経年劣化による施設、設備の老朽化が進んでいることから躯体調査も行っている。私は、これからの施設更新・整備においては、3つの視点が重要になる。①一つの目的ではなく、より多くの公共的機能、多目的化の視点、②市町村や民間との連携、③民間事業者を活用し稼働率アップ。県として、施設整備更新に向けた検討状況は、どの程度進んでいるのか伺う。
 また、市町村等との連携(施設規模や機能分担、役割)や指定管理者制度の効果的な運用に向けたサウンディング型市場調査をやるべきと考える。県の所見を伺う。

【文化スポーツ部長】
 県営スポーツ施設の整備についてでありますが、  県では、本年2月、令和2年度から6年度までを期間とする「岩手県文化スポーツ部所管公共施設個別計画」を策定し、県営体育館や県営屋内温水プールなど7施設については、計画的な修繕・改修を図りながら長寿命化を図っていくこととし、県営野球場については、盛岡市営野球場と集約化を図ることとしたところ。
 新野球場の整備に当たっては、県と盛岡市の財政負担の軽減を図るため、市と共同でPFI方式を採用し、民間活力やノウハウを活用した整備を行っている。
 議員から提案のあった民間のニーズや意見を聞くサウンディングの手法も含め、市町村等の意見を始め、民間のアイディアや利用者ニーズを的確に把握しながら、効率・効果的なスポーツ施設の運営に努めていく。