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県議会報告

令和3年度6月定例会本会議(反対討論)(令和3年7月6日(火))

2021.07.10

「計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度拡充を求める請願」に対する反対討論

 請願陳情 受理番号第45号「計画的な『教職員定数改善』及び『義務教育費 国庫負担制度』拡充を求める請願」の委員長報告に対して、「反対の立場」から討論いたします。
 計画的な「教職員定数改善」に関しては、子どもたちの豊かな学びと、きめ細やかな教育実現のために、反対するものではありません。

1 計画的な教職員定数の改善と加配定数について

 はじめに、請願事項の2つ目「計画的な教職員定数の改善と加配定数」につきましては、「義務教育標準法」の法案審査において、「個々の教育課題に応じた加配は引き続き確保すべき」との意見も出されており、法案審議の状況も踏まえつつ、必要な加配定数は、しっかりと対応していくとされていること、
また、本年3月17日、「義務教育標準法」改正時の国会附帯決議において、「小学校6年生までの段階的な35人学級編制は、必要な加配定数を削減することなく、安定的な財源によって措置すること。特に、地方公共団体が行っている35人を下回る少人数学級やチーム・ティーチングによる少人数指導、いじめ・不登校等に係る指導などの加配定数は、教育環境の改善に必要不可欠なものであることを踏まえ、必要な教職員定数を引き続き確保すること。」とされているところであり、「反対」するものではありません。

2 中学校・高等学校での35人学級の早急な実施と、さらなる少人数学級の検討について

 一方、請願事項の1つ目「中学校・高等学校での35人学級の早急な実施と、さらなる少人数学級の検討」につきましては、今年3月、40年ぶりに法律が改正されたばかりであり、小学校での35人学級等の教育効果が十分、かつ、実証的に分析・検証されていない現段階で、中学校・高等学校を含め35人学級を早急に実施することは時期尚早と考える立場から「反対」をいたします。
 本県では、現在、小中学校全ての学年で、加配定数も活用し35人学級を実施していますが、「新しい生活様式」も踏まえた学習・生活環境の整備を図るためには、基礎定数化が必要であり、小学校のみならず中学校においても子どもたちの学びを保障し、個別最適な学びを実現していく必要性に何ら変わりはありません。
 一方、高等学校については、現行の算定方法では、1学級の収容定員を少なくすると教職員定数も減少してしまうこと、1学級の生徒数を40人から35人とした場合、生徒の収容定員が減少し、それに基づき教職員数が約230人程度減少することから、その分の教員補充経費として約20億円が必要になると試算されています。
 本県としては、まずは、地理的条件を抱えた地域の小規模校に係る「教職員配置基準の見直し」を含めた定数改善を進めるべきと考えます。
また、「義務教育標準法」改正時の国会附帯決議においても、「政府は、少人数学級の効果検証結果等を踏まえ、中学校35人学級の検討を含め、学校の望ましい指導体制の構築に努めること。 また、高等学校の学級編制の標準の在り方についても検討すること。」とされております。
 さらに、「35人学級を担う教員の人材確保のため、文部科学省が進める教員免許更新制や研修の包括的な検証において、教員免許更新制の大幅な縮小や廃止を含め、教員の資質能力の確保、負担の軽減、必要な教員の確保の観点から検証・検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずること。」とされており、少人数学級の丁寧な効果検証等を行なったうえで慎重に議論を深めていく必要性があることから「反対」をいたします。
 このように法律の施行に当たり、特段の配慮事項として附帯決議がされている中、小中学校全ての学年において35人学級を実施している岩手県から、全ての子供たちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と、教育的ニーズに応じた「きめ細かな指導体制の構築」に向け、県独自の効果検証データを国に提出し、課題を含め総合的な政策提案すれば、本意見書が求める少人数学級の実現により近づくのではないでしょうか。

3 義務教育費国庫負担割合の引上げについて

 請願事項の3つ目「義務教育費国庫負担割合の引上げ」についても、「反対」するものであります。
 市町村の財政力の差によって義務教育における教育水準に格差が生じないようにするため、国と都道府県の負担により、教職員給与費の全額を保障する「義務教育費国庫負担制度」は必要な制度であり、本制度を堅持し、義務教育に対する国の責任をしっかりと果たすことは当然のことであります。
 ただし、三位一体改革は、「義務教育の国庫負担についても、地方に任せるべき」との地方の主張に配慮した結果で、交付税、税源移譲、補助金の三位一体改革により措置したものであり、国庫負担率で不足する分は、税源移譲により確保することとされております。そのような状況において、義務教育が地方の実情に応じて特色ある教育活動を展開できるよう、地方もその責任を果たしていくことは、極めて当然であると考えます。
 意見書では、「義務教育費国庫負担率が2分の1から3分の1に引き下げられたことで、各自治体における財政状況が義務教育費に影響する可能性が高まり、自治体間の教育格差が危惧されている。」とありますが、実際には、国庫負担に不足する財源は、税源移譲により確保されており、県当局にも確認しております。財源が確保できている状況で、地方の裁量を減らし国の裁量を増やす本意見書は、地方分権に逆行することとなり、「反対」をいたします。

 以上の通り、我々は請願事項の1つ目と3つ目に対して、国会での付帯決議や三位一体改革といった地方分権の取組みを踏まえ、少人数学級の丁寧な効果検証等を行なったうえで慎重に議論を深めていくべきとの判断から「反対」をいたします。
 議員各位の御賛同を心からお願い申し上げまして反対の討論といたします。御清聴ありがとうございました。