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県議会報告

令和2年度2月定例会本会議(反対討論)(令和3年3月25日(木))

2021.03.28

「コロナ禍をのりこえるためにもジェンダー平等施策を強めることを求める請願」の一部に反対

(1)「女子差別撤廃条約の選択議定書を批准すること」

「コロナ禍をのりこえるためにもジェンダー平等施策を強めることを求める請願」における請願事項の一部に対して「反対の立場」から討論いたします。

請願事項2「女子差別撤廃条約の選択議定書を批准すること」につきましては、
現在政府において女子差別撤廃条約選択議定書の早期締結に向けて、真剣な検討が為されているところであります。
我が国の司法制度や立法制度との関連において、検討すべき課題について、関係府省庁間で連携して調整を進めている段階であり、「反対」するものではありません。

(2)「女性の貧困やDV対策など国のジェンダー施策を強めること」

また、請願事項3「女性の貧困やDV対策など国のジェンダー施策を強めること」につきましても、昨年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」において、女性の貧困やDV対策に対して、具体的かつ着実な施策が盛り込まれていることから、「賛成」をいたします。

(3)「夫婦別姓を選べる制度を取り入れる民法改正を行なうこと」

一方、請願事項1「夫婦別姓を選べる制度を取り入れる民法改正を行なうこと」に関しては、より一層の慎重な議論を行なうべきであり、民法改正を県民の総意として国へ意見書を提出することは時期尚早と考える立場から「反対」をいたします。

現在の夫婦同姓制度においては、姓を変えることにより社会的な不利益を被ったり、事実婚を選択せざる得ない事態が生じたりするなどの理由から、選択的夫婦別姓の導入を求める意見も多くみられるようになりました。
一方で、夫婦別姓を取り入れる民法改正については、家族の在り方の根幹に関わる問題であり、伝統的な家族観を壊してしまうのではないか、といった懸念や、子供の姓をどうするのか、といった家族をめぐる様々な問題が生じることから慎重な検討が必要となります。

そもそも、夫婦同姓制度自体は明治31年に旧民法が制定されてから120年程度の歴史であるものの、戸主(こしゅ)と家族からなる日本古来の「家」を規定する戸籍制度は、645年の「大化の改新」以降、1300年以上続く日本の伝統であり、世界でも日本を含めて数ヵ国しかありません。戸籍制度はまさに日本古来の伝統的な家族観を形成しているものであります。だからこそ、戸籍制度と一体不可分である現在の夫婦同姓制度における民法改正に関しては、我々は慎重かつ丁寧な議論が必要であると考えています。
直近の国の調査は、2017年に内閣府が行った「家族の法制に関する世論調査」であります。この調査において、全体では、「夫婦は同じ姓を名乗るべきであり、法律を改める必要がない」と答えた人が29.3%、「法律を改めてもかまわない」と答えた人が42.5%、「夫婦は同じ姓を名乗るべきだが、婚姻前の姓を通称として使えるように法律を改めることはかまわない」と答えた人が24.4%でありました。
「法律を改めるべき」と答えた人が42.5%と多かったものの、「同姓であるべき」あるいは「同姓であるべきだが、婚姻前の姓の使用を正式利用できるように法整備すべき」と答えた人が合わせて53.7%と半数を超えており、意見が割れている状態であります。また、年代別で見ると、20代から30代では男女ともに「法律を改めてもかまわない」と答えた人が半数以上いる一方で、70代以上では男性で半数、女性では半数以上が「夫婦は同姓であるべき」と回答しております。このように年代間でも意見が割れていることから、各年代、各地域において丁寧な実態調査を行なったうえで議論を深めていく必要性があります。

最近では、「選択的夫婦別姓制度」に関して民間のアンケート調査も増えてきましたが、それらの調査は「婚姻前の姓を婚姻後も法的に利用できるようにする」という選択肢が恣意的に除外されているものであり、回答者にとってフェアな選択肢が与えられていたとは考えられません。この選択肢は、2017年の内閣府の調査においては、どの年代においても約25%、4人に1人が回答していた選択肢です。

こうした選択肢が意図的に削除されたような全国調査をもとに、選択的夫婦別姓制度の導入に関して「機は熟した」との意見もありますが、そもそも全国調査の結果を岩手県民の意見と決めつけ、岩手県民の現状を知る調査もしていない段階で、「機は熟した」と言うことは大きな危険性を孕んでいるのではないでしょうか。

今、我々が行うべきは、岩手県民における家族の姓に関する意識調査ではないでしょうか。調査もせずに、何のエビデンスもなしに、国に対して、岩手県民の総意として民法改正を要望するのは、いささか乱暴ではないでしょうか。1300年以上の伝統を持つ戸籍制度と一体不可分の現在の制度の変更を、一朝一夕で議論する必要もなければ、岩手県民の意向を調査もせず議会が結論を急ぐ必要もありません。
岩手県民の各年代、各地域の意向を調査したうえで、夫婦別姓を取り入れる民法改正の機運が高まっていれば、改めてそのデータをもって国へ意見書を提出すればいいのです。
自由民主党においては本日「選択的夫婦別姓に賛成する議員連盟」が設立、来週には「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」の設立の動きがあります。国会においても様々な意見がある中で、岩手県からそのようなデータ、県民の意向を伴った意見書を提出されれば、その意見書はより一層重宝されるものとなるでしょう。

以上の通り、我々は請願事項1「夫婦別姓を選べる制度を取り入れる民法改正を行なうこと」に対して岩手県民の意向を十分に調査したうえで国により活発な議論を促すべきとの判断から反対をいたします。

議員各位の御賛同を心からお願い申し上げまして反対の討論といたします。
御清聴ありがとうございました。