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県議会報告

常任委員会(農林水産委員会)(令和2年9月1日(火))

2020.09.30

1 原木シイタケ生産環境の再生の取組

(1) 営農を再開している生産者の状況について

 環境生活部から7月付で岩手県放射線影響対策報告書が届きました。この中で、まさに震災から10年目を迎えて、その中でも重要課題の第一番に上げられているテーマ、これが原木シイタケ生産環境の再生の取組について上げられておりましたので、本日はこの原木シイタケについて伺います。
 10年たちますけれども、出荷制限が指示されている13市町村の全てで、一部解除をされまして、これまでに207名の方々が生産可能になると報告書にはありますが、まず初めに今の原木シイタケの営農を再開している生産者の状況、そして震災前の平成22年度と比べてどの程度の生産者が減少されているのか、あるいは台帳上の生産者と比べてどの程度なのか、まずこの実態についてお聞きします。

○高橋林業振興課総括課長
 原木シイタケの栽培を再開している生産者数ですが、県が平成24年度に調査いたしました震災前に露地栽培の原木シイタケを生産しておりました生産者数は約1,500名ほどでした。令和2年7月末現在出荷可能な生産者数は約760名、半数程度となっております。
 また、出荷制限対象の13市町におきましては、震災前の露地栽培の原木シイタケ生産者数は約960名でしたが、令和2年7月末現在生産を再開し、出荷可能となりました生産者は約200名と、2割程度となっております。

(2) 生産減少理由に対する県の認識について

 本当に厳しい、今はもう正に8割減、例えば再開したところも200名にとどまっております。私も林野庁の統計データを改めて各年で、干しシイタケ、生シイタケの経緯を見ておりまして、全国の減少幅とどういう傾向があるのか見させていただきましたが、全国では32%ぐらいの減にとどまっておりますけれども、本県は今も答弁があった通り、54%と半減されております。特にも数字で見ていくと、震災から平成26年度が6割ぐらいに落ちながら最近は少し回復しているような国のデータでありました。厳しい状況にあると思っております。
 それで、この減少している理由、県はどこに原因があると捉えているのか、今の現状についての御認識をお伺いいたします。

○高橋林業振興課総括課長
 シイタケ生産の減少についての原因という御質問ですが、今委員からお話しがありましたとおり、岩手県におきましては県南地域での生産者数の減ということがありまして、こちらも生産が可能でなくなったということであります。その後平成24年頃から出荷の再開を始めておりまして、一時期50名、60名という再開しておりますけれども、現在では人数が減ってきているということであります。
 また、シイタケ価格につきましても放射能の影響がありまして、全国的に影響のある地域についてのシイタケは価格が低い状況が続いております。全国的な価格も下がっておりまして、これを再生産に結びつけるといったところでは、本来1キロ当たり4,000円程度の価格が欲しいということですけれども、3,000円台で推移しているということもありまして、新規の栽培者がなかなか出てこないことが課題となっていると考えております。

(3) 原木価格の推移と県の支援策について

 御案内のとおり、本県原木シイタケの生産というのは東日本最大の産地なのです。これについて、私は震災から10年を迎えるこの今の時期に新規就農を含めた担い手対策など、新たに強化策をやらないと、担い手、生産者も縮小しておりまして、今後、これからの10年、どう取り組んでいくのかという非常に重要な岐路に立っていると思って今日は取上げさせていただいております。
 それで、原木価格の推移、そして県の支援策についてお伺いしますけれども、シイタケの原木価格、震災前に比べて林野庁のデータをグラフ化して見てみますと、震災前に比べて3割弱上昇しております。ただ、生産者の方からは、全国では令和2年度この春、2倍近く値上がりしている声も届いておりますが、原木価格の相場の推移を県はどのように認識し、安定的に原木価格を確保するためにどう取り組もうとしているのか伺います。

○高橋林業振興課総括課長
 原木価格の推移と県の支援についての御質問でした。
 県内のシイタケ原木価格の推移につきましては、震災前の平成20年から22年の平均価格、こちら原木1本当たり181円でございましたが、令和元年度におきましては318円となっておりまして、約1.75倍まで上昇しております。
 これに対する県の支援策ということですが、高騰する原木価格対策といたしまして、国庫補助事業を活用した原木購入、県の支援を実施しております。また、原発事故の影響によりまして、高騰した分の原木価格と震災前価格の価格差、いわゆる掛かり増し経費につきましては、東京電力から賠償金が支払われるということになっております。この賠償が支払われるまでの間、県の単独の経費でつなぎ融資を実施させていただいておりまして、生産者の資金繰りを支援しております。

(4) 原木の調達ルートと原木の品質について

 現在、全国の原木の確保についてどのような課題があるのか、当然県では把握していると思います。国のデータの原木の調達ルートということで、他県からの調達の実態、まさに震災前は本県の場合は県内で大体100%を調達していますけれども、岩手県の原木というのは青森県や宮城県に若干流れております。令和元年の状況を見ますと青森県、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、神奈川県、新潟県、遠いところでは京都府まで岩手県の原木が流通しています。福島県産の原木が流通できなくっていることで、やはり逼迫しているということがあります。そういった中で、本県の原木調達のルート、震災から10年でどう変化しているのか、そこら辺について伺います。生産者の方からはなかなか原木の品質低下、それによって生産量の減少や、生産効率が悪化している声が寄せられておりまして、県としてこの現状をどう捉えているのかお伺いします。

○高橋林業振興課総括課長
 原木調達ルートと原木の品質についての御質問でした。
 原木調達ルートにつきましては、出荷制限対象となっております13市町の原木調達ルートにつきましては、シイタケ生産者が自分の所有山林から調達しました原木の割合が震災前、平成22年の、これ21%でしたが、平成30年には5%まで減少しております。一方、森林組合、農協、素材生産業者等の他者から調達した割合はその逆でして、22年度には79%、平成30年度には95%まで増加している状況であります。
 原木の品質低下につきましては、シイタケ原木を購入する場合には、伐採される広葉樹林の状況等によりまして、必ずしも個々の生産者が希望する品質の原木を調達できない場合もあるというようなお話は我々のほうでも生産者の方々から聞いております。県といたしましては、シイタケ原木供給連絡会議を開いておりまして、こうした状況につきまして関係者と情報共有をしているとともに、森林組合や原木を供給する団体等に対しまして、例えば生産者が希望する原木の太さ、長さ、樹種、あと産地を希望する場合や、供給希望時期、こういったことを細かに聞き取りまして伝達し、希望に添った原木の供給に努めるようにしております。

(5) 遠距離地伐採に係る措置経費の支援について

 自己所有の山林からの取得という部分も非常に下がってきております。生産者からは、伐採スキルは自分達が持っているということです。素材業者に依頼せず、自分たちで伐採することで、供給コストを抑えたい考えがあります。しかし、県内の花巻市や釜石市のグレーゾーンと言われる地域の方々は、自己所有の遠距離地域にある山林の伐採にかかる経費がかさむことから、その部分の経費支援について要望がありますが、そのような事例への支援策についてお伺いいたします。

○高橋林業振興課総括課長
 遠距離地伐採に係る措置経費の支援についての御質問ですが、生産者が自己所有の山林外から原木を伐採することについては、伐採が可能な広葉樹林の場所の把握や、その広葉樹林を持っていらっしゃる森林所有者の意向、そのための合意形成など、様々な課題があると認識しております。今後関係者の皆様の意見も聞きながら検討していく必要があると考えております。
 なお、自己所有の山を伐採できなくなった方々につきましては、先ほど申し上げましたとおり、県といたしまして希望量等を取りまとめまして、シイタケ原木の供給連絡会議におきまして需給調整を行っているところでございます。

(6) シイタケ原木の指標値と東京電力の賠償金とのずれについて

 生産者の方々は関係機関等非常に頑張っておりまして、原木類の検査結果表、ほだ木の指標値を、50ベクレルよりも相当程度低い、20ベクレル程度で植菌して、何とかここの基準値を超えないような形で頑張って、心がけて生産に取り組んでいると伺っております。ただ、そのように頑張っても、結果的に収穫したシイタケが100ベクレルを超えるような事例も出てきて、非常に苦慮しています。ただ、一方で東京電力の賠償の対象というのが自伐の生産者の原木を購入する場合に、この50ベクレル以下の賠償の支払いの対象にならない生産者はここの間の部分、非常に苦慮しているというのが切実な声として上げられております。東京電力の賠償になる部分とそのグレーの部分というか、支払い対象の基準を下回っている原木について、県として賠償の対象にならないような部分を県として支援するような考え方はないのでしょうか。お考えをお伺いします。

○高橋林業振興課総括課長
 シイタケ原木の指標値と東京電力の賠償金とのずれについての御質問でした。確かに東京電力におきましては、原木の購入代金の掛かり増し経費に係る損害賠償につきまして、国のシイタケ原木での指標値となっております50ベクレル以下、キログラム当たりですが、それを基準といたしまして賠償金の算定をしていると認識しております。県では国が主催する会議等におきまして、出荷制限地域ではシイタケ原木の指標値よりもさらに放射線濃度が低い、安全性が高い原木を選択せざるを得ない状況を説明してきております。現時点では国から指標値の見直しですとか、賠償の基準、東京電力の指導に係る方向性というところが示される段階ではありませんが、同様の現状を抱えております他県とも連携をしながら、国や東京電力に対しまして、引き続き働きかけを行っていく考えでおります。

(7) 原木林の放射性セシウム濃度の調査について

 ぜひ賠償基準に達しない部分の原木も逼迫しておりまして、そういう中で何とか基準値を超えないような形で、生産者の方々は頑張って生産されております。万が一基準値を超えると、そこの産地が風評被害が出てしまうということで、50ベクレルという基準をやっぱりなるべく超えないような形で20とか25で、低い価格の値の原木を使用しているという実態でありますので、ぜひ現場の声も聞いていただきながら取り組んでいただきたいと思います。
 それで、私は今回の対症療法的な対応というのはそれぞれ限界があると思うのですが、震災から10年たちます。これからの岩手の原木シイタケの再生を考えるのであれば、やはり山林の再生にどう取り組むかというのは重要な課題になってくると思います。それで、福島県のほうでは大規模なセシウム濃度の調査というのを行って、例えば30年には600本やっているというようなお話も、ある講演会で伺いましたが、岩手県では18本程度にとどまるというお話も聞いております。ぜひ原木が岩手県として調査を行いながら、原木が使用できる時期の見通しなどを示して再造林を行っていくような形に取り組むべきと思いますが、県の御所見をお伺いします。

○高橋林業振興課総括課長
 原木林の放射性セシウム濃度の調査についての御質問でした。県では平成26年度から県南の11市町におきまして広葉樹林の放射性濃度の推移を確認するため、お話にありましたような18か所のモニタリング調査を実施しております。このほかでありますが、平成28年度からはシイタケ原木の非破壊検査機というものを導入しておりまして、こちらを活用した調査にも取り組んでおります。こちらにつきましては毎年度5か所、各60本で300本程度、令和元年度は希望が多くて621本ということで原木の放射能濃度につきまして調査を実施しているところです。県全体で広葉樹林につきまして、使用可能となる時期を判断すること、今の段階では難しいと考えておりますけれども、県内の一部地域ではこれらの検査結果を踏まえまして、ナラなどの広葉樹林を、シイタケ原木を活用している事例もあります。今後これらの調査結果が徐々に低減してきた段階で、専門家の意見もお聞きしながらシイタケ原木として使用可能な地域の特定を進めますとともに、伐採跡地の天然更新あるいは再造林といったことにつきましても検討を進めて、将来的に安全な原木を地域内で調達できるように取り組んでまいりたいと考えております。

 10年が震災からたちます。そして、これからの10年あるいは20年を見据えて、東京電力の賠償の対象というのは当たり前ですが、逸失利益あるいは追加的費用の両方が賠償の対象になります。ただ、それにならない部分というのがありますし、県としての産地再生に向けた県民税の新たな活用も含めた抜本的な対策の強化をお願いして終わりたいと思います。