ホーム  >  県議会報告  > 令和元年9月県議会 一般質問(令和元年10月18日(金))

県議会報告

令和元年9月県議会 一般質問(令和元年10月18日(金))

2019.11.27

1 次期岩手県ふるさと振興総合戦略について

(1)総合戦略の検証と対策(社会減・出生率向上)について

 第1期総合戦略の3本柱、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの主要政策推進目標の数字を見る限り、施策の効果が必ずしも十分に発現しているとは言えない状況にある。人口の社会減は平成30年5,215人減、平成25年からみると悪化の傾向をたどっている。合計特殊出生率も平成30年1.41と約50年ぶりに全国平均を下回る。国民所得に対する県民所得水準の乖離幅についても平成28年88.7と目標達成が難しい状況にあるが、知事はこの要因の検証・分析をどう捉えているのか伺います。
 併せて、まち・ひと・しごと創生基本方針2019において、「地方との関係人口の創出・拡大の取組み」や「地方への資金の流れを強化する」など、地方重視の経済財政政策が示されている。目標達成に向け、国との連携を図りながら、あらゆる施策を総動員して取り組む覚悟があるのか伺います。

(知事)臼澤勉議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、総合戦略の検証と対策についてですが、「社会減ゼロ」については、自動車・半導体関連産業の集積による雇用の創出等が図られたものの、近年の景気や雇用情勢などにより、特に若年層を中心に東京圏への転入超過数が拡大している状況にある。

 「合計特殊出生率の向上」については、子育て負担の軽減や、仕事と育児の両立支援等に取り組み、平成29年までは目標を上回っていたものの、平成30年になり下回ったところであり、推移を注視していく必要がある。

 「国民所得に対する県民所得水準のかい離縮小」については、様々な暮らしの環境の整備とともに、ものづくり産業や農林水産業等の振興により、一人当たりの県民所得は年々上昇しているものの、全国との経済成長率の差などにより、国民所得の上昇幅の方が大きいことが背景にあると考えている。

 このため、県では、こうした課題や、これまでの成果を踏まえるとともに、国が策定する第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本方針における、地方移住の裾野拡大に向けた「関係人口」の創出や、科学技術を活用した超スマート社会「Society5.0」の実現、持続可能な開発目標「SDGs」などの新たな視点も盛り込んだ、次期「ふるさと振興総合戦略」の策定を進め、国や市町村と連携を図りながら、人口減少対策に戦略的に取り組んでいく。

(2)地域内経済循環の拡大に向けた実効的取組方策について

 ふるさと振興を進める上で重視すべき視点としてSDGsの推進、Society5.0の実現に向けた技術の活用、地域内経済循環の拡大など地域経営の視点の3つを挙げられていることは評価する。特にも、私を含め地方議員は地域経営の一翼を担う責任があり、地域内経済循環の拡大に向け地域経営の視点で議論することが最も重要である。しかし、何よりも大事なことは、この想いを母体として生まれてくる各種施策を使って実行すること、動くこと。
 2月県議会において指摘しましたが、本県の地域経済の自立度を示す地域経済循環率は75.4%と、北海道、東北、そして全国の中でも最も低い現状にあり、県内で稼いだお金が地域の所得や消費、そして企業の投資に十分に回っているとは言えない現状にある。社会減を抑制するためにも、地域内経済循環を高め地域経済の自立に向け、知事として実践的、実効的、総合的な取り組みをどのように確実に着実に進めるかご所見を伺います。

(知事)次に、地域内経済循環の拡大に向けた取組についてでありますが、本県の地域経済を持続的に成長させていくためには、国際競争力が高く、成長の牽引役となるものづくり産業や、食産業、観光業、農林水産業など、いわゆる域外市場産業について、地元調達や付加価値を高めながら強化することに加え、商業やサービス業の振興により、地域内経済循環を拡大していく総合的な産業政策が重要と認識。

 こうした考えのもと、「いわて県民計画(2019~2028)」に基づき、
・ ものづくりのグローバル拠点化、新たな産業分野への県内企業の参入促進などによる「ものづくり産業の振興」
・ 新商品開発や商品力の向上、販路開拓の取組の促進などによる「地域資源を生かした産業の魅力向上」
・ 外国人観光客の誘客拡大などによる「観光産業の総合産業化」
・ 農林水産物の高付加価値化と販路の開拓・拡大などによる「農林水産業の持続的な発展」
 など、本県の特徴を生かした施策を推進していく。

 また、「新しい時代を切り拓くプロジェクト」に掲げる「農林水産業高度化推進プロジェクト」や各地域の資源などを生かし可能性を広げていく3つのゾーンプロジェクトの取組などにより、総合的な産業政策を展開していく考え。

(3)市町村との連携体制の強化について

 人口減少対策をはじめとするふるさと総合戦略を進める上で、行政の役割を担う市町村、県、国の連携・協力関係の強化が何よりも重要になる。現場主義を進めるならば、職員の人事交流を更に積極的に取り組むべきである。自身の経験上も、様々な気づきを得られたほか、何よりもその地域に暮らし仕事を通じて相互理解や信頼関係も生まれてくる。
 知事は、就任当初、市町村及び国との人事交流について、積極的に進めるお考えを示されていたが、連携のあり方を踏まえ市町村との人事交流を今後どのようにお考えか伺います。

(知事)次に、市町村との連携体制の強化についてでありますが、ふるさと振興を進めるうえでは、議員御指摘のとおり、国・県・市町村の連携が重要であり、特に、より住民に身近で、地域づくりを担う市町村との連携は不可欠であると認識している。

 県と市町村との人事交流については、これまでも、異なる経験や視点を持つ職員が相互に刺激を受けることで、双方の職員の資質向上につながるとともに、相互理解の進展によって、県と市町村との一層の連携強化が図られてきたところ。

 「いわて県民計画(2019~2028)」の「行政経営プラン」において、県と市町村が連携して地域課題に取り組むため、県と市町村の人事交流を推進することとしている。
さらに、現在、策定を進めている「次期ふるさと振興総合戦略」においても、市町村との協働体制の強化を盛り込むこととしており、引き続き市町村の意向を踏まえながら人事交流を進めていくことにより、ふるさと振興を着実に推進していく。

(4)市街化調整区域の土地利用規制の緩和について

 社会減ゼロに向けた地方創生の打つ手は無限で、予算を掛けずに やれる対策を一つずつ積み重ねることが大事である。
 市街化調整区域内において建築が認められるものは、農業者など、その地域で暮らす人々の日常生活のために必要な住宅などに限られている状況にある。ある一定の条件のもと、市街化調整区域内の集落に点在する空き家や空き地を有効活用しながら、新たな移住・定住の促進や二地域居住を誘導させるほか、観光振興に必要な宿泊施設や、飲食店等の建築を認めてはいかがか。新たな人の流れを生み出す取り組みを力強く推進するためにも、地域の実情に応じ、弾力的に開発許可が受けられるよう、県として市街化調整区域の土地利用規制を緩和するお考えはあるか、知事のご所見を伺います。

(知事)次に、市街化調整区域の土地利用規制の緩和についてでありますが、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされ、原則として開発行為及び建築行為が規制されているが、国の運用指針において、県及び関係自治体が認める一定の要件に該当するものについては、例外的に許可を受けて開発等を行うことが可能とされているところ。

 例外的に許可することができる一定の要件については、県と関係する市、町で構成するワーキンググループにより検討等を行ってきており、引き続き、都市の健全な発展と秩序ある整備を目的とした都市計画法の趣旨を踏まえつつ、関係する市、町の意向や地域の実情、ニーズに応じた開発許可の弾力的な運用について検討していく。

2 強い岩手型農林業の創造について

(1)園芸の産地力強化対策について

 本県の農業産出額は、平成に入り減少傾向にある。平成22年に底をつき、その後回復傾向にあるものの、東北の他県は、近年、低コスト化・高付加価値化といった産地強化計画を策定するなど、様々な園芸振興の取り組みを進め、園芸産出額を大きく伸ばしている。本県でも、新たな野菜の品目導入や、先端技術を駆使した野菜産地の創造を図るため、「いわて型野菜トップモデル産地創造事業」を推進しているが、農業産出額を一層伸ばし、強い岩手型農業を確立させるためにも、園芸分野のテコ入れを図る必要がある。
 また、新たに就農する若者は、園芸品目を選択する割合が高く、今後の岩手の農業を牽引する担い手として大変期待できる。国際競争力にも耐えうる体質の強い産地体制を図る中にあって、県として園芸振興にどう取り組んでいくのか伺います。

(農林水産部長)まず、園芸の産地力強化対策についてでありますが、本県では、各地域の気象や立地条件を生かしながら、野菜、果樹、花きの産地形成を図ってきたが、高齢化等により生産者が年々減少しており、産地を維持、発展させていくためには、規模拡大や生産性向上、意欲ある担い手の確保・育成の取組が重要である。

 このため、県では、各品目の振興計画に基づき、高性能機械の導入や優良品種への新・改植、経営感覚に優れた担い手の育成などに取り組んできたところであり、近年、規模拡大が進み、販売額5千万円以上の大規模園芸経営体が着実に増加している。

 また、昨年度に創設した「いわて型野菜トップモデル産地創造事業」を活用し、これまでに、ネギやピーマンなど6品目で、新たに1億円産地を目指した取組が進められ、他の地域でも事業導入の機運が高まっている。

 県では、こうした取組をさらに強化するため、生産者からの要望も踏まえ、新たにハウスの建設費を補助対象に加えることとし、今定例会に提案している補正予算案に所要の経費を盛り込んだところであり、本事業を最大限に活用し、本県のモデルとなる新たな「野菜販売額1億円産地」の形成を加速し、園芸産地力の一層の強化を図っていく。

(2)園芸産地強化に向けた普及指導体制について

 体質の強い産地体制をつくるうえで、最も大事なことは、人づくり、組織づくり、地域づくりである。これが、農業振興の基本である。しかも、産地において取り組むべき戦略、具体的には、低コスト化、実需者のニーズに応じた契約取引、消費者ニーズに対応した高付加価値化、加工や業務用需要への対応など、取り組むべき内容を明確にして、産地強化を図る必要がある。宮城県では、高度な施設園芸に特化した専門的な指導員を養成するとも伺っている。
 県では、園芸産地強化に向け、農業団体や民間企業、国、市町村、研究機関等を巻き込んだ普及指導体制をどう構築し取り組んでいくのか伺います。

(農林水産部長)次に、園芸産地強化に向けた普及指導体制についてでありますが、担い手の高齢化や就農人口の減少が進む中、園芸産地の収益力を高めるためには、各産地の園芸振興戦略に基づき、家族経営を中心とした生産部会等の生産力の向上を図るとともに、産地をけん引する大規模経営体を育成することが重要である。

 このため、県では、本年度、普及指導体制の見直しを行い、各農業改良普及センターに、関係機関・団体等と連携し生産部会等の主体的な活動を支援する産地育成課、大規模経営体への経営支援等を行う経営指導課を設置したところ。また、農業普及技術課内に配置した農業革新支援担当が中心となり、試験研究機関等と連携しながら、大規模経営体の経営の高度化に向けて、経営規模の拡大や多角化に対応できるスマート農業の推進、GAPなど高度な生産管理手法の導入等に取り組んでいる。

 今後とも、普及組織が中心となり、農業関係団体、民間企業などと緊密に連携しながら、大規模経営体の経営力の向上や、生産性の高い産地づくりを進めるなど、園芸産地力の一層の強化を図っていく。

(3)戦略的な輸出促進対策について

 県産農林水産物の輸出額は概ね順調に増加しており、平成30年度は震災後最高の対前年度比13%増の31.8億円となったことは評価する。
 国内の食市場が縮小する中、輸出は販路拡大の重要な手段であり、国の施策と連動しながら、本県農林水産物の輸出強化を図る絶好の機会と捉えている。東北最大の輸出県である青森県は、台湾、香港向けのリンゴが5割を占め、輸出額224億円は本県の7倍である。しかし、岩手は、米、りんご、牛肉など多様な品目を提供できることが、強みである。昨年は検疫条件が緩和されてから日本で初めてカナダに県産リンゴを輸出したほか、豚肉の輸出拡大に向けたHACCP対応施設の整備も順調に進むなど、新たな取り組みを開始している。
 そこで県は、ハード・ソフト対策を含め、どのような戦略で、どのくらいの規模まで農林水産物の輸出拡大に取り組むお考えか伺います。

(農林水産部長)次に、戦略的な輸出促進対策についてでありますが、今後、人口減少が急速に進み国内市場が縮小する中で、農林水産物の輸出による新たな販路の拡大は、生産者の所得向上などにつながる重要な取組である。

 このため、県では、「いわて国際戦略ビジョン」に基づき、経済成長が著しく、日本食レストランが増加しているアジアや北米地域、更に国際貿易環境の変化により有望な市場と見込まれる国や地域をターゲットに、米、りんご、牛肉、水産物などを重点品目と位置づけ、関係機関・団体、企業とで構成する「いわて農林水産物国際流通促進協議会」を中心とし、海外でのトップセールスをはじめ、バイヤーの招聘による産地商談会や、海外フェアを開催するなど、県産農林水産物の輸出拡大に向けた取組を積極的に進めてきたところ。その結果、平成30年の農林水産物の輸出額は約32億円となり、震災直後の平成23年と比較し約6倍に増加した。

 県では、これまでの取組に加え、牛肉の輸入を解禁したオーストラリアや、りんごの輸入を解禁したカナダ等の新たな有望市場の開拓や、本県の強みである多様な品目を組み合わせたパッケージ型プロモーションの展開、輸出相手国の食品HACCP(ハサップ)等に対応した施設整備等に対する支援などに重点的に取り組む考えであり、今後とも、国際貿易環境の変化等をしっかり見据え、本県が誇る安全・安心で高品質な農林水産物の輸出拡大を戦略的に進めていく。

(4)いわての森林づくり県民税の成果と森林被害対策の推進について

 いわての森林づくり県民税は、現在、来年度を終期とする第3期の取り組みを進めているところである。再来年度以降の県民税のあり方については、森林環境譲与税との関係を整理するとともに、これまでの取り組みの成果や課題等も踏まえて検討を進めているところと承知している。
 この県民税は、水源のかん養や県土の保全などの公益的機能の持続的な発揮のための政策課題解決のために創設した税制である。県の超過課税を財源としていることから、その使途や達成目標、成果等についてより一層の説明責任が求められる。また、22億5千万を超える基金残高については、より積極的に森林環境保全対策に充てるべきである。
 そこで、これまでのいわての森林づくり県民税の成果と課題をどう捉えているか伺います。
併せて、野生鳥獣被害対策や本県最大の森林病害虫被害である松くい虫や、ナラ枯れといった森林被害対策に積極的に充てるべきであるが、県の見解を伺います。

(農林水産部長)次に、いわての森林づくり県民税の成果と森林被害対策の推進についてでありますが、県では、いわての森林づくり県民税を財源として、森林を守り育てる活動などを支援するほか、緊急に整備が必要な森林を針広混交林、これは針葉樹と広葉樹が混ざった森林でありますが、これに誘導するいわて環境の森整備事業を実施してきたが、事業開始から平成30年度までの13年間の施工地確保面積は、目標の2万ヘクタールに対して、約1万6千ヘクタールに止まっている。これは近年、間伐を担う作業員の確保が進まないことなどが要因となっているところ。

 現在、事業評価委員会において、令和2年度までの第3期、これが終了後の県民税のあり方について検討をいただき、年度末を目途に提言の取りまとめをお願いしている。委員会においては、県民懇談会などを通じて、県民の皆様をはじめ、県議会、市町村の御意見などを広くお伺いしながら、議員から御提言いただいた森林被害対策などへの使途の拡大も含め、県民税のあり方について、議論を深めていただきたいと考えている。

3 安心して学び育てられる環境整備について

(1)不登校児童生徒の支援について

 昨日公表された不登校等児童生徒に関する調査結果によると、本県の小・中学校における千人当りの不登校児童生徒数は平成以降、最多となった。
 毎年増加する現実を踏まえると、これまでの施策が本当に有効だったのか、検証する必要がある。
 国の調査では、小・中学校の不登校児童生徒が学校の内外の機関で相談・指導を受けた割合は、4人に3人である。逆の見方をすれば、4人に1人は相談・指導を受けられていない状況にある。また、県の調査では、指導の結果好ましい変化が見られた児童は3人に2人、残りは指導の効果が見られない状況にある。県は、これらの児童生徒に対し、どのような対策を講じてきたのか、今後講じるお考えか伺います。
 併せて、不登校対応に当たる退職教員や相談員などを増やしたり、教育委員会とフリースクールなどの民間機関との連携強化を図るなど、対策を強化すべきではないか、所見を伺います。

(教育長)まず、不登校児童生徒の支援についてでありますが、不登校児童生徒数は、ここ数年間、全国的にも本県においても増加しており、生徒指導上の憂慮すべき課題であると認識しております。その要因と背景は複雑化・多様化していることから、一人一人の課題に対応した切れ目のない組織的な支援を行っていくことが重要であると考えております。

 県教育委員会においては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用などによる教育相談体制の充実を図り、一人一人のニーズに応じたきめ細かな支援に努めているところです。

 また、本県では、国が不登校対策として推進している「魅力ある学校づくり調査研究事業」を平成29年度から2年間、滝沢市に委託し、その取組成果を、本年2月に開催された岩手県教育研究発表会において広く周知したところでございます。さらに、本年度からは、同事業を宮古市に委託し、現在2年計画で研究を進めているところです。

 今後においても、児童生徒の状況を保護者理解の下に丁寧に見極めていくとともに、市町村教育委員会が設置する適応指導教室や、民間団体等が運営するフリースクールなどとの連携も図り、児童生徒の学校への復帰や将来を見据えた進路実現に向けた支援体制の充実に努め、児童生徒の社会的自立を支援して参ります。

(2)解決志向アプローチに基づく教育の推進について

 児童生徒の不登校の本質は、何でしょうか。県はどう捉えているでしょうか。
 私が経験した多くの教育は、子どもたちに何をするかを伝え、指示に従うことを教えることに重点が置かれていたように思う。無理やりさせられる指導は、変化量も少なく続きません。
 しかし、自分で変わりたいと思った時、最大の変化を持続することができます。問題や原因から対処の仕方を考える「問題解決型」ではなく、望ましい未来や解決の姿をイメージしていく解決志向アプローチに基づく教育に転換させる必要がある。中学校まで不登校だった生徒が通う地元の高等専修学校では、今年から対人関係、コミュニケーション能力を養うプログラムやチャレンジワークを取り入れるなど、解決志向アプローチを実践する取り組みが行われている。
 不登校の解決に向け、解決志向アプローチに基づく教育の推進についての所見を伺います。

(教育長)次に、不登校問題の解決についてでありますが、全ての児童生徒が学校に来ることを楽しいと感じ、日々の学校生活の充実のために、どの児童生徒も落ち着ける場所をつくる「居場所づくり」と、全ての児童生徒が活躍できる場面をつくる「絆づくり」を推進していくことが重要であると考えています。

 県教育委員会では、10月1日に開催したスクールカウンセラー連絡協議会において、不登校を生まない未然防止の視点から、スクールカウンセラーの役割や学校との連携による組織的な対応の在り方等についての研修を行ったところです。また当日の研修プログラムには、スクールカウンセラーの専門性を踏まえつつ、解決志向アプローチの視点を用いた技法等を紹介するなど、教育相談の機能を生かした不登校支援の在り方に関する研修も行ったところです。

 今後においても、児童生徒のよさや可能性を生かすなどの支援の充実を進めるとともに、自らの夢や社会の理想の実現に向かおうとする意欲や態度を育んでいきます。

(3)長期入院患者への教育環境整備について

 先日、岩手医大附属病院内に設置された学習室を見学してきました。義務教育課程の児童生徒が長期入院等を必要とする場合は、院内学級が設置されるが、高校生の場合、設置されていない実態にある。児童生徒の学習の機会を保障することは、我々大人の責務である。SDGsの基本理念「誰も取り残さない」を踏まえ、岩手で暮らす誰もが学べる環境づくりを進めなければならない。教員配置や指導方法、財源の確保など、様々な課題はあるでしょうが、今を生きる、目の前の子供たちに教育環境を提供できない理由があるのでしょうか。
 いわて県民計画(2019~2028)において、「特別支援教育の多様なニーズに対応する」とあるが、入院や自宅療養等により長期間登校できない高校生のニーズ把握は行っているのでしょうか。また、院内学級の設置を含めた支援体制の構築や運用方法について、どのように総合的に検討をされているのか伺います。

(知事)次に、長期入院患者への教育環境整備についてでありますが、子どもたちの学ぶ機会を保障し、将来に向かって可能性を伸ばしていくことができるよう一人ひとりのニーズに対応した教育環境を整備していくことは重要であると認識しており、「いわて県民計画(2019~2028)」等においては、医療との連携を図りながら長期入院等を必要とする高校生の学習保障について取組を進めることとしている。

 教育委員会においては、県立高校に対する書面調査やその結果に基づく学校訪問などにより、入院や自宅療養等により長期間登校できない高校生の状況把握を行ったところであり、多様な病状や学びのニーズに対応した学習指導のあり方や関係機関との連携による学習支援体制の構築などが課題であると考えているところ。

 こうした課題を踏まえ、今般、教育委員会内に県内の学校長から構成される検討委員会を設置し、支援体制の構築や運用方法などの検討を行っているところであり、今後、岩手医科大学附属病院を含めた関係機関との連携についても検討を進めていくところ。

(4)医療的ケア児等実態調査を踏まえた療育支援体制について

 今般、はじめて医療的ケア児等の生活状況や介護の負担感、サービスニーズ等の調査が実施された。医療関係者の方からも評価の声を伺っているところ。一方、県立療育センターが岩手医科大学附属病院の敷地内に移転し、医療と福祉、教育といった総合的な支援体制を強化したところだが、超重症児・準超重症児等の医療的ケアを必要とするこれらのニーズに、療育センターは的確に対応していく使命があります。仮に医師や医療従事者の確保、病床等の利用率向上に向け運営上の課題があるならば、解決に向け具体的な方策を検討すべきです。
 県として、今回の調査結果から浮き彫りになったニーズと課題をどう捉えているのか。併せて、療育センター機能のより一層の充実を含め、課題解決に向け具体的にどう取り組むお考えか伺います。

(保健福祉部長)まず、医療的ケア児等実態調査結果を踏まえた療育支援体制についてでありますが、今回、県が実施した実態調査の結果では、医療的ケア児等を介護する方の負担感として、8割を超える方が在宅における時間的拘束や通院時における介護負担を挙げており、介護の負担軽減に関するニーズが高い状況が明らかとなったところです。

 このため、在宅の医療的ケア児等を一時的に預かる機能の充実が必要であり、そのためにも専門的スキルを持った看護師や相談支援専門員等を確保することが重要であることから、県としては、引き続き、短期入所の受け皿の拡充に取り組むとともに、今年度から実施している医療的ケア児等コーディネーター養成研修などによる人材育成を進めて参ります。

 通院時の介護負担については、移動中、頻繁に行わなければならない医療的ケアの手間や体調急変時の対応、訪問看護師の同行に対する経済的負担など、様々なものが考えられることから、今後、具体的な負担感を把握しながら、支援策を検討して参ります。

 そうした中で、療育センターにおいては、超重症児等の受入れや、新生児特定集中治療室(NICU)の後送病床としてのニーズがあることから、岩手医科大学との連携による医師の確保や、医療的ケアに対応可能な看護師の確保・育成などにより、機能の充実を図り、医療的ケア児等の受入体制を整備していく考えであります。

(5)医療的ケア児等の通学・教育環境の改善について

 また、今回の調査では、看護師不足、通学時の送迎負担感など、通学・教育環境の改善に向けた様々な課題が浮き彫りになった。さらに、岩手医大の小山教授が会長となり、患者・家族、医療、保健、福祉、教育、行政の関係者で構成する「いわてチルドレンズヘルスケア連絡会議」が設立され、医療的ケア児を含めた子育てを切れ目なく支援する連携体制が整ったことは意義深いことである。
 そこで、教育分野と医療・福祉分野との役割分担や連携強化について、県として今後どのように取り組んでいくお考えか伺います。

(保健福祉部長)次に、医療的ケア児等の教育分野と医療・福祉分野との連携についてでありますが、医療的ケア児等については、適切な医療的ケアを受けながら学校生活を送るとともに、放課後においては通所支援を受けているなど、心身や生活状況に応じた支援が必要であり、日常生活における切れ目のない支援のため、教育分野と医療・福祉分野との連携が重要であります。

 県では、これまで、医療・福祉分野において、看護師等の育成を通じた通所支援サービスの拡充に取り組み、教育分野において、国の事業の活用等による小・中学校等への看護師の配置を促してきたところであるが、分野間のサービスの連続性を確保するための関係機関の連絡調整を一層進める必要があります。

 こうした課題については、県が昨年度設置した「岩手県重症心身障がい児・者及び医療的ケア児・者支援推進会議」において、関係者間で共有し、対応を議論しているところであり、今後、その議論を踏まえて具体的な取組を検討して参ります。

4 安全・快適な社会基盤づくりについて

(1)広域防災拠点と医療連携について

 救命救急や周産期医療の機能が備わった岩手医科大学附属病院が矢巾町に移転されたが、1分1秒が命に係わるケースもあるため、本県の医療と防災の連携拠点として、様々な社会基盤の充実を進めて行かなければならない。
昨年度、県は消防学校に必要な機能等に関する研究会を立ち上げ、検討を進めてきたと承知している。具体的には、防災リーダーを育成するために重要な教育訓練施設としての機能と災害医療活動支援、広域医療搬送拠点を初めとする広域防災拠点機能の備える方向で取りまとめられたところ。いよいよ、整備手法を含め、整備の方向性について検討する必要がある。その際は、市町村や消防本部、医療機関等と十分に連携を図る必要がある。県として今後どのように進めて行くお考えか伺います。

(総務部長)広域防災拠点と医療連携についてでありますが、岩手県消防学校は、校舎本館等は建設後45年が経過し、経年劣化による施設・設備の老朽化が進んでいることなどから、本年3月、県と関係機関で構成する「岩手県消防学校に必要な機能等に関する研究会」において、複雑多様化する災害現場において的確に対応するための教育訓練が十分に実施できる訓練施設機能や災害医療活動支援・広域医療搬送拠点をはじめとする広域防災拠点の機能を持つことが必要などとした報告書を取りまとめたところ。
 
 広域防災拠点の一つである消防学校は、災害発生時に緊急消防援助隊、DMAT等の活動支援や、傷病者の治療が行える医療機関に搬送するための中継点となることが期待され、防災ヘリや自衛隊ヘリの活動拠点(基地)など、広域防災拠点としての役割を果たしていくことが肝要である。

 今後、周辺施設への影響等も含めた整備方法の総合的な比較検討を行い、市町村、消防本部、医療機関など関係機関と十分に連携を図りながら、消防学校の整備に係る基本構想の検討を進めていきたい。

(2)消防団員確保対策について 

 地域防災力の要は何といっても消防団であり、団員の確保対策が重要である。しかし、平成31年の消防団員数は21,254人で定数に対する充足率は82.7%と年々減少傾向にある。また、平均年齢は40代半ばであり、平成元年が30代後半(37.3歳)と比べると着実に消防団員の平均年齢が進んでいる実態にある。
 県は、これまでも「いわて消防団応援の店登録事業」を推進したりしながら消防団の確保対策に取り組んできましたが、施策効果を含め検証する必要があります。そのうえで、市町村消防団の強化に向けた補助制度を創設するなど、中長期的視点を持ちながら新たな取り組みを戦略的に展開する必要がある。県は、消防団員確保対策に今後どう取り組むお考えか伺います。

(知事)次に、消防団員確保対策についてでありますが、消防団は、地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安全・安心の確保のために果たす役割はますます大きくなっている。

 このため、県では、いわて消防団応援の店登録事業の推進や男女共同参画フェスティバル分科会において、女性消防団員の活躍をPRするなど、消防団員の確保や女性の加入促進などに取り組んできたところ。

 一方で、少子高齢化等による担い手不足で、消防団員の減少が続いている現状であることから、県としては、若者、女性の加入促進や機能別消防団員制度の導入など、市町村が行う事業を支援しながら、団員確保対策を推進していく必要があると考えている。

 今後、これまでの取組の効果を確認するとともに、市町村や関係団体等の意向も踏まえながら、来年度の当初予算に向けて、消防団への支援の仕組みを検討していく。

(3)救急医療施設への道路整備と治水対策について

 県内の救急医療体制の整っている救命救急センターは、岩手医大付属病院と県立大船渡病院、県立久慈病院の3か所である。岩手医大附属病院の移転により、救急や医療関係者から第3次救急医療施設への搬送距離が拡大し、アクセス性の向上、安全な道路空間の確保、円滑な物流ルートの確保について課題が挙げられている。現在、一般国道4号盛岡南道路の計画検討が進められているが、2つの県立病院についても復興道路の整備によりアクセス性が向上するため救急搬送、物流効率、安全性の確保の観点から必要な対策の有無を再点検する必要がある。
 県として、命の道路の機能性向上に向け、復興道路や盛岡南道路を基幹とする全体の道路ネットワークのあり方(県道昇格や都市計画道路を含めた道路網の見直しなど)を今後どのように検討を進めるのか、また、地元市町村との連携も必要であると考えるが、見解を伺います。併せて、救急医療施設の周辺の河川改修を含めた総合的な治水対策を進めることも重要であるが、ご所見を伺います。

(県土整備部長)救急医療施設への道路整備と治水対策についてでございますが、県内の救命救急センターである岩手医科大学附属病院、県立大船渡病院、県立久慈病院の機能が十分に発揮されるためには、復興道路等の幹線道路の整備とともに、幹線道路から救命救急センターへのアクセス向上が重要と認識してございます。

 このうち、本年9月に矢巾町に移転した岩手医科大学附属病院については、ネクスコ東日本や矢巾町と連携しながら矢巾スマートインターチェンジを平成30年3月に供用したほか、一般県道大ケ生徳田線の徳田橋の架け替え工事を進め、アクセス向上に努めているところでございます。

 更なるアクセス向上等に向けた道路ネットワークのあり方については、国によりルートの検討が進められております国道4号盛岡南道路の動向や岩手医科大学付属病院周辺の交通量の状況等を踏まえながら、国や地元市町とともに検討していく必要があると考えております。

 また、救急医療施設周辺の総合的な治水対策についても重要と考えておりまして、近年の浸水実績があり、人家や救急医療施設が集中している岩崎川などの河川改修を推進するとともに、水位周知河川の指定等によるソフト施策を組み合わせ、「災害に強い県土づくり」を進めることとしてございます。

(4)免許返納者増加に伴う地域公共交通確保対策について

 高齢運転者の免許返納は、平成30年で3,752件、10年前の約17倍に増加している。しかも概ねすべての市町村で毎年増加している状況にあり、買い物や病院等に行くための地域公共交通の確保対策は最重要課題である。市町村ではデマンドタクシーや乗合バスを運行させているが、免許返納者の中には、市町村の区域を越えて通院・買い物をするため、広域的なデマンド交通も必要となる。
 県として、免許返納者急増に伴う地域の実情に応じた地域公共交通の確保対策にどう取り組むか伺う。併せて、知事は、演述で「『society5.0』の技術は岩手でこそ活用や実装の可能性が大きい」と述べていたが、情報通信技術を活用した地域公共交通についても積極的に取り組むべきと考えるが、知事のご所見を伺います。

(知事)次に、地域公共交通確保の対策についてでありますが、「いわて県民計画(2019~2028)」においては、広域的な公共交通基盤や地域公共交通の確保など、地域の暮らしを支える公共交通の取組を掲げたところであり、市町村と連携した持続的な公共交通の確保は重要な課題と認識している。

 特に、議員御指摘の免許返納者増加に伴う公共交通の確保については、「岩手県地域公共交通網形成計画」において、広域バス路線とデマンド交通などの地域公共交通との接続利便性向上に取り組むこととしているほか、市町村において導入されたデマンド交通等への支援を行うなど、引き続き、免許返納者を含めた県民の移動が円滑に行われるよう取り組んでいきたい。

 また、このようなデマンド交通をはじめとした地域公共交通へのICTの活用は、利用者の利便性の向上はもとより、自動運転の実用化など、これまでにない移動方法の実現も期待され、大きな可能性を秘めているものと認識している。

 そのため、「政策推進プラン」において、ICカードやスマートフォンアプリをはじめとしたICTの地域公共交通への導入を推進することとしている。
 例えば、県では、紫波町における、人工知能搭載の配車システムを活用したデマンド交通の実証運行の取組に対し、有識者の派遣や、財政支援を実施しているところ。

 今後、こうした先進事例について各市町村へ情報提供するとともに、自動走行化などの様々な取組の研究を進めるなど、地域公共交通の確保へのICTの活用に取り組んでいきたい。

5 復興五輪を契機とした文化・スポーツの推進について

(1)復興五輪を契機とした情報発信等について

 開幕まで一年を切った東京2020オリンピック・パラリンピックは、復興が大会理念に掲げられ、世界が被災地に目を向ける絶好の機会である。この機会に岩手からどんなメッセージを世界に発信するのかが問われる。
 来年3月には、ギリシャで採火された聖火が「復興の火」として岩手県に展示され、その後全国47都道府県を巡る聖火リレーが福島県からスタートする。単に五輪を盛り上げるパフォーマンスで終わらせることなく、復興への感謝と平和の思いを共有する重要な機会と捉えるべきである。
 私は、キーメッセージを「感謝」と「平和」と捉えている。そこで、「平和」の象徴「平泉」と東北の沿岸被災地の中央「陸前高田」を含め岩手から感謝と平和の情報を発信してはいかがでしょうか。今年度、県では復興五輪の機運醸成や聖火リレーの準備経費として1億円余を計上しているが、岩手が元気になる復興五輪とするために、どのような情報発信を展開していくお考えか伺います。

(文化スポーツ部長)まず、復興五輪を契機とした情報発信等についてでありますが、近代オリンピックは、「平和の祭典」の名のもと、世界中から集う選手や関係者、地域住民が、国や地域を超えて相互理解や友情、つながりを深め合うことが期待されているものであり、復興五輪を理念とする東京2020(にいぜろにいぜろ)オリンピック・パラリンピック競技大会では、本県をはじめ被災3県は、「復興の火」展示や復興「ありがとう」ホストタウンの登録、さらには、組織委員会や東京都等の取組における情報発信など、様々な配慮をいただいているところ。

 県としては、これまでにいただいた支援に対する感謝を世界中に発信するまたとない機会と捉えており、たくさんの県民の参画のもとで、復興の姿と併せ、平泉をはじめとする世界に誇る文化的遺産の素晴らしさや伝統芸能、優れた食や観光、物産など、岩手の魅力を積極的に発信し、議員御提案の趣旨も踏まえ、様々なつながりを生み出していきたいと考えているところ。

 こうした考えのもと、既に、ホストタウン相手国との交流事業、選手村建設用の県産木材の提供、文化庁が推進する一大文化プログラム「日本博」の関連事業である官民連携による「ファンタスティック岩手-復興フェスティバル」の取組などが進められているところ。

 また、来年の大会期間においては、首都圏の競技会場周辺等における経済界等様々な主体によるPR展開が企画されており、これらも有効に活用しながら、情報発信に努め、世界各国の人々との交流・絆を一層深め、復興とその先の地域振興につなげていく考え。

(2)トップアスリート育成に向けた環境整備(ハード・ソフト対策)について

 矢巾町の水本圭治選手が東京2020オリンピックのカヌー競技代表で出場することになった。改めて自身の努力と家族、指導者、全ての関係者の皆様に対し敬意と祝意を申し上げる。
 スポーツ振興や競技力向上を図る上ではトップアスリートの育成が重要である。私が最も重視する視点は、アスリートの高い資質を見つけ育て上げる指導体制と、怪我や故障の予防対策である。
 スーパーキッズのようなタレント発掘・育成プログラムの充実のほか、多様な心理的課題・問題を抱えながら競技活動を行っている選手・指導者のためのスポーツメンタルトレーニング(SMT)指導士等による支援体制の確立、さらに、スポーツ医・科学的知見を活用した支援策を構築する必要がある。県は、トップアスリート育成に向けハード・ソフト対策として、どのような点を重視して環境整備を図っていくお考えか伺います。

(文化スポーツ部長)次に、トップアスリート育成に向けた環境整備についてでありますが、オリンピックや国際大会などで活躍する、いわゆるトップアスリートの育成には、競技団体をはじめ、医療関係者や大学などと連携した指導体制のもと、早い時期から将来性のある選手を発掘し、スポーツ医・科学の知見に基づいたサポートを行っていくことが重要と考えている。

 こうしたことから、いわてスーパーキッズ事業を通じて、将来の可能性に応じた小中学生期からの競技種目の選択に繋げる取組とともに、スポーツ医・科学サポートの向上に向け、地域のスポーツクラブなど様々な団体に所属する指導者や選手を対象に各種の先進的なスキル講習会を実施しているところであり、加えて、オリンピック等の国際大会で表彰台を狙う若手トップ選手に対する遠征費等の支援も行っているところ。

 このような取組のもと、議員御紹介のカヌーの水本圭治選手をはじめ、競歩の髙橋英輝選手、スポーツクライミングの伊藤ふたば選手など、世界で活躍するトップアスリートが数多く育ち、着実に成果を上げてきているものと受け止めている。

 今後、これまでの強化策の振り返りを行い、本県の取組の特性を分析しながら、それと並行して急速に進む関係分野の技術革新の動向にも対応しつつ、引き続き、スポーツ医・科学面やスポーツ・インテグリティの確保も含め、指導体制の更なる充実を図っていくことが重要と考えているところ。そして、こうしたスポーツを取り巻く環境の変化を踏まえ、スポーツ医・科学サポートの拠点のあり方については、外部有識者や競技団体等からの御意見も伺いながら、研究を進めていく。

6 ILC誘致と復興の完遂について

(1)ILC誘致戦略と見通しについて

 文部科学省研究振興局長が今年3月にコメントを発表しました。その趣旨は、「来年2月に日本学術会議が策定するマスタープラン等での正式な学術プロセスでの議論を注視する」ということであった。また、「諸分野の学術コミュニティとの対話の不足」についても指摘されていたが、県は、日本学術会議が策定するマスタープラン策定状況等について、どのような認識を持って注視されているのか伺う。
 政府決断を促すためにも、科学コミュニティの理解・支持が得られることが重要である。改めて申すまでもないが、ILC計画の誘致実現は、地方創生、復興、国土強靭化、科学技術イノベーションといった多岐にわたる分野の壮大な計画である。その政策横断効果に鑑み、我が自民党県連から自民党ILC誘致実現連絡協議会に対して、改めて通常の予算とは別の予算措置を講ずるよう要請する予定である。
 県は、誘致実現に向けどのような戦略をもって行動するお考えか、言える範囲でお答え願います。

(知事)次に、ILC誘致戦略と見通しについてでありますが、日本学術会議が策定するマスタープランは、学術界における判断を示すものであり、研究者組織が直接的な対応を行うものととらえているが、県においては、昨年、同会議の所見で指摘のあった、地域住民との対話や環境アセスメントの進め方等について、研究者組織の取組に協力するなど、マスタープランの審議が円滑に進むよう対応しているところ。

 ILCの実現には、こうした国内の動きとともに国外の議論の進展も重要であることから、県としては、国内外の動向に臨機に対応し、超党派国会議連や研究機関、推進団体などと連携を一層密にし、政府への要望や国民理解の増進など、ILCの実現に向け取り組んでいく。

(2)県民理解の増進への取組みについて

 有識者会議で、大変重要な指摘がなされている。それは、「ILC計画の実施の可否を判断する際には、ILC計画による成果等について広く国民及び科学コミュニティの理解・協力を得ることができるかどうかが課題である。その際、これまで有識者会議において検証を行ったILC計画の全体像について、国民及び国内外の科学コミュニティに周知・共有されることが肝要である。」と取りまとめられている。
 その意味では、最初のステップとして、地元自治体から「ILC計画の全体像」について積極的に県民への周知・共有を図る取組みが重要となる。県のご所見を伺います。

(知事)次に、県民理解の増進への取組についてでありますが、ILC計画の推進にあたっては、建設候補地として県民理解が極めて重要と考えており、これまでも、様々な機会を通じて、県民へのILCに関する周知、説明を行っているところ。

 県内各地で実施している講演会や勉強会では、専門家の参加も得ながら、ILCの研究内容や、ILCによる波及効果など幅広く説明し、また、開催の形式も小規模集会や対話方式など、内容が、より伝わるよう工夫しながら実施しており、昨年度の実績としては、154回の開催、延べ1万2千775人の参加となっている。

 さらに、いわて希望チャンネルやラジオ、SNS、広報誌など各種広報媒体を活用した周知をはじめ、ILCオープンラボを活用した情報発信、県内の自治体等が主催する各種イベントへのブース出展等、広報の効果が上がるよう進めているところ。今後も、広く県民にILCの情報が伝わり理解が深まるよう、工夫を重ねながら、積極的に取り組んでいく。

(3)復興道路等を活用した新たな物流・観光誘発策について

 最近県内を移動して感じることは、復興道路や復興支援道路を含めた道路や港湾整備がこの8年半の間で、予想以上に順調に進んだということである。復興道路の開通やフェリーの開通、ガントリークレーンの設置により、各都市間の移動時間の短縮や物流、防災力の向上の面でも大きな整備効果を実感する。ある民間シンクタンクの調査によると、企業立地、既存事業の規模拡大、港湾の利活用の増大により、復興道路の経済波及効果は540億円の増加とも言われている。
 一方で、復興道路や復興支援道路完成後の物流や観光客の動きがどのようになるのか、沿岸被災地の事業者のみならず、県内外の中小企業に対し、どのような事業の可能性が開けるのか、県の役割として早急に示す必要性があると考える。物流・観光客の変化予測や新たなビジネスの可能性等に係る調査を国と連携し実施すれば、被災企業などの再建計画の作成や設備投資、新事業への進出など、新たな投資に寄与するだけでなく、沿岸地域をはじめ本県の産業振興の大きな力に繋がると思うが、ご所見を伺います。

(商工労働観光部長)復興道路等を活用した産業振興の取組についてでありますが、県内外の企業が、復興道路等のインフラ整備による事業環境の変化や将来の見通しを的確に捉えて、自らの経営計画や新事業等への進出などを考えるための基礎資料を整えることは、本県の産業振興を図るうえで重要と認識している。

 このため、県においては、国の関係機関や市町村、企業等からヒアリングを重ね、平成28年3月に「三陸復興・振興方策調査報告書」を取りまとめたところであり、交通ネットワークの整備等による環境変化や復興まちづくりの進展を踏まえ、中長期的な視点や広域的な観点に立って、新たな三陸地域を築いていくためのアイディアや事例をプロジェクトの形で整理しているところ。

 具体的には、例えば物流関係では、港湾と復興道路の活用による県内企業の競争力向上と三陸地域の物流拠点の形成を図るプロジェクト、観光関係では、食の観光コンテンツの充実やイベント開催を契機とした観光地としての魅力の向上、人材育成・商品開発・情報発信の戦略的な実施を図るプロジェクトが盛り込まれているところ。

 これらは、「いわて県民計画(2019~2028)」の三陸防災復興ゾーンプロジェクトをはじめ、政策推進プランや地域振興プランに掲げる県の施策にも反映されているところであり、この報告書の内容とその具体的な取組の方向性等を関係者と広く共有しながら、復興道路や港湾機能の整備効果を最大限に生かした産業振興に取り組んでいく。