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県議会報告
令和5年度2月定例会 予算特別委員会(農林水産部第1部)(令和6年3月13日(水))
2024.06.15
1 収益力の高い農業の確立について
(1)農家の所得向上対策について
〇臼澤勉委員 それでは、私からは、マニフェストにも書いていますが、収益力の高い農業の確立について、農家の所得向上対策をお伺いさせていただきます。
まず初めに、畜産、園芸あるいは米を初めとした耕種、それぞれ岩手の3分野が岩手の農業の核となって進めていると捉えていますが、農家の所得向上にどのような対策がこれまで講じられているのか。特に効果的と考えておられる事業について、まずはお伺いいたします。
〇伊藤担い手対策課長 県では、農家の所得向上に向けまして、いわて県民計画第2期アクションプランに基づき、地域農業の核となる経営体の育成ですとか生産性、市場性の高い産地づくりということで、経営規模の拡大、高収益作物の導入、生産性の向上などに取り組んでいるところでございます。
こうした取り組みにより、販売額3,000万円以上の経営体ですとか法人化した経営体の数が増加するなど、経営規模の拡大、経営の高度化が進んでいると認識してございます。
令和6年度当初予算案におきましては、農地中間管理機構を活用した担い手への農地の集積、集約化のほか、新たにDXやGXを活用した土地利用型野菜の生産拡大、AI技術を活用しました花の省力型栽培体系の開発、実証、DNAマーカーなどを活用した地球温暖化に対応する米やリンゴ等の新品種の開発などに要する経費を盛り込んでおりまして、引き続き、農家の所得向上に向けた取り組みを進めていきます。
〇臼澤勉委員 さまざまな取り組みを今紹介されましたけれども、先ほどの答弁の中でも、3,000万円以上の農家がふえているということですが、具体的にどのくらい伸びているのか、もし数字がわかればお示しください。
〇伊藤担い手対策課長 まず、3,000万円以上の経営体でございますけれども、平成22年と令和2年を比較して説明させていただきますが、平成22年度は823経営体、令和2年度は970経営体ということで、147経営体の増加となってございます。
〇臼澤勉委員 畜産とか園芸とかそれぞれあると思うんですけれども、何かそういった傾向というか、分野別にどう分析しているのかお伺いいたします。
〇伊藤担い手対策課長 申しわけございません。作目ごとの統計データについては、把握していないところでございます。
(2)地域農業経営基盤強化促進計画について
〇臼澤勉委員 なかなか捉えていないということでございますけれども、私は、今、農林水産部として、個々の作物というよりも、そこら辺のある程度大きな分野ごとには、やはり分析しながら追いかけていく必要があるのだろうと思います。
そういった中で、今も担い手のお話とかが工藤委員からもありましたけれども、担い手に向けての農地集積を地域ごとに進めていく必要があるだろうと捉えております。そういった中において、地域農業経営基盤強化促進計画がありますけれども、ここら辺の具体的な施策の効果あるいは評価について、どう捉えているのかお聞きいたします。
〇伊藤担い手対策課長 いわゆる地域計画についてでございますけれども、県では、市町村、農業委員会等と連携しまして、地域の話し合いに職員が参画しながら、農地の受け手となる担い手への集積、集約化や高収益作物の導入など、将来の農地利用の姿を明確化した地域計画が策定されるよう支援しているところでございます。
さらに、農地の受け手となる担い手の育成に向けましては、農地中間管理事業の活用によります農地の集積、集約化、中小企業診断士等の専門家派遣によりまして経営体の法人化を支援しているほか、県独自の事業でございますが、地域農業計画実践支援事業等の活用によります機械、施設の整備などに取り組んでいるところでございます。
今後とも、関係機関、団体と連携しまして、地域計画の策定を支援し、期限となっております令和6年度末までに、現在県内で計画されている417全ての地域計画が確実に策定されるよう取り組んでまいります。
〇臼澤勉委員 令和7年3月までにこの地域計画を定めていくと。そして今、417カ所ということで御紹介ありましたけれども、この地域計画をどう具体化していくのか。地域でいろいろ話し合ったり、うちの地元でも農業委員とかが汗をかきながらやっているのですけれども、実効ある取り組みの部分、来年度予算でどのような支援を県として進めていく予定なのか。そして、その支援によって、地域農業の強化についてどう図られていくかの具体的な見通し等があれば、お聞かせいただければと思います。
〇伊藤担い手対策課長 地域計画の策定に向けましては、市町村が中心となりますけれども、農業委員会ですとか地元の土地改良区、農協、もちろん県の出先機関等を含めまして、支援チームが各市町村にございます。そういった中で、その地域ごとにどう進めていくかをまず準備段階として整理しまして、その後に、各地区の座談会とかに参加いたしまして、例えば、その地区の作目をどうするのか、そもそも農地利用をどうするか、担い手はいるのかといったところを話し合っていただくことで、県の職員もそこをサポートしているところでございます。
令和6年度の予算につきましては、今年度の国庫事業の継続になりますが、そういったものを使いまして、主に市町村の計画策定に要する事務費ですとか、あとは会計年度任用職員の賃金とかといったものを、市町村から手を上げていただきまして、そういったものに対して国庫事業で支援しているところでございます。
いずれ、地域計画の策定でございますが、これまで、県でも農地の集積を進めてきたところですけれども、今後は、特に集約化を加速化させていくことを狙いとしておりまして、そういった目的のもと、まずは、期限までの策定に向けて関係機関と一緒に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
(3)経営体への経営サポート体制について
〇臼澤勉委員 ぜひ、それこそ普及員とか農林水産部においては、人的マンパワーがある、ほかの部署とは違う人的資源のある部署でございます。まさに今、難しいこの人口減少であったり、あるいは担い手である農家の高齢化が進んでおります。次の、例えば事業承継というか、今後10年あるいはこの先を見据えた地域の農業をどう支えて、守っていくのかといったところがすごく重大な岐路になるというのは、改めて私が今申すまでもないのですが、そういったときに、普及員の方々が積極的に市町村、現場にどんどん入っていって、そこの計画づくり、あるいは計画の具体化に向けて進めていく必要があろうと思いますが、そこら辺についての御所見をお伺いいたします。
〇伊藤担い手対策課長 県では、まず、経営体への経営サポートの体制としまして、岩手県農業経営就農支援センターを関係機関と一緒に設置してございます。その現地支援チームということで、普及センターが中心となりまして、市町村や農協がチームメンバーとなりまして、経営体個々のお悩みといいますか経営課題の解決に向けて、今取り組みを進めているところでございます。
委員お話のありました事業継承につきましても、税理士ですとか中小企業診断士などの専門家を派遣しながら、経営体個々の、いつ継承するのか、経営規模はどうするのかといった相談を、普及センターが中心となってまとめているところでございます。
〇臼澤勉委員 人の問題であり、今、農地の集約化のお話もありました。本県においては、全国平均を下回る集積率の現状であります。たしか全国で59.5%だったか、60%近いところですが、岩手県は55%ぐらいですか、5ポイントぐらいの開きがあったかと思います。東北でも下から2番目ぐらいの集積率だったと思います。
やはり、その中心となって、担い手の農家の方が必要とする土地を、やりたいぐらいの農地を確保しながら進めていく環境づくりがすごく重要になってくると思います。新年度において、集積率向上に向けての取り組みについてお伺いいたします。
〇伊藤担い手対策課長 県では、農業経営基盤強化の促進に関する基本方針を定めておりまして、その中で、令和12年度の担い手への農地集積の目標を80%と定めております。
その目標に向けまして、農地中間管理機構であります県農業公社等、関係機関、団体が一緒になって今まで取り組みを進めてきたところでございます。
こうした取り組みによりまして、農地中間管理機構による貸付面積ですとか新規集積の面積は、全国トップクラスになっているということで、一定の成果はおさめてきたところと認識してございます。
令和6年度でございますが、当初予算案の中に農地の集積、集約化等を加速化するための、いわゆる地域集積協力金といった予算を盛り込んだほか、あとは、経営体の規模拡大に必要な機械、施設の導入、先ほどお答えしましたとおり、地域計画の策定に向けた経費を盛り込んでおりまして、今後とも、関係機関、団体と一緒になりながら農地集積、集約化の取り組みを進めてまいります。
(4)高収益園芸作物DX・GX導入実証事業について
〇臼澤勉委員 ぜひ、80%に向けまして頑張って取り組んでいっていただきたいと思います。
時間もあれですので、新規事業、高収益園芸作物DX・GX導入実証事業が予算計上されてございますが、この政策内容、そして、この効果をどう見込んでいるのかお伺いいたします。
〇中村農産園芸課総括課長 高収益園芸作物DX・GX導入実証事業費についてでありますが、米の需要が減少する中、水田でのタマネギやバレイショ等の高収益作物への転換を進めるため、自動操舵トラクターによる作業の省力化、GPSレベラーを活用した圃場の傾斜化等による効果的な排水対策、ドローンによる防除作業の効率化など、技術の組み合せによる収益性向上のモデル実証に取り組むこととしております。
また、新たに土地利用型野菜の栽培を志向する生産者に対しては、機械等の整備が必要になることから、既に農業機械を所有している生産者が農業機械を貸し出すなど、農業機械の広域利用体制の構築による新規参入モデルの実証に取り組むこととしております。
加えて、キャベツや長芋などにおいて、環境負荷低減技術の先行事例として、脱炭素効果のあるバイオ炭の圃場施用による大気中の二酸化炭素の削減効果や生産性向上のモデル実証に取り組むこととしております。
こうしたモデル実証圃場を拠点としまして、現地研修会やセミナー等を開催し、実証で得られた成果等を県内の農家に波及することにより、水田における野菜等の高収益作物の生産を拡大し、農業者の所得が向上するように取り組んでいきたいと考えております。
〇臼澤勉委員 具体的にどの程度の経営体を今回の実証事業で取り組んでいくのか、そして、その成果指標、実証事業ですから、それを横展開というか、ほかの農家の方々に対しても共有していくんだと思いますけれども、そこら辺の成果指標も含めてお伺いいたします。
〇中村農産園芸課総括課長 ただいま三つの実証についてお話をしました。これらを農家でやっていくわけですので、幾つかの組み合わせにはなると思いますが、おおむね県内3カ所におきまして、タマネギやバレイショにおいて、こういう技術を組み合わせた実証を行い、例えば、水田のタマネギ栽培におきましては、慣行的な収量が10アール当たり2.7トンであるのを3.7トンと1トンふやすとか、バレイショにつきましては、同様に1.8トンを2.3トン、いわば0.5トンふやすような目標を掲げながら収益向上モデルに取り組みたいと考えております。これを、その地域における農家に見ていただきまして、新たに取り組む農家をふやしていきたいと考えております。
〇臼澤勉委員 それは何年ぐらいの計画で取り組んでいくのか、そして、最終的に本県農業の中心となっていく方々に対して、どのくらいの生産者に、そういった成果を取り入れていこうと思っているのかお伺いいたします。
〇中村農産園芸課総括課長 予算としては、来年度分しか今は決まっていないわけですが、できれば複数年にわたってこういうことを続けながら、水田農業の中心となっている集落営農の方々、野菜に取り組んでいる方々に導入したいと考えております。
具体的な数字は持ち合わせておりませんが、今後、その辺も含めて、実証しながら対象者等をリストアップしていきたいと考えております。
〇臼澤勉委員 ぜひ、具体的な目標のイメージ、この事業の位置づけを整理しながら、高い目標といいますか戦略的に取り組んでいっていただきたいと思います。
最後にいたしますけれども、いずれ、この所得向上にさまざまな新規事業も提案されて取り組んでいくところでございますが、本県農業の所得向上に向けて構造改革にしっかり取り組んでいかなければ、今、転換期にあると捉えております。
農林水産部として、この岩手のグランドデザインをどう見ているのか、そして、そういった中期戦略的な位置づけの中で、来年度はこういったことに取り組んでいくという位置づけを最後にお示しいただきたいと思います。部長、ちょっとお伺いいたします。
〇藤代農林水産部長 岩手県農業のグランドデザインというお話でございます。
従来から申し上げているとおり、本県は、残念ながら、農業に従事されている方が高齢化、減少という状態は、依然として続いてございます。そういった中で、新規就農者をしっかり確保していくのは当然の話でございますが、従来から、もうかる経営体をつくるということで、経営の規模拡大あるいは経営体質の強化ということで取り組んできています。そういったものについては、先ほど担当課長から申し上げましたとおり、3,000万円以上販売するような経営体が着実にふえてきている、あるいは法人化する経営体が着実にふえてきています。
こういった方が生産の中心になるような形で、農業生産を維持しつつ、また、農村の維持という観点から、中小規模の方についても、水田での高収益野菜、今時点ですと、高収益野菜の中でも加工業務用野菜という形のもの、先ほど課長が言いましたタマネギ、バレイショあるいは加工用トマトといったものが、今、非常に求められてきているようなところもあります。
こういった栽培についても、大規模経営体あるいは中小の方も取り組んでいただいて、また、人手が足りない分についてはスマート農業を積極的に導入しながら、経営の効率化を図って、農業生産が引き続き維持、拡大できるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。