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県議会報告

令和4年度2月定例会本会議(反対討論)(令和5年3月23日(木))

2023.03.24

議案第5号令和5年度岩手県一般会計予算に反対の討論

 自由民主党の臼澤勉です。会派を代表し、議案第5号令和5年度岩手県一般会計予算に反対の討論を行います。
 令和5年度一般会計予算は、自然減・社会減対策、GX・DXの推進、安全、安心な地域づくりの4つの重点事項に1,060億円の予算を確保し、新たに4つの財政目標を掲げ、グリーンボンドや全国自治体初のブルーボンドを発行する改革など、財政健全化を図ろうとする点において一定の評価をするものであります。
 しかし、約3年にも及ぶコロナ禍からの物価高騰、出生数が全国ワーストと本県の生活や仕事の現場は『待ったなし』の状況にあり、本気で県民の生活を立て直していかなければならない状況下において、その危機感が、この当初予算案では伝わらないことから反対討論するものであります。
本県は深刻な人口減少問題に直面しています。昨年、日本全体の出生数は80万人を割り、出生数の低下は全国的な傾向にあるものの、岩手県は前年に比べて10%以上減少し全国ワーストとなっています。また、合計特殊出生率や出生数の減少にしても、全国的なトレンドを原因とするだけで、本県独自の本質的な課題の原因分析に至っていないことが、課題解決のための有効策を打ち出せていない現状につながっています。
 「人口減少対策は息の長い取組みが必要で、既存事業が多くなるのは当たり前」と開き直るその姿勢では、出生率の改善や少子化対策、人口減対策において全国との格差は開くばかりであります。PDCAサイクルをしっかり回し、問題解決のために従来と異なるアプローチを実行すべきであります。打つ手は無限、スピード重視し、改革なくして成長はありません。
 また、発災から12年を迎えた東日本大震災津波の被災地では、急激に進行する人口減少問題に加え、コロナ禍、物価高という危機に直面しており、農林水産業を含め、地域のなりわいの維持のためにも、重層的かつ強力な支援が求められる局面にあります。
私たちは、こうした課題解決に有効な、県予算の足らざる点を補う動議を、予算特別委員会で提案いたしましたが、残念ながら否決されました。にも関わらず、一般会計予算案に類似した附帯意見がつけられたことは、極めて遺憾です。
 そもそも、予算の組替え動議の性質は何なのでしょうか。「予算の組替え動議」は、「修正動議」と異なり、予算を当該動議に示された内容に改めることを予算編成権のある知事に対し要求するものであります。つまり、知事の予算編成権を犯す恐れを形式的に回避するための方法が、この予算組替え動議であり、組替え動議は、なんら知事の予算編成権を侵害するものではありません。
 「組替え動議」の場合、当初予算案の撤回、訂正いずれも行わず、当初予算案は原案可決し、その代わりにしかるべき時期に組替え動議の内容を反映させた補正予算案の提出を表明することが可能であります。予算編成権を侵害するとの発言は、二元代表制の本議会を軽視する極めて憂慮すべき問題発言であります。
 また、出生数減少や女性の社会減対策等について、「国の制度の抜本的な改善を待たず、県独自の制度を創設することは、国への責任を追及することを忘れた責任転嫁にほかなならい」と反対していたにも関わらず、付帯意見において「県独自策の拡充を図れ」といった相矛盾する内容が採択されました。全く意味不明です。このようなことが、県民に理解されるのでしょうか。
 また、「財源論なき組替え動議は無責任」との指摘がありました。私たちは、まさに知事の予算編成権に配慮しつつ、財政基準比率4%程度を一つの目安とした財政調整基金の現行水準177億円を維持することで災害等の予測できない財政需要に十分に備えられると考えています。この財政水準を守りながら、この危機的状況において踏み込んだ積極財政支出を求めることはなんら、無責任な組替え動議ではないと考えます。
 自由民主党は、一つずつでも、県民生活を支える政策を実現できるよう引き続き真摯な議論を他会派に働きかけて参ります。

 本県の少⼦化傾向は、今後30年間で生産年齢人口が4割も減ると推計されています。しかも、25歳から39歳の女性人口は、約5割も減ると推計されており、そもそも社会を維持することができるのかさえ危ぶまれる状態にあります。岩手県として、より一層の戦略的な事業構築を行い、重点的な予算配分を進める必要がありますが、現在提出されている令和5年度当初予算案では不十分であります。
 「知行合一」との言葉があります。「何も行わなければ知ったとは言えない」という意味です。
 本県の人口減少率や生産年齢人口の減少率が全国の約2倍のペースで進む極めて重大な「危機」を頭で分かっていても、国のせいにして自身の問題として捉えず、解決に向けて実行しない限り、実は全然知らないのと同じことになります。自由民主党は「論より実行」の理念のもと、常に対案を示しながら実行、実践を一つ一つ積み重ねながら、本県の構造的な問題を解決するため、次の5つの対策を講じることを求めます。
 1点目は、出生数減少への更なる対応について、結婚支援、妊娠・出産支援、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備、子育て世帯の経済的支援など、ライフステージに応じた総合的な少子化対策をより強力に進めることを求めます。
 2点目は、若年層の社会減に対する対応について、社会減の大きな原因となっている他圏域との所得格差の是正のため、国の補助制度も活用しながら県独自に中小企業の賃上げのための助成制度や仕事と子育てが両立できる支援を拡充すること。天下り先の賃上げではなく、子育て世帯、若者世帯の賃上げを実現する対策を強く求めます。
 3点目は、農林水産業の振興への対応について、人口減少や物価高騰により苦境に立たされている農林水産業が、引き続き本県の基幹産業として牽引できるように、物価高騰対策に係る支援を拡充することを求めます。
 4点目は、生きにくさを生きやすさに変える「ヒトへの投資」について、全ての子どもの可能性を最大限に高める学びのセーフティネットを構築するため、不登校児童生徒の支援体制を強化することを求めます。
 5点目は、東日本大震災津波の被災地への復興支援の強化についてであります。複数ローンを抱える被災企業を対象に、物価高騰対策と経済の活性化策を講じるとともに、震災の風化防止や伝承を目的とした広域的な取組みを求めます。
 達増県政が編成した令和 5 年度一般会計予算には、そのような本県が抱える根本的な問題への解決策が不十分であり、これまでと同様、問題解決を先送りし、そしてこれまでと同様にさらに問題を⼤きくする結果を招くことは、⽕を⾒るよりも明らかであります。
 何よりも問題なのは、そのような環境下において、あらゆる年代の⼈たちが将来に不安を膨らませ、若い⼈たちさえも明⽇に希望を持てていないということであります。問題から⽬をそらしたり、間違いを認めず機能していない政策体系に固執している限り、問題解決ができるはずがありません。地方自治の本旨は、住民の福祉の向上であります。これに照らしても予算案は充分ではありません。知事部局の有能な職員4,310人の個性と能力を機動的に発揮させるとともに、知事には、改めて現実に⽬を向け、真摯に本県の課題に取り組むことを求めます。
 自由民主党は、困難な問題から⽬をそらさず、「論より実行」の理念で、本県が抱える構造的な問題解決に向け、「岩手を変える」政策に全⼒で取り組むことをお約束して、会派を代表しての反対討論といたします。