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県議会報告
令和3年度2月定例会 予算特別委員会(農林水産部)(令和4年3月17日(木))
2022.03.31
1 水田活用の直接支払交付金の見直しの影響について
(1) 水田活用の直接支払交付金の交付実績について
交付実績の全国シェアの推移はどのようになっているか伺う。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
水田活用の直接支払交付金の交付実績についてでありますが、本県への水田活用の直接支払交付金の交付実績は、最新の公表値となる令和2年度は約127億円で、全国の実績額に占めるシェアは約4%となっている。
(2) 市町村への指導や、見直しに対する県の受け止めについて
北海道では、具体的に影響調査を行いながら農水省と意見交換を図りながらやってきているが、岩手県はこれまでどんな取組をしてきたのか。
【農産園芸課総括課長答弁実績】
平成29年度に、交付対象水田が明確化された点につきましては、地域農業再生協議会等を通じて周知を図ってきたところ。交付対象水田につきましては、地域農業再生協議会が確認等を行い交付してきたところ。
今回の見直し等に関する国との意見交換につきましては、国と個別に意見交換を行っているところであり、実際に本省の室長等に対し、意見交換なり、直接現状等を伝えているところ。
畦畔とか水路を外した水田、5年以上水張りしない場合は、令和9年度から交付対象から外れるというが、畦畔、水路を外した水田はどの程度あるか伺う。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
現時点で、交付対象とされている農地は、すべて水田機能を有していると認識している。
財務省や会計検査等、制度運用の指導があったと聞くが、県は市町村に対し、どう指導してきたのか。また、今回の見直しを県としてどのように捉えているか。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
市町村への指導や、見直しに対する県の受け止めについてでありますが、水田活用の直接支払交付金については、平成29年度に、交付対象水田が明確化されたことから、県では、その内容について市町村等に通知するとともに、市町村等が事務局を担っている各地域農業再生協議会の担当者会議において、周知を図ってきたところ。
(3) 水田を活用した牧草生産について
牧草を生産している面積についてどのくらいあるのか、岩手県内の地域どこに多くあるのか、現状をお示しください。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
牧草の面積ですが、令和2年度の戦略作物助成の対象となる飼料作物の面積は7,648ヘクタール、そのうち、牧草の面積は約7,400haとなっている。
(4) 永年牧草の交付単価について
刈取りだけを行う年については、10アール当たりの交付単価が3.5万円から1.0万円になるが、国はどのように積算しているのか。また、県の評価について伺う。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
牧草の交付単価についてでありますが、県では、国に対して、多年生牧草の交付単価の見直しについて、積算根拠を問い合わせているところであるが、現時点で、国からは回答は示されていないところ。
見直しに関し、生産者等からは、見直しの提示が唐突などの声が寄せられており、多くの生産者が困惑していると認識している。
交付金等の予算要求について、現状の3万円を見直す時に、掴みで財政当局に示すものなのか伺う。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
そのような積算というものはないとは思うが、国からは積算根拠を示していただけない状況である。
(5) 見直しの影響について
全体の営農計画も含めた今後の体系についての県としての取組の議論が必要ではないかと考えるが、県の認識を伺う。
【農産園芸課総括課長答弁実績】
水田農業全体の話ですが、米の需要が減少している中で、今後とも本県の水田農業を持続的に発展させる、あるいは維持していく部分については、需要に応じた米の生産、水田をフルに活用した高収益な作物等の導入を進めていかなければならないと考えているところ。
こうした中で、水田活用の直接交付金については、水田フル活用の部分に関係するものであり、需要に応じた米の生産については、県として米戦略を立てながら、両輪の中で取り組んでいるところであり、水田農業を発展させていきたいと考えている。
(6) 新年度の県内事業計画について
「水田リノベーション事業費」が上乗せとなっているが、新年度の県内事業計画がどのようになっているか伺う。
【農産園芸課水田農業課長答弁実績】
新年度の県内事業計画についてでありますが、水田リノベーション事業は、水田農業を新たな需要拡大が期待される作物を生産する農業へと刷新、リノベーションする取組を支援するもので、水田への大豆や野菜等の作付拡大に有効な事業と考えている。
令和4年度は、13地域農業再生協議会において、麦、大豆、加工用米などの約4,800ヘクタールで、この事業の活用が計画されているところ。
水田から次への活用、集約化も含めて考えていく必要があるが、部長の所感を伺う。
【農林水産部長答弁実績】
生産者の所得向上が一番だと思っている。そのためには、生産コストの低減、生産物の高付加価値化、販売戦略、こういったものの組み合わせでいくべきだと思っているところ。
今回の交付金の見直し等でどんな影響があるか、6月以降にならないと金額的なことははじけないが、どういう影響が出るのか、あるいは、用意されている補助金・交付金をうまく使って農家の所得向上をいかに確保していくか常に考えていかなければならないと思っているところ。
2 みどりの食料システム戦略への対応について
(1)新年度の具体的な事業計画と目標について
栽培体系のグリーン化や有機農業の導入支援の具体的な事業計画は如何に。中長期的な計画目標をどう設定しているのか伺う。
【農業普及技術課総括課長答弁実績】
新年度の具体的な事業計画と目標についてでありますが、令和4年度当初予算等に盛り込んだ、いわてみどりの食料システム戦略推進事業は、農業の生産力向上と環境負荷の低減の両立に向け、国の新規事業を活用し、市町村や地域の協議会等が行う、栽培体系のグリーン化や有機農業の取組に係る経費を補助しようとするもの。
具体的には、①化学農薬等の使用量を低減した、環境に優しい栽培技術のモデル実証、②ドローンなどスマート農業技術を活用した省力化の取組実証、③学校給食での有機農産物の利用など、有機農業の産地づくりに向けた取組などを支援することとしている。
(2) 横断的な組織編成等について
商工、環境、農林水産関連部局の横断的な組織を編成すべき。行政・民間を含めた連携体制は如何に。
【農林水産企画室管理課長答弁実績要旨】
横断的な組織編成等についてでありますが、グリーン社会の実現に貢献する、「みどりの食料システム戦略」に対応した取組の推進は、環境、商工分野と一体的に進める必要があると認識している。
県では、4月に環境生活部に「グリーン社会」の実現に向けた専担組織を設置し、本県における分野横断的な取組を推進することとしている。当部としても、環境生活部をはじめとした関係部局としっかりと連携を図り、みどりの食料システム戦略に対応した取組を積極的に推進していく。
また、生産者のみならず、加工・流通事業者や消費者などの理解も重要と考えており、こうした視点も踏まえ、行政や関係団体と連携を深めていきたいと考えている。
(3)技術系職員の登用と人材育成について
国の政策を理解し、専門的な視点で分析を行い、施策を展開する必要がある。部長級ポストの技術職の登用を含め、来年度以降の人材育成・連携体制の取組は如何に。
【農林水産企画室管理課長答弁実績要旨】
技術系職員の登用と人材育成についてですが、国の政策を踏まえ、県の施策を部局間の連携のもと効果的に展開していくためには、職員の育成が重要であると認識している。
OJTや様々な研修の機会の充実などを通じて職員の専門性を高めているほか、部局間の職員交流を積極的に行うなど、多角的な視点を持ち、県政課題に的確に対応できる職員の育成に取り組んで行く。
3 原木しいたけ生産環境の再生の取組について
(1) 原木しいたけの営農を再開している生産者数について
原木しいたけの営農を再開している生産者数は、どれくらいいるか。震災前との比較、台帳上の生産者比較は。
【林業振興課総括課長答弁実績】
原木しいたけの営農を再開している生産者数についてでありますが、県では、震災後に生産者台帳を作成し、生産者の動向を管理してきており、震災前に露地栽培の原木しいたけを生産していた県内の生産者数は約1,500名であったが、令和4年1月末現在、出荷可能な生産者数は約570名と4割程度になっている。
(2) 生産者減少の理由について
生産者減少の理由について、県はどう分析しているか。
【林業振興課総括課長答弁実績】
生産者減少の理由についてでありますが、東京電力原子力発電所事故により国から出荷制限指示を受けたこと、また、震災後の乾しいたけの市場価格の低迷や原木価格の高騰、生産者の高齢化が要因と分析している。
(3) 安定的な原木確保の取組について
原木価格は震災前に比べ4割増。価格の推移と安定的な原木確保に対し、県はどのように取り組んできたか。
【林業振興課総括課長答弁実績】
安定的な原木確保の取組についてでありますが、県内のしいたけ原木価格の推移については、震災前の平成22年の平均価格が原木1本当たり181円であったのに対し、平成30年には300円台まで上昇し、令和3年には338円と震災前の約1.9倍まで上昇している。
県では、高騰する原木価格対策として、国庫補助事業を活用した原木購入経費支援を実施するとともに、原発事故の影響により高騰した原木価格と震災前価格との価格差、いわゆる掛り増し経費について、東京電力からの賠償金が支払われるまでの間、「原木しいたけ経営緊急支援資金貸付金」によるつなぎ融資を実施し、生産者の資金繰りを支援してきた。
(4) 原木の調達ルートと原木の品質について
原木調達ルートは震災前と比べどう変化しているか。また、原木の品質低下により生産量減少や生産効率が悪化していると伺うが、県の現状認識は如何に。
【林業振興課総括課長答弁実績】
震災前に比べ、しいたけ原木の購入が増加する中、伐採される広葉樹林の状況等により、必ずしも、個々の生産者が希望する品質の原木を調達できない場合もあると聞いている。県では、しいたけ原木供給連絡会議において、こうした状況について情報共有するとともに、森林組合や原木を供給する団体等に対し、生産者が希望する原木の太さや長さ、樹種や産地のほか、供給希望時期などを細かに伝え、希望に沿った原木が供給されるよう努めていく。
(5) 遠距離地伐採に係る経費等の支援について
グレーゾーンの(自己所有の山を伐採できなくなった)方々への支援策を考えないのか。
【林業振興課総括課長答弁実績】
遠距離地伐採に係る経費の支援についてでありますが、生産者が自己所有山林以外から原木を伐採するにあたっては、伐採が可能な広葉樹林の場所の把握や、森林所有者との合意形成など、様々な課題があると認識しており、今後、森林組合や森林所有者等の意見も聞きながら検討する必要があると考えている。
(6) 原木の基準値と東京電力の賠償スキームとのずれの解消について
原木の基準値キログラム当たり50ベクレル以下の原木を使用せざるを得ない状況にある。原木の基準値と東京電力の賠償スキームとのずれを県としてどう解消する考えか。
【林業振興課総括課長答弁実績】
原木の基準値と東京電力の賠償スキームとのズレの解消についてでありますが、東京電力は、原木の購入代金の掛かり増し経費の損害賠償については、国のしいたけ原木の指標値となっているキログラムあたり50ベクレル以下を基準として、算定を実施している。県では、国が主催する会議等において、しいたけ原木の指標値よりもより安全性が高い原木を選択せざるを得ない現状を繰返し説明してきたところ。
現時点では、国から指標値の見直しや賠償の基準、東京電力への指導にかかる方向性が示されていないことから、今後も他県等と連携しながら、国や東京電力に対し、引き続き、要請していく。
(7) 産地再生に向けた原木林再生の方針と対応について
産地再生に向け原木林の放射性セシウム濃度が低い地域は再造林を行うべき。県の方針と対応は如何に。
【林業振興課総括課長答弁実績】
産地再生に向けた原木林再生の方針と対応についてでありますが、県では、これまで、しいたけ原木の放射性物質検査を実施してきた結果、出荷制限地域内においても、放射性物質濃度が低い森林が確認されており、原木の活用事例が出てきている。
原木として活用が可能になったことで、「再造林」による再生だけでなく、伐採後に切り株から発生した新芽により更新する「天然更新」による再生が期待される
このことから、今後は、再生を目指す森林について、「再造林」と「天然更新」どちらの再生方法が適しているか森林所有者と検討を進めながら、原木林の再生に取り組んでいく。
(8) 広葉樹林再生実証事業の伐採等の今年度の実績と評価について
伐採、作業道、放射線物質濃度調査の今年度の実績と評価は如何に。実施区域は年々面積を拡大しているか、今後の計画を含め伺う。
【森林整備課総括課長答弁実績】
広葉樹林再生実証事業の伐採等の今年度の実績と評価についてでありますが、この事業は、放射性物質濃度キログラムあたり50ベクレルを超える広葉樹林を伐採し、伐採した木の根元から再生するぼう芽枝などの放射性物質濃度を一定期間調査するものであり、令和3年度の実績は、伐採約8ヘクタール、放射性物質濃度調査116箇所で、作業道の開設はなかったところ。これまでの調査結果では、ぼう芽枝の放射性物質濃度が年々低下する傾向は見られたものの、一部には、その傾向が見られないものもある。
この事業は、林業事業体等からの申請に基づき実施するものであり、事業を開始した平成26年度から数年間は、年間70ヘクタールを超える要望があったが、近年は事業の対象となる広葉樹林が奥地化しているなどの理由から数ヘクタールの要望となっており、令和4年度には新たに約2ヘクタールの伐採を予定している。
広葉樹林再生実証事業の要望が少なくなってきているとのことだが、生産者からの要望を丁寧に聞いてほしいと考えるが如何か。また、放射性物質濃度が高い箇所が減少してきているのであれば、岩手の原木しいたけの産地再生に向けて環境が整ってきていると県は認識しているのか伺う。
【森林整備課総括課長答弁実績】
広葉樹林再生実証事業の対象地は、道路条件が良いなど実際に原木林として活用できる広葉樹林において、放射性物質濃度が高い箇所を事業主体の方が選定しておりますので、要望が少なくなってきているということは、委員ご指摘のとおりでございます。
最終的には国とデータを共有しながら、放射性物質濃度調査の成果等を活用することとしており、要望は少なくなってきていますが、事業の掘り起こしを進めて、データの蓄積を進めていきたいと考えている。
(9)特用林産物の産地再生に向けた取組みについて
特用林産物の産地再生に向けた取り組みについて伺う。
【農林水産部長答弁実績】
本県はしいたけの主要な生産地でございました。原発事故が起きてから生産者も減り、生産量も減っているということでございます。ただ、品質の高いしいたけ等を生産する能力は十分に備わっておりますので、あらゆる手段を取りながら産地の再生に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えている。