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県議会報告

令和2年度閉会中常任委員会(農林水産委員会)(令和3年1月13日(水))

2021.01.21

1 野生鳥獣による農作物被害の状況と被害防止対策について

(1)野生鳥獣の農産物被害状況

 シカ、イノシシ等の被害を中心に、被害額の説明がありました。改めて伺いますが、国で令和元年度の全国の野生鳥獣の農産物被害状況を毎年公表しています。市町村から積み上げで国で公表しているものです。国のデータによると、全国で158億円、うち鳥類が31億円、獣類が120億円で、だいたい、1対4の割合だと思います。本県の状況はどのようになっているのか伺います。獣類も、シカが4割、イノシシ36%となっています。

○今泉担い手対策課長 
 先程の説明資料の3ページにも記載していますが、令和元年度の県内の被害額は全体で約4億円でございます。そのうち一番多いのは、ニホンジカで、2億1千万円ほど。続いて鳥類で7,500万円ほど。つづいて、クマ、ハクビシンという状況になっています。

(2)全国捕獲キャンペーン

今回、全国捕獲キャンペーンを打ち出しています。2013年度が基準に、23年度までに半減しましょうということで、集中捕獲キャンペーンをしています。キャンペーンでは、捕獲強化エリア、頭数を設定することになっています。本県の場合は捕獲強化エリアを全県指定していますが、その考え方を伺います。

〇今泉担い手対策課長
 この国からキャンペーンを実施する通知がだされ、県では、市町村にこの内容を説明の上、実施しているところでございます。市町村からは、キャンペーンに入らないという声はなかったので、県では、全市町村を対象にキャンペーンを実施することとしています。

 キャンペーンの中で、重点的にこの対策を行うエリアを各県で指定しています。東北の中で言えば、全県指定は岩手県だけです。他県はもっとエリアを絞っています。限られた予算で、人も限られている中で、鳥獣被害対策を全県でやる思いはわかりますが、エリアを絞ってやるというのは、キャンペーンの本質的な目的だと思います。私は、もっとエリアを絞るべきではないかと思います。その根拠として、農業振興課と自然保護課が共有して、令和元年度野生鳥獣の生息状況アンケート調査を発表しています。これによると、それぞれの捕獲・防除対策の資料として打ち出そうということで、イノシシ、ニホンジカ、ツキノワグマ、ハクビシン、それぞれの種類に応じて住民の人たちの目撃状況であったり、被害状況などがどういうふうになっているのかを、エビデンスに基づいて整理しています。農業振興課と自然保護課が連携して作った資料です。こういったものに基づいてある程度絞るべきではないかと思うのですが、このアンケート調査の活用を含めて、農林水産部のお考えを伺います。

〇今泉担い手対策課長
 キャンペーンの強化エリアの設定については、市町村の意向も反映させながら行っております。ただ、その設定にあたりまして検討した内容については、例えば、ニホンジカについては、五葉山周辺を重点エリアに指定してほうがよいのではないかという議論もありましたが、いずれ全県的にイノシシ、ニホンジカのエリアが拡大していること、被害額が上がってこないことを総合的に勘案しまして、全県的にエリアとするべきだと考えたところです。
 二つ目のアンケート調査の件ですが、昨年度、環境生活部と連携しながら、県内農家を対象にアンケートを実施したところです。このアンケートは、引き続き、令和3年度も実施して、きちんとしたデータを抑えて分析しながら、今後の鳥獣被害対策に活用していきたいと考えております。こういったアンケートを実施しながら、農家集落ごとの被害状況、生息状況を把握しながら、対策に当たっていきたいと考えています。

 この調査票は本日配られていないのですが、県内地図に被害状況、目撃状況がプロットされています。イノシシについても、全県被害に拡大しているとは言いつつも、県南エリアや盛岡エリアに集中しています。被害額についても、それに関連する形で傾向がわかります。
 いずれ、対策を打つということは、私はある程度戦略を持ってやるべきだと思います。キャンペーンを全県で打つ、市町村からの要望があってやることはそれはそれでよいとは思いますが、今回の鳥獣被害対策の県予算はどの程度確保しているのでしょうか。そんなに潤沢にあるとは到底思えません。ある程度、選択と集中を図る必要があるのではないかと思います。その辺の状況を伺います。

〇今泉担い手対策課長
 鳥獣被害対策の農林水産部の予算額ですが、例年約2億円程度で推移しています。この予算を実施体に配分しながら行っております。なお、今回の捕獲キャンペーン等の国の動きに連動しまして、国でも追加予算を確保していただき、本県でも追加予算を要求し、配分してもらっています。今年度の国の3次補正においても予算措置されています。それらをふまえ県では、適切に予算を確保していくよう、今後も対応していきたいと思います。

(3)電気柵の設置と維持管理

 例えば、ニホンジカの被害額2億円。いわゆる鳥獣被害全般をみると、もっと毎年毎年、大きな被害が出ています。そういったことで、予算も限られているので、ぜひ、集中リアということは、ある程度戦略的に検討されて、実効性のある対策を求めたいと思います。
 また、色々と、地域を回っていると鳥獣保護管理員の方々から声が聞こえてきます。先程、電気柵の話がありました。電気柵の設置については、20市町村で約900キロとだんたん伸ばしていることについて評価しています。保護管理員からは、電気柵の設置が伸びているのはよいのだけれども、設置のみが目的ではなく、その後の維持管理が必要になってくるので、指導の徹底をお願いしたいとの話があります。また、電気柵の下を熊がくぐるなどの話も聞こえています。維持管理を含めた対策を伺います。

〇今泉担い手対策課長
 委員からも話がありました通り、電気柵を設置した後の維持管理が課題となっております。例えば、電気を設置した後に、その下から雑草が生えてくると、通電しなくなり効果がなくなるので、草刈りをきちんとしなくてはいけないなど、実際、設置するのが農家ということもあるので、その設置に当たってのノウハウを伝える必要があると認識しています。細かいところまで対応したいと考えております。研修会等を通じてきちんとフォローし、電気柵の効果的な防除対策を講じていきたいと思います。

(4)捕獲応援隊の設置

 11ページに、担い手の確保について説明されています。捕獲応援隊の設置の推進が説明されています。非常に重要な取組ということで評価しています。先般、この委員会で、紫波町の一般社団法人しわ・まちコーディネットと意見交換した時も、遠野地区の話が話題になりました。遠野地区では、狩猟免許を持った猟友会と、農家や地域の方々が登録している捕獲応援隊と協力して、見回りとして連絡を取り合うなどの対策を講じて実績を伸ばしています。まず県として捕獲応援隊の目標人数をどの程度伸ばすつもりでいるのか、市町村に対してどのような指導を行っているのか、どの程度、市町村に予算配分するつもりなのか伺います。

〇今泉担い手対策課長
 捕獲応援隊について、県として県内でどの程度まで人数を増やすかについて数値的なところは持ち合わせていません。しかし、遠野の取り組みが大事で、非常に効果があるということですので、すべての市町村で取り組んでもらうことが、一番早く効果があるのではないかと考えています。そういった意味で、研修会、各種関係団体が集まる機会に、遠野地区などのモデル的な工夫している事例を発表するなどして推進していきたいと思っています。一例を言いますと、今年度開催されました、シカ管理検討委員会において、農業振興課から遠野地区の取り組みを紹介させていただきまして、委員からは評価をいただいております。こういった取り組みをなるべく他の多くの地区で取り組んでもらえるように、今後も進めていきたいと思います。

 遠野地区では、例えば狩猟免許をもった人が100人に対して、捕獲応援隊は200人という規模で補助委員を増やして登録していると伺っています。ぜひ、県で本気で農業被害を抑えるのだという捕獲ハンターの負担軽減などを地域ぐるみで具体的な対策を練っていかないとと実効性が上がらないと思います。シカに限らず、クマ被害などにも有効だと思います。ぜひ、県として目標をもって、そういった補助員というか、応援隊員を増やす対策は有効だと思いますので、来年度の政策に検討していただきたいと思います。

2 大雪被害対策

(1)被害額の把握状況

 雪害被害額算定は、40%ということで、全体の概要がつかめていないということですが、途中経過とはいえ、なぜ、岩手県が全国と比較して被害状況がダントツに大きいのか、この要因を県としてどのように捉えているのか伺います。

〇鈴木企画課長
 全国の状況につきましては、北陸・日本海側が、調査が進んでいるのかできないでいるのかはっきりわからない中で、本県は市町村と連携して情報収集して被害内容を国に報告している状況です。他県がどの程度これから増えてくるのか注視しながら努めていきたいと考えております。

 雪対策は、雪国の宿命でありますが、ハウスを守る技術的な指導が必要という話がありました。北陸や秋田県と比べ、構造的に脆弱な部分が要因であるならば、強化の対策が必要なのではないかと思います。現状復旧ということではなく、雪国岩手として農業を推進していく意味で、構造的な指導が必要になってくると思いますが、その点についてどのようにお考えですか。

〇中村農業振興課総括課長 
 平成25年の大雪被害の際にも相当程度の被害額がありました。県としては、大きな災害を踏まえながら、雪に強い農業用ハウスの導入をすすめてきております。一方で、積雪量が例年に比べ多く、短時間で一気に降った状況もあり、今回被害が拡大したと認識しております。補助事業等々を含めて、被害がある前提のもとに、しっかりと対策を講じられるようハウス導入が必要と考えております。引き続き、県単独事業も踏まえて行っていきたいと思います。

(2)県としての対応

 平成26年2月、平成28年1月にも大雪被害がありました。今回は、それらと比較しても相当の被害が出ていると思います。我々自民県連も、1月5日、7日と、一関市をはじめ県南地区を回り被害状況を確認させていただいております。やはり、壊れたパイプハウスの撤去、資材確保などについて懸念の声がでております。ハウス復旧にあたっての資材高騰、人手不足などの課題があると思いますが、県としてどのように現状を捉え対応するつもりなのか伺います。

〇中村農業振興課総括課長
 ハウス復旧にかかる、資材の高騰や人手不足の現状についてですが、現地からは被災したパイプハウスの撤去や再建、人手不足の声が上がっていることは把握しています。資材の高騰にかかる情報は入っておりません。JA等の関係機関と連携しながら情報収集に務めるとともに、人手不足等も含めて必要な対策を検討していきたいと思います。

 現地を回り感じたのは、個々の農家がハウスの撤去や再建、育苗対応をやるのでは、この1月から3月の時期にやらなくてはいけない農作業と勘案してスピード感が大切だと思います。例えば、撤去については、建設業協会などの団体に支援いただき、東日本大震災時の対応を参考に、地域ごとに広域的に対応を行うなど、手続きについても農家個々が行うのではなく、団体や市町村に任せて負担軽減をする支援策が必要だと思います。また、支援策についても国の支援だけでなく、市町村やJAや団体と連携し、県独自の支援策を講ずる必要があると思いますので、伺います。

〇中村農業振興課総括課長
 資材の撤去等、非常に大変だと伺っております。建設業協会との連携や、ボランティアを募って対応してはどうかという話も聞いております。今後、関係機関等と連携し情報収集しながら対応していきたいと思います。

(3)3年産の育苗支援体制

 北上市の当たりでは、資材発注の動きをしている状況でした。一方、一関方面はまだ、そこまで至っていない状況でした。バックアップについては、迅速に対応いただきたいと思います。育苗については、県南地域は金色の風や金札米などの岩手のブランド米の作付けにも影響が懸念されますが、育苗体制はどのようになっているのか伺います。

〇佐藤県産米戦略監
 水稲育苗の体制ですが、農協でとりまとめて、管内の農業法人や生産組織等に委託して育苗を行ったり、農協の育苗センターにおいて、主食用米の育苗を生産した後に、飼料米の育苗を生産するなどの2回転で育苗することも考えられます。それでも自前で準備できない場合は、今回、被害を受けていない農協と被害を受けた農協が連携を図ることも検討されており、総合的に検討して参りたいと思います。

 ぜひ、万全を期していただきたいと思います。本県農業を衰退させない取り組みについて、しっかりとメッセージを県として発信すべきだと思います。
過去の26年、28年に同様の被害があったわけですが、過去の被害をどう捉え、対策をどう検証しているのか、今回の被害をどう考えているのか伺います。

〇中村農業振興課総括課長
 平成25年度の大雪被害は、県北地域を中心に、20市町村で、約17億円の被害ということで復旧支援事業に、国、県が支援を行ってきた経緯があります。雪害に強いパイプハウスの導入を進めてきたわけです。今回の災害については、急激な雪の降雪量があったこともありましてかなりの被害に及んでいるものと認識しております。いずれにしましても、現地の要望や、過去の取り組みを検証しながら、必要な対策を講じていきたいと考えております。

(4) 園芸施設共済

 園芸施設共済について伺います。令和元年度が、64.8%の加入率で、東北の中でもまあまあのところ、全国に比べれば若干高いのかなあと思います。令和2年度が、62.9%で若干加入率が下がっております。地域によってすごく差があります。ダントツに高いのが、花巻・中部地域です。県北地域は、50%を切り39.1%など、4割弱の状況になっています。何を言いたいかというと、強い農業づくり総合支援金などでも、この共済の普及対象となる施設の場合は、共済への加入が必要となる条件もありますが、何年かで離れていく傾向があるのかなと思いますが、その辺の指導を県としてどう捉えているのか伺います。

〇中村農業振興課総括課長
 パイプハウスの補助事業の導入に対しては、基本的には園芸施設共済に加入いただくよう指導しております。
〇菊池団体指導課総括課長
 園芸施設共済の加入率が若干全体で低めになってきていることは、新たに、収入保険が始まり、そちらに移行している方が増えたことによる減少もあると認識しております。

 自然災害被害は、いつでもあるものだという考えで構えなくてはいけないと思いますが、生産者の気持ちは掛け金の問題なども大きいと思います。加入率を国では80%など高い目標を掲げて誘導しています。市町村においては、陸前高田市や岩泉町などは支援を含めながら加入率の向上をしている自治体もあります。そのようなところは加入率が高い実態があります。県としても災害支援と併せて、共済加入は必要だと思いますが、改めて伺います。

〇菊池団体指導課総括課長
 収入保険と共済加入については、災害対応には非常に有用な取組で、加入者が今後も復活するように取り組んでおりまして、特にも農業共済組合においては、個別訪問や相談会なども開催しております。農業共済と収入保険の両方の加入推進を図っております。県においても、関係団体等と構成します岩手県農業保険推進協議会を設置しております。ここに参画し、加入推進への取り組みを支援しております。

 生産者の営農意欲の低下をさせないための生産者に寄り添った施設の復旧や支援、更には経営管理・育成、新技術の導入支援なども、強靱化を含めた対策を基幹産業を所管する農林水産部としてしっかり行い更に強化していただきたいと思います。部長の所感を伺います。

〇佐藤農林水産部長
 営農意欲を低下させない対応については、基本的なところではセーフティネットの制度がきちっと用意されております。基本はそちらにきちっと加入していただくことが第一だと考えております。なかなか加入率が上がらない。あるいは、掛け金に見合ったバックがない。あるいは、そこまで加入できない状況が経費的にあるなど伺いますが、やはり、基本はセーフティネットを用意している以上そちらに加入していただき、災害時はある程度の基本的支援をいただき経営再建をすることが基本だと思っています。ただ、想定を越えるような被害があるわけですので、そういった場合に、行政としてどういった支援をしていかなくてはいけないのか、県単独だけでは経費的に難しいところがありますので、国に支援を求めていきたいと思います。過去の災害におきましても、やらなくてはいけないこと。行政の立場としてやってまいりました。今回も過去の災害と比べて非常に大きな災害になっておりますので、これを機に、営農から離農うしない離れることがないように、県として出来るだけのことはなんでもやっていきたいと思います。