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県議会報告
平成30年度9月定例会 決算特別委員会(農林水産部)(平成30年10月11日(木))
2018.10.14
1 いわてワインヒルズ推進事業について
(1) 平成29年度の成果と今後の取組みについて
平成29年度の成果はどうだったのか。平成30年度の取組はどうなっているのか。
いわてワインヒルズ推進事業における平成29年度の成果についてでありますが、昨年6月に、県内のワイナリーや自治体、研究機関、流通関係者などで構成する「いわてワインヒルズ推進協議会」を設立し、この協議会を中心に、①ワイナリー開設に必要なノウハウの習得のための「いわてワイン生産アカデミー」を開講するとともに、②「いわてワインを楽しむ夕べ」の開催による県内消費者等に対するPRなどに取り組んできたところ。こうした取組の結果、「いわてワイン生産アカデミー」では24名が受講を修了し、うち2名が県内にワイナリーを開設したほか、「いわてワインを楽しむ夕べ」には、約250名の参加を頂き、県内消費者への県産ワインの一層のPRが図られるなど、一定の成果を上げてきたものと認識しているところ。
平成30年度の取組についてでありますが、平成30年度は、平成29年度の取組を継続するとともに、新たに「いわてワイン生産アカデミー」の修了生に対する醸造用ぶどうの栽培技術のフォローアップ講座の開催、また、ラグビーワールドカップ2019TM(にせんじゅうきゅう)の開催機運の醸成に向けた県内のイベントや、食や観光と連動した県外のイベントでのPR、さらには、フェイスブックによるワイン原料となるぶどうの生育の様子やワイナリーの仕込みの状況の情報発信などに取り組んでいるところ。
(2)醸造用ぶどうの生産振興の取組について
醸造用ぶどうの生産振興にどのように取り組んでいくのか。生産の現状と振興策、地域に適した醸造用ぶどうの品種選定はどのように進めるのか伺う。
醸造用ぶどうの生産振興の取組についてでありますが、国産ぶどうのみを原料とし日本国内で製造された、日本ワインの需要の高まりを背景に、本県の平成27年の醸造用ぶどうの生産量は約258トンと、平成17年に比べて約118トン、85パーセントの増となっており、気象条件等により変動があるものの、生産量は増加傾向にある。
こうした状況も踏まえ、醸造用ぶどうの栽培面積の一層の拡大に向けて、苗木の新植・改植や、栽培棚の整備等を支援するとともに、平成29年度からは、「いわてワインヒルズ推進事業」により、醸造用ぶどう栽培マニュアルに基づく技術指導や、先ほども申し上げた「いわてワイン生産アカデミー」等を通じた醸造用ぶどうの栽培技術の習得などに取り組んでいるところ。また、醸造用ぶどうの品種選定に向けては、県内の多様な気候・土壌・地勢などの地域性も踏まえ、現在、紫波町、花巻市、陸前高田市、野田村の県内4カ所において、栽培適性試験を行うとともに、工業技術センターにおいて、醸造試験を実施している。こうした試験の調査結果も踏まえながら、地域に適した醸造用ぶどう品種の導入を図り、積極的に生産振興に取り組んで参ります。
(3)県産ワインの知名度向上のためのオール岩手の取組について
県産ワインの知名度向上のため、山梨県で取り組んでいる「地理的表示(GI)保護制度」の取組のように、原料や製法などを規定したワインを製造するなど、オール岩手の取組を推進するべきと思うが、いかがか。
県産ワインの知名度向上に向けたオール岩手の取組についてでありますが、県内では多様な気候・土壌・地勢などの地域特性を生かしたワインがつくられており、こうした特徴を国内外に広く発信していくためには、地域ブランドとしての価値向上や輸出拡大も期待できる、お酒の地理的表示(GI)保護制度の活用も有効な手段の一つと考えている。先ほどありましたのは農林水産省のGI制度ですが、お酒の場合は国税庁の所管となっております。このため、本年8月に、ワイナリー関係者や市町村、関係団体の参加により、「いわてワイン研究会」を開催し、ワインの地理的表示(GI)保護制度の先進県である山梨県から講師を招き、取組事例などを学んだところ。今後も、ワイン産地としての発信力向上に向け、こうした調査・研究を進めながら、ワイナリーや関係機関・団体が一体となり、オール岩手で取り組んでいく。
2 米政策について
(1) 過剰米の懸念について
全国の主食用米の需要量は、年間8万トンずつ減少するといわれている。本県以外に、秋田県や新潟県で生産面積を増やしていると伺っているが、過剰米の懸念はないか。
9月末に公表された国の資料によると、平成30年産主食用米の作付面積が増加した県は、秋田県、新潟県、岩手県など20道県となっている。本県の平成30年産主食用米の作付面積は48,800haで、平成29年産から1,800ha増加したが、関係機関・団体や県で構成する岩手県農業再生協議会が設定した平成30年産主食用米の生産目安を下回っており、各地域からの聞き取りにより需要に応じた生産が行われていることを確認している。
一方、鹿児島県、佐賀県など20都府県で主食用米の作付面積が減少したことにより、全国の作付面積は29年産と概ね同水準となっていることから、需給への大きな影響はないものと考えられる。
(2) 県産米の販売価格と作付の考え方について
地元の量販店の販売価格だが、青天の霹靂は5kgで3180円、銀河のしずく2780円、ひとめぼれ2680円であった。「銀河のしずく」の地元量販店の販売価格の評価は如何に。また、「銀河のしずく」「金色の風」、業務用米をどこまで増やすかについて伺う。
県産米の小売販売価格と作付の考え方についてでありますが、販売価格については、各小売店の判断によるものと考えますが、品種ごとの価格差については、仕入価格や販売重量も影響していると推察される。なお、「銀河のしずく」等については、概算金のレベルでは昨年と同程度と聞いており、農家の収入に大きな変化はないものと認識している。
また、県産米の作付については、「金色の風」「銀河のしずく」は、ブランド価値の向上や高価格での取引を目的とし、実需者ニーズをもとに、30年産では「金色の風」は226ha、「銀河のしずく」は1,403ha作付されており、今後の作付面積については、実需者ニーズを加味しながら、毎年度設定することとしている。業務用仕向けについては、適切な品種配置や、生産コスト低減技術の導入を図りながら、実需者等の要望を踏まえた安定的な取引の拡大に向けて、複数年契約等の取組を推進するなど、関係団体との連携を、より一層強化しながら取組を進めていきます。
(3)良食味・高品質生産に向けた指導について
今年は、夏の高温等で適正追肥の徹底等の面で、苦労したとの声も聞く。一方で、銀河のしずくの生産者に普及員が訪ねて来て指導を受けたか尋ねると、お会いすることもなかったとの声も聞く。県を上げてオリジナル品種の生産販売に取り組むべきだが、良食味・高品質生産に向けた指導は如何に。栄養診断による適正追肥の徹底、タンパクマップや収穫適期マップなどリモートセンシング技術の活用等の課題や改善策をどう認識しているか。
良食味・高品質生産に向けた指導についてでありますが、「金色の風」、「銀河のしずく」については、昨年度の研究成果をもとに、栽培マニュアルに、新たに、栄養診断に基づく適正な追肥判断等の項目を入れ込み、県及び地域の栽培研究会を延べ34回開催する中で、その実践を図っているところ。
また、「ひとめぼれ」等については、各JAの食味向上に向けたモデルほ場の設置運営を支援しているところ。
次に、リモートセンシング技術による品質向上については、衛星画像を解析したほ場別の生育状況と玄米タンパク質含有率の推定モデルの作成に取組んでいる、来年度は、食味への影響が大きい玄米タンパク質の含有率の推定精度を高めるとともに、収穫適期判定への活用など、積極的に良食味・高品質生産に向けた指導に取り入れていく。
3 いわての森林づくり県民税について
(1) 平成29年度の執行状況について
平成29年度の事業実績と税収7億円に対し決算見込額に乖離があるが、その要因は何か。
平成29年度の執行状況についてでありますが、平成29年度のいわての森林づくり県民税の税収は7億2,700万円余となっている。事業としては、強度間伐あるいは森林環境教育を実施する団体への支援、広報等の普及啓発等に取り組み、決算見込額は3億7,100万円余となっており、乖離が生じている。
税収と充当額との間に乖離が生じた主な要因は、税収の約9割を充当するいわて環境の森整備事業において、平成29年度の施工地確保面積が888ヘクタールであり、目標とする1,500ヘクタールの半分程度に留まったことが、乖離が生じた主な原因である。
(2) 環境の森整備事業の実績等について
環境の森整備事業の実績等について、環境の森整備事業とその他事業の構成割合を見直しても良いのではないか、その所見を伺う。
森林整備活動や森林環境教育に取り組む地域住民団体等への支援についてでありますが、毎年度、活動団体の募集をして取り組んでいるところであり、県民参加の森林づくり促進事業では、毎年度40団体、森林山村多面的機能発揮対策事業では、90団体程度を想定し、予算計上をしているところではあるが、応募の状況を見て必要な部分については、きちんと支援できるよう対応して参りたい。
(3)使途の拡大について
税の受益と負担の観点が重要。現在のいわての森林づくり県民税の使途は、公益的機能を高めるための間伐などに限られている。県民税創設の目的である、森林の有する公益的機能の維持増進と持続的な発揮のために、間伐以外にも県民税で実施すべき森林整備があると考える。例えば、「県民を悩ませている花粉症の対策として花粉の少ないスギへの植え替え」や、「シカや松くい虫等の被害を受け公益的機能が失われている森林への植栽」など所有者が想定していなかった事態に対応するための再造林も考えられる。また、見通しが悪く、倒木の危険性もある住宅地や通学路に隣接する森林の整備や鳥獣被害対策など、県民が森林整備の恩恵をより身近に感じられる、再造林や里山林整備等に県民税の使途を拡大してはいかがか。
使途の拡大についてでありますが、いわての森林づくり県民税は、平成18年度に創設したものであり、5年を一つの期間として事業を実施しているところであり、現在、2020年度を終期とする第3期の取組を推進している。この県民税の使途について、現行制度では、再造林や里山林整備を制度の対象としていないが、第3期の取組を始めるにあたり、アカマツ林の広葉樹林化やナラ林健全化促進事業を新たに加えて取組を進めている。
今後の県民税のあり方については、現在の取組の成果や課題、森林・林業を取り巻く状況の変化等を踏まえ、県民の皆様をはじめ、いわての森林づくり県民税事業評価委員会や、ただいま委員から御提案いただいた内容も含めた県議会の御意見などを伺いながら具体的な検討を進めていく。