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県議会報告

平成31年2月県議会 一般質問(平成31年2月25日(月))

2019.03.05

1 いわて県民計画(2019~2028)について

(1)  新いわて県民計画について

 はじめに、「いわて県民計画(2019~2028)」について伺う。
 2030年までの国連の持続可能な開発目標(いわゆるSDGs)の基本理念「誰も取り残さない」は、知事の掲げる幸福のキーワードと通じるものである。私たちは、世界に先駆けて人口減少・超高齢社会に挑みながら、幸福を次世代に引き継ぎ、持続可能な社会とする取組を岩手県から国内外に発信する使命がある。国においても、「SDGsアクションプラン2018」を未来を創る国家戦略の柱に置き、官民あげて推進している。
 私は、計画の推進に当たり、県と多様な主体がビジョンを共有し、ベクトルを合わせて行動すること、民間活力を引き出すことが政策実現のポイントと捉えている。世界が分断と混とんとした空気が漂う一方で、Iotの普及により地球の物理的精神的距離が縮まり、一つに繋がるエネルギーを感じる。世界とつながる開国時代だからこそ、国際的な視点に基づき岩手のアイデンティティーを発する計画であるべきである。国内外の方がこの計画をみて、岩手は何なのか、どこに向かって行こうとしているのかを理解する羅針盤である。そこで伺う。
 これまで以上に知恵を絞った戦略的な県政運営を行うとともに、積極果敢にあらゆる課題に取り組む熱意が不可欠であるが、新いわて県民計画に基づく県政運営への意気込みについて伺う。併せて、いわて県民計画をあらゆる主体とベクトルを合わせて推進するためにも、SDGs17分野の考え方を踏まえた行動計画のようなものを策定すべきと考えるが、知事のご所見を伺う。

【達増知事】
「いわて県民計画」最終案では、「岩手の幸福に関する指標研究会」から示された幸福の実感に関する領域に基づいて、県民一人ひとりの暮らしや仕事を起点とする10の政策分野を設定し、各政策分野に掲げる「いわて幸福関連指標」の向上を図り、ひいては、県民の幸福度を高めていくこととしている。また、10年後の将来像の実現をより確かなものとし、そしてその先をも見据えた、新しい時代を切り拓く11のプロジェクトを掲げ、あらゆる主体との連携のもと、戦略的、積極的に推進していく。
 SDGsの「誰一人として取り残さない」とする理念は、計画で掲げる、「お互いに幸福を守り育てる」との考え方に相通じるものであることから、国における「SDGsアクションプラン2019」に基づくSDGsを原動力とした地方創生の取組や、SDGs達成を見据えた次期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」策定に向けた動きなどを注視しながら、本県としての今後の取組方向について検討していく。

(2)  女性の社会減対策について

 女性の社会減対策について伺う。
 本県の社会減は、進学期、就職期の若者の転出の影響が大きく、特にも22歳前後の就職期における女性の転出が多い傾向にある。女性の社会減を抑制するためには、女性の転出を食い止める、あるいは、県内出身の女性が戻ってくるような雇用の場づくりが必要と考えるが、県ではどのように進めていくのか伺う。

【戸舘商工労働観光部長】
 本県の生産年齢人口の女性の就業率は、総務省統計局の「就業基本調査」によると、平成24年の67.0%から平成29年には71.6%に上昇し、また、育児をしている女性の就業率においては、平成24年の64.1%から平成29年には76.1%と大きく伸びて全国10位となるなど、女性の就業が進んでいる状況にあります。また、農林水産業やものづくり産業、建設業などにも女性の働く職場が広がり、これまで以上に様々な産業分野等において女性が活躍しているところであります。加えて、県の「いわて子育てにやさしい企業等」認証企業数は、平成28年度末に40社であったところ、平成31年1月には105社と大幅に増加し、平成29年10月に創設した「いわて女性活躍企業等認定制度」の認定企業数が68社となるなど、企業においても、女性が働きやすい職場環境が整備されつつあります。
 県では、いわて女性の活躍促進連携会議や「いわて女性活躍推進員」の活動を通じた経営者の意識啓発などの取組、岩手労働局と連携した経済団体への要請活動、各種認証制度等におけるインセンティブの付与などを通じて、女性活躍に向けた企業の環境整備を促進するとともに、「いわて働き方改革アワード」において、個別プロジェクト賞の中に「女性活躍推進部門」と「子育て支援部門」を設け、女性が働きやすい職場づくりの先進的な事例を表彰するなど、広く情報発信してきたところであります。
 今後においても、「いわてで働こう推進協議会」を核とした全県的な「いわて働き方改革推進運動」などにより、女性はもちろんのこと、あらゆる人が働きやすい職場環境の整備を促進するとともに、今般制作した「いわてWalker」等により「いわてで働く」魅力を強力に情報発信してまいります。

(3)  復興(なりわいの再生)と総合的な産業政策について

 東日本大震災からの復興と社会減を食い止め、質の高い雇用を確保するためには、地域内経済循環を拡大していく総合的な産業政策が重要である。国際競争力の高いものづくり産業、地域資源を最大限に生かした農林水産業や観光産業など、いわゆる域外市場産業について、地元調達や付加価値を高め、県内への移住促進を強化し、地域内経済循環を拡大していく必要がある。地域経済分析システム─リーサスによると、本県の地域経済の自立度を示す地域経済循環率は、75.4%(2013年)と北海道、東北、そして全国の中でも最も低い現状にある。残念ながら、県内で稼いだお金が地域の所得や消費、企業の投資に十分に回っているとは言えない状況にある。
 先月、産業振興・働き方改革調査特別委員会で高知県を視察した。知事直轄の産業振興推進部が地産地消の推進、県産品の販売促進、貿易の振興など、商工労働観光部や農林水産部に横ぐしを刺した総合産業政策を統括し、エンジン役となって産業振興施策を展開していた。知事の肝いり政策であることから、PDCAサイクルを毎年回し、産業振興計画の取り組みをスタートして以降、地産外商の取り組みが活発化し、人口減少下においても経済が拡大する構造へと転換が進んでいるとのことであった。
 そこで伺う。復興における産業再生と総合的な産業再生を図るうえでも、関係部局の緊密な連携から、さらに踏み込んで実践的・総合的に産業政策に取り組むべきと考えるが、御所見を伺う。

【達増知事】
 「いわて県民計画」最終案においては、10の政策分野の一つとして「仕事・収入」を掲げ、「農林水産業やものづくり産業などの活力ある産業のもとで、安定した雇用が確保され、また、やりがいと生活を支える所得が得られる仕事につくことができる岩手」の実現を目指し、ものづくり産業、観光産業、農林水産業など様々な産業政策を関係部局が一体となって総合的に展開することとしている。また、新しい時代を切り拓くプロジェクトでは、復興の取組により進展したまちづくりや交通ネットワークを地域産業の振興に生かす「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」をはじめとした3つのゾーンプロジェクトに取り組み、それぞれのゾーンの発展の姿を実現する中で、本県の経済成長にもつながるもの。さらに、本県では、より戦略的に産業振興を展開していくため、知事や副知事を本部長とする「いわてまるごと売込み推進本部」や「岩手県観光産業振興本部」などを設置し、産業関連部局が一体となって政策横断的な観点から議論や情報共有を行っており、今後、更に実践的・総合的な取組を進めていく。

(4)  推進のための財政運営について

 県財政は自主財源比率が約4割と低く、また、「岩手県中期財政見通し」では、社会保障関係費の増や、県債の償還が依然として高い水準で推移することにより、財源対策3基金の残高が減少するなど、今後も厳しい財政状況が見込まれている。新しい県民計画における政策の実現には、国、県、市町村の一層の連携、さらには民間を含めた多様な主体との連携が不可欠である。個々の自治体で解決できない国レベルの政策や制度仕組みづくりに対し、国との関係性をさらに密にする一方で、県としても、計画を推進していくための、本県独自の新たな財源確保について調査研究する必要があると考えるが、ご所見を伺う。

【佐藤企画理事兼総務部長】
 県の歳入は、国庫支出金や地方交付税などいわゆる依存財源の割合が高い状況にあり、国の予算や地方財政計画の変動の影響を受けやすい構造となっているが、今後、安定的な財政運営を行っていく上では、自主財源の確保も重要と考えている。そのため、県では、企業誘致や中小企業の育成強化などによる産業振興や、人口減少対策等、あらゆる施策を通じて税源涵養を図り、併せて、国に対して、地域間の税源偏在といった課題に適切に対処し、地方自治体において、より自立的かつ自由度が高い行財政運営が可能となるよう、求めていく。また、平成31年度当初予算案においては、企業局の「震災復興・ふるさと振興パワー積立金」からの繰入金や未利用資産の売却など税外収入の確保にも努めたところであり、今後も様々な手法により必要な財源を確保していきたい。

(5)  ILC誘致について

 昨年末に発表された日本学術会議の所見は、極めて厳しい内容であった。東京オリンピックの整備運営予算と単純に比較すべきではないが、8,000億円と試算される総事業費は、決して多額ではない。ILC誘致は、地球規模課題の顕在化に対応し、日本が世界に貢献する「科学技術外交」の観点からも、政治の使命として進めるべき取組みである。先日も自民党北海道・東北6県連が政府への要望活動を行ったが、党派を超え、官民あげてオールジャパンで誘致活動が展開されているところであります。知事演述で、「必要なことは全てやりきる考えで、全力で取り組む」と述べたが、知事としてすべてやり切ったとの認識か伺う。
 また、盛岡在住の高校生が、今日東京の難関大学を受験している。彼の将来の夢は、ILCで働くことである。知事からILCを夢見る彼らにどんな言葉を贈るのか伺う。

【達増知事】
 ILCの実現に向け、これまで関係団体が連絡を密に取り、様々なルートで政府への働きかけや国民理解の増進に取り組んでいるところ。本年1月からは、県も運営に協力しているILC100人委員会の弘兼憲史(ひろかねけんし)さんも自身の連載でILCを取り上げ、これが大きな反響を呼んでいるほか、今月20日には、本県からも働きかけたこともあり、日本経済団体連合会や日本商工会議所、経済同友会が連名で「国際リニアコライダー誘致に関する意思表明への期待」とする文書を発したところ。
 また、21日に開催された、リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟とILC誘致実現連絡協議会の合同総会では、ILC誘致実現に向けた決議が行われるなど、ILC日本誘致に対する期待が高まっていると感じている。私自身も、政府与党に対してさまざまな形で、ILC計画の重要性について訴えてきているが、今後も超党派国会議連などと緊密に連携して臨機に対応する。
 県では、これまでに高校生を主体としたILC推進モデル校事業などの未来の人材育成にも取り組んでいるところであり、今後も世界最先端の知と技術が集う、多文化共生のILC国際研究機関の実現と、その受入れ準備に全力で取り組んでいく考え。

2 健康長寿社会の構築について

(1)  健康長寿社会の構築に向けた取組みについて

 次に、健康長寿社会の構築に向けた取組みについて伺う。私は、今の岩手県は「生きるを支える社会」のあり方が問われていると捉えている。生活習慣病と自死による全国高位の死亡率の改善は、緊急かつ迅速に解決すべき課題である。特にも、本県の場合、働きざかり男性の死亡原因の約6割が生活習慣病を占め、平均寿命・健康寿命がともに全国下位であり、生涯を通じた健康づくりや、生活習慣病のリスクなど周知・啓発が必要である。また、働きざかり世代の健康増進には、職場での健康づくりが重要であり、事業主の理解と協力による実践的な行動が必要である。青森県では、弘前大学医学部に「健康未来イノベーションセンター」を設置し、地域住民の健康づくりや医療・健康産業の取組みを推進しているが、岩手県においても、医療等のビッグデータの活用等による健康づくりの推進に向けた調査研究を進めるほか、例えば産学官連携による健康医療戦略推進会議(仮称)を立ち上げ、企業と提携した健康ポイント制度の活用や、健康授業や定期的な健康測定会の開催、健康管理の取組みを人事評価項目に取り入れるほか、地域の公園に健康器具の設置を推進するなど、ここ岩手からアジア健康構想のモデルとなる官民一体となった取組みを積極的に発信すべきである。県のご所見を伺う。

【達増知事】
 県では、すべての県民が生涯を通じて健康で質の高い生活を送るため、これまで、生活習慣病予防などの健康づくりの取組を、「岩手県脳卒中予防県民会議」など、行政と民間が一体となって県民運動として推進してきたところ。しかしながら、依然として、本県の年齢調整死亡率が、65歳未満の働き盛り世代から全国より高く、平均寿命や健康寿命が全国より短いことなどを踏まえて、本年度、企業等が行う健康経営の取組を促進するため、全国に例がない官民5者による連携協定、すなわち、県と全国健康保険協会岩手支部、岩手県商工会議所連合会、岩手日報社、アクサ生命が協定を締結し、健康経営事業所認定制度の創設など、様々な取組を推進している。さらに、平成31年度当初予算案において、全国有数の県立病院ネットワーク等の優位性を生かして、電子カルテデータの利用を含めた、健康課題の解決に資するデータの分析や活用を図るための基盤整備に要する経費を盛り込んだところ。
 全国知事会では、昨年7月に「健康立国宣言」を取りまとめ、全国の先進・優良事例の横展開に向けた取組を進めているところであり、こうした本県独自の取組についても全国に発信するとともに、他県の事例にも学びながら、全国のモデルとなるような岩手らしい施策を構築し、その取組を官民一体となって推進することを通じて、健康寿命が長く、いきいきと暮らすことができる社会の実現に努めていく。

(2)  医療機器関連産業の振興について

 医療機器関連産業の振興も重要である。県では、長寿命化の進展などにより今後も成長が見込まれる医療機器産業を支援した結果、事業化に関する研究会に135社が参加しているほか、19社の企業が情報共有して技術開発を進める動きが現れるなど、集積拠点の成果も一部で現れ始めている。また、盛岡市においては、ヘルスケア産業を支援するための協議会が昨年設立するなど、健康寿命の延伸や医療費の適正化、新産業及び雇用の創出に向けた取組みが動き出している。県として、一層の取組みを進めるべきである。県として、健康長寿社会の構築に向け、ものづくり分野を中心とする産業構造の中で、医療機器関連産業の振興にどのように取り組むお考えか伺う。

【戸舘商工労働観光部長】
 医療機器関連産業は、法律に基づく高い安全性を満たした製品を製造するための厳格な生産管理体制などが求められ、これまで、新規参入が難しい分野であったが、景気の動向に左右されにくく、今後も成長が見込まれることから、県では、ものづくり産業において、自動車・半導体関連産業に次ぐ重点分野に位置付けているところ。このため、県では、いわて産業振興センターにコーディネーターを配置し、県が中心となって組織した「いわて医療機器事業化研究会」の会員企業等に、医療及び臨床現場のニーズを提供するなど、製品開発を支援するとともに、クラスターを形成し、研究開発から量産までの一貫生産体制の強化に取り組む企業群を重点的に支援してきたところ。
 これらの取組により、本県の医療機器製造業の登録企業数は、平成26年度末で13社であったものが、平成31年1月末時点では23社と、大幅に増加し、また、医療機器生産金額は平成26年の192億円に対し、平成28年は263億円と、約40%増加するなど、成果が表れてきているところ。
 今後においては、医療機器関連産業のグローバル拠点化を目指し、引き続き、市町村や産業支援機関等と連携しながら、クラスター形成の取組を支援するとともに、今議会に補正予算案として提案している「ヘルスケア産業集積拠点整備費補助事業」等により、産・学・行政・金融機関の連携により、製品や技術の共同研究開発等に取り組む企業を重点的に支援していく。

(3)  総合的な自死対策について

 健康長寿社会の構築において、本県が抱える重大な課題は自死の問題である。本県の人口10万人当たりの自殺死亡率は21.0(2017年)で、中期的には減少しているものの、依然として高い水準で推移している。特に深刻な状況は、若い世代の自殺であります10代及び20代の自殺には、健康問題や家庭問題、勤務問題などさまざまな原因、動機があるが、さまざまな分野の支援機関との連携が重要である。このままの状況のもとで少子化対策に取り組んでも、こんな不安な社会では子供たちの泣き声は泣き止まないどころか、更に大きくなる。自死対策において、「生きる」教育の推進のほか、一人ひとりの実情に応じた相談支援体制の充実強化が重要である。人口当たりの臨床心理士の人数と自死の件数との関係には一定の相関があるように私はみるが、平成30年度からは、国家資格となる公認心理師の制度運用が始まったところであり、こうした資格を持つ方々の参画も有効と考える。県として、総合的な自死対策、環境整備にどう取り組むお考えか伺う。

【八重樫保健福祉部長】 
 本県では、岩手県自殺対策アクションプランに基づき、官民一体となった自殺対策を推進してきたことにより、自殺死亡率は依然として全国では高位にあるものの、自殺者は中長期的に減少してきています。このため、現在策定中の次期プランにおいても、地域の特性を踏まえながら、引き続き包括的な自殺対策プログラムの実践やハイリスク者に応じた対策に重点的に取り組むほか、「子ども・若者への自殺対策」を新たな重点施策の1つに掲げ、心の健康教育や自殺予防に関する普及啓発等を推進していくこととしています。自死に至るには、健康問題や経済・生活問題など多様な原因・動機があり、様々な分野で支援策を講じる必要がありますが、一人ひとりが自らの心の変調に気づき、悩み事に対して適切な支援を受けることが重要であることから、今後、関係機関と連携して、有資格者による専門的な支援や自殺対策を担う人材の資質向上を推進するなど、相談支援体制の充実強化を図ってまいります。

3 安心して産み育てられる環境整備について

(1)  出生率の改善と子育て環境の充実について 

 次に、「安心して育てられる環境整備」について伺う。人口減少、少子化社会において、出生率を向上させ、人口の自然減に歯止めをかけるためには、子育て支援の取組と家族のつながりが重要である。「産みたい人が、産める時に、産み続けられること。」そういう選択を応援することが少子化克服の第一歩と考える。また、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり、家庭の経済状況に左右されることなく、全ての子どもに質の高い幼児教育を受ける機会を保障することが重要である。しかし、直近の県民意識調査によると「安心して子どもを産み育てられ、子育てがしやすい環境であること」への重要度と満足度の乖離は極めて大きい状況にある。
 そこで伺う。出生率の向上に向けた子育て支援の取組と家族のつながりを強めるための実効性のある対策をどのように考えているのか、また、子育て環境に対する本県の課題と満足度を高めるための短期的・中期的な取組みをどう展開するお考えか伺う。

【八重樫保健福祉部長答弁】
 「いわて県民計画」最終案において、結婚・家庭・子育てに希望を持てる環境づくり、安全・安心な出産環境の整備、子育て家庭への支援などにより、安心して子どもを産み育てられる環境づくりを進めることを目指している。具体的には、社会全体で子育てを支援する機運の醸成、リスクに応じた周産期医療体制の整備、保育所や放課後児童クラブ等の保育環境の充実などに、県民や市町村、企業、NPO等と連携しながら、実効性のある取組を行うこととしている。本県の子育て環境には、出産年齢の上昇などによるリスクに応じた適切な周産期医療の提供や子育て家庭の医療等の確保、増加する保育ニーズに対応した保育サービスの充実、女性の就業の増加に伴う仕事と子育ての両立に向けた環境の整備などの課題があると認識しており、これらの課題の解決に向けて、来年度は、小学生までの子どもの医療費助成の現物給付の拡大に取り組むほか、2020年度末までに、保育人材の確保、施設整備などにより待機児童の解消等に取り組むこととしている。
 さらに、中期的には、子育てに係る相談・支援体制の充実、医師確保やICT等の活用による周産期医療機関の機能分担と連携の促進、いわて働き方改革推進運動の取組などによる企業の働き方改革の推進等に継続して取り組むことにより、県民の満足度を高め、安心して子どもを生み育てられる環境づくりを進めていく。

(2)  障がい児者の療育支援体制の充実について 

 障がい児者の療育支援体制の充実について伺う。障がい児とその家族の多様なニーズに対応した療育が受けられるよう、地域における関係機関が連携したネットワークの強化や支援者の育成など、療育支援体制の充実を図る必要がある。県療育センターも移転開設し、県内の療育拠点として機能が強化されたほか、国立病院機構盛岡病院に31年度40床開設されるものの、県内5施設400床はほぼ満床状態にある。介護者の高齢化が入所ニーズを増加させているほか、児童福祉法による医療型障害児入所施設としての専門的機能が有効活用されにくい状況にあるとも伺っている。心身障がい児・者の施設入所待機状況や医療的ケア児・者を介護する家族の精神的・身体的負担の実態を把握し、療育支援体制充実に向けどのように取り組むお考えか伺う。

【八重樫保健福祉部長】
 平成31年2月1日現在、重症心身障がい児(者)等に対応する5施設の入所待機者は、18歳未満が14人、18歳以上が40人となっています。県では、これまでに実施した重症心身障がい児者等実態調査等を踏まえて、相談支援専門員や看護師等の支援者育成研修や超重症児者等に対応する短期入所の拡充に取り組んできたところであり、今年度は、国立病院機構盛岡病院の療養介護整備の支援を行っているところであります。
 平成31年度においては、これまでの取組に加え、新たに、地域において医療的ケア児等に対する保健、医療、福祉、教育等の関係分野の支援を調整するコーディネーター養成研修を実施する経費を当初予算案に計上し、医療的ケア児等が安心して暮らしていける地域の支援体制の充実を図ることとしています。
 さらに、現在、医療的ケア児等の生活状況や介護の負担感、サービスニーズ等の調査を実施中であり、今後、その調査結果をもとに、医療や福祉、教育等の委員で構成する重症心身障がい児・者及び医療的ケア児・者支援推進会議において、必要な支援等についての御意見をいただくこととしています。

(3)  児童虐待防止対策について

 次に、児童虐待防止対策について伺う。児童相談所が昨年度児童虐待の相談や通告を受けた件数は、全国で13万件と過去最高となり、児童虐待は喫緊の課題である。こうした中、政府は昨年7月に児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策を取りまとめ、児童福祉司を2,000人増員するなど児童相談所の組織体制の強化などを打ち出したところ。本県においても、児童虐待対応件数が4年連続で大幅に増加し、平成29年度は1,088件と過去最多を更新する状況にある。子供たちの生活環境に何が起きているのか早急に実態を把握すべきであり、貧困対策や児童虐待の防止などにより、子どもが健やかに成長できる環境を整備する必要がある。本県の増加要因と課題をどう捉え、発生予防から自立支援まで一連の対策をどう展開するお考えか伺う。

【八重樫保健福祉部長答弁】
 平成29年度における児童虐待相談対応件数1,088件のうち、虐待種別では「心理的虐待」が、相談経路では「警察等」が最も多い割合となっていることから、全国的な傾向と同様、子どもが見ている中で配偶者に暴力を振るういわゆる面前DVについて、警察からの通告が増えたこと等が増加の要因として挙げられます。児童虐待の防止を推進するためには、県民、警察等関係機関等との緊密な連携のもと、児童虐待の発生予防から早期発見・早期対応、再発防止に至る取組を充実強化することが必要であります。県では、児童虐待防止アクションプランに基づき、妊産婦・乳幼児健診未受診者対策の充実などによる「虐待発生の予防」、見守り体制の充実などの「虐待の早期発見」、児童福祉司の増員等による「虐待の相談機能と対応の強化」、児童養護施設等退所後のアフターケアの充実等、自立支援を含めた「再発予防」に取り組んでいるところであります。今後も、児童相談所の体制を強化するとともに、市町村や警察等関係機関との連携を一層深めながら、虐待の発生予防から早期発見・早期対応、再発予防に至るまで、切れ目のない児童虐待防止対策を推進してまいります

4 課題解決型教育と文化・スポーツの推進について

(1)  学力向上と課題解決型教育の推進について 

 次に、課題解決型教育と文化・スポーツの推進について伺う。岩手の推進力は『人』である。人が岩手を、未来を創る。人を大切にする岩手でなければならない。私は、1人1人の幸せのためにも、地域づくりや社会の発展のためにも、基本になる極めて重要な政策、それが『教育』であり、人材育成こそが重要な柱であると捉える。新たな元号に変わる今、新たな教育のあり方が問われている。人は人によって人になる。この時代こそ、人間力、創造力、課題解決力が求められる。生徒のみならず、教師も高い人間力・普遍的な倫理観が問われる。県は新たな時代(Society5.0含む)に対応した岩手県教育のあり方をどう考え、教育立県復活に向けどう取り組むお考えか。学力向上への取組みと併せてお伺いする。

【高橋教育長】 
 本県は豊かな自然や文化、多くの偉人を育んできた歴史とともに、人と人とのつながりを大切にしながら地域ぐるみで子どもたちを育んできた教育の土壌を有しており、急激な社会変化の中においても、まさに教育は社会形成の礎として、子どもたち一人ひとりの人格の完成と夢の実現を支え、新たな社会の担い手として育てていく重要な役割を担っていると認識いたしております。学校教育においては、子どもたちにこれからの社会を創造していくための知・徳・体からなる「生きる力」をバランスよく育んでいくことが求められており、特に、確かな学力の育成については、学力の三要素を育む中で、全ての学習の基盤となる言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力などの育成も必要であります。こうした考えの下、「いわて県民計画」最終案においては、教科横断的な教育活動も重視しながら問題発見、問題発見・解決学習の充実などに取り組むとともに、「学びの改革プロジェクト」の中で、子どもたちの学力等に関する連結データの構築・分析による一人ひとりのつまずきなどに応じた学習指導の充実や、ICTを活用した教育の更なる推進にも取り組むことといたしております。
 いずれ、教育は国家百年の大計とも言われますので、教育に関わる使命感と責任を本県の教育界全体で共有しながら、新しい「いわて県民計画」などの諸計画に基づき、本県の未来を創造していく人材育成に向けて、各学校をはじめ、産業界、NPOなど、地域社会を構成するさまざまな主体の皆様方と連携して取り組んで参ります。

(2)  不登校児童生徒の支援について

 不登校児童生徒の支援について伺う。不登校児童生徒は増加傾向にあり、全国では、特にも小中学校ともに過去10年間で最も高い状況にある。おおよそ2クラスに1人いるとも言われているが、現場で何が起きているのでしょうか。私はどんな生徒でも必ず自分自身の解決策を見出す力があると信じている。自己肯定感を高め、個人の強みを育み支援するスキルを身につけ、さまざまな課題に対して解決する思考プログラムの教育が重要と考える。一方で、教育機会確保法への取組みや、小中学校などの学区制から選択制の導入、高校生の不登校や発達障がいのある生徒の学びを支援するフリースクールを含め、自分の個性にあったペースで生きる力を身に付けていく環境整備も重要であると考える。そこで、岩手の教育立県の基盤、環境整備にどう取り組むお考えか伺う。

【高橋教育長】 
 不登校児童生徒は全国的に増加傾向にあり、生徒指導上の大きな課題になっておりますので、その要因を丁寧に探るなど、一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援を行っていくことが極めて重要であると認識いたしております。県教委におきましては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用などによる教育相談体制の充実を図るとともに、市町村で設置している適応指導教室や、フリースクールなどの民間団体等との連携も図りながら、児童生徒のニーズに応じたきめ細かな支援に努めております。また、教員を対象とした、総合教育センターの研修プログラムにおいても、専門的な知見をもつ学校心理士を養成する講座を開設するなど、教員による相談スキルの向上にも取り組んでいるところでありますが、今後におきましても、市町村教委等との連携を図りながら、児童生徒一人一人に寄り添った教育を推進しつつ、不登校状態にある児童生徒に対しては、学校への復帰や将来を見据えた支援の充実に努めて参ります。

(3)  発達障がい児への教育支援について

 次に、発達障がい児への教育支援について伺う。義務教育段階の全児童生徒数は減少傾向にある一方で、発達障がい児を含む特別支援教育の対象となる児童生徒数は増加傾向にある。現在、県では「いわて特別支援教育推進プラン」に基づき、幼児期から高等学校までのそれぞれの段階で作成している個別の教育支援計画を進級、進学先に引き継ぎ、学習環境の変動期も円滑な指導、支援が図られるように取り組んでいると承知している。支援にあたっては、児童・生徒への対応面で、社会福祉士や精神保健福祉士等との連携が必要となる。そこで、障がいの状態や発達の段階に応じた指導をさらに充実させる必要があるが、県の御所見を伺う。

【高橋教育長】 
 特別な支援を必要とする児童生徒の教育については、児童生徒の障がいの状態や特性、発達段階などを適切に把握し、一人一人の教育的ニーズに応じた支援を行うことを通じて、児童生徒が学習や様々な活動を行いながら、充実した学校生活を送り、生きる力を身に付けていくことが大切であると考えております。県教委におきましては、特別支援学校の教員による地域の幼稚園や小中学校等への訪問支援に加え、各教育事務所に特別支援教育エリアコーディネーターを配置し、校内研修への対応や関係機関との連絡調整、スクールソーシャルワーカー等の外部人材の活用なども図りながら、その支援に取り組んできております。
 また、現在策定中の新しい「いわて特別支援教育推進プラン」において、進学先・進級先での教育や医療受診等に適切につなげるために、進学先等が必要とする子どもの状況と支援方法などをまとめた「引継ぎシート」を開発し、小・中・高等学校において活用を進めていくことといたしております。
 今後におきましても、教職員の専門性の向上に取り組むとともに、各学校における校内支援体制の充実や、外部人材・関係機関等との連携を一層深めながら、児童生徒一人一人に寄り添った教育支援に努めて参ります。

(4)  スポーツ推進計画と県営スポーツ施設整備について

 スポーツ推進計画と県営スポーツ施設整備について伺う。先月、宮城県総合運動公園グランディ21を視察した。高速道路からのアクセスも良いことから青森や福島等東北各地から利用されており、年間約100万人、施設利用料収入は約4億円とのこと。特にも、コンサート利用を積極的に誘致しており、総合体育館の利用収入が2億5千万円、全体の約6割を占める。また、屋内総合プールは、国際公認プールであり、視察に行った時、飛び込みプールでは、海上保安庁のスタッフが訓練を行っていました。これから改修が待たれる岩手県営屋内プールは、利用率向上を図るため、競技トレーニングの他、リハビリ、消防士等の訓練、さらには小中学校の水泳授業で活用するなど、これからの公共施設の管理運営の視点として、シェアリングエコノミーの視点が重要である。
 そこで伺う。県営体育館をはじめとする県営スポーツ施設の改修に際し、パラ仕様の最先端屋内総合トレーニング施設の整備や冬季オリンピック選手強化に向けたナショナルトレーニングセンター誘致、さらにスポーツ医・科学サポート機能も兼ね備えた総合的な競技力向上に向けた施設を整備するなど、県として10年先を見据え、どのような戦略を持って施設整備を考えているのか伺う。

【菊池文化スポーツ部長】
 県では、県民のスポーツを楽しむ環境の整備やスポーツ医・科学の強みを生かしたアスリート育成、県民の健康増進などを図るため、民間と行政一体によるスポーツ推進体制の構築などにより、県内各地において特色あるスポーツ振興の拠点づくりを進めていきたいと考えている。そういう中にあって、県営スポーツ施設については、公共施設等総合管理計画に基づき策定することとなっている個別施設計画において、維持管理や修繕、更新などについての整理を行うこととしている。こうした中、競技力向上に向けての機能強化をはじめとする新たなニーズに対しては、まずもって、県等が現有する施設など、様々なスポーツ資源の活用を第一に、市町村及び関係団体などと連携し、取り組んでいきたいと考えている。
 なお、御質問にある国のオリンピックやパラリンピックに係るトレーニング施設は、現在、ナショナルトレーニングセンター及び国立スポーツ科学センターがあるほか、八幡平市の田山射撃場をはじめ、国内40箇所に国指定の競技別強化拠点施設があり、国等において、屋内外での総合的な競技力向上に向けた取組が強力に展開されているところ。こうした取組と並行し、国においては、今後の国際競争力強化向上のためのトレーニング拠点の在り方や備えるべき機能等について、検討を行っているところであるが、県としては、その動向をも注視してまいりたい。

(5)  日本博の岩手県開催について

 日本博の岩手県開催について伺う。昨年、パリでは日本の芸術を大規模に展開する「ジャポニスム2018」が開催されたが、国では同様の事業「日本博」を日本国内で展開し、観光インバウンドの飛躍的・持続的拡充を図ることとし、新規予算として約35億が付けられている。ぜひ、岩手県に誘致し、震災からの復興プロジェクトの後に、情報発信すべきである。具体的には、津波復興祈念公園が整備される陸前高田市を核としながら、沿岸市町村や遠野・花巻・平泉・一戸の縄文遺跡群をつなぎ、古来から日本文化が根強く現代に活きている岩手を国内外に積極的・強力に発信すべきである。岩手だからできる、岩手でしかできない新元号時代の最初の文化芸術国家プロジェクトとすべきである。県として日本博誘致のお考えと実効的、戦略的な施策についての所見を伺う。

【菊池文化スポーツ部長】
 「日本博」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、日本の美を体現する美術展・舞台芸術公演・文化芸術祭等を全国で展開することにより、日本の魅力を国内外に発信し、我が国文化芸術の継承・発展、国際社会における日本の存在感の向上を図ることを目的に開催するものと伺っておりまして、本県が世界に誇る有形・無形の文化資源の魅力を国内外に示す絶好の機会となるものと期待しております。昨年から、事業の枠組・イメージは示されてきておりますが、詳細については現段階では不明な点も多く、県としてはどのように参画し、どう事業展開していく形となるのか、残念ながら把握しきれていない現状にあります。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの年に、本県でこのような文化プログラムが展開されるということは大変意義のあることと考えておりまして、今後、情報収集にさらに努め、詳細が明らかになり次第、本県の対応についてしっかりと検討を進めていきたいと考えております。

5 実効的な防災・減災対策について

(1)  防災のためのインフラ整備について

 次に、「実効的な防災・減災対策」について伺う。防災のためのインフラ整備については、先般、政府は、国土強靭化基本計画に基づき、「防災」と「国民経済・生活」を支える重要インフラ等の機能維持の観点から、特に緊急に実施すべきハード・ソフト対策について、3年間で集中的に対策を実施することとした。突発的又は広域かつ長期的な市街地等の浸水、大規模な土砂災害や二次災害が発生する事態を回避する必要がある。特にも、本県の場合、大規模な浸水被害を防止・最小化させるためには北上川堤防の機能維持は最重要であり、堤防の未築堤箇所は早期に整備する必要がある。また、救急や医療活動などの災害対応力の確保の観点からも、岩手医科大学の移転に伴う周辺道路ネットワークの強靭化は重要な課題である。洪水による浸水などの災害発生により、現在、国において調査が進められている一般国道4号盛岡南道路が冠水し道路機能に重大な支障が生じることがないよう、JR・新幹線を越えるようなルートも考慮することなども必要と考えているが、国や市町村等との連携による道路ネットワークの強化にどう取り組むのか伺う。

【八重樫県土整備部長】
 国道4号は、物流の円滑化や地域間の交流・連携の促進、安全・安心な暮らしに資する主要な幹線道路であり、国道4号の盛岡南道路については、今年9月に岩手医科大学附属病院が移転する矢巾町方面へ向かう道路として、救急医療や防災面においても重要な道路であると認識しております。国においては、この盛岡南道路の事業化に向けて、今年度から、概略ルートや構造の検討に着手し、昨年11月から本年1月まで行った地域住民や道路利用者を対象としたアンケート調査の結果を踏まえ、今後さらに検討を進めていくと聞いているところです。盛岡南道路は、盛岡都市圏における道路ネットワークの強化に資するものであることから、県としては、引き続き、事業化に向けた調査の促進を国に対して要望してまいります。また、国の調査の進捗に応じて、盛岡南道路を基幹としてそれに接続する道路も含めたネットワークのあり方についても、国や盛岡市、矢巾町とともに検討していく必要があると考えております。

【再質問】
北上川の堤防の機能維持は最重要課題だと考えている。堤防の未築堤箇所があり早期に整備する必要があると考えるが、県としての所見を伺う。

【八重樫県土整備部長】
 国では昭和20年直後のアイオン・カサリン台風の大きな被害以来、北上川流域においての5大ダム、それから河川の堤防、遊水地などの治水対策を進めてきていただいているところです。しかしながら、国管理の河川の整備率はおおよそ5割程度と伺っておりますが、近年国では平成14年7月とか平成19年9月の洪水に対して家屋の被害浸水を防ぐということを優先して整備を進めていると聞いています。治水対策をこれからもしっかりと進めていただけるよう、国に対しては昨年の6月、11月に治水対策費の確保などを要望しているところでありますが、この点もしっかりと重要な課題として国に対して一層の整備促進を働きかけてまいりたいと考えています。

(2)  岩手県消防学校の整備方針について

 岩手県消防学校の整備方針について伺う。県の消防学校は、防災リーダーを育成するための施設として、重要な役割を果たしてきた。現在の立地は、ヘリコプターが複数機降りられる場所にあり、災害時の対応にはドクターヘリを運航している医大との連携もしやすいものの、校舎本館は築40年以上が経過し老朽化が進展し、耐震診断においても、校舎の一部が判定値を充足しないことが判明している。先月、宮城県消防学校を視察した。現在の校舎は平成23年に開校し、宮城県初のPFI事業で施設整備、管理運営が行われている。寄宿舎棟や屋内訓練場の他、潜水訓練もある充実したものであり、視察当日も多くの消防関係者が真剣に研修に取り組んでいた。そこで伺う。
 県では、災害物資や広域医療搬送拠点機能、災害医療活動支援機能など総合防災拠点機能も含めた学校施設の方向性について検討を進めているが、現在の検討状況と今後の整備方針についてどのような視点で計画を取りまとめていくお考えか伺う。

【佐藤企画理事兼総務部長】
 消防学校は、校舎本館等は建設後44年が経過し、経年劣化による施設・設備の老朽化が進むとともに、訓練施設等も、災害の態様が大規模化、複雑・多様化する現在の消防活動のニーズに対応した訓練が十分にできない状況となってきている。また、入校生の寄宿舎が1室8人収容となっており居住及び学習の環境の改善が必要な状況となっているところ。さらには、女子寮は応急的に整備した簡易施設であり、機能・設備が不十分な状況である。このことから、昨年7月、県と関係機関で構成する消防学校に必要な機能等に関する研究会を設置し、県内各消防本部などの意見も聴きながら、検討を進めてきたところ。
 研究会においては、複雑多様化する災害現場において、消防職員が的確な判断や活動を行うために必要な高度な知識や技術を修得するための教育訓練施設・設備の整備が望ましいこと、また、災害医療活動支援・広域医療搬送拠点をはじめとする広域防災拠点機能を併せ持つことが必要等との意見が出ており、現在、検討結果の取りまとめ作業を進めているところ。今後は、本年度の検討結果を踏まえながら、効率的な整備手法も含め整備の方向性のさらなる検討を進めていきたい。

6 経営体育成と農林業の振興について

(1)  食料供給基地確立に向けた推進体制について 

ア 農業経営の高度化への支援体制について

 次に、「経営体育成と農林業の振興」について伺う。本県の食料供給基地としての産地の生産構造があまりにも弱体化している。「川上」である農業・農村の構造をどう改革してゆくかを本気で考えなければ、「川下」からの需要に応えられないどころか、農村に生きる私たちの暮らしの継続も困難となってくる。
 農業就業者人口の減少が続く中、本県農業は、経営体の規模拡大や多角化が進展するなど、産地構造の変化も見られ始めている。産地や経営体の変化に対応し、生産技術力や経営管理手法の一層の高度化を支援することが必要である。そのため、試験研究機関や普及組織等には、今後の産地拡大や経営体育成の推進役として期待するところであるが、今後どのような体制や取組みを進めていくのか伺う。

【上田農林水産部長】
 農業就業人口の減少が続く中、本県農業は、大規模な経営体が生産の中心になりつつあり、こうした動きを加速化させるためには、経営規模の拡大や多角化への対応、高度な生産管理手法の導入など新たなニーズへの対応が求められてきている。このため、農業改良普及センターにおいて、農業普及員の能力向上と普及活動の高度化を担うスーパーバイザー機能を強化するとともに、大規模経営体の経営高度化や生産性、市場性の高い産地づくり、新規就農者の確保・育成などについて、市町村、農協、農業者リーダー等と一体となって活動する体制を整備するなど、普及指導活動の一層の充実・強化を図るため、今定例会に、農業改良普及センター条例を一部改正する条例案を提案させていただいているところ。また、農業研究センターにおいては、水田での加工・業務用野菜の取組拡大に向けた地下かんがいシステムや、施設野菜の単収を飛躍的に向上させる高度環境制御システムのほか、GPSを活用した自動操舵農業機械など、革新的な技術の開発と実証を強力に推進する体制を整備することとしている。
 今後は、こうした体制のもとで、研究機関と普及組織が連携し、最先端技術の現地実証に取り組むなど、本県農業の技術革新や経営高度化に向けて、積極的に取組を進めていきたいと考える。

イ 農林水産物の輸出強化について

 TPP11や日EU・EPAなど国際貿易環境が変化している中、本県農林水産物の輸出強化を図るチャンスと考える。紫波町ではリンゴのカナダ輸出の取組を開始、「いわちく」では、豚肉の輸出拡大に向けたHACCP対応施設の整備を進めるなどの動きも見られる。そこで伺う。農林水産物の輸出強化を図るための推進体制をどう構築していくのか、県のご所見を伺う。

【上田農林水産部長】
 県としては、TPP11(イレブン)や日EU・EPAの発効による関税の撤廃は、本県の農林水産業への影響が懸念される一方、農林水産物の輸出拡大の好機であると認識している。このような中で、県では、関係団体・企業との連携により「いわて農林水産物国際流通促進協議会」を設立し、輸出手続き等の研修会や海外バイヤーを招聘した産地商談会、海外フェアを開催するなど、輸出拡大に取り組んできたところである。その取組の一貫として、本年度、りんごの輸出が解禁されたカナダでのプロモーション活動を支援したところであり、今後も、この協議会を中心として、ベトナムなど開拓市場として有望な国等の動向を注視しながら、県産農林水産物の販路の開拓・拡大に向けて積極的に取り組んでいく。

(2)  意欲と能力のある経営体の育成について

 意欲と能力のある経営体の育成について伺う。農業が地域経済を支え持続的に発展していくためには、意欲と能力のある経営体の育成が重要である。今年度のいわてアグリフロンティアスクールで、次のような研究発表があった。十数年前に、地区単位とする30の集落営農組織を設立し、法人化への推進を図ってきたが、地区の合意形成に達したのは8組織に留まっている。そうした地区で営農する個人の認定農業者は、農地の拡大が望めず、高収益作物と水稲との複合化を図るなどしているが、集落営農組織と個人経営体の間では、農地の集積や後継者問題に関しても互いに協議・協力の連携がとれていない現状にあり、意欲と能力のある経営体の育成に向けては、担い手の営農形態に合わせて農地の集積を進める仕組みが必要であるとのこと。そこで伺う。
 農地集積を進めるためには、推進体制、支援事業の情報発信、集落営農組織と個人経営体間における様々な課題があると考えられるが、県はどのように農地集積を進めていくのか伺う。

【上田農林水産部長】
 就業人口の減少等が進む中、本県農業の持続的な発展に向けては、効率的な営農ができるよう農地の集積等を進め、地域の核となる経営体を育成していくことが重要である。このため、県では、地域農業の将来を描いた「地域農業マスタープラン」の実現に向けた話し合いにより、地域の中心となる担い手を明確化するとともに、市町村毎にJA等を構成員とする推進チームを設置し、地域の営農状況に合わせた担い手への農地の集積を推進している。集落営農組織と個人経営体の間で利用希望の農地が重複するなどの課題については、農地利用に係る地域内での合意形成が十分ではないこと等が要因とも考えられ、その解決に向けては、地域において十二分に話し合いを重ねるとともに、農業委員等がそれぞれの利用意向を把握しながら、随時、マスタープランの見直し等に反映させるなどの取組が重要と考えられる。
 県としては、今後とも、推進チームを中心に、担い手の意向把握や支援事業等の情報を提供しながら、担い手への農地集積を積極的に進めていく。

(3)  県産木材等の利用促進に向けた施策展開について

 県産木材等の利用促進に向けた施策展開について伺う。国の宝は山なり、山の衰えはすなわち国の衰えなり。私は、日頃から、多面的機能を十分に発揮できる森林を育成していくことが重要と思っており、そのためには、岩手の森林資源を循環利用しつつ、安定的・効率的な木材供給体制の構築や新たな木材需要の創出など木材利用を進めていくことが必要と認識している。そのような中、今議会で、「岩手県県産木材等利用促進条例」(案)が発議されたが、策定にあたっては、検討会議のメンバーが議論を積み重ね、検討を進めてきたところであり、工藤大輔座長はじめ構成員の皆様の御労苦に深く敬意を表する次第である。
 そこで伺う。県は、県産木材等の利用促進に向け、どのような施策を展開していくのか伺う。

【上田農林水産部長】
 豊富な森林資源が本格的な利用期を迎える中、県産木材等の積極的な利用は、森林資源の循環利用を促進し、持続可能な地域社会の実現と山村地域の振興等に寄与するものと認識している。このため県では、県産木材の新たな需要創出や販路拡大に向けて、CLT製造技術など付加価値の高い製材品の研究開発、木材加工事業者と大手家具メーカーとのマッチング支援などに取り組むとともに、建築士等の木造設計技術の向上を支援していくなど、非住宅分野での県産木材の利用促進にも取り組んでいくこととしている。さらには、森林施業の集約化や高性能林業機械の導入支援による県産木材の安定的な供給体制の構築にも取り組むなど、川上から川下に至る総合的な施策を展開し、県産木材が県内外で積極的に利用されるよう取り組んでいく。