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県議会報告

平成30年度9月定例会 決算特別委員会(政策地域部)(平成30年10月4日(木))

2018.10.14

1 情報通信基盤整備とインターネット利用率向上について

(1) 情報通信基盤整備の取組実績と課題認識について

 情報通信基盤は、第4次産業革命の基礎インフラである。携帯の利用可能地域の拡大や中山間地域などの地理的条件不利地の解消に向けた情報通信基盤整備の成果と課題認識は如何に。

 情報通信基盤整備の取組実績と課題認識についてでありますが、県では、これまで、光ファイバーや携帯電話などの情報通信基盤の整備を図るため、市町村による国庫補助の導入に向けた国との調整や事業者への働き掛けなどの支援を行ってきたところであり、光ファイバーなど超高速ブロードバンドの整備が着実に進められてきたほか、携帯電話についても、平成29年度において、大槌町、岩泉町、軽米町や今年度に繰り越した紫波町も含め、4町5地区で基地局の整備を図ったところ。こうした取組の結果、直近の総務省調査において、平成29年3月末時点で光ファイバーの利用が可能な世帯率は96.2%、携帯電話の利用が可能な人口の割合は99.8%と整備が着実に進んできている。
 一方で、中山間地域など条件不利地域においては、光ファイバー及び携帯電話とも共通して、採算面から通信事業者による整備が進みにくいといった課題もあるところ。県としては、今後とも市町村の要望を把握した上で、国に対して通信事業者の整備を促進するための支援制度の創設を要望するほか、通信事業者自らによる整備についても、要望を重ねていき、市町村の取組を支援していく。

(2) インターネット利用率向上に向けた課題と取組方策について

 インターネット利用率の政策評価は、平成29年70.5%のD評価。課題認識と利用率向上に向けどう取り組むか。

 インターネット利用率の向上に向けた課題と取組についてでありますが、情報通信基盤の整備が進み、インターネットを利用する環境は着実に進んでいるところ。このことから、今後はこれらの基盤を活用し、利活用を推進するため、インターネットを使ってICTの利便性を享受するためには、広く県民へ普及・啓発していくことが特に重要と認識している。このため、利用率が低いと推測される高齢者を含めた県民を対象として、離れて暮らす高齢者をスマートフォンで簡単に見守ることができるサービスなど、生活利便性の向上を実感できる取組を、セミナーや展示会を通じて紹介するなど、良い点を紹介しながら、一層の利用率の向上に向けた普及・啓発を推進していく。

(3) 社会的課題解決に向けたICT利活用について

 人口減少・少子高齢化といった社会的課題解決に向け、例えば、デマンド交通、防災メール、教育、福祉、テレワーク、スマート農業等、ICT利活用を政策にどう反映させ具体的にどのように取り組むのか。

 社会的課題解決に向けたICT利活用についてでありますが、県では、ICT利活用の推進のため、現在、仮称であるが、「岩手県ICT利活用推進計画」の年度内の策定に向け準備作業を進めている。この計画策定にあたっては、学識経験者のほか、ICTサービスを提供する通信事業者やICTサービスを利用するものづくりや医療分野の民間事業者などの意見を幅広く伺っており、今後、この計画に掲げた取組を実行していくことにより、更なるICTの利活用を推進していく。

2 公共交通の維持・確保と利用促進について

(1)三セク鉄道・バスの一人当たり利用回数について

 三セク鉄道・バスの一人当たり利用回数は、平成29年17.5でD評価だが、課題と対策は如何に。

 三セク鉄道・バスの一人当たり年間利用回数についてでありますが、少子化の進行やモータリゼーションの進展などの影響により、路線バス利用者の減少傾向が続いており、昨年度は三セク鉄道については利用者数が若干増加に転じたものの、三セク鉄道・バスの合計では減少が継続したため、達成度が【D】となったものであり、バス及び三セク鉄道において、更なる利用促進を図っていく必要があると認識している。
 バスについては、路線の維持に向けて住民のバス利用を促すことが重要であり、「かしこい交通ライフ」チャレンジウィークを始めとした「モビリティマネジメント」の実施などにより利用促進を図っていく。また、鉄道との乗り継ぎの改善や路線の見直しにより、利便性の向上を図るとともに、ノンステップバスの導入によるバリアフリー化など、高齢者や障がい者をはじめ、誰もが利用しやすいサービスの提供に向けたバス事業者の取組を支援して参りたい。
 三セク鉄道については、利便性の向上やマイレール意識の醸成による地元利用の拡大と観光需要の喚起が課題であり、使いやすいダイヤ編成や子供向けの乗車機会の創出、県と沿線市町村で構成する利用促進協議会を通じた情報発信やエージェント営業の強化などの取組により、利用増を図っていきたい。

(2)被災地特例終了後の公共交通維持・確保について

 国の復興期間の平成32年度まで被災地特例により国庫補助の補助要件が大幅に緩和されているが、被災地の公共交通の維持・確保に向け具体的にどう取り組むか。

 被災地特例は、被災地域における公共交通の確保に大きな役割を果たしており、特例措置の終了により公共交通の確保が困難となる懸念がある。このため、県では、今年度の政府予算要望において、国に対して、被災市町村の復興まちづくりが完了するまで、被災地特例制度の継続や、補助対象の拡大を要望しているところであり、引き続き、国に対し働きかけてまいりたい。また、県では、被災地に限らず、路線バスを始めとした地域公共交通の維持・確保に懸念が生じていることから、昨年度、国、市町村、交通事業者、学識経験者等による検討会議を設置し、持続可能な地域公共交通ネットワークの形成を目指して検討を行ったところ。その検討結果を踏まえ、今年度に、法定の協議会を立ち上げ、公共交通のマスタープランである「地域公共交通網形成計画」を策定することとしている。この計画の策定の中で、路線に応じた利用促進策の実施や、利用者の少ない区間のデマンド交通への転換など、効率的で利便性の高いネットワークを構築していくことで、持続可能な公共交通につなげていきたいと考えている。

(3)ICTを活用した交通政策について

 県民調査においても重要度・ニーズ度は高い政策。沿岸被災地を含め地域の足をどう確保していくお考えか。ICTを活用したライドシェアやカーシェアを含めた総合的な交通政策の検討も必要と考えるが如何か。

 ライドシェアやカーシェアを含めた総合的な交通政策についてですが、一般のドライバーが、ガソリン代等の実費を超える対価を得て利用客を運送する、いわゆる「ライドシェア」については、道路運送法に基づく許可を受けずに有償で旅客を運送する違法行為であり、国内での導入例もないと承知している。現時点でライドシェアを含めた交通体系の検討は考えていないが、今後、国の動向等を踏まえて、随時検討してまいりたい。
 一方、道路運送法に基づく交通空白地有償輸送や福祉有償輸送など、地域の移動ニーズに応じた適切な種類の自家用有償旅客運送の導入は必要と考えており、本年4月1日現在、自家用有償運送の登録は、市町村有償運送が11市町村、福祉有償運送が23市町村・30団体、交通空白地有償運送が4市町・4団体、登録されている。この自家用有償運送にICTを活用することは、より効率的な運行や、利用者の利便性の向上につながる可能性があり、デマンド交通を含めて、今後、他の先行事例等を研究してまいりたい。

(4)花巻空港の今後の需要見込みと利用促進策について

 花巻空港平成29年度収支は17億200万円の赤字、維持管理運営経費のみでは約7億円。国際チャーター便の増便に対応した維持運営費の増などが要因と伺うが、今後の需要見込みは如何。併せて赤字解消に向け、空港の利用促進を担う交通政策室としてどう取り組むのか。

 花巻空港の今後の需要見込みと利用促進策についてでありますが、県では、これまで官民一体となっていわて花巻空港の利用促進に積極的に取り組んできたところでありまして、この間、国内線は、平成22年度に2路線・一日5便まで減少したところでありますけれども、現在では4路線・一日12便となっております。また、国際線は、チャーター便の実績を積み重ねまして、本年8月に台湾との間で本県初の国際定期便が就航するなど、空港全体の利用者数は震災後7年連続で増加し、平成29年度は44万人余となっております。台湾定期便につきましては、8月の利用率が70.2%、9月は速報値で75.9%となっておりまして、今後も秋の紅葉シーズンなどインバウンドを中心に高い需要が見込まれておりますけれども、更なる需要喚起と利用促進に向けまして、路線や観光資源のPRを強化するとともに、台湾以外の国や地域からの誘致にも積極的に取り組んでまいります。
 空港収支につきましては、歳出の主な内容は、借入金償還と空港等維持運営費等でありますけれども、歳入における、路線誘致のための着陸料の減免や、運航拡大に伴う空港等維持運営費の増加などから、赤字が発生している状況と認識しております。他方で、本県唯一の空の玄関であるいわて花巻空港は、国内外との人的・経済的な交流拠点として、更には災害拠点として大きな役割を担っておりまして、県内経済や防災の両面において、収支上には現れない効果というものがもたらせられるものと考えておりまして、引き続き、路線・便数の拡大や利用促進に取り組んでまいりたいと考えております。

 花巻空港のみならず、いままさに空港間で誘致合戦の様相が激しくなっている。イン、アウト、他港との連携にしっかり取り組みながら利用促進を図ってほしい。最後に室長に取組を伺いたい。

 花巻空港を活用しましたイン、アウトの誘致拡大、また他空港との連携等についてでございますが、今回8月に就航いたしましたタイガーエア台湾は、仙台空港、あるいは函館空港に定期便が就航しております。仙台と花巻を合わせますと実質デイリーで東北を回るということで、多様な旅行商品の造成が可能ということでございます。先月も仙台、宮城県の担当者も参りまして、意見交換をしてございます。そういった東北、北海道の他空港と連携をいたしまして、インバウンド、アウトバウンドの利用促進の拡大に努めていきたいと考えてございます。

3 ILCの誘致について

(1)平成29年度の成果等について

 知事は昨年の決算特別委員会総括質疑の答弁で、「ILC誘致に向け詰めの作業を行っていく」と述べていたが、どこまで詰まってきたか。

 国等への要望活動については、東北ILC推進協議会等と連携し、内閣官房や文部科学省等の関係省庁を中心に、8回、のべ28件の要望先に対し、ILCの実現をお願いしたところ。また、受入準備については、ILC東北マスタープランの策定、東北大学との共同研究による地質や水文等の調査、産業集積拠点形成に向けた共同研究やセミナーの開催といった活動に加え、外国人居住環境や地域資源活用など6つの分野について、庁内研究会により対応策を検討してきたところ。普及啓発活動についても、リニアコライダー・ワークショップやILDミーティングなどの国際会議への参画や、国内の学会、展示会等に出展し、研究者や技術者に建設候補地として東北・北上サイトをPRしたところ。
 平成30年度も引き続き国への要望活動に取り組んでおり、国においては、有識者会議から日本学術会議に審議が移行し、その後には、自由民主党ILC誘致実現連絡協議会が設立され、更には、20万人を超えたILCサポーターズの署名活動やILC100人委員会の設立など、国民的な理解の増進にも繋がっている。また、県としても受入準備に万全を期すため、庁内研究会に関係自治体や団体も加わり、具体策を検討しているところであり、こうした活動をより強化しながら、日本学術会議の審議に対して必要な対応を行うなど、年末に向け、日本政府がILC実現に前向きの方向性を打ち出すよう全力で取り組んでいく。

(2)住民合意形成に向けた県の取組について

 ILC誘致において広く国民及び科学コミュニティの理解・支持を得ることが重要。何かあった時、どんな危険があるのか、ないのか。20kmのトンネル工事の環境影響はあるのか、ないのか。長期停電に対しての対応など、建設後の副作用についての議論も必要。また地元地域の協力を得つつ総合的に環境を整備していくことが重要であるが、住民合意形成に向け、県としてどう取り組むかを伺う。

 ILC実現には地元住民の方々の理解を得ることが欠かすことができないとの観点から、住民合意形成に向けた取組について、これまで講演会等を行い、平成29年度では延べ141回、14,317人の参加をいただいているところであり、さらには、リスクと言われるような観点も含めましたQ&Aの掲載を県のホームページに行ってきた。さらに、9月24日には東北ILC準備室との共催で一関市においてILC解説セミナーを開催したところであり、今後も様々な機会をとらえながら住民の皆さまに丁寧に説明していくこととしたい。