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県議会報告
平成30年2月県議会 一般質問(平成30年2月28日(水))
2018.03.04
1 いわて県民計画の評価と次期総合計画について
(1) 現計画の課題と評価、将来ビジョンについて
はじめに、いわて県民計画の評価と次期総合計画について伺う。
地域経済分析システム(RESAS)のデータによれば、2040年の本県の人口ピラミッドは、65歳以上が4割弱(39%)、生産年齢人口が5割、14歳未満の年少人口は1割弱(9%)と推計される。いわて県民計画を策定した当時の課題認識は、大きく4点、①人口流出の増大、②県民所得の悪化、③雇用の低迷、④地域医療の危機であった。現計画の課題と評価を如何に捉えているのか。知事は、仕事や健康、子育てなど県民の幸福の要素に着目するというが、現計画の課題と成果を踏まえ、次期総合計画期間の10年間はどのような時代と位置づけ、岩手の将来像をどう描き、何に重点的・優先的に取り組んでいくのか伺う。
【知事】
臼澤勉議員のご質問にお答え申し上げます。
まず、現計画の課題と評価、将来ビジョンについてでありますが、岩手が直面する危機を希望に変えるべく、平成21年にいわて県民計画を策定し、県政の諸課題に取り組んできた結果、人口の社会減については、社会減ゼロは達成できていないものの、計画策定当時6千人弱だったものが4千人台まで縮小し、地域医療については、人口10万人当たりの医師数では、全国とのかい離が拡大しているものの、病院勤務医師数は増加している。
また、国民所得に対する県民所得水準のかい離はおよそ9割まで縮小し、雇用環境については正社員の有効求人倍率が上昇するなど、現行のいわて県民計画の取組は、次期総合計画につながる土台を築いたものと認識している。
次期総合計画においては、これまでのいわて県民計画に基づく取組の成果を引き継ぎながら、復興の先を見据えた地域振興や第4次産業革命等の新たな時代の潮流も踏まえ、「幸福」をキーワードに、岩手が持つ多様な豊かさやつながりなどにも着目した将来像を描き、その実現に向けて取り組んでいきたいと考えており、今後、総合計画審議会をはじめ、様々な分野・世代の方々と幅広く議論を行いながら精力的に検討を進めていく。
(2) 人口対策について
現計画において社会減の縮小、出生率の向上を目標に掲げているが、残念ながら社会減は、平成29 年マイナス4,496 人、前年と比較して減少幅が拡大している。大型バス110台に相当する数が毎年首都圏等に流出している。しかも15歳~24歳の層の若者の流出が約8割を占める。特に、20歳~24歳は平成10年に転出超過となって以降、その割合は増加傾向にある。社会減ゼロに向け、大学進学や就職のため相当数が関東方面へ集中している現状をどう分析評価し、対策を考えているのか。若い世代にとって魅力ある学びの場や働く場の確保、創造がポイントである。具体的にどのように実効ある対策を講じていこうとしているのか伺う。
【政策地域部長】
人口対策についてでありますが、平成29年の本県の社会減を年齢別に見ると、15歳から24歳までで全体の約85%を占めており、また、平成28年の総務省調査における10代・20代の若者の転出先を地域別に見ると、関東方面への転出は5,371人となっている一方で、関東方面からの本県への流入は2,551人に留まっており、進学や就職のため本県から流出している若者の地元定着と、首都圏等の若者を対象とした本県への新しい人の流れの創出が重要と考えている。
このため、若い世代にとって魅力ある学びの場や働く場の創造に向けた施策の重点的な推進が必要と考えており、具体的に申し上げると、岩手大学や県立大学等と連携して起業マインドの醸成に向けた実務教育を実施する「いわてキボウスター開拓塾」等による魅力ある学びの場の創出、本県の中核産業である自動車・半導体関連産業の集積や企業立地の促進等による働く場の確保などに取り組んでいる。
さらに、平成30年度においては、魅力ある仕事づくりに向けて、第4次産業革命技術等を活用した生産性向上や新産業創出等を支援していくほか、全国の大学等との連携を図る「岩手U・Iターンクラブ」の創設により、首都圏等からのU・Iターン促進に向けた取組の強化などに新たに取り組むこととしている。
(3) 圏域別県内総生産の評価と今後の方向性について
過去10年間(平成17年度~平成26年度)の市町村内総生産額を圏域別に見ると、県北14.9%増、沿岸39.3%増に対し、県南3.6%減、県央6.3%減となっている。10年間の推移をみると県北沿岸は増加傾向にあるものの、県央、県南地域は減少傾向にある。圏域間の格差は概ね縮小傾向にあり、復興需要に加え県北沿岸振興の施策の一定の成果があったと評価する一方で、県央、県南地域の産業施策のテコ入れ(一人当たりの付加価値額を高めるか)と沿岸被災地における生業の再生が課題である。県として現状をどう評価し、今後どのように地域経済循環を高めながら地域経済の自立を図っていくお考えか伺う。
【政策地域部長】
次に、圏域別県内総生産の評価と今後の方向性についてでありますが、平成26年度の一人当たり市町村民所得を平成17年度と比較すると、4広域振興圏とも増加しているとともに、最大の圏域と最小の圏域の差は、平成17年度の72万6千円から、平成26年度の31万7千円へと半分以上縮小している。
また、平成26年度の圏域別の県内総生産を平成17年度と比較すると、議員御指摘のとおり、県央広域圏と県南広域圏で減少しているのに対し、県北広域圏は14.9%の増加、沿岸広域圏は39.3%の増加となっており、県北広域圏における建設業が553億円、211.0%の増加、沿岸広域圏においては、ほとんどの産業でマイナスとなっている中、建設業が3,205億円、584.0%の増加と大きな伸びを示している。これは、災害復旧事業などの復興需要が県内経済に大きく寄与しているものと考えている。
こうした状況を踏まえると、県央・県南広域圏も含め、本県の産業全般にわたって、商品やサービスの高付加価値化や、海外も含めたマーケットの拡大に取り組むとともに、幅広い分野でAIやIoT等も活用した生産性の向上を図っていくことが重要と考えている。
また、県北・沿岸広域圏においては、今年予定されている宮古・室蘭間のフェリー航路開設や、2019年に予定されている三陸鉄道の一貫経営、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催、大型外航クルーズ船の寄港など、三陸地域が国内外から大きな注目を集めるチャンスを捉えながら、国内外との人やモノの交流・連携を活発化させ、地域の資源を最大限活用した産業振興を図っていくことも極めて重要であると考えている。
(4) ILC誘致について
私は、これからの100年を見据えた時、ILCは一つの復興のシンボルであると同時に、岩手県が自身の存在を確認し、地球規模で世界に貢献できる、非常に大きなウエイトを占めている施策だと確信している。そういった意味でも、今年は政府判断を促す大事な年であり、工藤知事の時代から取り組んできた成果を、次のステージに向けて進める重要な年である。知事は先の演述で「ILC実現は、岩手の使命」と述べたが、知事のいう岩手が果たすべき使命は何か。また、「一致団結し受入れに万全を期す」とのことだが、研究施設の配置候補地を含めた全体的な青写真をどう描き、地元自治体としての受け入れ態勢の準備をどのように進めていくのか伺う。
【知事】
次に、ILC誘致についてでありますが、ILCは、素粒子物理学における世界最先端の研究施設であり、建設にあたっては、地質や振動等に対する厳しい条件をクリアすることが求められていますが、国内及び世界の研究者は、北上山地を最適と評価し、北上山地に限り検討が進められています。このように世界で唯一の候補地を有する本県であればこそ、ILCを実現することは、科学と技術を進歩させ人類の発展に大きく貢献し、東日本大震災津波からの復興にあたり国内外からいただいた多くの支援に報いることができるものであり、「岩手の使命」と述べたものであります。
また、ILC研究所の機能や配置等に加え、地域への広範な波及等を含めた全体のプランについては、国の有識者会議で示された、ILC周辺の生活環境要件や社会基盤要件を踏まえ、現在、東北ILC準備室が東北のマスタープランとして策定を進めており、本県もその検討に積極的に参画しているところです。同プランは、年度末にはとりまとめられ、今後、これらを基に国と地方、県と市町村、民間との役割分担など地域の実態に沿った検討の段階に進むと考えられます。
このようなことから、県としては、平成30年度には、東北のマスタープランや次期総合計画の議論を踏まえつつ、関係市や関係団体と密接に連携し、ILC実現を見据えた振興策をとりまとめるなど、ILCの受入準備を着実に進めてまいります。
2 復興と安全・安心なまちづくりについて
(1) 復興計画の評価と課題について
復興と安全・安心なまちづくりについて伺う。
今年は県の復興計画の最終年度である。震災から7年目を迎えるが、ハード整備は概ね進んできたが、未だ応急仮設住宅に入居されている方は、今年の1月末時点で3,655戸、7,758人という現実にあり、復興の光と影に目を向けなければならない。復興計画期間で、何が出来て、何が進んでいないか。知事は7年前に戻れるとしたら、自分自身にどんなアドバイスを送るのか伺う。そして、未来に向けた復興の姿を実現させるために、県としてどのように取り組むお考えか知事の決意を伺う。
【知事】
次に、復興計画の評価と課題についてでありますが、復興まちづくり事業は約7割が完了し、災害公営住宅の約9割が完成するなど恒久的な住宅への移行が進み、明日の県立高田病院の開院によって、すべての県立病院の復旧が完了します。また、大型商業施設や共同店舗がオープンし、商業機能の再生も本格化しており、賑わいのあるまちづくりが進んでいます。さらに、三陸沿岸道路などの新たな交通ネットワークの整備が進んでいることにより、釜石港でのガントリークレーンの供用開始や宮古・室蘭間を結ぶ定期フェリー航路の開設など、当初の復興計画には盛り込まれていなかった事業も進んでいます。
平成30年度においても、復興まちづくりの基盤整備に引き続き取り組むとともに、復興の長期化や恒久的な住宅への移行に伴う課題に対しては、岩手県こころのケアセンターにおける相談対応や、生活支援相談員による見守り活動など、きめ細かなこころと体のケアに引き続き取り組みますほか、住宅再建先での新たなコミュニティ形成が円滑に進むよう支援を実施します。
また、水産業や商店街の再生、中小企業における事業再開後の販路回復など、なりわいの再生に伴う課題に対しては、担い手の確保・育成や、高度衛生品質管理体制の構築による高付加価値化に取り組むとともに、仮設店舗から本設への円滑な移行や販路拡大による収益性の回復を支援します。
7年前の発災直後に戻れるとしたらとのお尋ねについては、震災や津波によって多くの方が犠牲になったことが最大の悲劇でありますことから、一人でも多くの方が避難するよう、市町村の最前線に呼びかけるなど、できることは何でもやる、ということを自分へのアドバイスとしたいと思います。
今後とも、「一人ひとりの幸福追求権を保障していくこと」、そして、「犠牲者の故郷への思いを継承すること」、これを原則とする「東日本大震災からの復興に向けた基本方針」に基づきながら、復興計画に掲げる「いのちを守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造」に向けて、全力で取り組んでまいりたいと思います。
(2) 県土利用と所有者不明土地問題について
ア 所有者不明土地問題について
復興に係る公共土木工事を推進する上で大きな障壁となった課題として所有者不明土地の問題がある。今後、高齢化や人口減少が進み、相続の機会が増加する中で、更に拡大していくことが見込まれる。実務を経験した立場からも、所有者不明土地は、所有者の探索に多大な費用や時間がかかり、公共事業の円滑な実施に支障が生じるなど、その対策は喫緊の課題である。県として、この問題をどう認識しどのように対応していくお考えか伺う。
【県土整備部長】
まず、所有者不明土地の活用についてでありますが、所有者不明土地は、東日本大震災津波からの復旧・復興事業をはじめ、公共事業の円滑な実施において大きな支障となっていると認識しております。
震災復興事業の実施にあたっては、国に対しまして、事業用地の円滑な取得を図るための特例措置の創設を要望したところであり、また、将来の大規模災害に備える仕組みを構築するために、復興に要する土地等の私有財産制限のあり方などについて、幅広い議論・検討を進めるよう提案してきたところであります。
今般、国において、所有者不明土地の円滑な利用や適切な管理の仕組みなどを盛り込んだ法案が提出される予定と承知しておりまして、その内容は、平常時において公共事業を円滑に進めるうえで有益なものと考えております。
イ 所有者不明農地・山林の課題対応について
本県の所有者不明土地は、28年度地籍調査から推計すると、山林や保安林等で約4分の1、26.4%と他の地目に比べ高い傾向にある。また、農林水産省が調べた相続未登記農地等の実態は、本県は38,018ha、農地面積に対する割合は約2割(21.4%)と北海道・東北の中でも最も高い状況にある。(紫波町・矢巾町の総面積よりも広い実態。)農林水産部として農地と山林における課題をどう認識し、どのように対応していくお考えか伺う。
【農林水産部長】
まず、所有者不明農地・山林の課題対応についてでありますが、相続未処理などにより所有権移転登記が行われていない農地や山林は、所有権者の特定に困難をきたしてきており、農地では、経営の規模拡大を目指す担い手等への農地の集積・集約化に影響が、また、山林では、効率的な施業を行うための集約化や計画的な路網整備の実施に支障が生じてきていると認識している。
このため、国では、土地の所有権者の一部が判明するなど、一定の条件が整った場合には、意欲のある担い手に対し、農地の貸付けや山林経営の委託などを可能とする内容の関係法案を今国会に提出し、審議する予定と聞いている。
県では、関係法案の審議の動向を注視するとともに、法律が成立した場合には、市町村や農業委員会などと連携し、これらの制度を十分に活用しながら、農地や山林の集積・集約化を図り、生産性の高い農林業経営を進めていく。
(3) 総合広域防災体制と医療連携について
昨年7月に全国知事会議が開催され、「あらゆる災害に負けない「千年国家」を創り上げる」岩手宣言が採択された。わたくしは、岩手宣言を契機に、火山噴火に伴う大規模な土石流を回避する避難道路の調査研究に着手するとともに、災害応急対策に必要な機能を集約した新たな防災拠点施設を整備し、生活圏ごとの広域防災拠点を繋ぐネットワーク機能を充実させる体制を整備すべきと考える。あらゆる災害に負けない「千年国家」を創り上げるためにも、災害に迅速に対応するための情報伝達手段を有し、地域医療機関との連携が図られる総合的な防災拠点施設整備が必要と思いますが、県の御所見と、今後どのように検討を進めるのか伺う。
【総務部長】
総合広域防災体制と医療連携についてでありますが、県では、大規模な災害が発生した場合、県本庁舎に災害対策本部及び災害対策本部支援室を設け、災害情報や対策の一元化、関係機関との連絡調整を行っている。中でも、医療機関との連携は極めて重要であることから、災害対策本部支援室にDMATの常駐スペースを設け、DMATの連絡員と緊密な連絡を取りながら災害対策を行っている。
また、広域防災拠点のあり方については、平成24年度に「岩手県広域防災拠点整備構想」を策定した際、議員御指摘の「集中配置型」については、人・物・情報の機能を1箇所に配置するメリットが指摘された一方で、施設が被災した場合には一度に全ての機能が失われる可能性や、広大な敷地と多額の整備費用が必要となることなどが指摘されたことから、早期に必要な防災体制を確立する必要性や必要最小限のコストでの実現性に鑑み、「分散連携型」の拠点整備を選択したところ。
県としては、県内5地域に配置した広域防災拠点の機能の充実を図っていくこととしており、災害応急対策に必要な機能を集約した新たな防災拠点施設の整備については、中長期的な課題として位置付け、引き続き財政支援措置の創設等について国に要望するとともに、各県の状況を調査し、関係機関の意見を伺いながら検討を進めていきたい。
3 子ども・子育て支援と福祉コミュニティの確立について
(1) 自殺対策について
子ども・子育て支援と福祉コミュニティの確立について伺う。
はじめに、自殺対策についてであるが、10年前に比べ全体として減少傾向にある一方、若年層は横ばい傾向にある。知事が言う「幸福な社会の実現」は「自殺を生まない社会」と同義である。自死は、個人の問題というよりも社会的損失であり、逸失損失額は1兆4千億円とも言われている。自殺率が高いとは、地域の支援力が弱いと捉えるべきである。命には行政区の境はなく、北東北三県の共通の課題でもある。自殺対策は、「連携」をキーワードに、民間を巻き込み、市町村のネットワークづくりや広域連携での取組、児童生徒を対象とした自殺予防教育も必要と考える。県として自死ゼロに向け、実効性のある取組をどのように強化していくのか知事の決意を伺う。
【知事】
次に、自殺対策についてでありますが、本県では、「岩手県自殺対策アクションプラン」を策定し、包括的な自殺対策プログラム「久慈モデル」の実践などに官民一体となって取り組んできており、自殺者数は、中長期的に全国平均を上回るペースで減少を続け、警察庁自殺統計の速報値によると、平成29年は前年比50人減の272人で、減少率15.5%が全国3位となるなど、その成果が現れてきております。
このため、平成30年度に策定する次期アクションプランと圏域別計画でも、こうした取組を基本としながら、国の自殺総合対策大綱に掲げる子ども・若者や妊産婦への対策などを新たに加えることを検討しております。
また、平成28年の自殺対策基本法の改正に伴い、市町村に自殺対策計画の策定が義務付けられ、その計画の策定には、市町村長のリーダーシップが重要であることから、今年度「自殺対策トップセミナー」を開催いたしました。
来年度には、全ての市町村において計画が策定されるよう継続して支援し、重層的に地域の実情に即したきめ細かな対策を行うことにより、取組の実効性を高めてまいります。
自殺は、様々な要因が関係するため、幅広い分野における包括的な取組が重要であり、今後とも、岩手県自殺対策推進協議会を中心に多様な主体が連携し、岩手の総力を結集して、誰も自殺に追い込まれることなく、幸福を実感できる地域社会の実現に向けて取り組んでまいります。
(2) 子育て環境の充実・保育所等の待機児童への対応について
次に、保育所等の待機児童への対応について伺う。
保育所の利用を求める人、特にも1~2歳の利用率は増加傾向にあり、県内の生活圏域の中心にある市町に集中する傾向にある。4月時点で公表される保育所等の待機児童の状況は100人台であるが、10月時点になると700人台に大幅に増加する傾向にある。年々増加している保育ニーズに対応するためにも、保育士の確保対策や1,2歳児の受入で重要な役割を果たす小規模保育事業の整備が求められる。また、例えば、病児保育の推進のための広域の取り組み等、生活圏や就労等が同じ圏域での連携も有効であると考えるが、県は保育所等の待機児童を解消し子育て環境を充実させるために、どのように市町村と連携し取り組むお考えか伺う。
【保健福祉部長】
まず、保育所等の待機児童への対応についてでありますが、厚生労働省が実施している「保育所等利用待機児童数調査」によると、議員御指摘のとおり、毎年度待機児童が発生し、年度途中で増加する傾向にあることから、待機児童解消に向けて、市町村の取組の一層の促進を図ることが必要な状況にあります。
このため、今年度は新たな取組として、平成29年4月1日時点で待機児童が発生している10市町村を対象に、個別に情報・意見交換を行い、年々高まる保育ニーズへの対応に向け、小規模保育事業の活用や幼稚園の認定こども園への移行などについて、助言を行ったところであります。
市町村では、現在、「子ども・子育て支援事業計画」に定める保育定員等の見直しを行っているところであり、現時点では、保育の利用ニーズを上回る利用定員が確保される計画となる見込みであります。
県では、施設整備に対する財政支援を行い、受け皿の更なる拡大を図るほか、保育士・保育所支援センターによる潜在保育士のマッチング支援や保育士修学資金貸付事業の拡充などにより、保育士の確保に努めることとしており、待機児童の解消に向けて、引き続き、市町村の取組を支援して参ります。
(3)医療的ケアが必要な児童の受入れ先拡充について
また、医療的ケアが必要な児童の受け入れ先が不足している実態にある。わたくしが住む矢巾町では少なくとも5名が対象と伺っており、保護者から県に要望して欲しい旨の声がある。厚生労働省の資料によると、19歳以下の「医療的ケア児」は、平成27年度約1万7千人と推計され、10年間で8千人近く増えている現状。先の児童福祉法の改正により医療的ケアが必要な児童への支援が受けられるよう、「保健、医療、福祉の関連機関との連絡調整体制の整備について、必要な措置を講ずるように努めなければならない」とされているが、県ではどのように取り組むのか伺う。
【保健福祉部長】
次に、医療的ケアが必要な児童の受け入れ先拡充についてでありますが、人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障がい児、いわゆる医療的ケア児は、平成28年度の児童福祉法等の改正により、その対応が新たに規定されたものであり、行政機関や関係事業所等が緊密に連携して、医療機関や障がい福祉サービス事業所等における支援を確保し、加えて保育や教育の現場等においても適切に支援を受けることができる体制を整備していくことが必要とされています。
このため、平成30年度において、既存の重症心身障がい児・者支援推進会議に保健、保育、教育などの関係者を加えて医療的ケア児の支援に係る連携体制を構築することとしており、医療的ケア児の実態把握に努めながら、具体的な支援策や受入体制の整備を検討するなど取組を進めて参ります。
(4)子どもの医療費助成について
次に、子どもの医療費助成について伺う。
現在県では、子どもの医療費助成制度の対象年齢を入院は小学校卒業まで、通院は未就学児とし、平成28年度は65,661人に対し、5億15百万円の補助をおこなっているところ。子ども・子育て支援及び少子化対策は国の最重要課題でもあり、県内市町村からは、医療費助成の対象拡大と、国・県主導の医療費助成制度とするよう要望されているところ。仮に中学3年生まで対象年齢を拡大した 場合、4億8千万円の財政負担が必要となるとのことだが、県は市町村からの要望にどのように対応するお考えか、ご所見を伺う。
【保健福祉部長】
総合的な子育て支援については、「岩手県ふるさと振興総合戦略」を展開していく上で重要な施策でありますが、子どもの医療費助成は、本来、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきであり、これまで、県の政府予算提言・要望において、全国一律の制度を創設するよう要望してきたところであり、全国知事会からも同様の要請を行っているところであります。
現在、県内28市町村において中学校卒業までを対象として医療費助成を行っており、更に3市町村において、来年度、中学校卒業までを対象とする方針が示されていることから、市町村に対する県の助成を中学校卒業まで拡大したとしても、サービスの向上に直接つながるものではないこと、また、県の助成対象を拡大する場合は、多額の財源を確保する必要があることから、今後、国の動向を注視しながら、県の医療・福祉政策全体の中で、総合的に検討する必要があると考えています。
(5) 児童虐待防止対策について
次に、児童虐待への対策について伺う。
本県の虐待件数は平成28年度942件、対前年度比60%増、市町村相談件数を含めると1,477件であり、残念ながら3年連続でかつ大幅な増加傾向にある。内容別に見ても、心理的虐待が5割を占め、次いで身体的虐待、育児放棄といわれるネグレクト、性的虐待とどの案件も増加傾向にある。今年度、県では児童相談所の体制強化として、3児童相談所に児童福祉司2名を増員し32名体制で取り組みを強化しているが、児童虐待件数は減少しない現実にある。発生予防、早期発見、早期対応の取組みが必要だが、特にも再発防止のために保護者や児童への支援と環境整備が重要である。県は実効性ある対策をどのように打っていくお考えか伺う。
【保健福祉部長】
次に、児童虐待防止対策についてでありますが、県では、これまで、「児童虐待防止アクションプラン」に基づき、児童虐待防止の普及啓発や、医療従事者、保育所職員等を対象とした研修会を実施してきたところであります。特に、児童虐待の再発防止に向けて、虐待を受けた子どもと親との関係を再構築するための自立支援計画を策定するなど、保護者への指導や支援に取り組んでいるところであります。
また、増加する児童虐待に的確に対応するため、現在、3つの児童相談所に32名配置している児童福祉司を来年度5名増員するとともに、併せて、児童心理司を3名増員し、より一層の体制強化を図ることとしており、虐待を受けた子どもへの支援とその保護者への指導を強化して参ります。
地域における児童虐待の早期発見・見守り体制の充実のためには、市町村の役割が重要となることから、市町村の要保護児童対策地域協議会へ児童相談所職員が参画するとともに、研修を通じて市町村職員の対応力の向上を図るなど、引き続き市町村の取組を支援して参ります。
4 地域の保健医療体制の確立について
(1)2025年の医療需要と目指すべき医療提供体制について
次に、地域の保健医療体制の確立について伺う。
県内の医師数は、人口10万人に対する病院勤務医師数は増加したものの、医師数全体では全国との乖離が拡大。全国的には西高東低の傾向にあるものの、二次医療圏単位でみると地域間の偏在がある状況にある。医師の地域偏在を根本的に解消するためには国家レベルの施策が必要であり、団塊の世代がすべて75歳以上になるいわゆる2025年問題に向け、早急に手を打つべきである。県は、仮称・「地域医療基本法」の制定を国に要望しているが、2025年の本県の医療需要と病床の必要量、目指すべき医療提供体制のグランドデザインをどう描き、具体的な医師偏在対策をどのようにして実現していこうとしているのか知事に伺う。
【知事】
次に、2025年の医療需要と目指すべき医療提供体制についてでありますが、今後の少子高齢化の進展等に伴う医療需要の変化に対応するため、県では、平成28年3月に地域医療構想を策定し、2025年における病床の必要量を踏まえて、急性期の医療から在宅医療に至るまで切れ目のない良質な医療提供体制の構築に向けて取り組んであります。
将来のあるべき医療提供体制を構築するためには、医師の不足と地域偏在の解消が不可欠であり、県では医師確保対策アクションプランに基づき様々な取組を行っていますが、こうした県による取組だけでは限界があり、国を挙げた対策が必要であります。
このため、県では、引き続き、奨学金による医師の養成と配置等の取組を推進するとともに、我が国全体で抜本的な医師の不足と偏在の解消を図るため、地域医療基本法の法制化に向けた取組を進め、住民が地域で等しく適切な医療を受けられるいわてを目指して参ります。
(2) 健康寿命伸長への取組について
2025年問題にどう向き合うか。高齢化の進展が医療費を増加させ、支える側の負担の急増が見込まれることから、健康寿命を伸ばす取組が重要になる。
厚生労働省の「都道府県別生命表」によると、本県の健康寿命は、男性は40位 70.68歳、女性は24位 74.46歳。特に、男性は下位10位に青森、秋田、岩手の北三県が入る。男女ともに第1位の山梨県と比較して寿命が約2年もの開きがある。県はこの現状と要因をどう分析されているのか。県として、全国高位の生活習慣病による死亡率を改善し、健康寿命を伸ばす取組を県民運動として展開するべきだが、実効ある対策のために今後10年間を見通し、何に重点を置いて改善の取組を展開するお考えか伺う。
【保健福祉部長】
次に、健康寿命伸長への取組についてでありますが、本県の健康寿命については、国が公表している平成25年の調査では、前回の平成22年の調査と比べ、男性は1.25歳増加、女性は1.21歳増加しており、全国順位も、男性は43位から40位へ、女性は32位から全国平均を上回る24位へと、改善しているところです。
健康寿命の延伸を図るには、三大生活習慣病であるがん、心疾患、脳卒中の予防が重要であり、県では、生活習慣病の発症予防と重症化予防を徹底するため、食生活改善、身体活動・運動、禁煙など、生活習慣の改善の取組を強化するとともに、がん検診・特定健診受診率及び特定保健指導実施率の向上による疾病の早期発見と重症化予防など、健康対策に総合的に取り組んでいるところであります。
中でも、脳卒中は、がんや心疾患に比べて死亡率が低いものの、後遺症が残り医療や介護が必要となる割合が高く、健康寿命への影響が大きいこと、また、本県の脳卒中死亡率は、65歳未満の若い年代からすでに全国よりも高い状況にあります。
こうした課題等を踏まえ、現在、「第2次健康いわて21プラン」の中間見直しを行っており、乳幼児期から高齢期まで、それぞれのライフステージに応じた健康な生活習慣づくりの施策などに重点的に取り組むこととしています。
平成30年度においては、働き盛り世代を対象とした生活活動量の増加や食生活の改善を促す健康増進の取組を新たに当初予算案に盛り込んだところであり、企業等が行う健康経営の取組を支援することなどにより、「岩手県脳卒中予防県民会議」の構成機関とも連携を図りながら、健康寿命の延伸に向けて、県民一体となって取り組んでまいります。
(3) 健康産業の推進について
そして、健康産業の推進が重要となる。
私は、農業は誰のために、何のために、どこに向かっていくのかと考えた場合、前述の全国高位の生活習慣病による死亡率を改善し、健康寿命を伸ばす県政課題に対し、関係部局が連携し、健康の維持・増進に着目した健康産業を推進する姿が見える。雑穀や海草類などを活用した農商工連携や地域資源を生かした創薬のほか、例えばお米についても、食味が良く太りにくいコメの開発等、機能性に着目した視点から岩手の農畜産物の評価を高める取組が重要と考える。
いわて県民計画では「元気になれる岩手構想」を掲げていたが、機能性成分の活用による農林水産物の高付加価値化に向け、県はどのように取り組むお考えか伺う。
【農林水産部長】
次に、健康産業の推進についてでありますが、県民の健康の増進を図り、健康寿命を延伸していくためには、食生活や運動、休養など生活習慣の改善の取組を進めていくことはもとより、健康長寿に結びつくとされている農林水産物・食品の機能性の発掘や、商品開発などを推進していくことが重要であります。
このため、県では、「バイオテクノロジー研究推進に係る基本方針」に基づき、岩手生物工学研究センターにおいて、農林水産物の機能性を活用した健康維持・増進技術の開発に取り組んできたところであります。その結果、イサダに含まれる肥満抑制物質の特定抽出などの成果が挙がっており、食品関連企業や水産加工業者等と連携し、サプリメントなどの商品化に向けたプロジェクトが進行しています。
また、平成29年6月には、機能性に関する研究推進や産業振興を図るため、県内の関係団体等で構成する「いわて農林水産物機能性活用研究会」が設立され、機能性成分に関する情報共有や活用の可能性等に関する検討が行われています。
今後も、こうした取組を進めるとともに、生物工学研究センターの研究基盤を強化し、機能性成分に着目した農林水産物の付加価値向上や需要創出を図りながら、県民の健康増進に貢献する農林水産業の確立に向け取り組んでいきます。
5 ものづくり産業の人材育成と観光・地場産業の振興について
(1) ものづくり産業の高度人材育成について
ものづくり産業の人材育成と観光・地場産業の振興について伺う。
今年は㈱デンソー岩手の新工場が10月に完成予定のほか、東芝メモリ㈱の新規生産拠点の建設がいよいよ始まる。本県の「産業創造県いわての実現」に向け、極めて意義深い重要な年になる。一方、RESASで付加価値額、労働生産性の特化係数を分析すると、本県の製造業が「地域で強みのある産業」になるための課題が見えてくる。私は、ものづくり産業の国際競争力を高め、また、IoTなどの第4次産業革命技術を促進させる意味において、何よりも人材育成と企業への供給が重要であると考える。AI技術など第4次産業革命技術に対応した高度化人材育成を目指し、産業技術短期大学校の学科再編を含め、人材育成の取組を一層強化すべきと考えるが、県のご所見を伺う。
【商工労働観光部長】
まず、ものづくり産業の高度人材育成についてでありますが、今後、ものづくり産業が持続的発展を図っていくうえで、IoTやAIなどの第4次産業革命技術は欠くことのできないものとなっておりまして、これらの技術を活用できる高度人材の育成は、今後ますます重要になっていくものと認識しております。
このため、県では、各種補助事業の活用促進に加え、半導体関連産業創出推進事業や中小企業ベンチャー支援事業などにより、企業経営者等に、IoTの活用や市場参入、ロボット技術の導入を働きかけてきているとともに、産業の現場におけるロボットシステムの導入をコーディネートする人材の育成等に取り組んできたところでございます。
今後におきましても、企業や大学等と連携し、これまでの取組をより強化するとともに、新年度においては、第4次産業革命技術を活用した異業種連携による新製品等の開発につながるワークショップの開催、製造ラインのIoT化など産業の現場における新技術活用を牽引する人材の育成などにより、県内企業の生産性向上等に繋がる高度技術人材の育成を一層推進してまいります。
そのような中で、実践技術者の育成に取り組んでおります産業技術短期大学校においては、これまでもカリキュラムについて不断の見直しを行ってきており、IoTやAIに関する授業を実施しているとともに、卒業研究に取り組む学生達も増えてきているところでございます。このように、産業技術短期大学校がIoTやAIを学び習得できる場であることを、さらに一層、広報に努めるとともに、技術革新や産業界のニーズに対応した技術者の輩出につながるよう、体制を検討していく考えであります。
(2) インバウンド観光の推進について
ア 空港利用促進の取組の成果と課題について
次に、インバウンド観光の推進について伺う。
県は来年度、交通政策室を設置し、「花巻空港の国内路線の維持・拡充と国際定期便の受入態勢の強化に取り組む」とのことだが、一見すると以前の組織体制に戻すようにも見える。空港の整備や管理と国際チャーター便、定期便の誘致等の空港利用促進に向けた一体的な取組の成果と課題について伺う。
【県土整備部長】
次に、空港の整備や管理と利用促進についてでありますが、平成16年度に空港利用促進業務が県土整備部に移管されて以降、空港の整備・管理と利用促進業務を一体的に行ってきた。特に、震災後は国内定期便の維持・拡充に取り組む一方、知事のトップセールスを始めとして積極的な国際便の誘致に取り組んできた。また、ハード面では、国内定期路線の便数の増加や、国際チャーター便等の誘致状況を踏まえ、空港ターミナルビルの増築を行うなど空港の受入機能の向上に取り組んできた。
こうした取組の結果、国内線は名古屋線、福岡線の復活などにより、過去最高の1日12往復が運航され、また、国際線については平成26年度に台湾との間で本県初の定期チャーター便が就航し、その後も台湾を中心に国際チャーター便の実績を積み重ね、本年度は過去最高の164便の運航が見込まれている。
今後の課題については、本県初の国際定期便就航に向けて、インバウンド、アウトバウンド両方の需要の拡大が最も重要と考えている。また、国際定期便化となれば、外国人個人旅行者の増加が見込まれることから、鉄道やバス等他の交通モードとの接続など、受入環境の整備に取り組んでいく必要があると考えている。
イ 総合的な誘客推進への取組について
併せて、東北6県の外国人宿泊客数は、震災前の平成22年と比べると岩手県は45%の増加であり、外国人移動相関関係を分析すると、岩手に滞在する直前そして滞在直後に訪問している地域は、宮城県、青森県の2県で全体の約4分の3を占める。青森、宮城との連携を強化するなど、マーケティング分析を丁寧に行いながら、様々な交通手段を活用した総合的な誘客促進を図る必要があるが、県はどのように取り組もうと考えているのか伺う。
【商工労働観光部長】
総合的な誘客推進への取組についてでありますが、本県を訪れる外国人観光客の多くは、いわて花巻空港のほか、成田・羽田空港や仙台空港から入国し、北上(ほくじょう)して、東北や北東北を周遊していることから、その中で、県内でのより多くの周遊・滞在を促進していくことが重要と認識しております。
このため、東北各県との連携による、海外の各国それぞれの市場特性やニーズを踏まえての食や文化、震災学習、スキーなどを切り口とした広域観光プロモーションの展開や、鉄道・高速バスのフリーパス、レンタカーの利用促進などによる二次交通の利便性の向上に取り組むとともに、
本県の魅力を海外の方々に直接訴求するテレビ、SNSなどによるPRの展開や、県内宿泊・観光施設の受入環境の充実を進めてきたところであります。
今後も、東北各県、さらには外国人観光客の人気の高い北海道や東京2020オリンピック・パラリンピックが開催される東京都などとの連携を強化し、広域観光ルートとして売り込みを図るとともに、県内各地でのより広い周遊と、より長い滞在につなげていく考えであります。
(3) 観光物産拠点整備について
地域経済分析システムRESASによると、本県の地域経済の自立度を示す「地域経済循環率」は、2010年86.9%から2013年75.4%に、11.5%低下し、北海道、東北の中で最も低い現状にある。残念ながら県内で稼いだお金が地域の住民や企業等の所得や消費、地域の企業の投資に十分に回っているとは言えない状況にある。今、各県で観光客の誘客拡大に向けて取り組んでいるが、残念ながら本県においては、新潟ふるさと村や青森県観光物産館アスパムのような総合的に地元の地場産品や土産品を購入できる拠点が十分とは言えず、このままでは隣接県に外貨が流出するだけである。車で移動される観光客やビジネスマンを含めた県内外の観光客をターゲットに、(新幹線と空のゲートウェーの間の)幹線道路沿いに観光物産拠点を整備し外貨を地域内に落とし込む仕組みを整備すべきと考える。観光誘客の取組とお土産や地場産品、産直等を組み合わせた本県ならではの観光物産拠点、いわて銀河プラザのような拠点を岩手県産や市町村、民間と連携し創設してはどうか、県のご所見を伺う。
【商工労働観光部長】
次に、観光物産拠点の整備についてでありますが、県産品の販売拡大は、本県の地域経済の活性化につながる重要な取組であり、いわて花巻空港、JR主要駅、県内各地の道の駅や各観光物産施設などで展開されているところ。
また、魅力ある商品づくりと販売拡大に向けて、毎年開催している「いわて特産品コンクール」及び「いわて特産品フェア」をはじめ、県内での大手量販店と連携した各種県産品フェアや、首都圏等大都市における観光物産展及び商談会などを展開しているところ。
これらの展開による最近の販売動向を見ると、全国的な傾向でもあるが、店舗での販売に伸び悩みが見られる一方、いわゆる通販市場が拡大してきており、販売の多チャンネル化が進んでいるところ。
このような中にあって、議員御提案の新たな拠点の整備については、他県の取組事例を見ると、運営面で苦慮している例も多いことから、当面は、民間活力の活用を含め、他県の展開状況や市場動向をしっかりと調査・研究していくことが必要と考えている。
6 食料供給基地の確立と森林環境保全対策について
(1) 高収益な土地利用型野菜品目を導入する経営体の育成について
食料供給基地の確立と森林環境保全対策について伺う。
本県の農業は、畜産、稲作、園芸それぞれが特色ある産地を形成しているものの、平成28年農業産出額は2,609億円(畜産60%、米20%、園芸17%、その他3%)で20年前に比べると約2割(17%)減少。畜産は1割強(14%)増加したものの、米5割(50.8%)減、園芸2割(18.4%)減であり、生産者の所得向上に必ずしもつながっているとは言い難い現状にある。今年は、米政策が大きく見直される歴史的な年であるが、平成30年産以降、生産性・市場性の高い産地づくりを推進するためにも、オリジナル品種をはじめとする需要に応じた特色あるコメ生産を推進する一方、米から高収益な土地利用型野菜に転換させ、農家の所得向上と消費者から信頼される食糧供給基地としての役割を担っていかなければならない。水稲生産から園芸作物への転換の成否の本質は、経営体の育成にある。
ある認定農業者の方が若い農業者に次のように言っている。「面積を確保したい者は機構が貸し出しの対象とする経営を目指せ」、「得意で夢中になれる分野で規模拡大を目指せ」、「いつでも設備投資(融資対象)が出来る経営体を目指せ」と。このように健全な経営体の育成がカギであるが、県はどのようにして高収益な土地利用型野菜品目を導入する経営体の育成に取り組んでいくのか伺う。
【農林水産部長】
次に、高収益な土地利用型野菜品目を導入する経営体の育成についてでありますが、農業が地域経済を支え、持続的に発展していくためには、意欲と能力のある経営体の育成が重要である。
このため、県では、販売額3千万円以上又は農業所得1千万円以上を確保する経営体をリーディング経営体と位置づけ、こうした経営体の育成に向け、
①いわてアグリフロンティアスクールによる経営力の向上、②農地中間管理事業による農地の集積・集約化、③経営体育成支援事業などによる機械・施設の整備などに取り組んできたところであり、その結果、玉ねぎや馬鈴薯(ばれいしょ)など需要拡大が見込まれる加工・業務用野菜を大規模に生産する経営体も現れてきている。
今後、こうした動きを加速させるため、新たに「いわて型野菜トップモデル産地創造事業」を当初予算案に盛り込み、省力的な野菜生産に必要な高性能機械の導入や、パイプハウスの団地的な整備を進めることとしている。
更に、本年4月には、農業団体と連携して、新たに農業経営相談センターを開設し、経営の規模拡大や法人化に向け、きめ細かな支援を行うこととしており、こうしたハード・ソフト両面の取組により、本県農業をけん引し、地域経済を支える農業経営者を育成していく。
(2) 基盤整備の考え方について
また、新たに高収益な土地利用型野菜を水田へ導入するためには、水田の畑地化や畑作物に軸足を置いた汎用化のための排水改良を行い、かんがい設備を整備しなければならない。特に本県の場合、北上川流域沿いの平場の他、中山間地域を多く抱えており、地域の実情にあった基盤整備が必要となるが、県は食料供給基地の再構築に向けどのように取り組みを推進するお考えか伺う。
【農林水産部長】
次に、基盤整備の考え方についてでありますが、本県農業の持続的な発展を図っていくためには、生産性・収益性の高い農業の実現に資する生産基盤の整備など、土地改良事業を着実に進めていく必要があると考えている。
このため、県では、生産コストの低減や、麦・大豆、園芸作物などの品質・単収の向上に向け、ほ場の大区画化や排水対策、中山間地域でのきめ細かな整備など、地域のニーズや立地条件を踏まえた基盤整備に取り組んできたところ。地域におきましては、基盤整備を契機とした話し合い・合意形成が進み、近年、ジャガイモ、トマトなど高収益作物の地域一体となった作付や、6次産業化などにつながる事例が増えてきているところ。
今後、こうした取組を更に拡大させるため、これまでの排水対策に加え、新たに地下からの用水機能を付加した「地下水位制御システム」を導入するなど、地域の実情に応じた基盤整備を進め、効率的・安定的な農業経営を支援していく。
(3) 森林環境保全対策について
次に、森林環境保全対策について伺う。
水源のかん養や土砂流出防止など森林の有する公益的機能の維持増進のためには、森林環境を良好な状態で保全することが重要である。
平成30年度税制改正大綱に森林環境税と森林環境譲与税の創設が明記された。具体的には、自然的条件が悪く採算性が望めない森林などを市町村が受け入れ、間伐等の森林整備を進めると伺っている。私は、これまでも現行の「いわての森林づくり県民税」の使途について、水源の涵養などの公益的機能の高い森林へ誘導する間伐や、地域住民活動などの支援以外に、大雨豪雨災害時の流木除去や鳥獣被害対策のための里山整備等に使途を拡大すべきと訴えてきたところ。
今回の国の制度創設により、現行の県民税の使途に対する基本的な考え方を含め、県民税の在り方をどうお考えか伺う。
【農林水産部長】
次に、森林環境保全対策についてでありますが、いわての森林づくり県民税は、本県の豊かな森林環境を次の世代に良好な状態で引き継いでいくため、県民みんなで支える仕組みとして平成18年度に創設したものであり、その使途は、制度創設の趣旨を踏まえ、森林環境保全に関する施策に要する費用に充てることを基本とし、現在、2020年度を終期とする第3期の取組を推進している。
また、森林環境税の創設を踏まえた今後の県民税のあり方については、国の森林環境税の使途等を精査し、本県の県民税との関係を整理するとともに、第3期における取組の成果や課題を踏まえ、県民の皆様をはじめ、事業評価委員会や県議会の御意見なども伺いながら、具体的な検討を進めていく。
7 教育環境の充実と文化・スポーツの推進について
(1) 不登校児童生徒の支援について
教育環境の充実と文化スポーツの推進について伺う。
はじめに、不登校児童生徒への支援について伺う。
県内の公立小中学校の不登校児童生徒は、平成28年度、小学校で183人、中学校で876人と1,000人を超す子供たちが病気以外の何らかの理由で学校に行けない状況にある。4年連続で増加し、学年が上がるにつれ増える傾向にあり、1,000人当たりの不登校児童生徒数は11.1人であり、お隣の秋田県と比較して2人多い状況にある。おおよそ100人に1人が不登校である現状にある。また、90日以上欠席している者が約半数、しかもその内出席日数がゼロの子どもが35人いる。
本人や学校・家庭に係る要因は複雑に絡み合っていると思うが、この現状の要因分析をどう捉えているか。そして、要因に対する支援の在り方が見えてくると思うが、フリースクール等の関係機関との連携も含めて、教育委員会として実効ある対策をどのように講じるお考えか、ご所見を伺う。
【教育長】
不登校児童生徒への支援等についてでありますが、平成28年度の「問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によりますと、不登校の主な要因については、友人関係や学業不振等の学校生活に起因するものが、小学校で26%、中学校で42%、家族との関係など家庭状況に起因するものが、小学校で60%、中学校で41%となっており、これらにその他の要因もあり、多岐にわたっております。
公立学校におきましては、保護者の理解の下に、教職員とスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が連携し、教育相談体制の充実を図りながら、不登校の防止や改善に取り組んできているところであり、不登校児童生徒の出現率は議員御案内の秋田県よりは高いものの、全国で6番目、東北で2番目に低い状況となっております。
また、市町村におきましては、不登校児童生徒の学校復帰に向けて、学校外に適応指導教室を設置するなど、不登校児童生徒の実状の改善を図る取組を推進しております。
不登校を改善していくためには、学校の取組と併せて、議員御指摘のフリースクールなどの民間団体等との連携もまた重要であり、市町村教委におきましては学校とフリースクールをつなぐ役割を担ったり、フリースクールが学校へ定期的に訪問したりするなどの動きが増えてきておりますので、県教委といたしましては、今後におきましても、このような連携なども一層推進して参りたいと考えております。
(2) 発達障がい児への教育支援について
次に、発達障がい児への教育支援について伺う。
義務教育段階の全児童生徒数は減少傾向にある一方、発達障がい児を含む特別支援教育の対象となる児童生徒数は増加傾向にある。平成26年度の本県独自の調査結果によると小中学校の通常学級に在籍する児童生徒で、学習面・行動面で特別な支援が必要とされた児童生徒数は5、521人、割合は約5.7%。35人学級に2人程度いるということ。私は、全ての学校や学級に、発達障がいを含めた障がいのある子供たちが在籍する可能性があることを前提に、障がいの状態や発達の段階に応じた指導を充実させるほか、その支援が継続して行われるよう、各学校段階の移行期の適切な引継ぎが重要なポイントと考える。県のご所見を伺う。
【教育長】
発達障がい児等への教育支援についてでありますが、特別な支援を必要とする児童生徒の教育につきましては、それぞれの学校において、障がいを有する児童生徒の状態や特性、発達段階を適切に把握し、一人一人の教育的ニーズに応じた支援を行うとともに、進級・進学等の移行期に適切な引継ぎなども行い、児童生徒が楽しみながら充実した学校生活を送ることができるための支援をしていくことが大切であると考えております。
本県におきましては、児童生徒一人一人の障がいの状態等に応じた指導・支援の充実を図るため、特別支援教育のセンター的機能を有する特別支援学校の教職員が、それぞれの地域の幼稚園、小学校等への訪問支援や、全ての学校に配置している特別支援教育コーディネーターとの連携を図りつつ、校内研修の講師を務めたりするなど、それぞれの地域の特別支援教育の中心的役割を担いながら支援をしてきているところでございます。
特に、学校段階の移行期におきましては、いわて特別支援教育推進プランに基づき、幼児期から高等学校までのそれぞれの段階で作成している個別の教育支援計画を進級・進学先に引継ぎ、学習環境の変動期も、円滑な指導・支援が図られるように取り組んでおります。今後におきましても、教職員の専門性等の向上を図りながら、児童生徒一人一人に応じた支援が展開されるよう努めて参ります。
(3) 県営スポーツ施設の老朽化への対応について
平昌オリンピック冬季競技大会で本県出身選手が活躍したほか、来月から始まるパラリンピック冬季競技大会においても矢巾町出身の高橋幸平選手をはじめとした選手の活躍が期待される。これはスーパーキッズ育成と選手強化に関わる多くの関係者の成果であり、関係者のご尽力に敬意を表する。
一方、昭和45年のいわて国体の会場として整備された県営スポーツ施設の多くが、老朽化してきている。先般、県営野球場について盛岡市と共同で整備検討進める旨の報告を受けたが、次は8年後に耐用年数を迎える県営体育館である。20年~30年先を見据えて新時代にふさわしい県営体育館を機能的・一体的に整備すべきである。具体的には、震災により凍結されている スポーツ健康科学センター・多目的屋内練習施設を、競技力向上や生涯スポーツの振興、冬季間のフィールド練習環境の整備の観点から、新たな県営体育館を市町と連携し一体的に整備してはどうかと考える。県のご所見を伺う。
【文化スポーツ部長】
県営スポーツ施設の老朽化への対応についてでありますが、これまで、外部有識者による「県営スポーツ施設のあり方に関する懇談会」において、検討いただき、昨年末に意見が取りまとめられ、県に報告いただいたところ。
報告では、県営体育館については、「当面、施設・設備の状況等を考慮しながら、適時、改修等を行い、現状を維持することが望ましい」、また、スポーツ健康科学センター・多目的屋内練習施設については、「改めて、その整備のあり方について検討を行うことが望ましい」とされたところ。
今後、懇談会報告や議員の御意見も参考にさせていただき、県営体育館をはじめ、県営スポーツ施設の機能や整備のあり方について、総合的に検討していく。
(4) 史跡の保存と活用について
結びに、先人たちの歴史への思いを馳せながら史跡の保全と活用について伺う。
今月、志波城跡や徳丹城跡、胆沢城跡などの古代城柵が、日本遺産に再申請された。4月下旬の認定を願うばかりである。志波城や徳丹城等は、平泉の世界文化遺産に繋がる重要な意味を持つ古代遺跡である一方、国指定史跡徳丹城跡は、発掘調査により住宅等の移転を進めても、広大な低利用地があらわれている状況にある。史跡の保存は活用の視点をしっかり入れながら、個性ある地域づくりに寄与すべきであり、現代に生きる我々が未来に繋ぐ重要な使命がある。
県民が歴史や文化に親しむ場として活用されることが社会的に要請されるが、県は、国や市町と連携しながら史跡の活用方策を積極的に進めるお考えがあるか伺う。
【教育長】
次に、史跡の保存と活用についてでありますが、矢巾町の国指定史跡「徳丹城跡」は、胆沢城跡、志波城跡とともに全国的にも著名な古代城柵であり、町においては、保存管理計画と整備計画を策定し、これまで20年以上にわたり数多くの発掘調査を行い、植栽や柱跡の遺構表示を行うなど、整備を進めてきておりますが、平成30年度には総合的な整備に向けた基本設計等の見直し作業を進めるとともに、目に見える形での整備活用策についても改めて検討することとしていると聞いております。
議員御指摘の「徳丹城跡」につきましては、地域の皆様の期待も大きいと認識しておりますので、県教委といたしましては、これまで史跡整備に関する「調査指導委員会」に参画し、文化庁からの指導も受けながら、整備内容や手法などの助言や調整等を行ってきているところであります。
今後におきましては、矢巾町における整備が着実に推進されるよう、国庫補助事業である「史跡等総合整備事業」の導入による史跡の整備や、その活用等に連携して取り組んで参ります。