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県議会報告

平成29年度2月定例会 予算特別委員会(総括質疑) (平成30年3月6日(火))

2018.03.16

1 未来を見据えた県財政について

(1)30年度予算に込めた知事の念い(おもい)

 無所属の臼澤勉でございます。平成30年度の予算審査に当たり、お尋ねいたします。総括質疑の最後の質問者であり、これまでの質問と一部重複いたしますが、宜しくお願いいたします。はじめに、知事は、来年度の予算を「ふるさと振興総合戦略を強力に推進し、県民の明日への一歩を共に進む予算」と述べておりますが、「明日」とは、どのような明日か、どこに向かっていくのか、ご所見を伺います。

(知事)
 平成30年度当初予算案は、次期総合計画の策定も見据えながら、第3期復興実施計画に基づく東日本大震災津波からの復興と台風第10号災害からの復旧・復興を最優先に、「ふるさと振興総合戦略」を強力に推進する予算として編成したところであり、県民一人ひとりが、明日の自分の生活、明日の自分の仕事、また、明日の自分の学びに関連する事業を見つけることができると考える。
 復興基本計画では、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指す姿として掲げており、また、岩手県人口ビジョンでは、子どもからお年寄りまで、あらゆる世代が生き生きと暮らしている岩手、県外とつながり、新しい発想にあふれている岩手、若い世代をはじめとする多くの人々が集い、イノベーションが創出され、活力ある地域社会が形成されている岩手を本県の2040年の姿として描いており、こうした岩手の将来像に向かって取り組んでいく考えである。

(2)岩手県ふるさと振興総合戦略について

 平成29年度は、「岩手県ふるさと振興総合戦略」の中間年。「岩手で働く」、「岩手で育てる」、「岩手で暮らす」の3つの柱に沿った事業を展開しております。今後、未来を見据え児童福祉や教育など、「岩手で育てる」を重点的に取り組む必要があると考えますが、ご所見を伺います。

(政策地域部長)
 岩手県ふるさと振興総合戦略についてでありますが、自然減と社会減から成る人口減少問題を解決するためには、自然減対策と社会減対策の両方に取り組むことが必要と考えている。
 このため、ふるさと振興総合戦略に掲げる「岩手で働く」、「岩手で育てる」、「岩手で暮らす」の3つの柱は、いずれも重要であり、合計特殊出生率の向上という自然減対策を主な目的としている「岩手で育てる」についても、重点的に取り組む必要があると考えている。
 このような認識のもと、平成30年度当初予算案では、体制等を拡充した“いきいき岩手”結婚サポートセンター「i-サポ」の運営による結婚支援や、産科診療所開設等の支援並びに周産期医療体制の強化、保育士の確保と保育所整備に対する支援などに取り組むこととしている。

 ここ数年の県予算をみると、生産年齢人口一人当たり労働費、商工費、総人口一人当たり衛生費が高い傾向にある。知事が言う「希望が持てる『明日』」に向かって、ぜひ15歳未満の人口一人当たりの児童福祉費や教育費についてもバランスよい予算編成について取り組んで頂きたい。

(3)税財源の確保対策について

 次に、財源の確保対策が何よりも重要と考えます。H30年度の県税収入は前年度比1億円の減と概ね横ばいの見込みでありますが、内訳を見ますと、法人事業税は税率改正の影響を理由に、4億5,900万円の減となっております。法人事業税は、H28年度税制改正により、課税ベースを拡大しつつ所得割の税率を引き下げ、企業活動を活性化するという考え方の下で改正されておりますが、本県において減収となる理由と今後の対応について、ご所見を伺います。

(総務部長)
 税財源の確保対策についてでありますが、法人事業税については、平成29年度当初予算額269億円を最終予算額として253億円に減額したところですが、これは、外形課税部分の税率引上げと所得課税部分の税率引下げに伴うものであり、税率引下げによる減収が予想以上に大きかったことによるものである。
 一方、平成30年度当初予算額は、企業収益の伸びが見込まれることから、264億円、前年度比4.3%の増と見込んでいる。
 今後の対応については、企業誘致をはじめとした産業振興等の取組により税源涵養につなげていく。

 自主財源の確保対策として、中長期的な視点から企業誘致、産業活性化、雇用促進、土地利用対策等を積極的に進めて、県税の増収確保対策を強化する必要がある。宜しくお願いいたします。

2 未来を見据えた県組織について

(1)広域振興局体制について

 次に、『明日』を見据えた県組織について伺います。広域振興局体制になり10年が経過します。これまでの、広域局体制をどう総括しているのか。
 また、先の一般質問の答弁において、「広域振興局の体制を強化する」と答弁されておりましたが、課題認識と狙いは何か、重点的、優先的に取り組もうとしていることは何か、ご所見を伺います。

(政策地域部長)
 広域振興局体制についてでありますが、広域振興局は、産業振興による地域経済の活性化を主眼とし、地域ニーズに即した施策展開が一層可能となるよう、市町村本位の考え方で、市町村への支援や、広域的・専門的なサービスの提供などを行うことを目的に設置したもの。
 これまで、産業振興の面では、広域振興局長のリーダーシップのもと、食産業や、ものづくり、観光などの分野において、広域的な連携組織を構築し、ビジネスマッチングの促進や産業人材の育成、広域的なイベントの開催など、地域の特性やニーズを踏まえた広域的な施策を展開してきたところ。
 また、東日本大震災津波や台風第10号災害の対応では、四つの広域振興局にまとめたスケールメリットを生かし、内陸部の広域振興局から沿岸部の市町村等へ迅速な人的支援や物資の供給を行うなど、機動的な災害支援業務の展開が図られ、現在の体制は定着してきているものと考えている。
 一方、若者の転出等による人口減少への対応や、東日本大震災津波等からの復興の推進に当たっては、若者の地元定着やUIターンにつなげるための魅力のある仕事づくりや産業振興の取組を一層推進する必要があると考えている。
 このため、平成30年度からは、各広域振興局の経営企画部に産業振興室を設置し、本庁の商工労働観光部との連携の強化を図りながら、産業人材の確保・育成や、地域特性を生かした産業の振興、外国人観光客の拡大を含めた観光振興などに重点的に取り組んでいくこととしている。

 知事に改めて伺います。知事は就任当初、『コミュニティーと広域に注目した新地域主義という戦略を効果的に展開していく』と述べていましたが、これまでの手ごたえはいかがですか。県民の暮らしや仕事が市町村を超えた広域になっており、そこが活性化し、うまくいかないと岩手全体の成功にもつながっていかないと述べておりましたが、ご所見を伺う。

(2)組織の活性化について

 次に、組織の活性化について伺います。岩手県職員憲章では、5つの行動基準、県民本位、能力向上、明朗快活、法令遵守、地域意識を示してますが、現在の組織、職員をどう評価しているか。また、組織を活性化させるために、知事として重要視していること、重点的に取り組もうとしていることは何か、ご所見を伺います。

(知事)
 組織の活性化についてでありますが、県政課題に適切に対応していくためには、県職員が、県民本位の視点で自ら考え、行動できることが必要であり、平成20年度に策定した岩手県職員憲章には、あるべき職員の姿を示し、全職員が一丸となって行動するための信条を掲げている。
 職員は、東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害など、近年、多発している自然災害からの復旧・復興をはじめ、様々なつながりの力を結集し、大成功を収めた希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の開催などの取組に対し、様々な創意と工夫を積み重ねながら、懸命に対応してきていると認識しており、県組織全体の底力も高まってきているものと考えている。
 組織の活性化のためには、知事としては、職員と議論したり、一緒に現場を回ることが重要と考えており、これまでもかなりの時間を割いてきたところ。
また、職員の主体性を引き出すことが重要と考え、坂本龍馬が結成した海援隊をもじったⅠ援隊を呼びかけ、事業化されたところ。その後、職員のこうした主体性の発揮は、改善事例を全庁で共有し、優良事例を表彰するG・I(ジー・アイ)グランプリや政策提案型調査研究コンテストであるWild
Cup(ワイルド・カップ)、次期総合計画の策定に向けたアイディアコンテスト等の取組へと展開を見せており、頼もしく感じているところ。
 また、今年度は、ワークライフバランスをテーマに、広域振興局の若手職員と知事との意見交換会を開催し、職員に直接イクボスとしての思いを語りながら、働き方改革の機運の醸成を図っているところ。
 現在、次期総合計画の策定に県組織を挙げて取り組んでいるところであり、県職員が、今後10年の岩手のあるべき姿を自由闊達に描きながら、活発に行動してもらいたいと考えている。

 何より行動が大事です。「ビジョンなき改革は失敗に終わる、行動を伴わないビジョンは夢に過ぎない」。さらに県の組織が行動する集団に変革させることが重要であり、私自身を振り返りつつ、立派な憲章の文章を覚えるより、自身の言葉として心に落とし込むかが重要である。職員の皆さんは高い志をもって県職員になり、崇高な想いと誓いを胸に仕事をされていることを知っています。私は行動力を高めるためには、明るくはっきりとした挨拶の実践が大事だと信じ実践しています。仕事で苦しんでいる職員を孤立させない、自尊の欲求、自己実現の欲求を県の仕事を通じて高めることが、組織を活性化させる。明朗、愛和の精神で職員の仕事のやりがいを満たしながら活き活きとした組織運営をお願いする。

3 未来を見据えた社会増への取組みについて

(1)移住定住対策について

 次に、明日を見据えた社会増の取組み、移住定住対策について、伺います。地方への人の流れをつくるための規制緩和を進めるため、効果的な制度の検討に着手すべきであります。私は、これまで地方への定住や三世代同居の促進、空き家対策、田舎暮らしのための住宅環境整備など、農村地域内で定住に必要な土地の取得や住居を建て替えやすい仕組みが必要と訴えてきましたが、移住定住しやすい環境づくりにどう取り組もうとしているのか、ご所見を伺います。

(政策地域部長)
 移住定住しやすい環境づくりについてでありますが、県では、全県的な移住推進体制や首都圏における移住相談窓口の整備を行うとともに、移住情報の一元的な発信や首都圏での移住相談会の開催、あるいは移住体験ツアーの実施など、様々な移住・定住の取組を進めている。
 また、移住の前提となる魅力ある地域づくりや、移住者の受入環境の整備については、市町村や地域団体の役割が重要であることから、県では、NPOなどの地域団体が行う移住・定住の促進に資する取組に対する補助や、中山間地域における地域資源を活用した商品開発や都市住民との交流活動の実施など、地域のアイディアを生かした取組に対する補助を行っているほか、今年度からは、県外からの移住者が市町村の空き家バンクを利用して空き家を改修する場合に必要となる費用に対しても補助を行っており、関係部局と連携しながら移住施策の拡充を図っている。こうした取組と併せて、地方への人の流れをつくり、東京一極集中を是正するために、首都圏から地方への移住に係る税制上の優遇措置等について、国に対して要望しているところ。
 今後とも、市町村や関係機関等と連携を図りながら、移住・定住しやすい環境づくりに取り組んでいく。

 藤田部長は国(総務省)からいらしています。ぜひ、岩手で先駆的な取り組みを実践していただきたい。

(2)市街化調整区域の空き家対策について

 近年、私が住む矢巾町内の市街化調整区域においても、人口減少・高齢社会の進行により空き家が数多く生じております。集落におけるコミュニティの維持が困難となるなど地域活力の低下といった課題が発生してきております。市街化調整区域の古民家などを観光振興や移住定住促進に活用できるよう、国では開発許可制度の運用指針の見直しを行ったと承知しておりますが、観光振興や移住定住促進のため、県も開発許可制度の運用を見直すべきと考えますが、ご所見を伺います。

(副知事)
 国のほうで改正いたしました開発許可制度運用指針でございますが、制度の具体的な運用に当たりまして市町村の都市計画マスタープランや地域振興、観光振興に関する計画との整合、道路・上下水道等公共施設への影響等に配慮することとされていますことから、県におきましては関係する自治体、盛岡市、滝沢市及び矢巾町とこれまで3回にわたりましてワーキンググループを開催し、現在、検討を重ねているところでございます。
 現在、矢巾町におきましては「矢巾町空家等対策計画」の策定に向けた取組も進めておられると承知しておりますので、県といたしましては、そのような取組にも十分配慮しつつ、関係する市町の意向等も十分に踏まえながら、弾力的な運用について検討を進めて行きたいと考えております。

 県内唯一の特定機能病院である医大の移転に伴い、地元市町村には事業用地等の相談を多く寄せられるなど、新たなまちづくりの動きがある。一方で、広域都市計画区域内のため開発許可に制限がある。具体的には、沿道サービス施設のコンビニエンスストアについて、盛岡市では認められるが県では認められない現状との声を伺う。広域都市計画区域内の立地基準の公平性をぜひ図っていただくようお願いする。

(3)シェアリングエコノミーについて

 次に、全国の自治体で「シェアリングシティ」の取組みが行われております。昨年11月には釜石市も認定され、個人所有の車をシェアし、来訪者等への移動手段として提供する取組みが動き出したところであります。「シェア乗りで安く移動し、浮いたお金でラーメンを食べ歩きたい」という声も聞きます。
また、空き部屋や家を一時的に借りて泊まる民泊は、今年6月に本格解禁されます。過去の答弁では、「シェアリングエコノミーは様々な可能性を有しており、国の動きも注視しながら、活用と可能性について研究を進める」とのことであり、規制とのバランスに課題はあるものの、ふるさと振興の新たな視点として、次期総合計画に盛り込む必要があると考えますが、ご所見を伺います。

(政策地域部長)
 シェアリングエコノミーについてでありますが、国の「未来投資戦略2017」では、シェアリングエコノミーは、「十分に使われていないモノ、空間等の遊休資産を、ICTの活用によって共有する幅広いビジネスであり、新たなビジネス領域の創出による経済の活性化や生活の利便性の向上、新しい生活産業への導入による地域経済の活性化への寄与が期待されている」とされており、また、「民間部門の創意工夫を最大限尊重することによってシェアリングエコノミーの普及促進を図るとともに、安全・安心等の確保に向けて必要な検討を併せて行う必要がある」とされている。
 本県においては、シェアリングエコノミーの活用によって地域課題の解決に取り組む自治体の一つとして、釜石市が、シェアリングエコノミー協会から「シェアリングシティ」の認定を受けたところであり、企業と連携した民泊事業の推進や、自転車シェアシステムの釜石駅への導入、個人所有車のシェアなど、ラグビーワールドカップ2019などを見据えたサービスが導入されているところ。
 このように、シェアリングエコノミーは黎明期にあり、法規制、利用者の安全性、信頼性の確保などの課題はある一方、様々な可能性を有しており、県としては、引き続き、国の動向を注視しながら、次期総合計画への反映も視野に、その活用可能性について検討を進めていく。

(4)高度な福祉人材育成について

 最後に、「岩手で暮らす」対策として、高度な福祉人材育成が重要であります。子ども・子育て支援の環境整備に向け、県立大学の臨床心理士の養成を強化するなど、児童心理専門職等の相談支援専門員の育成と確保対策が喫緊の課題であります。また、不登校児童の増加や発達障がい児童生徒への対応の面からも、社会福祉士、精神保健福祉士など、高度な社会福祉人材の育成について、県立大学での養成を含め早急に対処すべきと考えますが、ご所見を伺います。

(副知事)
 高度な福祉人材の育成についてでありますが、県では、平成21年度から県立大学、岩手県社会福祉協議会、岩手県社会福祉事業団、岩手県社会福祉士会などの県内の主要な福祉関係機関・団体と「いわて福祉コンソーシアム・トークセッション」を開催し、本県の福祉介護人材の確保・育成についても意見交換を実施してきたところです。
 この意見交換の成果を踏まえ、平成27年3月に「福祉・介護人材の確保及び育成に関する基本的な指針」を定め、事業者や関係機関・団体、市町村等との連携や役割分担のもと、福祉・介護人材の確保・育成を総合的に推進しています。
 具体的には、社会福祉士養成施設生徒への修学資金の貸付け、岩手県福祉人材センターによる就労マッチング支援、社会福祉士や児童心理司などの職務能力向上を目的とした専門研修の実施などに取り組んできたところです。
 また、県内の大学や専門学校においては、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などの専門人材の養成に継続して取り組み、県、市町村、医療機関、社会福祉協議会などに卒業生を送り出しており、特に、県立大学では、平成28年度に、社会福祉士33名、精神保健福祉士15名を養成したところです。
 現在、いわて福祉コンソーシアム・トークセッションの議論の中で、不登校への対応など教育相談体制の充実に向けて、意見が交わされているところであり、県では、県社会福祉士会等と連携しながら、スクールソーシャルワーカーの確保に努めているところです。また、発達障がい児・者の相談や支援のニーズが増大していることから、身近な地域で支援を担う専門資格を有する相談支援専門員の育成にも重点的に取り組んでいるところです。
 県においては、引き続き、福祉人材の処遇改善や職場環境の整備を支援し、人材の定着を図るとともに、大学や福祉関係機関・団体、事業者が一体となって、本県における専門性の高い福祉人材の確保や育成を進めていきます。 

 これから生まれてくる子供たちのためにも、そして人生百年時代を迎える今、人生設計の見直しに合わせた環境整備を行うのが私たちの仕事です。どうぞ着実かつ創造的な県政運営をよろしくお願いします。

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