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県議会報告

平成28年2月予算特別委員会総括質疑質問要旨(平成28年3月8日(火))

2016.03.09

1 地方創生推進のあるべき県の組織と財政について

【臼澤勉委員】
 平成28年度の予算審査に当たり、初めに県の組織体制についてお尋ねいたします。
 県では、深刻な財源不足に対応するため、平成15年10月に、岩手県行財政構造改革プログラムを策定し、さまざまな財源対策を講じる中、職員数の削減も進め、平成15年当初では5、013人であった知事部局の職員が、平成23年4月には3、949人と、実に2割以上もの削減が行われてきました。
 震災発生からこの5年を振り返り、県では、震災に対応する組織、職員体制について、どのように評価、総括しているのかお伺いします。
 また、今後は、第3期復興実施計画に取り組んで震災復興を完成させるとともに、ふるさと振興にも取り組むなど、各種課題への対応も迫られますが、今後、どのような体制で臨もうとしているのかお伺いします。

【達増知事】
 東日本大震災津波による甚大な被害からの復旧、復興を迅速かつ強力に進めるため、任期付職員や再任用職員を含めた職員の採用をふやすとともに、全国の都道府県等からの応援職員の受け入れなど、多様な方策によって人員確保に努め、発災以前の体制から360人程度増員して対応してきたところであります。
 震災発災直後の平成23年4月には、復旧、復興業務の司令塔となる復興局を設置したほか、災害廃棄物対策の推進体制を強化するため廃棄物特別対策室や、被災者相談支援体制を強化するため沿岸、県北広域振興局経営企画部等に復興推進課を設置するなど、その時々に直面する課題や業務の進捗状況に応じて、組織体制を整備してきたところであります。
また、ふるさと振興については、今年度、人口減少に係る具体的な対応策を全庁的に実施していくため、政策地域部副部長が首席ふるさと振興監となり、そして政策監及び関係する室、課の課長等がふるさと振興監を兼務し、部局横断的に対応する体制を整備したところであります。
 今後とも、多様な方策によって人員確保に取り組むとともに、より一層、事業の効率化や重点化に配慮しながら、さまざまな県政課題に柔軟かつ適切に対応できる体制を構築してまいります。

【臼澤勉委員】
 特に私が課題意識を持っているのが、広域振興局体制についてであります。
 平成18年に広域振興圏体制の整備にあわせて、県南広域振興局が発足して丸10年になります。この間、平成の大合併と地方分権の推進などにより、基礎的自治体である市町村の権限は大きく強化されてきており、広域振興局体制の発足時と取り巻く環境が変わってきていることから、発足当初の広域行政の圏域と組織体制の目的がどのように実現されてきたか、市町村や民間団体の意見やアンケート調査も実施しながら、総合的に広域振興局の成果と課題を検証する時期に来ているのではないかと考えております。
各市町村では、人口ビジョンやふるさと総合戦略が策定され、新たな広域の課題も明らかになってくることから、改めて広域振興局体制の検証を行い、今後の方向性を検討するべきと思いますが、御所見をお伺いします。

【達増知事】
 これまで、各振興局が実施する首長懇談会や圏域懇談会の場を捉えて、市町村長や住民からの意見も聞きながら、振興局事業や運営についての意見を伺ってきたところであります。加えて、振興局職員からのヒアリングなども行って検証してまいりました。その際には、圏域を越えた広域振興局間の連携や本局と各行政センターとの情報共有、市町村の地域課題の一層の把握の必要性等の課題が挙げられました。これを踏まえて、地域のニーズに即した広域振興事業による事業展開を行ってまいりましたほか、局長のトップマネジメントの強化と市町村長との一層の連携を図るため副局長を配置するなど、組織体制についても必要な見直しを行ってきたところであります。
また、市町村のまち・ひと・しごと創生総合戦略策定に際しては、今年度、広域振興局にふるさと振興監を置いて、市町村の計画策定過程に参画するなど支援を行っております。
 今後、各市町村において策定した計画に基づいて具体的施策を行う段階においても、県としても十分な支援を行うことができるよう、ふさわしい組織体制の構築を視野に入れてまいります。
 今後とも、それぞれの圏域の目指す将来像の実現に向けて、市町村優先の行政システムのもと、市町村との連携の強化に配慮しながら、各地域の特性に応じた体制となるよう努めてまいります。
臼澤勉委員 しっかりとよろしくお願いしたいと思います。

2 教育の質の向上と子ども子育て支援対策について

【臼澤勉委員】
 次に、教育の質の向上についてお伺いします。
 先月、ある教育関係の研究会で、元文部科学事務次官のお話をお伺いしてまいりました。
 子供たちの未来を考えたときに、現在ある職業の多くは今後なくなる。そして、そのような時代環境において、少子化の克服、較差の改善、経済成長、雇用の確保を解決し、一人一人の豊かな人生と、成長し続け安心できる社会を実現するためには、教育の充実が最も基本的な政策だと言われておりました。
そこでお伺いします。総合教育会議を主宰される知事は、本県の学力の現状をどう評価しているのか。その上で、教育の質を高め、一人一人が持つ可能性を高める具体的な方策についてどうお考えなのか、学力向上対策への具体的な視点についてもお伺いします。

【達増知事】
 岩手の子供たちの学力の現状を全国学力・学習状況調査の結果に基づいた全国的な比較で申し上げますと、小学校の国語は全国上位、算数は中位、中学校の国語は全国中位、数学は下位に位置しています。この結果を踏まえますと、基礎的、基本的な知識や技能、それを活用する力や意欲的に学ぶ態度といった学力の3要素の観点に照らした場合、主体的に学習に取り組む習慣の形成や、知識、技能を活用レベルまでさらに引き上げることが必要と捉えております。
 教育委員会においては、現在、教員の指導力の向上や学校組織全体としての取り組みの強化、家庭や地域を巻き込んだ家庭学習の充実に取り組んでいるほか、新年度からは、35人学級を中学校2年生にも拡大することとしています。
 今後におきましても、総合教育会議での協議なども重ねながら、児童生徒一人一人の持つ可能性の実現にきめ細かく対応し、小、中、高の発達段階に応じた能力の伸長や、教育の目的であります人格の完成に向けて取り組んでまいります。

【臼澤勉委員】
 知事も勉強ができたと思いますので、県内の教育振興にしっかり取り組んでいただければと思います。

3 農林水産物・県産品・誘客を含めた岩手県の海外戦略について

【臼澤勉委員】
 次に、海外戦略の策定についてお伺いいたします。
 花巻空港ターミナルの工事は今年度完了し、また、釜石港では、海外との定期輸送航路の開設が予定され、三陸沿岸道路と東北横断自動車道釜石秋田線、宮古盛岡横断道路など、県内の縦軸、横軸が復興事業により、これまで以上のスピードで進められております。北海道新幹線も開通間近であり、その結果、岩手と海外が一層のつながりを見せ、広域的な観光基盤と物流基盤の整備が着実に整ってきております。今まさに、これまで整備を進めてきた社会資本を最大限活用し、外貨を稼ぐ時期に来ていると思います。そのためにも、農林水産物を含む県産品の販路拡大や観光客の誘客を進める上で、岩手の優位性を見出せる国や地域を絞って施策を展開する本県独自の海外戦略を官民協働で策定する必要があると思いますが、御所見をお伺いします。

【齋藤企画理事】
 人口減少時代にありましては、国内市場が成熟化してございまして、今後は、成長が見込まれる海外市場に向けて、県産品の販路を拡大するとともに、海外からの誘客を拡大し、より多くの外貨を獲得していくことが重要であると認識しております。
 海外への農林水産物の販路拡大につきましては、経済成長が著しく、日本食レストランも増加している東アジアや東南アジア、北米地域等をターゲットとしてきたところであり、物産関係につきましては、南部鉄器を通じて本県の認知度が高まっている東アジア等を中心に販路拡大に取り組んできたところであります。
また、海外からの誘客については、定期便化を目指す台湾を最重点市場とし、フルシーズンでの誘客拡大とともに、ほかの東アジアや豪州等は、市場の特性に応じて、ゴルフ、スキーなど特定目的のツアー客や個人客の誘客拡大に取り組んできたところであります。
これまでの海外事業で得た経験やノウハウなどを通じて、国や地域の状況により個別に対応しながら、本県の観光資源や県産品を組み合わせるなど、岩手の魅力を総合的に売り込んでいく必要は十分に感じております。
 現在、海外事業につきましては、関係団体、企業で構成するいわて農林水産物輸出促進協議会、いわて海外展開支援コンソーシアムやみちのく岩手観光立県推進会議などを通じて、民間の意見を取り入れながら取り組んできたところであります。
 県では、昨年4月にいわてまるごと売込み推進本部を設置いたしまして、本県の対外的売り込み活動を部局横断的に推進してきたところであります。これまでの事業の検証も実施しながら、この売込み本部の活動、そして、引き続き官民一体となりまして、国や地域に合わせたそれぞれの海外事業展開の方向につきまして総合的に検討してまいります。

【臼澤勉委員】
 それぞれの地域によってそこの優位性は異なると思いますので、そこら辺は民間と一緒になりながら、公表する必要はないと思いますが、ぜひ戦略をしっかりと持った上で、いろいろな事業展開をお願いしたいと思います。
 次に、農林水産物の海外への販路拡大について伺います。経済発展が目覚ましいアジア地域や欧米を主なターゲットとして、海外実需者との商談会や海外量販店等々での販売促進活動を進めていると承知しておりますが、海外展開において、輸出障壁の課題は何で、障壁があるのなら、どう崩そうとしているのかお伺いします。
また、農林水産物の海外展開は、他産地との競争が過熱している状況にあると伺っております。インバウンド観光においては、競争と協調を図りながら、東北観光推進機構あるいは北東北3県が連携して協議会を組織し、事業展開をしております。
 農林水産物の市場調査、開拓においても、ある面では東北や北海道を含めた他産地との連携、あるいはジェトロ事務所に単独事務所を設置し、ジェトロと連携を図りながら輸出拡大を図っていくなど、方法はさまざま考えられますが、TPP大筋合意を踏まえた今後の海外戦略についてどう取り組んでいくのか、戦略と方策についてお伺いします。

【齋藤企画理事】
 輸出障壁と他県との連携というお尋ねでございます。
 輸出障壁は、例えば、国によりましては、香港とかシンガポール等関税がないところもございますが、一般的に海外展開における障壁としましては、輸出先国が求める検疫条件や衛生基準等の輸入規制のほか、高率な関税や複雑かつ煩雑な輸出通関手続などが挙げられます。
こうした障壁は、日本国及び相手国の事情によることから、基本的には国家間の交渉で解決していくべきものでありまして、また、輸入規制につきましては、その早期解除を相手国に対し強力に働きかけるよう国に要望してきております。その他の障壁の撤廃や緩和に向けても、国の動きを注視しながら、必要に応じて国に要望している状況でございます。
また、他県との連携につきましては、北海道東北地方知事会において輸入規制の撤廃を国に要望してきたほか、昨年7月には、宮城県や石巻市、東北経済連合会と連携し、ミラノ博へチーム東北として出展し、さらには、香港やアメリカでの東北フェアなど、他県と連携しながら参加してきたところであります。来年度以降におきましても、共同フェアの開催など広域的な連携に取り組んでまいります。
 今後、輸出障壁の解決につきましては国の力によるところが大きいということがございますが、県といたしましても、本県の安全・安心で高品質な農林水産物などの魅力を継続的に情報発信いたしまして、さらなる輸出拡大に努めてまいりたいと考えております。

4 本格復興の推進

【臼澤勉委員】
 ぜひ、いろいろと積極的な展開をよろしくお願いしたいと思います。
次に、本格復興の推進についてお伺いいたします。
平成28年度は本格復興期間の最終年度であり、平成30年度までの復興計画期間で見ますと、さらなる展開への連結期間に向けての前年度に当たります。いまだ応急仮設住宅に多くの方が入居されている状況にありますが、復興計画最終年度の平成30年度末までに、仮設住宅に入居の方々が恒久住宅へ移ることができるのか、知事の決意をお伺いします。

【達増知事】
 災害公営住宅の整備と土地区画整理事業などの面的整備につきましては、復興計画期間である平成30年度末までに全て完成する見込みとなっているところであります。
 大震災から5年が経過しようとする中にあって、被災者の皆さんの生活再建にとっては、住まいの再建が最も重要なことであると認識しておりまして、今後とも、市町村と連携しながら、被災者の皆さんが一日も早く恒久住宅に移ることができるよう、全力を挙げて取り組んでまいります。

【臼澤勉委員】
 一日も早い仮設住宅の解消をお願いしたいと思います。
 完遂年のことし、私は、復興の推進、特に中間検証が必要ではないかと思っております。それは、制度上の壁とか、あるいは法の不備があったのかどうなのか、あるいは法の運用で解決できたこと、いろいろあるかと思うんですね。そういったそれぞれの課題を事業計画段階あるいは実施段階、住民の意向段階、それぞれのステージごとに課題を検証して全国に伝えていく責務が岩手にはあるのかなと私は思っております。それは、やはり国内外から多くの支援をいただいておりますこの岩手だからこそ、こういう課題なり検証を中間的に発信していく必要があろうと思います。そこら辺は要望としてお願いして、次に移ります。
なりわいの再生について。陸前高田市の調査によりますと、陸前高田市への帰還、帰郷を実現できていない方が5割弱、しかも10代から20代、50代に多く見られております。
こうした方たちの希望をかなえるため、雇用の場や生活環境の整備が重要であります。特に、進学を機に転出する人が多い中で、卒業した若年層が再び地元に戻ってこられる仕組みや雇用の場づくりが求められております。
 震災から5年を迎え、復興のステージはまさになりわいの再生に移ってきております。中心市街地を初めとする新たなまちづくりには、新たな事業者も必要であり、市町村が策定した地方版総合戦略の実現に向け、県、広域振興局の果たす役割は非常に大きいと考えます。
そこでお伺いします。新たな起業家の育成と雇用を生み出す新規事業者への実効ある支援制度が今求められていると考えますが、なりわいの再生に向けた県の意気込みと方策についてお伺いします。

【中村復興局長】
 被災地におきましては、復興まちづくりに伴い、商店街や商業施設の再建、整備が始まっており、仮設から本設への円滑な移行や新事業の創出、定着によるにぎわいの創出が必要でございます。
 県におきましては、平成25年度から、沿岸被災地における起業支援をしてまいりましたけれども、平成28年度からは、被災地での起業のほか、第二創業でありますとか新事業進出などを強力に推進していくことにしておりまして、平成28年度予算案にさんりくチャレンジ推進事業を計上してございます。
 具体的には、若者や女性を初めといたしました起業者や既存事業者の交流会等で、起業等の意識啓発や協力関係の構築を促進いたしまして、商工団体に専門の指導員を配置し、地域の支援団体と連携いたしました相談対応や助言、指導によりまして、事業計画策定などの支援を行うといったようなこと、さらに、初期費用の補助やクラウドファンディングによる資金調達を支援し、起業等を後押しし、起業等の後におきましても、協力企業と連携し経営指導や首都圏等への販路開拓を行うなど、新たなチャレンジをしようとする方々に対しまして寄り添った支援を行うことを予定してございます。

【臼澤勉委員】
 しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
最後に、知事にお伺いします。
 全国から多くの応援、市町村の派遣職員の方々が来ております。この3月にも、大槌町に、例えば神戸市の方とか、陸前高田市には名古屋市とか福岡市とか、多くの自治体の方々が応援に来ております。ぜひ知事から、戻られる派遣職員の方々にメッセージをお願いして、終わります。

【達増知事】
 今回の東日本大震災津波の大きな特徴は、全国の自治体から応援職員を派遣していただいて被災地における復興が進んでいるということであります。阪神・淡路大震災がボランティア元年などと呼ばれますけれども、この東日本大震災津波というものは、自治体間の水平連携が活気を見た、そういう大災害として位置づけられるようになると思います。
 全国の自治体からの応援職員なしには岩手の復興は全く進まなかったわけでありまして、この5年間、本当にお世話になっています。
しかしながら、まだ復興は道半ばで、本格復興も新年度完遂を目指していくわけでありますし、その後もしばらく復興は続きますので、ぜひ引き続きの応援をお願いしながら、感謝と、そして、さらなる支援へのお願いを全国の自治体の皆さんにさせていただきたいと思います。