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県議会報告
閉会中の常任委員会(農林水産委員会)(令和2年1月15日(金))
2020.03.21
1 日米貿易協定の農林水産物へ影響について
(1)影響額の試算
○臼澤勉委員 ちょっと確認を含めて、日米貿易協定の農林水産物へ影響について、基本的なことで確認させていただきますけれども、今の御説明で本県の生産額への影響が日米は17億円から34億円、あとTPP11を合わせると33億から57億という影響額。今の説明の中では、本県への多大なる大きな影響があるというお話がありました。
それで、ちょっとお伺いしますけれども、この影響額というのは、今県民の部分での影響ということなのですが、逆の意味でのプラスの、この協定による、例えば輸出が促進されるとか、そういったプラスの意味での影響というか、そういったものは含まれているのかどうか。それが含まれてプラ・マイでこのくらいだという捉え方なのか、ちょっと基本的なところをお伺いします。
○米谷企画課長 影響額についてですけれども、これにつきましては実際にこちらのほうに海外から入ってくるもので、それによって国内生産物の価格が低下するということだけを考慮したものの影響額になっておりまして、こちらから例えば輸出がふえるとか、そういったものを考慮したものを含めた試算とはなっておりません。
(2)プラス面の影響額
○臼澤勉委員 いろいろと議会での議論だとか、マスコミ報道での記事等を読んでいると、どちらかというと受け身というか、そっちのほうの影響額の数字が出て、生産者も非常に、特に畜産を含めた、すごく不安感を持っていると思いますし、そういう意味での危機感を私は持っております。
ただ一方で、貿易協定という意味での世界の中でのやりとりの中では、私はプラスの意味も少し丁寧にお話ししないと、何となく数字がひとり歩きして、貿易という全体の姿がミスリーディングしてしまう部分もあるのではないかという意味で今お伺いしています。その点でちょっとお伺いしますが、県として貿易協定によるプラスの生産額への影響はどのように試算されているのかお伺いします。
○米谷企画課長 貿易の輸出に係る部分の影響というか、プラスに係る影響試算ということについては、私どもはまだしておりません。
○臼澤勉委員 試算する予定はありますでしょうか。
○米谷企画課長 今回の影響額につきましては、国の試算方法に基づきましてやっております。それにつきましては、影響試算につきましては、いろいろと例えば本体価格であったりとか、相手先との、輸入相手国との為替とか、いろいろと前提条件等を考慮しなければならないということもありまして、今までも国の試算方法に基づいて影響試算をやってきておりましたので、今のところはまだ輸出に係る部分については影響試算等については、国のほうもまだ出ておりませんので、ちょっと今のところはまだプラスに係る試算は考えておりません。
(3)農林水産物の輸出戦略
○臼澤勉委員 ありがとうございます。御案内のとおり、本県の農林水産物の輸出額でありますけれども、たしか28億とかそのぐらいのレベルだったと思います。隣の青森県と比較して、たしか6倍ぐらいの差があるということで何となく把握しておりまして、今国を挙げて農林水産物の輸出を促進して強化していきましょうという大きな取組の流れの中で、本県においてもいわちくの例えば豚肉の輸出の環境整備を進めているという、こういう中であります。
輸出先の中で、私の理解では、たしか七、八割ぐらいがアジア圏だったですか、あとは中国、香港で2割とか、北米が2割ぐらいだった、そういったシェアの中で、今回のこういう貿易協定によっても今後どういうふうに品質のいい岩手の農林畜産物、あるいはリンゴだとか、アジア、カナダへの輸出も、岩手中央農協を含めて今回カナダのほうにも輸出が始まって、非常に向こうの市場でも、私が聞いている範囲では、品質もよくて、向こうのリンゴとはまた違う価値観がやっぱり魅力的で、すごく可能性もあるのかなという部分で今聞いているわけでありまして、ちょっとそこら辺の今後の取組というか、ダメージを受ける部分はそのとおりだと思います。ただ一方で、そういう受ける部分をカバーする、あるいは少しそこをどういうふうに今後やっていくのか、いわて県民計画でも記載していると思うのですけれども、ちょっとそこら辺の方向性についてお伺いします。
○髙橋流通課総括課長 ただいまの輸出に関するお尋ねでございます。日米貿易協定につきまして、最初に御答弁をさせていただきたいというふうに思っておりますが、今米国には主に牛肉と米が輸出をされております。このうち、今回の貿易協定により影響を受けると確認されておりますのは、牛肉というふうに認識をしておるところでございます。日本産の牛肉につきましては、米国への輸出は拡大の傾向ということでございます。本県の県産の牛肉も拡大基調にあるといったところでございます。
先ほど委員からプラス・マイナスの影響があるというお話がございました。日本産の牛肉につきましては、これまで協定締結前ということになりますけれども、米国では低関税で輸入できる枠を設けておりまして、それが200トンまでとされておりました。これが今回の協定の発効後ということになりますが、これは既存のほかの複数の国も合わせてということになりますが、その枠が6万5,000トンまで拡大をされております。数量が拡大されています。他国も含めた枠ということでございますが、簡単に申し上げますと輸出の機会が拡大をしてきていると、好機というふうに捉えているところでございます。
先ほど国の動きのお話もございました。先ほど委員もお話もございましたが、農林水産物の輸出促進法が閣議決定をされ、令和2年4月の施行に向けて今進められているところでございますが、国におきましてもそうした状況を踏まえて、輸出に関する各制度、事業を拡充されているところでございますので、こうした事業制度をしっかり活用しながら戦略的な取組を進めていかなければいけないということで考えております。
先ほどお話にありました北米でございますと、先ほど申し上げた牛肉、米に加えてリンゴですね、リンゴにつきましては、カナダでは全国に先駆けて県産のリンゴ輸出をさせていただいているところでございます。その拡大も含め、今後プロモーション活動、あるいはバイヤーの産地招聘、引き続きしっかり強力に展開をしながら、県産農林水産物の販路の開拓、拡大に向けた取組を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
○臼澤勉委員 ありがとうございました。本当に厳しい環境にあるというのは、私も同じような認識であります。ただ一方で、本県の農業産出額2,700億円余りです。2,700億、うち6割が畜産ですよね。そういう数字から見ると、先ほど本県農業への多大なる大きな影響があるという言葉を使っておりました。17億とか34億というのは、本県の大きな産出額の中の何%ですか。1%とか2%のレベルです。ただ、そこが私は、大きいとか小さいということを言うことではないのですけれども、本質的な課題は何なのかということにいけば、額というよりも今の本県が抱えている農業の経営、生産とか流通のあり方を、どのようにして生産性を高めていくのかといったところが本質で、余り額の大小というか、そこはちょっと違うのかなというふうに私は実は思っております。
額の面で言えば、1%なり2%だという数字のファクトであります。それを大きいと余り言い過ぎてもちょっと違う。大きな山の中の1%、2%の、もしこの貿易協定による影響がそのくらいというのを、大きいという意味の本当の意味のところをもう少し丁寧に言わないと、聞くほうもすごくあおられてくるような、不安感ばかりが助長されていくように一方で思うのを私は危惧する一人であります。
ですから、何を言いたいかというと、この貿易協定、そして影響額が出るのは事実として受けとめながらも、それに向かってどのように本県が国内の食料供給基地としてのあり方から、アジアとか世界に対しての健康とか、そういった品質のいいものを供給していくのだという、もう少しグローバルな大きな視点で我々が地球規模で何を貢献できるのか、あるいはそれは食料供給としての役割もあるし、環境とかを含めた、農業がさまざま持っている、そういったところをしっかりと役割として果たしていくというのが何となく僕は農林水産部の果たす役割というふうにも思っております。
ちょっと最後に一言で終わりますけれども、昔「チーズはどこへ消えた?」という20年ぐらい前に少しベストセラーになった本を多分お読みになった執行部の方々もいると思いますけれども、いずれ今のままで本県農業のあり方、岩手の農業をいくと、いつかはこのチーズがあるあると思っていくと、何となく消えていく部分がある。そういう意味では、リノベーションというか、新たなチャレンジングをしていく必要性というのはあるのだと思うのですけれども、最後に部長、何か御所感がありましたら、聞いて終わりたいと思います。
○上田農林水産部長 所感ということでのお尋ねでございます。まず最初に、影響が多大だというふうな表現は恐らく担当課長は使っていないかと思います。もしかすると、この影響額の試算を、あくまで試算でございますが、この試算でもこれからのやり方によっては、それは膨らむ可能性がないわけではないという趣旨で申し上げたものだというふうに思います。
委員御指摘のとおり、こういった状況はございます。そして、試算についても詳細な試算はいろいろやり方あるのでしょうが、国の使った試算の方程式といいますか、そういったやり方で機械的に出すとこうなるということでございます。ですので、これをできるだけ少なく、あるいは輸出なども含めましてプラスのほうに持っていく。これからどうやっていくかというのは、私ども試されていると、そういうものだというふうに承知をしております。
ここに関して一つ申し上げますと、国に関してはTPP関係の大綱の見直しをやり、それから補正予算、そこについての方向性等についても明らかにしております。その中では、委員から御指摘ございました例えば輸出の拡大というところでは、グローバル産地計画、これをつくっていって、各地域、地域で輸出に取り組んでほしいということで、この関連事業費、実は令和元年度予算の中で出てきたものなのですが、これを予算額で約7倍に今回ふやしております。ぜひこういったところに我々も県として取り組んでいこうということで、当初予算、今調整をしておりますが、それに向けて取組をどうしようかということで検討を進めているところでございます。
さらに、中を見てまいりますと、特に畜産物に関しての影響が大きく出ておりますけれども、その中で国のほうの補正予算の方針とかを見ますと、例えば牛の増頭対策に対しての補助、これ恐らく今までそういった補助なかったと思います。それから、もう一つは、規模拡大による生産性の向上、これはもちろんでございますが、それにあわせて中小規模のそういった小さな農家に対しても生産性の向上に関する基盤整備を進めていこうと、あるいはスマート農業の推進についても小さな農家さんについても対象にしていこうと、こういう方針が出ているところでございます。
今回まず分析ということで試算結果のみ公表いたしましたが、これに基づいて県でどうやっていこうかと今鋭意検討をして、予算にどう盛り込もうかということで担当部局と今調整をしているところでございます。そういったことで、そういった機会が、今回2月定例会が開かれますけれども、その中ではぜひとも皆さんに御理解をいただき、そして生産者の方々、希望を持って将来に向けて農林水産業を頑張っていこうというふうな気持ちになっていただけるような、そういった内容で施策についてお示しをしたいと考えております。ぜひともこれからも頑張ってまいりたいと思います。