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県議会報告

平成29年度2月定例会 予算特別委員会(農林水産部・農業)(平成30年3月14日(火))

2018.03.19

1 岩手型農業経営体について

(1)農地中間管理事業の現状と課題について

 農地の扱いは大変難しい。担い手や認定農業者が必要とする規模の農地が集まらないとの声を聞く。農地中間管理機構が目指す担い手への農地の集積・集約化の現状と課題は如何に。

 農地中間管理事業の現状と課題についてでありますが、本事業が開始された平成26年度から28年度までの3年間の実績は、農地中間管理機構の転貸面積が10,497ヘクタールで全国2位、新規集積面積が4,886ヘクタールで全国1位となっている。
 事業の主たる対象が平場から中山間地域などの条件不利地に移行してきていることから、条件不利地において受け手となる担い手を確保することや、借り受け希望面積に対応した新たな農地の出し手を確保することが課題として挙げられる。

 課題に対する対策をどのように考えているか伺う。

 農地の出し手の確保については、地域農業マスタープランの見直しを進める中で、将来の農地利用のあり方をしっかり話し合っていただくとともに、市町村農業委員会の農地利用最適化推進委員による出し手の掘り起こし活動を強化していく。
 農地の受け手の育成について、県では、経営の規模拡大や多角化を目指す農業者を対象に、①岩手大学等と連携して「いわてアグリフロンティアスクール」を開設し、経営ノウハウの習得や企業家マインドの醸成を図るとともに、②農業経営アドバイザーなどと連携し、法人化をはじめ、経営管理能力の向上を支援している。

(2)リーディング経営体の育成に必要な農地の規模について

 県では、販売額3千万円以上又は農業所得1千万円以上を確保する経営体をリーディング経営体の育成を目指しているが、米、園芸別でどの程度の農地が必要(集積)と想定しているのか伺う。スマート農業等の衛星を使った管理農業システムにおいて、最低利用規模は200町歩前後との話も聞く。多額の設備投資も必要となり、初期投資を抑えるための助成も必要と考える。

 リーディング経営体の育成に必要な農地の規模についてでありますが、本県では、リーディング経営体が目標とすべき営農類型を策定しており、①水稲主体の経営では、水稲25ha、小麦10haの合計35ha、②水稲と園芸の複合経営では、水稲26ha、りんどう2haの合計28ha、③また、野菜専作の経営では、ハウス栽培トマト1.2haと試算している。

(3)中山間地域等における対応について

中山間地域等の条件不利地域の農地を借り受ける担い手がいないとの声があるが、県の対応は。

 中山間地域等における対応についてでありますが、中山間地域においては、平地と比較して、条件不利地が多いことから、担い手が借り受けしやすくなるよう、区画拡大や排水対策など簡易な条件整備を行うとともに、機構の農地コーディネーター等と連携し、地域の担い手の状況に合わせて農地集積を進めてきた。
 今後は、こうした取組に加え、農業委員会の農地利用最適化推進委員等による出し手の掘り起こしや担い手の意向把握等の情報収集活動をきめ細かに行い、この情報を関係機関・団体が共有化し、一体となって担い手への農地集積に取り組んでいく。

(4)流通・販路開拓・確保の支援策について

 日本の農業は農協が24%の取り扱い手数料をとり全農が全県を握り販売する構図が基本。高収益モデル経営を実践している農業経営体は消費圏と直結し自社販売が大前提である。新年度、県としての流通・販路開拓・確保の支援策は如何に。

 県では、これまで、多様な販路の確保・開拓に向けて、消費地への販路の確保に意欲的な農業経営体である生産者を対象に、商談会や産地見学会などを行ってきた。
 また、平成28年度からは、県産農林水産物を積極的に使用する県外飲食店を「黄金の國、いわて。」応援の店として登録を開始し、現在では首都圏を中心に179店舗まで拡大している。今年度は、民間流通事業者と連携し、これらの飲食店への効率的な流通の仕組みづくりにも取り組んでいる。

(5)農業収入の確保のための施策について

 経営体が得意とする分野で収入を確保させることが大事であるが、県はどう施策を展開する考えか伺う。

 県では、これまで、地域農業の核となる担い手の育成に加え、生産基盤の強化などに取り組んできており、その結果、平成27年の農林業センサスでは、販売額3千万円以上の経営体が827と、10年前に比べて47経営体増加している。
 今後、更なる農家所得の確保に向けては、金色の風、銀河のしずく、冬恋をはじめとする県オリジナル農産物のブランド確立に加えて、需要拡大が見込まれる加工・業務用野菜や肉用牛の生産体制の強化などが必要である。
 このため、平成30年度当初予算案に、新たに、水田等において高収益な野菜の作付けを拡大する「いわて型野菜トップモデル産地創造事業」や、ゲノム解析により産肉能力の高い牛を早期に選抜する「いわて牛産地育成革新技術導入事業」などの園芸・畜産振興の強化策を盛り込んでいる。
 更に、本年4月1日には、農業団体と連携して、新たに農業経営相談センターを開設し、経営の規模拡大や法人化に向けて、きめ細かな支援を行うこととしており、こうしたハード・ソフト両面の取組により、担い手の収入の確保に向け取り組んでいく。

2 雲南省農林業研究連携調査について

(1)具体的な取組について

 どのような体制・事業スキームで、具体的にどのような取組を行うのか。

 雲南省農林業研究連携調査の具体的な取組についてでありますが、雲南省と岩手県との交流は、平成25年の友好交流協力協定の締結をきっかけとして、経済分野を柱に、農林業分野においても、幅広く交流が進められているところ。
 農業分野では、平成27年度から、両省県で相互に農業シンポジウムを開催し、連携可能な技術シーズの調査を実施したところであり、薬用作物であるサンシチニンジンや、リンドウの根を乾燥させた竜胆(りゅうたん)について、本県への導入可能性を検討しているところ。
 また、平成28年から、林業分野における交流を開始し、アミガサタケの栽培技術の本県への導入可能性について検討を始めている。
 今後も、農業研究センター及び林業技術センターと、雲南省研究機関との研究者間の交流・連携をさらに充実させるとともに、農業シンポジウム等を通じたシーズ調査を引き続き行っていくこととしている。

3 健康産業(機能性食品)の取組について

 食品の機能性表示の支援や、食品の臨床試験支援について、全国の自治体でどのような取組が行われているか、県として調査研究すべき。ご所見を伺う。

 健康産業の取組についてでありますが、食品の機能性表示の支援や、食品の臨床試験支援について、本県では、「いわて農林水産物機能性活用研究会」において、機能性表示に向けた取組の支援を行っているところであるが、(委員から紹介があったとおり、)例えば、北海道では、機能性の表示に関する独自の認定制度の創設や、食品の効能に関する臨床試験の取組のほか、香川県、宮崎県などでは、機能性表示食品の開発支援など、他の自治体においても取組が行われていると認識している。
 機能性表示食品制度は、食品に健康の維持・増進に役立つ機能性成分が含まれることを消費者にアピールできる制度であり、県内で生産される農林水産物の需要の拡大や、付加価値の向上を図るうえで、有効な手段になり得るものと考えている。
 一方で、機能性を表示するための国への届出にあたり、機能性を証明するための科学的根拠の収集が困難であることや、機能性に関与する成分の含有量が気象等の影響を受けるため、厳格な管理が困難であることなどの課題もあることから、先ほど申し上げた他道県の取組事例なども参考に、機能性の取組に関する調査研究を進めていく。