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県議会報告

平成28年6月定例会 一般質問(平成28年7月1日(金))

2016.07.02

1 国土利用と社会資本について

(1) 全国総合開発計画の総括とふるさと振興総合戦略について

 国において、大都市と地方の不均衡を是正するために、全国総合開発計画や21世紀の国土のグランドデザインを策定し、国土の均衡ある発展等を目指した開発が進められてきたところであるが、知事は、これまでの国土開発をどう総括されているのかお伺いする。併せて、人口減少に立ち向かうための「岩手県ふるさと振興総合戦略」を策定したが、どのような哲学と理念で、岩手の未来を見据えた国土開発やふるさと振興を進めるお考えか、基本政策は何かお伺いする。

【知事答弁】
 国においては、5次にわたり総合開発計画を策定し、国土の均衡ある発展に取り組んできたほか、平成20年以降も、「全国総合開発計画」の後継となる「国土形成計画」を策定し、国土利用の質的向上に取り組んできたところであるが、東京一極集中などの課題は依然として解消されていないと認識している。
 こうした状況も踏まえ、県では、県外への転出超過を解消し、岩手に新しい人の流れを生み出すことが、喫緊の課題であるとの認識のもと、「ふるさとを消滅させない」という思いで、岩手県ふるさと振興総合戦略を策定したところ。
 人口の社会減ゼロに向けて、道路、港湾、情報通信をはじめとした社会基盤や本県ならではの地域資源を生かし、総合戦略における3つの柱である「岩手で働く」「岩手で育てる」「岩手で暮らす」に基づく取組を県民総参加で進めることにより、岩手に「住みたい、働きたい、帰りたい」という願いに応え、あらゆる世代が生き生きと暮らす岩手の実現につなげていく。

(2) 土地利用の課題と今後の方向性について

ア 国土利用計画岩手県計画について

 従来の人口増加社会においては、都市計画法、農振法等の土地規制による抑制的なコントロールを通じて適正な土地利用が担保されてきた。一方、人口減少社会においては、都市郊外や近郊農村における市街地化が今後大きく進展するとは考え難く、農業従事者の高齢化や農業生産の効率化から保全すべき農用地の面積は減少することが見込まれる。
 人口減少に伴うコンパクト化が必要なことは理解できる。一方、人口減少で生み出された空間を、公園緑地の拡充や、公共施設のゆとりに充てるなど、過度に人口密度を高めるよりも、既存市街地や集落拠点を中心に、人口密度を下げ、「空間的なゆとり」の確保を優先する視点も必要と考える。留意すべきは、安全な居住・活動空間の確保と「所有から利用」へ土地利用施策を誘導させ、地域の活性化と生産性の向上の観点が重要と考える。
 そこで、伺う。人口減少局面に入って初めての国土利用計画岩手県計画がこの度策定されるが、どのような基本方針で、将来を見据えた県土利用を進めるお考えか、基本政策は何かお伺いする。

【環境生活部長答弁】
 本計画は、国の国土利用計画を基本としつつ、「いわて県民計画」や「岩手県ふるさと振興総合戦略」などの内容も踏まえ、改定に向けた作業を進めているところ。
計画の改定案では、基本方針として、
・県民の暮らしを支える県土利用
・自然環境や美しい景観を守り活かしていく県土利用
・安全・安心を実現する県土利用
の3つを掲げている。
このうち、人口減少局面に対応した具体的な取組として、
・ 都市機能や居住の集約化を図るため、市街地の低・未利用地や空き家等を、住居や公共施設、自然再生のためのオープンスペースなどに有効利用する取組や、
・ 荒廃農地の発生防止・解消を図るため、農業の担い手への農地集積や地域協働による農地の保全管理などの取組を行うこととしている。
このほか、自然環境の有する多様な機能の活用や災害対応拠点等の適正な配置などを行うこととしており、これら総合的かつ計画的な土地利用を通じて、持続可能な県土の管理と利用を進めていく。

イ 都市計画制度の柔軟な対応について

 併せて、人口増が想定される地域においては、地方版総合戦略に位置づけられた開発計画に基づき、市街化区域の拡大や市街化調整区域への移住・定住、雇用の場の確保に向けた環境整備が図られるよう、地域の実情にあった総合的な視点から都市計画制度の柔軟な対応も必要と考えるが、ご所見を伺う。

【県土整備部長答弁】
 市街化区域等の見直しは、人口等の動向による区域変更の必要性、開発計画の緊急性・確実性等の検証を行い、関係機関と協議のうえ、実施することとしており、盛岡広域都市計画区域において、これまで延べ16回の市街化区域の拡大を行っているところ。
県としては、地域からの具体的な提案があり次第、区域拡大要件に当てはまるものについては、地域の実情も十分に考慮しながら、引き続き速やかに都市計画変更を行っていきたいと考えているところ。

(3) 老朽化社会資本の維持管理の課題について

 高度成長期以降に急速に整備してきた道路や河川等の老朽化が進み、増加する維持管理費にいかに対応するかが大きな課題である。
 平成 28年に策定された「岩手県公共施設等総合管理計画」によると、産業振興にも大きくつながる公共インフラである橋梁は、例えば矢巾町と盛岡市に係る徳田橋など、施設の約4分の1が建設後50 年以上を経過している。修繕・更新に係る経費は、今後30年間で約1兆5,112 億円、年平均で約504 億円が必要になると試算されている。
 そこで、伺う。増大する老朽化社会資本に対し、維持管理に係るコスト縮減や財政負担の平準化にどのように取り組まれるのか、民間活力の導入を含め、具体的な対応方針と戦略をどう考えているのかお伺いする。

【県土整備部長答弁】
 県では、これまで、橋梁や県営住宅などにおいて「岩手県公共施設等総合管理計画」の個別施設計画にあたる長寿命化計画を策定し、予防保全型の維持管理を進めることで、コスト縮減や財政負担の平準化に取り組んできたところ。
また、民間活力の導入については、道路や河川の草刈や清掃などにおいて、県民との協働などによる維持管理に取り組んできたところ。
今後は、個別施設計画が未策定の施設についても、国の策定指針に従い計画を策定し、これにより国からの交付金の活用を図るとともに、地域の方々の協力も得ながら、一層のコスト縮減や財政負担の平準化を進め、適切な維持管理に努めてまいる。

(4) 県庁舎の修繕計画の検討状況について

 一方、県が保有する建物等の公共施設のうち、建設後50年以上を経過する施設は約3%だが、30年後には施設の約4分の3に増加することが見込まれる。
特にも県庁舎は、昭和40年に建設されて以降、既に50年以上経過している。県の庁舎の老朽化、狭隘化のほか、公用車の駐車場の分散化など、効率的な行政運営の面でも課題が見られる。県民への行政サービスの向上と効率的な行政運営、地震災害発生時における防災拠点施設としての適切な機能整備が喫緊の課題である。
 岩手医科大学の移転を機会に、今こそ、県庁舎と周辺の未来構想図を検討すべきと思うが、現在の県庁舎の修繕計画の調査検討状況について、お伺いする。

【総務部長答弁】
 県庁舎は建築後50年が経過し老朽化が進行している現状を踏まえ、昨年度、劣化診断調査を実施したところ、
電気・機械設備等の経年劣化は進んでいるものの、構造躯体は概ね健全であることが確認され、長寿命化・老朽化対策等の実施により、さらに長期間の使用が可能なこと、
また、平成9年度に実施した耐震診断と同様、震度6弱から6強程度の地震動では崩壊する危険性が低いことが検証されましたが、防災拠点施設として大地震発生後も継続的に機能を確保するため、電気・機械設備等含め耐震性の向上が必要であることが確認されました。
 今回の調査結果を踏まえ、「岩手県公共施設等総合管理計画」に基づき平成32年度までに策定します「個別施設計画」において、老朽化、狭隘化などの課題も含め、県庁舎の整備計画を検討することとしております。

2 産業振興について

(1) 財源確保対策について

 本県財政は、復旧、復興に必要な多額の財源に加え、社会保障経費の自然増や県債償還がピークに達するなど、中長期的に自由度が極めて低い硬直的な財政状況にある。
 今後、地方創生・人口減少対策をはじめ、国土強靭化のための防災・減災事業、教育、医療、高齢者対策等の行政サービスを十分に担えるよう一般財源総額を確保すべきである。これまで県は、給与関係経費や投資的経費など懸命な歳出削減に努め、社会保障関係費の増嵩分を吸収してきたが、限界に近づいている。
 産業振興と併せていわて森林づくり県民税のように新たな税制の調査研究も必要と考えるが、知事は安定的な財政運営に必要な一般財源をどう確保するお考えか、伺う。

【知事答弁】

 東日本大震災津波からの本格復興を推進するとともに、地域の実情に応じた地方の責任と創意による地方創生の取組を戦略的・機動的に進めるためには、一般財源総額の確保が極めて重要である。
 現在、県は東日本大震災津波からの復旧・復興の途上であり、県民の十分な理解が必要な新たな税制については、受益と負担の関係を含め、慎重な検討が必要であると考える。
 まずは、国に対し偏在性が少なく税収が安定的な地方税体系の構築や地方創生の推進を支える地方一般財源総額の確保について、引き続き要請するとともに、県としても、一般財源の確保に向け、県税徴収の強化や未利用資産の売却を進めるほか、今年度創設された「地方創生推進交付金」や「東北観光復興対策交付金」等も効果的に活用し、地域経済の活性化による税源涵養を図っていく。

(2) 総合産業政策について

 歴史を振り返ると、明治14年、政府は、産業振興の重要性と財政節減の必要性から、大隈重信、伊藤博文の建議を契機に、産業を所管する役所として「農商務省」を設置した。しかし、第一次世界大戦後、農業・工業のそれぞれの専門性が高まり、大正14年、農商務省を農林省と商工省に分割し、今に至る歴史がある。

ア 総合産業政策を統括する組織について

 私は、県民所得の底上げの視点と産業の生産性の向上の視点から、各部局間の産業政策の調整や県民所得の調査等を所掌する総合産業政策を統括する組織が必要と考えるが、ご所見をお伺いする。

【知事答弁】
 本県の産業政策の推進にあたっては、
・社会経済のグローバル化の一層の進展を背景に、世界と直接結びつく「世界の中の岩手」の観点に加え、
・持続可能で活力ある地域経済社会の実現に向け、中小企業を重視する「ローカル経済」振興の視点
・地域資源を発掘し、磨き上げ、付加価値を高めながら、地域の内外とつながる「地域に根差した価値を生かした産業」により地域経済を振興する視点が重要と考えている。
このような考え方に基づき、昨年10月に策定した岩手県ふるさと振興総合戦略では、3つの柱のうち「岩手で働く」において、ものづくり産業や食産業、地場産業のほか農林水産業や観光産業など様々な産業分野の施策の総合的な展開を打ち出しており、また、本年2月の「いわて県民計画」第3期アクションプランでは、戦略を包含する形で「産業創造県いわて」と「食と緑の創造県いわて」の実現を掲げているところ。
こうしたことから、戦略やプランが示す方向性の下で、これら総合的な企画立案や県民所得等の経済統計を所管する政策地域部と、商工労働観光部や農林水産部などの関係部局が緊密に連携し、さらに「いわてまるごと売込み推進本部」や「いわてで働こう推進本部会議」など、知事、副知事、部局長等で構成する会議において、政策横断的な観点から情報共有、議論を行いながら、総合的に産業施策を進めていく。

イ 成長産業について

 また、県は、これまで「岩手県産業成長戦略構想」や「新・科学技術による地域イノベーション指針」を策定し、産業の育成を図って来たが、これからの成長産業をどのように捉え、どの分野を重点的に推進するお考えか併せてお伺いする。

【知事答弁】
 本県では、県民計画の長期ビジョンにおいて、岩手の未来をつくる7つの政策の一つに「産業創造県いわて」の実現を掲げ、国際競争力の高いものづくり産業の振興や次代につながる新たな産業の育成を推進してまいりました。
 具体的には、自動車・半導体などを中核産業と位置づけ、地場企業の技術力や競争力の向上のほか、産学官金の連携による研究開発や新技術の導入に取組んでまいりました。
こうした中、近年では、三次元デジタル技術や人工知能・AIに代表される情報処理技術の革新など、産業を取り巻く環境が大きく変わってきており、県としても、これらに的確に対応しながら、中長期的視野で、地域の強みを最大限発揮できる産業の展開を進める必要があると考えております。
 このため、平成27年3月に、本県の有する技術や人材、産学官金連携などのポテンシャルを十分に踏まえ、「新・科学技術による地域イノベーション指針」を策定し、次世代自動車、ロボット、加速器関連など、今後重点的に取り組むべき7つの技術分野を設定いたしました。
 加えて、本年2月に策定した第3期アクションプランでは、「次代につながる新たな産業の育成」の政策項目を強化する形で「科学技術によるイノベーションの創出」を新たな項目として追加したところであり、今後、持続的なイノベーションの創出を図りながら、競争力のある産業の育成を図ってまいります。

(3) 国際戦略について

 私は、国内市場が縮小する中、農林水産物を含む県産品の販路拡大や観光客の誘客を積極的に推進するため、岩手の優位性を見出し、施策を展開する本県独自の国際戦略を、官民協働で早急に策定する必要があると思うが、知事の所見を伺う。
 特にも、国際観光の振興については、今回の6月補正予算案に国際定期便誘致に向けた戦略的・効果的なプロモーションの実施経費や、無料無線LANの設置等に要する整備費が計上された。震災前から県と観光事業者等が一体となって、香港やタイ、オーストラリア等をターゲットにグルメツアー等の新たな商品造成や受入態勢の整備に取り組んできたところ。
 いよいよ、これまで蒔いた種が芽を出し花が咲く時期と思うが、国際定期便誘致の見通しを含め事業成果と今後の展望について、併せて知事に伺う。

【知事答弁】
今後、成長が見込まれる海外市場において、農林水産物や県産品の販路拡大、外国人観光客の誘客拡大に戦略的に取り組み、より多くの外貨を獲得していくことが重要であります。
 これまで、県産品の販路拡大については、南部鉄器を通じて本県の認知度も高まってきた東アジア等、農林水産物については、経済成長が著しく、日本食レストランが増加している東アジアや東南アジア、北米地域等を、主なターゲットとして取り組んできたところであります。
特にも、国際観光については、台湾を最重点として誘客に取り組んできた結果、平成27年の本県の外国人観光客の入込状況は、宿泊者数でみると約10万5千人泊と過去最高となり、その半分以上を台湾からの観光客が占めています。
 また、本年4月に中華航空の会長が来県し、5月には台湾でトップセールスを行い、中華航空からは、「来年(2017年)春からの季節ごとの定期便の運航について、11月頃までに判断をしたい」旨の発言があり、国際定期便就航に向けて大きく前進したと考えています。
 今後も、国が創設した東北観光復興対策交付金も活用し、受入態勢の充実を図りながら、国際定期便の就航を見据えて、台湾からのフルシーズンでの誘客とともに、震災前は台湾に次ぐ実績があった香港や、最大の訪日外国人市場となった中国からの一層の誘客等に取り組んでまいります。
 県では、昨年4月に「いわてまるごと売込み推進本部」を設置し、対外的売込み活動を部局横断的に推進しているところであり、今後は、各市場の特性に応じた国際戦略についても、民間の意見を取り入れながら総合的に検討してまいりたいと思います。

(4) 農業振興について

ア 農業振興策について

 県内農業の現状を見れば、農業就業人口は平成17年114,009人から平成27年70,357人と、この10年間で4割弱も減少し、3人に2人が65歳を超える状況にあるほか、地域農業の担い手不足が進み、危機的な状況にある。年々増加する耕作放棄地への対応も含め、持続可能な本県農業の振興に向け様々な課題に取り組まなければならない。
 宮城大学大泉特任教授は、世界には三つの農業の型があると言う。一つは、中国のような「国民を養うことを第一の課題とし、原料穀物の生産に特化した農業」、一つは、アメリカやオーストラリアのような「広大な農地を利用した労働生産性の高い大陸農業」、一つは、欧州のような「新たな価値創造を重視する市場や商品開拓を課題とする農業」とのこと。本県の農業は、どのタイプを目指しているのでしょうか。
国のTPP交渉後の動きも見据え、本県の基幹産業として地域経済を支える本県農業の型をどう捉え、今後の振興策に取り組むお考えか、伺う。

【農林水産部長答弁】
 本県の農業は、産地の核となる担い手を中心として、多くの農家が生産活動に携わりながら、畜産、稲作、園芸など、特色ある産地を形成し、我が国の食料供給基地としての役割を担ってきている。
 また、丹精込めて生産された農畜産物は安全・安心、高品質であり、全国的にも高く評価されている。
 こうした評価をより高め、生産者の収益性向上につなげていくためには、県産農畜産物のブランド力向上と、消費者のニーズを踏まえた農畜産物の高付加価値化等を進めていくことが重要と考える。
 このため、県では「いわて県民計画第3期アクションプラン」に基づき、
・生産性・市場性の高い産地づくりの推進
・高品質・安定生産のための高度な生産技術の開発・普及
・地域の特色ある農畜産物を活用した6次産業化の推進と国内外への販路拡大
などの取組を推進し、農業者が豊かさを実感できるような農業振興を進めていく。

イ 農業経営者の育成目標と具体的対策について

 農業を成長軌道に乗せるには、農業を成長産業に出来る担い手が必要である。
 県の基本方針では、農地集積率の目標80%に相当する耕地面積119,000haに対応できる経営体数を平成37年までに6,800経営体確保する目標を立てている。併せて、個別経営体の場合、本県の他産業従事者並みの所得水準550万円を目標に掲げている。
 そこで、お伺いするが、人口減において維持していける農地の見通しと担い手を含む農業就業人口等の農業構造をどう展望し、所得構成別の経営体の目標をどのように立てているのか。農業産出額、土地生産性、労働生産性の高い本県農業を支える経営体の育成を具体的にどう図っていくお考えかお伺いする。

【農林水産部長答弁】
 農業就業人口の減少が続く中、本県の農業は、大規模な経営体が生産の中心になりつつあります。
 平成27年現在では、1戸当たりの経営耕地面積が、平均で2.7ヘクタールとなり、この10年間で約1.4倍に拡大したほか、販売額3千万円以上の経営体数が827と、この10年間で47経営体増加するなど、農地利用集積による規模拡大が着実に進んだものと考えている。
 このため、県では販売額3千万円以上または所得1千万円以上の経営体を本県の農業をけん引する「リーディング経営体」に位置づけ、平成30年度までに940経営体にすることを目標とし、
・「いわてリーディング経営体育成支援事業」による個別経営体への直接的な機械・施設の整備や、
・「いわてアグリフロンティアスクール」の開設による経営感覚・企業化マインドを持った農業者の育成、
・さらには、「農地中間管理事業」による担い手に対する、効率的な農地の集積・集約化
などにより、地域農業の担い手の育成に取り組んでいく。

3 医療と地域福祉の推進について

(1) 口腔の健康を通じた予防医療の推進について

 予防医療は「口の健康から」と言われる。先月、福岡市在住の医師による「鼻呼吸推進の口の体操」の講演を伺った。誰でもできる予算のかからない簡単な体操で、生活習慣病や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患等が治る症例等が紹介され、大変興味深くお話を伺った。
 また、歯周病と糖尿病の相互関係をはじめ、歯の健康と全身の健康が密接な関係にあることが様々な分野で指摘されているところ。
 そこでお伺いする。岩手県の健康寿命を延ばし医療費を縮減するために、「予防医療は口の健康から」をスローガンに、鼻呼吸と歯磨きを奨励するなどの県民運動的な予防医療の推進を図るべきと考えるが、ご所見を伺う。

【保健福祉部長答弁】
 口腔の健康は、バランスのとれた食生活を可能とし、生活習慣病や誤嚥性肺炎の予防にも寄与するなど、心身とも健やかで豊かな人生を送るうえで重要な役割を果たしている。
 議員から御紹介のあった口腔の健康と全身の健康の関係については、糖尿病が歯周病を進行させ、一方、歯周病が糖尿病の血糖コントロールに悪影響を与えるなど、密接な関連があると承知している。
 県では「岩手県口腔の健康づくり推進条例」及びその実施計画である「イー歯トーブ8020プラン」に基づき、市町村や歯科医師会等の関係機関と連携して、
・学校・事業所・地域住民への健康講座や「いい歯の日」のイベントなどの普及啓発
・歯科保健従事者研修会などの人材育成
・学校や社会福祉施設における対象者の特性に応じた歯科保健指導
などにより8020運動を進めているところであり、今後とも、口腔の健康を通じて、すべての県民が生き生きと安心して質の高い生活を送ることができるよう、取り組んでいく。

(2) 地域包括ケアシステムについて

 誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことを目標としているが、老人ホームを含めた「在宅死亡率」は、平成26年に全国平均が18.5%、本県は16.8%であり、在宅医療・介護の連携や認知症対策、生活支援などの充実が求められている。
 しかし、地域包括ケアシステムの壁は、担い手となる人的資源と社会的資源の絶対数の不足と偏在であり、都市部と過疎地域において著しいサービスの格差が生じない施策が必要である。特にも、医療人材の養成と在宅医療提供体制の整備が重要である。平成29年から新たな専門医制度が発足する予定だが、医師の地域偏在を助長し地域医療への影響が大きく懸念されるとの声も聞く。
 そこで伺う。県は、地域包括ケアシステムの実現性をどう捉え、多様な医療人材の養成と在宅医療提供体制の充実強化に向け、どのように関係機関や市町村と連携し取り組むのか、伺う。

【保健福祉部長答弁】
 システムの実現のためには、介護予防や認知症施策の推進、生活支援体制の整備などを着実に進めるとともに、在宅医療を担う人材の確保や、医療・介護連携の一層の推進を図ることが重要であると認識しております。
 県では、これまで医師会など関係団体と連携し、医療従事者を対象に在宅医療への理解を深める研修を開催してきましたが、今後対象となる職種を広げながら多くの地域でこうした研修を開催し、在宅医療への多様な人材の参入を働きかけて参ります。
 また、各市町村に対して、医療・介護の連携拠点の設置を働きかけてきたが、未設置の圏域もあるため、新たに市町村職員を対象に、在宅医療・介護連携施策の企画立案に資する研修を実施しながら、広域での拠点設置を働きかけるなど、県内全域で医療・介護連携体制が構築されるよう支援していきます。

(3) 認知症対策について

 今年から岩手医科大学が行う発症要因を分析する追跡調査により、認知症予防や治療法の確立につながることが期待される。一方、認知症対策では、矢巾町の「わんわんパトロール隊」のような地域の見守り活動が重要であり、地域の実情に即した総合的な対策が求められる。
 認知症への早期対応に向けて「認知症初期集中支援チーム」が平成30年4月までに各市町村に設置されると伺っている。認知症の方や家族を訪問し、早期に適切な医療や介護等が受けられるようサポートする重要な役割を果たすことが期待されるが、現在、設置済みは5市町にとどまっている。設置が進まない要因と課題、今後、市町村等の取組みをどのように支援しながら岩手型の認知症対策を推進していくお考えか伺う。

【保健福祉部長答弁】
 認知症初期集中支援チームは、認知症サポート医と保健師や介護福祉士等の医療・介護の専門職2名の計3名以上で編成することとされておりますが、市町村によっては、認知症サポート医の確保が進まず、チームの設置に時間を要しているところです。
 このため、県では、認知症サポート医不在市町村の医師を対象にサポート医養成研修の受講料を負担するなど、市町村によるチーム設置の取組を支援してまいりました。
 また、地域における見守り体制の構築等を担う認知症地域支援推進員の養成や、認知症グループホーム等の介護基盤の整備を支援するとともに、認知症疾患医療センターの追加指定による専門医療提供体制の強化や、介護従事者の資質向上に加え、本県独自の取組である「孫世代のための認知症講座」などによる正しい知識の普及にも努めてきたところです。
 今後とも、こうした取組を進めるとともに、認知症の早期発見・早期対応に向けて、新たに歯科医師や薬剤師等を対象とした対応力向上研修を開催し、総合的に認知症対策を推進してまいります。

(4) 若い世代に対する自殺対策について

 先日、県南の中学生が自ら命を絶つという悲しいニュースが流れた。本県の平成26年人口10万人当たりの自殺死亡率は26.6と中期的には減少しているものの、20年・25年前の水準(H2年25.4、H7年24.3)を上回る、依然として高い水準で推移している。
 平成27年自殺対策白書において特に深刻な状況と指摘するのが、若い世代の自殺である。10歳代の自殺死亡率は平成10年以降大きく変動していないほか、20歳代の自殺死亡率は、自殺者数が急激に増加した平成10年の水準を未だ上回っている一方、50歳代以上においては既に平成9年の水準にまで自殺死亡率は低下している。
 今年度から国では各県に「地域自殺対策推進センター」を設置し、統計情報の分析、情報提供等を行うこととしており、本県でも「自殺予防情報センター」の職員を増員して相談支援、人材育成、自死遺族支援等に対応すると伺っている。
 そこでお伺いする。県として、自殺の現状を世代別にどう分析し、これまでの対策をどう評価されているのか。若年層10代・20代の若い世代への取組みとして、今後、どのような点に重点をおき実効ある対策を強化するお考えか伺う。

【保健福祉部長答弁】
 人口動態統計による世代別の自殺者数は、本県では、男性は50歳代、女性は70歳以上が最も多く、その主な原因・動機は、50歳代男性は経済・生活問題及び健康問題、70歳以上の女性は健康問題となっている。
 このため、県では、自殺対策アクションプランに基づく包括的な自殺対策プログラムの普及などの取組に加えて、男性については働き盛り世代への普及啓発活動の強化、女性については介護予防面からの心身の健康チェック等の取組を強化しているところである。こうした取組により、本県の自殺死亡率は、長期的には減少傾向にあるものの、依然として全国的に高位にある。
 10代及び20代の自殺者数は全体の約1割であり、原因・動機別でみると、健康問題、家庭問題、勤務問題が上位で、次いで男女問題、学校問題、経済・生活問題の順となっている。
 こうした多様な原因・動機に対応するためには、周囲の人々が若者の心や表情などの変化に気づき、声をかけ、見守っていくことが重要であることから、県としては、ゲートキーパーの養成や高校カウンセラーの配置、事業所におけるメンタルヘルス対策の要請等に取り組むとともに、年代や悩み事に応じた相談窓口が活用されるよう周知に努めるなど、市町村や関係機関、学校、企業等と力を合わせて若い世代の自殺対策に取り組んでいく。

4 教育について

(1) 教員に対する知事の思いについて

 現在、児童生徒数が減少しているが、小中学校の先生は戦後3回目の大量採用期の最中である一方、10年後には80年代に大量採用された先生方の定年退職のピークを迎える。
 2011年、オバマ大統領は一般教書演説において、「韓国では、教師を「国家を築く者たち(Nation Builders)」と呼んでいる。米国でも、優れた教師に報酬を与え、教師の質の悪さに対する言い訳を止めることを望む。そして、今後10 年で、団塊世代の教員が多数引退することから、教育分野の新たな教員を10万人準備する。今日の一般教書演説を視聴する、進路検討中の若者たちよ、もし米国をよくしたいと思うなら、そして、子供たちの人生に影響を及ぼしたいと考えるなら、教師になりなさい。米国は君たちを必要としている。」と語った。
 そこで、総合教育会議を主宰される知事に伺う。知事ならば、教員としての進路を検討されている若者たちに、どのようなメッセージを伝えたいかご所見を伺う。また、教育の最前線で活躍されている教員に対し何を伝えたいか併せて伺う。

【知事答弁】
 教員に対する思いについてでありますが、教育には、個人の明日(あした)をつくり、岩手の地域地域や日本の未来を創る大きな役割があり、特に、学校教育における教員は、社会の形成者となる子どもたちの成長に、直接携わることのできる魅力的な仕事であります。
 教育は人なり」とよく言われるとおり、学校教育の成否は教員の力に大きくかかっており、責任が重く、さまざまな苦労も多い仕事ではありますが、それだけに、やりがいも十分にあると同時に、子どもたちの日々の成長を間近に見つめ、また、教員自身も共に成長することができる仕事でもあります。
 このようなことを私からも社会に飛び立とうとする多くの若者たちに伝えたいと思いますし、また、岩手の教育、未来をともに切り拓いて行ってほしいと願っています。
 また、岩手の教育は、日々、情熱を持って子どもたちに向き合い、誠実に職務に精励している多くの教員の力によって支えられ、この岩手の地から、さまざまな分野で活躍する多くの人材を輩出してきています。
 岩手の子ども達に、グローバル化や情報化の一層の進展、さらには産業界の技術革新など、大きく変容するこれからの社会を生き抜いていく力を身に付けてもらうために、教員一人ひとりが教育に対する情熱、真剣さを持ち続けながら、教育的な力量や総合的な人間力を一層高め、岩手の子ども達を育んで行ってもらいたいと期待しています。

(2) キャリア教育の推進について

 私は、教育の目的を子どもが持つ可能性を高め、「生きる力」を育むことと捉えている。
つまり、人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や関係を見いだしていく連なりや積み重ねが、「キャリア」である。このキャリアは、子ども・若者の発達段階や発達課題の達成と深くかかわりながら発達していくもので、学校教育において最も重要な視点の一つと考える。
 そこで伺う。岩手県の学校教育において、学力向上以外に何を大事に何に最も力を入れて取り組まれているのか、「岩手県の学校教育といえばこれだ」という特徴は何でしょうか。人生の目標やなりたい自分、職業、目標をもたせること、自発的内発的な力を育てるために、キャリア教育を小中高等学校の発達の段階に応じて取り組むべきと考えるが、県のご所見と対応について伺う。

【教育長答弁】
 本県の教育の特徴等についてでありますが、学校教育は、教育関係諸法令や学習指導要領等に基づき、子ども達の発達段階に応じて適切な教育を行っていくことが基本でありますが、本県の教育の特徴としては、まず、学校、家庭、地域などの五者が相互に連携して学校教育に参画する「教育振興運動」の取組が、きわめて特徴的な活動と捉えております。
 学校がPTAや自治会など、多くの関係者の皆様の理解と協力をいただいて行うこの取組を通じ、それぞれの地域の特色を生かしながら、教育水準の向上、子どもの健全育成、家庭や地域の教育力の向上など、本県の教育環境の整備充実に大きな役割を果たしてきていると認識しております。
 また、東日本大震災津波発災を機に、本県が独自に開発した「岩手の復興教育」は、大震災で得た教訓の伝承やさまざまな人、地域とのつながりの発展などを目指し、「いきる」、「かかわる」、「そなえる」の三つの教育的価値を本県の子ども達に育もうという教育プログラムであり、本県の教育の大きな特徴であります。
 キャリア教育については、変化の激しい社会を生き抜いていく今の子ども達が、主体的に自らの未来を切り拓いていくためにも、議員ご案内のとおり、小学校から高等学校段階まで、計画的かつ継続的な取組が求められていると認識しております。
 本県においては、「キャリア教育指導指針」に基づき、確かな学力や豊かな人間性などの「総合的な生活力」を小学校段階から育むとともに、職業観や勤労観、将来の進路を設計する力等の「人生設計力」を育成するなど、学校教育全体で、社会的、職業的自立に向けて、子どもの発達段階に応じた教育活動に取り組んできているところでございます。
 今後におきましても産業界や関係機関等との連携を図りながら、児童生徒の学びが、自らのキャリア形成に着実につながるよう、指導の充実に努めて参ります。

(3) 不登校児童生徒の支援について

 平成26年度の県の資料によると、小学校で143人、中学校で791人であり、5年前に比べ小中学校ともに不登校児童生徒数及び全在籍数に占める割合が増加している。特に中学校の不登校生徒数は小学校の不登校児童数の約5倍強という実態を非常に問題視している。
 不登校の要因として、本人の意欲や対人関係、家庭環境、さらには複合的な要因が絡むなど、一律的にその解決方策を見出すことが困難と思われるが、不登校は決して異常な問題行動ではない。児童生徒が安心して学べる環境を整備し、学校に戻る子、戻れない子も含めて、社会としてしっかりと支援することが政策の基本であるべきと考えるが、フリースクール等の実態を含め、現在の取組み状況と今後の対応について伺う。

【教育長答弁】
 基礎的な学力や人間関係などを築いていく学校教育において、児童生徒が不登校にある場合、その要因を丁寧に解消し、復帰に向けた支援を行っていくことは、極めて重要であります。
 議員御案内のとおり、不登校の要因は一人ひとりさまざまであり、一律的にその解決策を見出していくことは難しい面がありますが、何よりも学校が保護者等からの理解や協力をいただきながら、子どもに寄り添った丁寧な対応をすることが大事であります。
 このような考えのもとに、県教委におきましては、スクールカウンセラーの配置による教育相談体制の充実に加え、本年度からは、総体的にさまざまな課題が多い中学校教育の充実に向け、35人以下学級を中学2年生に拡大するなど、生徒一人ひとりに寄り添った体制の整備にも取り組んでいるところであります。
 また、県内各自治体においても、不登校児童生徒の学校復帰を目的とした適応指導教室などが設置されており、指導員等が不登校児童生徒を支援しております。
 一方、民間団体等が不登校児童生徒の支援を行っている、いわゆるフリースクールは、準備段階のものも含め、現在県内5市町において7つの組織が設置されており、学校に通っていない児童生徒に、学習をはじめさまざまな活動の機会を提供する取組を行っていると承知しております。
 今後におきましては、不登校児童生徒への支援をより一層充実させるとともに、フリースクール等の関係する機関等との連携も図りつつ、児童生徒の不登校対策に取組んで参ります。

(4) 発達障がい児への教育支援について

 発達障がいを早期に発見した後は、適切に福祉的、教育的な援助に結びつけていくことが重要であり、そのためにも、実態の把握が基本となる。
 国が平成24年に公表した全国公立小中学校における発達障害の可能性のある児童生徒に関する調査結果への質問に対し「具体的な実態把握につきましては、別途検討する」旨過去に答弁されている。
 改正学校教育法では、幼稚園から高校まで、発達障がいを含む幼児、児童生徒へ適切な教育を行うことが盛り込まれ、新学習指導要領においても、校内体制での支援充実が明記されたところ。
 そこで伺う。県は、発達障がいをもつ児童生徒の学習活動等を支援するため、実態把握をどのように行い課題をどう捉えているのか、特別支援教育支援員の配置計画も含め、今後どのような支援体制を構築していくお考えか、伺う。

【教育長答弁】
 まず、その実態の把握につきましては、本県独自での調査を平成26年度に実施したところであり、その結果を申し上げますと、小・中学校の通常学級に在籍する児童生徒で学習面又は行動面で特別な支援が必要とされた児童生徒数は5,521人、割合にして約5.7%となっております。
 県教委におきましては、地方財政措置を踏まえた特別支援教育支援員の配置が適切に行われるよう、市町村教委に要請するとともに、市町村に配置されている支援員を対象とした研修会の実施などを行い、その支援の充実に努めてきております。
 課題といたしましては、学校、保護者、行政など関係者間での共通の支援ツールとなる「個別の教育支援計画」の作成の定着がまずもって大事と考えておりますが、対象となる児童生徒の増加等に伴い、その浸透が十分には図られていないということや、教職員の一層の専門性の向上などが課題というように捉えております。
 今後におきましては、児童生徒への指導・支援の更なる充実を図るため、特別支援学校が小・中学校等を支援するセンター的機能を更に活用し、学校への訪問支援や当該校における校内研修の充実に向けた支援を進めるとともに、「個別の教育支援計画」の作成率の向上や、教職員の専門性の向上などに努めて参ります。

5 震災復興と防災について

 県では平成24年2月に防災対策の観点から「東日本大震災津波に係る災害対応検証報告書」をまとめ、客観的な分析による検証を実施し、岩手県地域防災計画を見直し、防災体制の強化及び充実を図ったところである。今回の熊本地震による被災地に対し、本県が経験した課題や改善案等についてどのように共有できたでしょうか。また、仮設住宅から災害公営住宅等、復興が進む事業計画段階、実施段階、仮設住宅から本設住宅への移行段階といった各々のステージにおける課題等、本県の教訓を熊本に伝える責務があると思うが、ご所見を伺う。
 併せて、熊本地震から本県の防災対策に生かしていく点があればご所見を伺う。

【総務部長答弁】
 県では、東日本大震災津波で得たノウハウを生かしてもらうため、発災直後の4月20日から熊本県に職員を派遣し、災害廃棄物の事務処理等に関し、東日本大震災津波発災時の組織体制、国・市町村との連携のあり方、国庫補助制度の処理方法等について、情報提供やアドバイス等を行ったところである。
 また、県では、昨年3月に開催された国連防災世界会議に合わせて、東日本大震災・津波で得られた教訓や、防災・復興に関する岩手県の取組事例及びそれらを踏まえた岩手県からの提言を取りまとめて、熊本県や大分県などにも提供しているところであり、今後、熊本地域の被災地から求めがあった場合、本県における取組事例等を伝えていきたい。
 今回の熊本地震では、住家をはじめ防災拠点となる庁舎の損壊や避難所となる体育館の被害、り災証明書の発行の遅れなどの教訓・課題があったところであり、県では、国の調査や市町村・防災関係機関の意見などを踏まえ、地域防災計画の見直しを進めていく。

(2) 活断層の現状について

 県内の主要な活断層のうち、都市部に近く、活動度が高いと推測される「北上低地西縁断層帯(花巻断層帯、出店断層帯)」と「雫石盆地西縁断層帯」について、平成7年度から9年度にかけて活動間隔や活動した場合の地震の規模等について報告書にまとめられているが、あれから20年近くがたつ。
 岩手大学地域防災研究センター齋藤客員教授は「活断層の存在を意識して防災対策を進める必要がある」と指摘しているが、県では、活断層付近に集積している公共施設や病院等の不特定多数の県民が利用する建物の現況調査をしているのか。今後どのように防災・減災対策を進めるお考えかご見解を伺う。

【総務部長答弁】
 県内では、北上低地西縁断層帯、雫石盆地西縁断層帯、折爪断層といった活断層の存在が知られているが、平成22年度に、活断層の長期評価手法が変更され、最新の知見に基づく再評価を行う必要がある。県では国に対して、これらの活断層における地震の発生確率等の再評価を要望しているところであり、現時点で現況調査等は行っていない。
 一方、活断層直上地域以外の地域で地震が発生したり、震源地から離れていても揺れが大きな場合もあることから、県全体を対象に、大規模な地震が発生した場合の被害を最小限に食い止めることを目的として、本年4月に「第2期岩手県耐震改修促進計画」を策定したところ。
 今後においても、この計画に掲げた目標を達成できるよう、市町村とともに、木造住宅の耐震診断等を通して着実に耐震化を推進していくほか、県広報誌等を通じて、家具等の転倒防止について、県民への普及、啓発を図り、地震に強いまちづくりを進めていく。

(3) 水道施設の耐震化について

 水道の防災対策は、個々の施設の強化対策に頼らず、水道システム全体として強化する必要がある。また、被災時の水の確保対策や迅速な施設の復旧対策など、総合的かつ広域的な対策を図ることが必要である。
 特に大規模災害が発生した場合、広域的に断水することがないように、活断層付近にある管の耐震化を進めていくことが極めて重要である。県では、平成13年に「岩手県水道広域的防災構想」を策定しているが、水道施設の耐震化計画の策定状況と進捗はどうなっているのか。今回の震災被害を教訓に、今後、水道の安定的な供給と市町村の水道施設の耐震化支援にどう取り組むのかお伺いする。

【環境生活部長答弁】
 水道事業体のうち、水道施設耐震化計画を策定済みの事業体は4事業体、策定中とする事業体は4事業体となっているが、各事業体では施設の更新等に合わせて水道施設の耐震化を進めており、これにより上水道の基幹管路の耐震適合率は、平成26年度末時点で46.2%と、全国平均36%を上回っている状況にある。
 また、災害時の水道の安定供給を確保するため、異なる給水区域を連絡する緊急時連絡管や、地震発生時に配水池からの異常流出を防ぐための緊急遮断弁などを順次整備しているところであり、今後も、今年度から実施している水道施設耐震化等推進事業費補助金を活用して、水道の安定供給や水道施設の耐震化に係る事業を支援して参りたいと考えている。

(4) 岩手山火山への複数避難路の調査研究について

 十和田八幡平国立公園八幡平地域は、今年で指定60周年を迎えた。当該地域は、桜と雪の回廊や秋の紅葉を観るために台湾・香港をはじめ、国内外から多くの観光客が車や大型バスで訪れる本県を代表する観光地であるが、一方で岩手山火山災害も懸念されるエリアであり、避難路を確保する必要がある。
 東日本大震災からの教訓の一つに複数の避難路の確保があげられる。防災・減災の観点から、物資等の輸送路を兼ねた盛岡IC方面に抜ける避難路の調査研究が必要と考えるが、ご所見を伺う。

【総務部長答弁】
 岩手山については、当時の噴火危機を踏まえて、平成10年に、想定される噴火の被害等を示した「火山防災マップ」を作成し、また、平成12年には、噴火前から復旧・復興までの具体的な対策を示した「岩手山火山防災ガイドライン」を策定したところであるが、避難の対象地域や避難経路などについて具体的に定めた避難計画は未策定となっていたところ。
 こうした中、昨年7月に活火山法が改正され、火山災害警戒地域に指定された県、市町村は共同で火山防災協議会を設置し、一連の警戒避難体制について協議することが義務付けられたことから、本年3月29日に、活火山法に基づく岩手山火山防災協議会を立ち上げ、同協議会のもとに避難計画作業部会を設け、来年度までに「岩手山に係る避難計画」を策定することとしている。
 避難計画の策定に当たっては、住民、登山者、観光客等が避難するルート等についても検討することとしており、その中で、複数の避難路や盛岡インターチェンジ方面に抜ける避難路についても、有識者に相談して参りたい。

6 史跡の保存と活用について

 文化財や史跡の保存を図る上では、県民が歴史や文化に親しむ場として活用されることが社会的に要請される。
 本県では平泉の歴史文化遺産や縄文遺跡群など多くの文化財が指定され、地域への誇りを育み親しまれている。一方、国指定史跡「徳丹城跡」は、発掘調査により住宅等の移転を進めても、広大な低未利用地のみが現れている状況にある。史跡の保全は、活用の視点をしっかり入れながら、個性ある地域作りに寄与すべきと考える。
 県は、国指定史跡「徳丹城跡」をはじめとする史跡の保全と活用方策をどのように認識し、今後どのように国や町と連携するお考えか伺う。

【教育長答弁】
 文化財保護と地域振興の観点から、史跡の保存と活用は非常に重要であると認識いたしております。
 矢巾町の国指定史跡「徳丹城跡」は、胆沢城跡、志波城跡とならび全国的にも著名な古代城柵であり、矢巾町において保存管理計画と整備計画を策定し、これまで74回に及ぶ発掘調査を行い、植栽や柱跡の遺構表示による整備を行うなど、継続的に発掘調査や整備を実施してきております。
 しかしながら、議員御案内のとおり、矢巾町が策定した当初の計画どおりには整備が進んでいない状況にありますが、矢巾町においては「徳丹城跡」の整備を、昨年度策定した第7次総合計画に掲げ、今後その実現に向け着実に取組んでいくことと聞いております。
 このような史跡の整備については、地域の期待が大きいと認識しており、県教委といたしましては、これまで、市町村の史跡整備に関する「調査指導委員会」に参画しているところでありますが、今後も、その整備が促進されるよう、文化庁の指導等もいただきながら、市町村における史跡の保存と活用への支援を行って参ります。

【再質問】

1 財源確保対策について

 地方自治体が、国からの財源に過度に依存せず、みずからの裁量と工夫によって自立的な運営を行い、特定の政策目的を実現するために、法定外税の創設や超過課税の導入など課税自主権の検討を進める必要がある。
 財政の健全化計画とのかかわりもあるが、行財政改革を徹底し歳出削減を図る一方、例えば、子育て支援や教育の充実、産業振興施策の充実等等、今後増加が見込まれる社会保障費等のニーズに県民総参加で支える安定的・継続的な仕組みづくりと財源確保を目的とした、新たな税制の導入に向けた調査研究の必要性について、改めて知事の見解を伺う。

【総務部長答弁】
 これまでも、県では、法定外目的税である「産業廃棄物税」、県民税の超過課税である「いわての森林づくり県民税」、産業振興に関する施策推進のための「県民税法人税割の特例措置」等、特定の政策目的を実現するための税制について、県民の理解を得ながら導入してきた。
 議員御指摘のとおり、こうした独自の財源確保は極めて重要であるが、子ども・子育て支援の拡充をはじめとする社会保障の充実・安定化等の全国的な課題については、国、県、市町村の役割分担も含めた幅広い議論が必要である。
 県としては、全国知事会と連携の上、地方一般財源総額の確保や税財源の偏在性解消について要請、提言し、地方の自由度の高い財源の確保を図っているところであり、受益と負担の関係について県民の十分な理解が必要な新たな税制については、慎重な検討が必要と考える。

2 若い世代に対する自殺対策について

 若年層の自殺がピークになる午前0時台など、自殺に追い込まれやすい時間帯に重点的な対応を行うことが重要である。悩み苦しんでいる子どもの心理状態を想像すると、周りに誰もいない、1人の状況にないとゆっくり話せない、そういったタイミングで話を聴くといった環境づくりが大事だと考える。
 24時間無料電話相談にとどまらず、実効性を高めるためには、自治体、保健所、精神保健福祉センター、医療機関、学校、民間団体等、地域の関係機関が連携していくことが重要であり、学校や親以外に相談できる専門家などによる第三者の相談窓口が必要である。社会福祉士や母子支援員等、面談対応員も常駐して対応されているところもあると伺うが、少なくとも生活圏ごとに「小さな拠点」を整備する等、今後、実効ある自殺防止対策に向け、どう取り組むのか、改めて伺う。

【保健福祉部長答弁】
 10代及び20代の自殺は、健康問題や家庭問題、勤務問題など様々な原因・動機があるが、県内でも、例えばうつやいじめ、仕事上の悩み、多重債務問題など様々な分野の支援機関において、専門家による相談窓口が開設されており、それぞれ相談に対応しているところ。
 こうした窓口の中には県内数箇所に設置されているものもあり、また、各保健所がそれぞれの保健医療圏において、心と体の健康に関する相談に応じている。
 県では、悩みを抱えた方がいずれかの相談窓口を訪れたときに、その年代や悩み事に応じて、より適切な支援機関があればその機関に繋ぐという、相談のワンストップ化に向けた検討を行っており、こうした相談体制の充実を図ること等により、若い世代に対しても、実効ある自殺対策を推進していく。