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県議会報告
令和7年度9月定例会 決算特別委員会(環境生活部)(令和7年10月21日(火))
2025.11.28
1 クマ対策について
(1) クマの人的被害について
県として現状をどのようにとらえているのか、緊急事態としての認識があるか問う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
今年度のクマの出没状況ですけども、9月末現在で4,524件ということで、令和6年度同期の2,573件の約1.8倍ということで、大量出没のあった令和5年度に迫る件数となっています。 また、今年度の県内のクマによる人身被害でございますが、9月末現在で21件22名となっており、令和6年度は1年間で10件10名
であったことと比べても、かなり多く、こちらも令和5年度同期の26件27人に迫る件数となっています。 全国の人身被害者数は、9月末現在で108名となっており、そのうち本県が2割を占めるほか、今年度のクマによる死亡者数も全国で7名のうち3名は本県での死亡事故によるものであり、過去最多となってございます。
(2) 岩手県の推定個体数及び捕 獲上限の推移について
岩手県の推定個体数及び捕獲上限数の推移の捉え方が適格なのか、県の見解を問う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
本県の推定個体数及び捕獲上限の推移についてでありますが、平成30年度から3年かけて行った生息状況調査の結果、令和2年度末時点での県内のクマの推定個体数は約3,700頭と推計されました。 平成21年度から平成24年度にかけて行った前回の生息状況調査では、推定個体数が約3,400頭であったことから、約300頭増加しております。 また、推定生息数や被害発生状況、捕獲数などを勘案し、毎年度「ツキノワグマ管理検討協議会」において設定される捕獲上限数については、令和5年度は686頭、令和6年度は796頭、令和7年度は796頭となっており、捕獲上限数は前計画期と比べて高い数値で推移しております。
(3) 第5次ツキノワグマ管理 計画について
今の現状をとらえ、クマの生息密度が高まっていると思うが、適正に管理されているとの認識か伺う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
ツキノワグマの個体数管理についてでありますが、現計画の目標個体数の約3,400頭は、現計画策定時より被害件数等が少なかった第4次計画の推定生息数に戻すことを目標に設定しております。 今後、昨年度から今年度にかけて実施している県内全域の生息数調査の結果を踏まえ、現在の生息数を推計するとともに、人身被害件数や出没件数などを勘案し、専門家からの御意見も伺った上、人とクマの軋轢を低減するための目標個体数を設定していきます。
令和6年度は捕獲上限数に対する捕獲数が6割程度であり、この捕獲割合の減少が令和7年度の出没に結果的につながっているのではないか思うが、捕獲上限と捕獲実績の乖離の要因をどう捉えているか伺う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
委員から御指摘のございました、ツキノワグマの捕獲数と上限数との乖離というお話でございますが、委員からのお話にもあったとおり、令和3年、4年、令和6年と、捕獲上限数に満たない捕獲数となっている一方で、令和5年度、こちらは大量出没があった年でございますが、こちらにつきましては、捕獲上限数を超えて捕獲している、というところでございます。 こちらにつきましては、例えば、大量出没があった年度というのは、それだけ人との接触が多い、ということがございます。 捕獲可能性も非常に高まる、という一方で、例えば昨年度、令和6年度でございますが、比較的クマの出没が抑えられた、というところで、人との接触が少ない、捕獲の可能性も少なくなるというところで、上限数との若干の差が出てくるというところもございます。こういった形で、自然が相手というところで、捕獲頭数をコントロールするのは難しい面もあると考えてございます。 捕獲上限数は個体数管理の一つの目安となるものでございますので、管理計画期間内での調整に努めてまいりたいと思っております。
令和7年度は、捕獲上限数である796頭を上回る捕獲となる見込みか伺う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
今年の状況でございますが、具体的な数字までは、まだ把握してございません。 しかしながら、先に開催したツキノワグマ管理検討協議会におきまして、捕獲上限数を上回る捕獲をお認めいただいたというところで、今般のこの状況を踏まえまして、特に人に危害を加えるような、人身被害を起こしたクマについて積極的に捕獲に努めてまいりたいと考えております。
前年に上限まで捕獲できなかったことから、生息密度が高まっているエリアが発生していると考えられるが、生息密度の分析はどうなっているか。また、市町村から追加配分の要望があった場合どのように対応しているのか伺う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
ただいま委員からお話のございました、今の生息状況はどうだ、というお話でございますが、こちらにつきましては、昨年度、今年度とかけて県内の生息状況調査を実施しております。 先ほど、委員のおっしゃるとおり、正にどの辺りにいくらいる、といった辺りのところを今現在、正に調査しているというところでございまして、次期の計画策定が来年度に控えてございますが、このところで明らかになるというところです。 市町村の捕獲の要望でございますが、県の方では、特例配分というものをやってございます。 こちらにつきましては、今年のクマの出没状況を受けまして、追加配分をしております。 今後もそういった要望が出た場合は、どのような対応ができるかにつきまして、検討してまいりたいと思います。
(4) ヘアトラップ調査等の全国 状況と評価について
秋田県、岩手県、宮城県がほぼ同じような出没傾向にあり、秋田県においてはカメラトラップ調査により岩手県より多い推定頭数となっている。様々な要因を加味すると、岩手県の生息頭数のほうが多いように思うが、推計値の捉え方について、検討をしてみる考えはあるのか伺う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
ヘアトラップ調査とカメラトラップ調査についてでありますが、北海道・東北6県では、本県及び北海道においてはヘアトラップ調査を実施してございまして、それ以外の県ではカメラトラップ調査を実施してございます。 ヘアトラップ調査は、クマの体毛を採取してDNAを調査することで生息数を推計する方法でございますが、個体識別の精度が高いとされる一方で、DNAの分析コストが高いなどの課題がございます。カメラトラップ調査はヘアトラップ調査と比べ、比較的コストが安いとされる一方で、クマの胸の模様がはっきり撮影できない、推計に用いることができないことが課題と聞いております。
ツキノワグマの推定個体数は、個体数を管理する上で重要な指標となることから、引き続き、最新の研究結果等の知見の収集に努めまして、専門家の意見を伺いながら、適正な個体数の推定に努めてまいります。
(5) ワンストップ相談につい て
秋田県では、ツキノワグマ被害対策支援センターを設置し、市町村からの相談をワンストップで受け、専門知識を持った方が、科学的知見に基づいて対策を行っている。 岩手県においても、体制を検討していただきたいが所見を伺う。
【答弁者:自然保護課総括課長】
本県におきましては、環境保健研究センターに鳥獣の保護及び管理に関する専門的知見を有する職員を2名配置するとともに、本庁自然保護課に獣医師2名を配置し、ワンストップ体制とまではいきませんけれども、市町村からの相談に対応しております。 また、今年度、民間の野生動物専門業者と委託契約し、専門人材から助言、指導をいただく事業を実施することとしており、クマの生態や捕獲に関する知識を共有することで、職員の資質向上を目指すとともに、専門的知識を今後の施策に反映させることとしています。 今後は、他県の例も参考にしながら、引き続き専門的知見を活用する体制の整備について研究を進めてまいります。