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県議会報告
平成28年9月定例会 決算特別委員会(保健福祉部)(平成28年11月17日(木))
2016.11.26
1 障害者総合支援法に係る障がい者の移動支援について
(1)現状と課題、対応について
平成25年4月に障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)が施行され平成27年度は3年が経過した。移動支援は、障がい者の社会参画の促進や自立した生活を支える上で極めて重要な支援であると認識している。障がい者の移動支援に対する27年度の取組状況について、現状と課題をどう捉え、今後、どのように対応するお考えか伺う。
【障がい保健福祉課総括課長答弁】
障がい者の移動支援の現状と課題、対応についてでありますが、障がい児・者が日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者総合支援法に定める地域生活支援事業の市町村の必須事業の移動支援事業として位置付けられており、国が1/2以内で補助することとされている。
この移動支援事業の適用範囲については、地域特性や利用者ニーズ等に応じ、各市町村の判断で柔軟に実施できることとされており、平成27年度の県内市町村の移動支援事業費は、約44,900千円の執行状況となっている。
課題としては、市町村で行う移動支援の要件やサービスの量が十分ではないといった声を障がい者団体から頂いているところであり、移動支援のサービスが不足しているところもあると認識している。
背景には、市町村が見込んだ所要額、約52,900千円に対して、国から措置された財源が少ないため、執行額が約44,900千円にとどまっていることも、移動支援が不足している一因と考えられる。
対応については、移動支援を充実していくためには、国からの必要な財源の措置を図ることが重要であり、県としても移動支援事業を含めた地域生活支援事業に対する支援の充実が図られるよう、その十分な財政措置について引き続き国に要望していく。
(2)「障がい者移動支援の在り方に関する実態調査」について
平成27年度に厚生労働省の事業で「障がい者移動支援の在り方に関する実態調査」が行われた。特別支援学校の対象とした実態調査であるが、障がい者対策を総合的に所管する保健福祉部としてのご所見を伺う。
【障がい保健福祉課総括課長答弁】
「障がい者移動支援の在り方に関する実態調査」に関する所見についてでありますが、この報告書では、特別支援学校への通学においても、自宅からスクールバスまでの送迎等の福祉ニーズがあること、子供の移動支援のために、家族が就労を断念したり、転職したり、年休を取り続けなければならないケースがあることなど、現行の通学支援や移動支援で対応できていない課題がある、と示されている。
障がい児・者の移動支援については、昨年12月の厚生労働省社会保障審議会障害者部会の報告書であります、「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」において、基本的には、現行の支援の枠組みを継続した上で、支援の実施状況等を踏まえつつ、ニーズに応じたきめ細かな見直しを行うべき、としており、特に通学については、福祉のみならず、教育機関、公共交通機関等、関係機関との連携による取組を総合的に進めていくべきであり、その上で、福祉政策として実施すべき内容について引き続き検討を進める、と示されたところ。
県としては、委員御指摘の実態調査で示された課題については、国での議論と同様に、教育機関など関係機関との連携による取組等を総合的に進めていくことが必要と認識しており、引き続き移動支援見直しに係る国の動向について注視していく。
2 岩手県立療育センターの整備状況について
(1) 現在の運営状況と新たな施設の整備状況について
岩手県立療育センターは、県内唯一の総合的な障がい児の療育拠点として重要な役割を担う施設で、現在、平成29年の開所に向けて、整備が進んでいる。現在の運営状況と新たな施設の整備状況について伺う。
【障がい保健福祉課総括課長答弁】
療育センターの運営状況についてでありますが、療育センターは、医療法に基づく病院や児童福祉法に基づく医療型障害児入所施設、障害者総合支援法に基づく障害者支援施設などの機能を備えた複合施設で、本年4月1日現在、医師や看護師など115名の職員により運営しています。
平成27年度の運営状況は、入院患者数が11,424人、外来患者数が22,220人。施設の定員に対する初日在籍は、医療型障害児入所施設、定員60人に対し29.8人、医療型児童発達支援センター、定員20人に対し18.8人、児童発達支援事業所・生活介護事業所定員15人に対し20人、障がい者支援施設入所支援、定員30人に対し7.8人、障がい者の日中活動支援、定員合計32人に対し10.4人となっています。
新施設移転後も、現在の機能を維持しながら、重症心身障がい児対応病床20床、在宅重症児対応の一般病床10床に再編する等、重症心身障がい児対策を手厚くすることとし、その新築工事については、平成28年10月末時点の進捗率が、36.6%で予定通りの進捗状況であり、今後、医療機器の整備を行う等、平成29年度中の開設に向けて事業を進めているところです。
(2) 医師、看護師等の採用の見通しと、今後の課題にどのように取り組むのか
新療育センターでは、耳鼻咽喉科、眼科、リハビリテーション科の新設を予定しているが、医師、看護師等の専門スタッフの確保に向けて取り組んでいると伺っているが、採用の見通しは立っているのか。併せて、今後の課題をどう捉え、どのように取り組まれるお考えか伺う。
【障がい保健福祉課総括課長答弁】
次に、医師、看護師等の採用の見通しでありますが、新設する診療科の医師については、岩手医科大学に対して派遣を要請しているところであり、県内の重症心身障がい児・者等に対する医療の確保の必要性については、理解を頂いているものと考えており、今後、具体的な医師の派遣について、御協力いただけるようお願いして参ります。
また、看護師等については、現在も療育センターにおいて、募集しているところであり、岩手県看護協会等へ働きかけを行うなど、引き続き確保に努めて参ります。
今後の課題は、先ほど申し上げました医師等の人材確保に加えて、現在、療育センターに入所している児童の新施設への安全な移送や環境の変化によるストレスの軽減などが重要と考えており、今後、療育センターと十分に協議を重ね、新施設移行に万全を期して参ります。
3 認知症対策について
(1)認知症サポーターについて
認知症施策推進総合戦略では、認知症サポーターの数を600万人から800万人に増やす計画であるが、認知症サポーター等の養成講座の27年度の取組実績と課題、今後の取組について伺う。
【長寿社会課総括課長答弁】
認知症サポーター等養成講座の取組実績等についてでありますが、認知症サポーターは、認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域や職域で認知症の人やその家族に対して、見守り支援など、できる範囲での手助けをする人と定義されており、平成27年度の養成数は、18,684人で、いわていきいきプラン2017に掲げる年間目標11,000人を7,684人上回っている。また、平成27年度末現在の累計は116,578人で、総人口に占める割合は8.96%と、全国で第5位となっている。
認知症に関する正しい知識と理解を持っていただくということだけでも、十分に意義あることと思うが、せっかく養成した認知症サポーターが、委員から御紹介のあった「おれんじボランティア」のような、具体的な活動の場に結びついていないという点については、工夫の余地があるのではないかと考えているところ。
今後、認知症サポーター養成講座の開催とともに、先進的な認知症サポーターの活動事例を紹介しながら、認知症カフェの開催やSOSネットワークなど、地域における多様な活動にサポーターの参加が促進されるよう市町村に働きかけていきたい。
(2) 認知症初期集中支援チームについて
新オレンジプランでは、平成30年度までにすべての市町村で認知症初期集中支援チームを設置することとしているが、現状と課題、今後の見通しについて伺う。
【長寿社会課総括課長答弁】
認知症初期集中支援チームについてでありますが、認知症サポート医と医療・介護の専門職が連携して、認知症の方や家族への初期対応を担う「認知症初期集中支援チーム」は、平成28年11月1日時点で11市町村が設置しております。残る22市町村においては、認知症サポート医をはじめとした有資格者の確保に時間を要していることや、チーム員は別途、国が主催する研修を受講する必要があることなどから、現時点では設置には至っていないところであります。
県では、認知症サポート医不在市町村の医師がサポート医養成研修を受講する際の受講料や、チーム員が国の研修を受講する際の受講料を負担いたしまして、サポート医の養成やチームの設置を促進しているところであります。
今後さらに5市町が今年度末までに設置を予定しているほか、平成30年度までには33市町村全てで設置すると伺っているところでありまして、
今後とも、サポート医の養成等によりチームの設置を促進するとともに、研修会の開催などによりその活動を支援し、チーム設置の所期の目的が達成されるように努めてまいります。
(3)若年性認知症について
早期診断テストのMMSE検査(ミニメンタルステート検査)を先日受けてみた。認知症はいかに早期発見、早期治療に臨めるかが重要である。若年性認知症の現状と課題をどう捉え、若年性認知症対策の強化に向けどのように取組方策を展開するお考えか伺う。
【長寿社会課総括課長答弁】
若年性認知症についてでありますが、介護保険における第2号被保険者、これは40歳以上65歳未満の方になるが、本県では、この第2号被保険者の要介護認定申請の際に添付された主治医意見書によると、平成28年3月末時点では745人の方が認知症で、日常生活に何らかの支障がある方と診断されており、県が独自に調査を開始した平成21年から、概ね、横ばいで推移している。
若年性認知症については、就労や家庭生活、子の養育の継続などの問題を抱える場合が多いものと認識しており、雇用施策や障がい者福祉施策などと連携した支援の取組が必要と考えている。
現在、県では、高齢者の認知症と区別することなく、相談支援をはじめとする各種支援施策に取り組んでいるが、今後、本年4月から4か所となった認知症疾患医療センターでの鑑別診断結果や関係者からの意見も踏まえ、国が推奨している「若年性認知症支援コーディネーター」、これは自立支援に関わる関係者のネットワークの調整役を担う者であるが、その設置も視野に入れながら、若年性認知症の方に対してどのような支援が可能であるか検討していきたい。